きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.5.7 | ||||
「榛名まほろば」にて | ||||
2005.5.16(月)
月例の製品品質会議も午前中に無事終り、午後からは少しホッとしていました。
全体として大きな問題点はないんですが、お客さんの要求品質がどんどん上がってきていますから、それにどう応えていくかが当面の課題で、たぶん永遠の課題だろうと思います。お金と時間を掛ければ満足できるものが理論的には可能ですけど、それでは商売になりません。どこで妥協するかも品質管理の範疇でしょうね。100%の性能を目指して、完成したころには市場から製品が撤退していた、なんてことにはなりたくありません。70%でも80%でも市場に出していきながら更に上を目指す、というところが現実だろうと思います……って、当り前のことを書いてしまったかな(^^;
○隔月刊詩誌『RIVIERE』80号 | ||||
2005.5.15 | ||||
大阪府堺市 | ||||
横田英子氏 発行 | ||||
500円 | ||||
<目次>
アジサイ 石村 勇二 表2
春を縫う 横田 英子(
4)
気配 水月 とも(
6)
指 当間 万子(
8)
思い出 小野田重子(10)
「よい屋」のもとに 殿井 善隆(12)
微笑みの謎 平野 裕子(14)
弥生の昔の物語(33) カラムシ織り 永井ますみ(16)
ひもじさに沈没して 釣部 与志(18)
RIVIERE/せせらぎ
(20)〜(25)
小野田重子/石村勇二/釣部与志/永井ますみ/
藤本肇/横田英子/
イサム ツー チヨ 石村 勇二(26)
テレビから 森 かおり(28)
無という自由 立野つづみ(30)
本当の私を知っているのは私だけ 安心院祐一(32)
晩秋 後 恵子(34)
屍 藤本 肇(36)
別れ 正岡 洋夫(38)
悪態は聞こえぬように(日本との和解補遺)河井 洋(40)
途方に暮れて 松本 映(44)
受贈誌一覧 (48)
同人住所録 (49)
編集ノート
途方に暮れて 松本 映
いつも向うを見る
自分の居場所は
しっかりと安全圏において
ことばを持ち
つながって暮らしているような気分でいる
わたしは拗ねて
ことばが見つからず
こころをすりへらして
インターネットの世界へつないで
嵐が吹いても
雪が降っても
おどろかない
この場所から
あちこちに散らばって
蜘蛛の巣のひろがりを真似てみる
蜘蛛に出会って
息をふきかけて遊ぶ
蜘蛛は迷惑にちがいない
わたしは手足をのばして
あなたを探すのだ
ここまできても途方に暮れて
たどってきた道は
暗闇につづいて
わたしの心根は中途半端
徹底した行政改革に取り組むというこれからの社会
なんでもかんでも委託がすすむ
反対と叫んで
どこで曲がっていいのか分からない
ひとくくりにされる集合体を
つかずはなれず
気の弱いわたしがついていく
スリム化というけれど
トップがスリムになるわけではない
だまっていてもどこからか
NPOです
ボランティアです
かけ声がかかって
立場は微妙になるばかり
だれかが得をして
だれかがつらい状況を背負う
生活していかねばならないから
沈黙して受け入れる
まわりは
自分は特別という人ばかり
きちんとした服装でいかねばならないという会合はごめんだ
肩書に引きずられて生きるのはごめんだ
とってもいいことに聞こえる
愛地球博
協働社会
わたしは
わたしで生きて死んでいけるか
血圧が高いので
集会は欠席します
今日より明日という
あなたを信じていたいのだけれど
途方に暮れて
改革のことばの
意味を問うている
考えれば考えるほど「途方に暮れて」しまう作品ですね。「つかずはなれず/気の弱いわたしがついていく」しかないし、「生活していかねばならないから/沈黙して受け入れる」しかありません。「まわりは」自分は、自分は≠ニいう「自分は特別という人ばかり」。そんな中で「わたしで生きて死んでいけるか」、考え込んでしまいます。そんな「わたし」もよく考えてみれば、「自分の居場所は/しっかりと安全圏において」いる。そんな現代人の悩みを描いていますが、実はそんな悩み≠持っているのは極少数派ではないでしょうか。「途方に暮れて/改革のことばの/意味を問うている」のは、ある意味では良心的なのかもしれません。
○詩誌『揺蘭』2004.夏号 | ||||
2004夏 | ||||
東京都荒川区 | ||||
横山克衛氏 発行 | ||||
350円 | ||||
<目次>
ダブル・プラトニック・スゥイサイド 加護ユリ・・2
ダブル・プラトニック・スゥイサイドU 加護ユリ・・・4
鳥籠往復書簡 加護ユリ.・・・・・・・・・・・6
静かな巣ごもり 加護ユリ・・・・・・・・・・・・10
物語する魔《精霊嗜好》 鳩宮桜城・・・・・・・・・・・12
憂いの恋人うらーら 西野りーあ・・・・・・・・・・・・16
桜の楼閣 ―深山より書き送る― 西野りーあ・・・17
