きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.5.7
「榛名まほろば」にて
 

2005.5.8(日)

 来週〆切の原稿があって、珍しく1週間前の今日、仕上げました。詩・エッセイ・講演集の跋といいますか、解説です。ある有名企業重役の2冊目の著書です。ご本人は詩人でもあって、作品は拙HPでも何度か紹介しています。その縁からか、私に白羽の矢が立ったという次第。お会いしたことはありませんけど、写真を見ると温厚そうな感じですし、作品は誠実ですからお引受けしました。400字詰め原稿用紙で12枚、5時間で仕上げました。普通なら10時間以上掛かる仕事ですが、HPで紹介した下地がありましたから半分の時間で済みました。感想文は書いておき、データとして残しておくもんだとつくづく思いましたね。
 文芸社から9月に発売のようです。機会のある方はお読みください。ついでに私の悪文にも目を通していただければ嬉しいです。




奥田守四郎氏詩集『陽炎の重み』
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2005.6.1
三重県伊勢市
石の詩会刊
非売品
 

   母と子 8
   灰とダイヤモンド 12
   異郷への便り 16
   招かれざるもの 20
   名前 24
   カナリアの歌 28
   白い蛾 32
   西瓜 36
   ある風景 42
   餅の話 46
   蝉 50
   米の着物 54
   コーヒーを飲みながら 58
   柿とザクロ 62
   エジプトヘの旅 66
   インドへの旅 70
   理髪店にて 76
   宇治山田駅 80
   冬の蛙 84
    あとがき 88


    母と子

   列車のうしろ座席から
   親子の話す声が聞こえてきた

   あれはナニと幼児が聞くと
   母親が田んぼと答えた

   田んぼには水が満たされ
   早苗は風に揺れ
   後方へ消えていった

   幼児がまたあれはナニと聞いた
   母親は田んぼと答えた

   今度は母親があれは何と聞いた
   幼児は「たんぼ」と答えた
   続いて彼女があれは何と聞いた
   幼児は答えられなかった
   彼女が畑と教える声がした

   あれから時が流れ
   見渡すと田んぼに稲の穂が垂れ
   刈取り間近の季節になった

   雀たちは集団で飛んできて
   稲に止まり米を啄んだ
   しかしその日は違っていた
   一羽の雀が側溝に止まり
   飛び上がり穂先の米を食べた
   チョンチョンと移動しては食べた
   あれは親から教わった
   そんな気がした

   四月のあの日私は親子より早く下車したが
   列車は半島をリアス式海岸に沿って走っていった

   目指す駅に着くまで
   母は子に
   海
   島
   船という言葉を教えたに違いない

 著者の第一詩集です。ご出版おめでとうございます。
 紹介した詩は巻頭作品ですが、「親子」の会話に未来が見えて、佳いですね。「幼児」が「田んぼ」の「早苗」と重なって、将来を心から祝福してあげたい気持になります。「雀」の行動を描いたのも、この話は「四月のあの日」という過去のことであるという設定も効果的だと思います。著者は定年後に詩を書き始め、この6年間のものをまとめたそうですから、詩の分野ではまだまだ新人ということになりますけど、さすがに人間を見る眼は確かだと云えましょう。今後のご活躍を祈念しています。




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