水縄旅館鏡の間 日嘉まり子・・・・・・・・・18
冬の町 日嘉まり子・・・・・・・・・・・・・・22
ミニ図鑑 人魚・妖精・天使 横山克衛・・・・・・・・・23
文章の下には 横山克衛・・・・・・・・・‥・・・・26
SM作家 横山克衛・・・・・・・・・・・・・28
幸せ、それとも不幸せ 横山克衛・・・・・・・・30
雨の降る日 横山克衛・・・・・・・・・・・・・・・31
金色の魚 横山克衛・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
天使発生起源論 横山克衛・・・・・・・・・・36
後記/日嘉まり子・・・・・・・・・・・・39
後書き/横山克衛 編集後記/西野りーあ・・・・・・・40
文章の下には 横山克衛
つまりだ
どんな文章の下にも
淡い淡い地下水が流れている
下駄を穿いて、その水の流れの川原に降り立つと
時を忘れる
そして、自分が物凄い老人だという事も忘れて
地下の街で、書物の作者を追いかけながら
子供になったり、大人になったり、はたまた見た事もない者になってみたり……
しかしそんな事に気がついたのは、ごくごく最近の事であった
私は幼少から頭が物凄く良いと云われたので
文章などは一目見て理解し、もう終わりなのであった
なのに、今、文章を見てみると
至るところに扉があり、開けると、サラサラと川が流れて
ああ、私は何を読んでいたろう、こんなにも長い間……
私は、本を読みながら、本を嘗めたり、食べてしまいたいと思ったりした
何て、可愛いらしい本達
街を歩くと、街にも、至るところに扉があって……
ああ、これが老人になった証拠なのである
老人になると、道端の石ころ一つにも、無限の言葉や歴史が聞こえてくるのである
よしんばそれが、幻聴であったにしろ……
「文章の下には」「淡い淡い地下水が流れてい」て、読者は「子供になったり、大人になったり、はたまた見た事もない者になってみたり」する、というのは良く判りますね。それを「地下水」と表現したところは見事です。「可愛いらしい本達」というのも同感です。本が捨てられない…。今のところは1万冊に満たないだろうけど、この先2万、3万と増えたらどうしよう…。
まあ、その問題は措くとして「老人になると、道端の石ころ一つにも、無限の言葉や歴史が聞こえてくるのである」というのは実感でしょう。ただ、それは「幻聴」であるかもしれないと作者は云っているわけで、この視点はおもしろいなと思います。日頃何気なく書いたり読んだりしている「文章」の、違う側面を教えられた作品です。
○横山克衛(代表)短編集『夢』 | ||||
2005.5.20 | ||||
東京都文京区 | ||||
驢馬出版刊 | ||||
2400円+税 | ||||
<目次>
扉詩 リセットされた年(夢の始まり) 横山克衛 2
高山冬灯(とうか)(takayama tohka)
*無情* 11
*雨の音* 15
*苔寺* 18
加護ユリ(kaga yuri)
*白い仔犬は眠り、もう一度私は目覚める* 27
江原あき子(ehara akiko)
*続・明暗* 43
枝川里恵(edagawa rie)
*夢 れいめい* 61
石田明子(ishida akiko)
*ドア* 77
*白い木* 78
*ペンギン* 86
山田咲生 (yamada sakio)
*ヒカリタケ* 93
横山克衛(yokoyama katsue)
*中年紳士G・ネルヴアリ氏の北欧紀行* 115
執筆者紹介 153
お知らせ 160
リセットされた年(夢の始まり) 横山克衛
二〇〇三年のことだろうか
二〇〇四年だろうか
それとも、あのMichel de Nostredameの一九九九年のことだったのか
人類の知らない間に、創造主は、人類の頭の中をそっくりリセットしたのだった
気がつくと文学はからっぽになっていた
音楽もからっぽになっていた
それだけではない、何もかも中身のない児戯になりさがっていたのだった
壮大な文化の蓄積は削除され、ごみ箱に移動していたのだ
古風な、楽しい夢は終わった
今、人類には何もない
あるのは、贋造ダイヤのようにピカピカで
甘い御菓子のように誘惑してくる、可愛いアイコンばかりである
しかし、私達はここから始めなくてはならないのだろう
もう、新しい夢が、始まっているようだから……
創作が主体のアンソロジーで、詩は扉詩と「無情」「雨の音」の3編しか載っていません。ここでは扉詩を紹介してみましたが、本誌を発刊する意気込みが格調高くうたわれていると思います。「文学はからっぽ」「中身のない児戯」という指摘は的を射ていると云えるでしょう。
小説は、庭に出てきたモンゴルヒカリタケ≠軸に家族を描いた山田咲生氏「ヒカリタケ」、『ガリヴァー旅行記』の続編とも云うべき横山克衛氏「中年紳士G・ネルヴアリ氏の北欧紀行」が秀作と思いました。
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