きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
  050507.JPG    
 
 
 
 
2005.5.7
「榛名まほろば」にて
 

2005.5.24(火)

 16時頃でしたかね、東京本社の営業課長とその部下がフラリと現れて、「仕事が終ったら懇親会をやりましょう」。えっ、聞いてないよ! 「いいえ、ちゃんと伝えてあるはずです」。結局、拉致されてしまいました(^^;
 聞いてないのか私が忘れたのか、それは不明なんですけど、お酒呑むんだったらクルマは置いてくるはずだし……。ま、いいかぁ。というわけで行き着けの呑み屋さんへ。今日は気持の余裕がなかったので焼酎だけにしました。それでも17時半から呑み出しましたので、20時にはもうヘベレケでした。意外にも最終のバスに乗れて、21時には鼾をかいて寝ていました。ちょっとした骨休めになったということです。こういう日もありますね。




森田進氏・佐川亜紀氏編在日コリアン詩選集
    zainichi korean shisensyu.JPG   一九一六年〜二〇〇四年 
 
 
 
 
2005.5.30
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
3620円+税
 

  <目次>
  一、詩篇

   解放後(一九四五年〜二〇〇四年)

   許南麒
   −『許南麒の詩』より
   にわとり 20          傷だらけの詩にあたえる歌 20
   夜中の歌声 21         鶏林 22
   商品論 23           これが おれたちの学校だ 24
   傷口 25            遭遇 26
   また栄山江 28

   香山末子
   −『香山末子詩集 エプロンのうた』より
   手に太陽 30          地獄谷を降りると 30
   唐辛子のある風景 31      青いめがね 31
   油のように 32         わたしの指と眼 32
   私のテレビ 33         くちづけ 33
   蝶々 33

   申有人
   −『狼林記』より
   コトバのツケ 36        狼林記 37
   懐郷 38            過客 39
   江界2 41           仮面 42
   指の短かい母 43

   崔華國
   −『崔華國詩全集』より
   洛東江 46           難民有感 47
   驢馬 48            もう一つの故郷 50
   相似性 51           好好 52
   歳月 52            滅法子紀行 53

   姜舜
   −『なるなり』より
   序詩 56            号笛 56
   父よ 57            夢の針 58
   喪失 59
   −『断章』より
   ハングル 59          帰れない道 61

   李沂東
   −『記憶の空』より
   部屋 62            あなた 62
   石 63             やさしい雨の唄 64
   −『私の聖地』より
   斜面にて 65          余草里 66
   ポプラ 67

   鄭承博
   −『ある日の海峡』より
   あのときと同じ 70       ある日の海峡 71
   鉢の植木 71          ただ泣いた 72
   あさり 73           韓国へ帰って 73
   詩とはなにか 74

   李哲
   −「季刊 三千里」より
   帰心(十二号) 76       雲(十三号) 77
   躑躅(十五号) 79       青磁賦(十七号) 80
   待春賦(二十号) 82      航跡(二十二号) 83
   不忘(五十号) 85

   呉林俊
   −『海と顔』より
   黒い背広 88          肺魚 88
   わがチョソンマルに寄せる歌 89 年表 91
   残稿として 93         愛の詩集として(二) 93
   愛の詩集として(五) 94

   韓億沫
   −『恨』より
   かささぎ(一) 96       風来坊先生 97
   恨 98             亡き母へのバラード 99
   いないということ 100      遺書 101
   ことば 102

   金時鐘
   −『地平線』より
   自序 104            流民哀歌 104
   −『新潟』より
   雁木のうた 106
   −『猪飼野詩集』より
   イルボン サリ 111
   −『光州詩篇』より
   骨 112
   −『拾遺集』より
   大阪港 114
   −『化石の夏』より
   等しければ 114         化石の夏 115

   鄭仁
   −『感傷周波』より
   椅子と投身 118         鳩よ 眠るな 119
   感傷周波 120          うまずめ 121
   茶臼山 122           夏と少年と 123
   鉄 124

   李明淑
   −『オモニ』より
   かあちゃんのパンツ色 126    リヤカア 127
   渇いた記憶 1 128       知っていますか 129
   帰化(二 決断) 131      帰化(四 尾てい骨) 132
   拉致 133

   妙達
   −『李朝自磁』より
   李朝白磁 134          パンソリ 歌劇 135
   砧 136             チマ・チョゴリ 138
   スッカラ チョッカラ 匙と箸 139
   −『季朝秋草』より
   李朝秋草 140          百済観音 141

   崔賢錫
   −『毯果』より
   遡る 144            風景 145
   カラス 145           多摩川 146
   訪れる 146           蛇 147
   出入国管理事務所附近にて 147

   梁石日
   −『夢魔の彼方へ』より
   深き渕より 150         夜を賭けて 151
   冬の海 153           血は溢れる 154
   夢魔の彼方へ 155        無明の時 158

   李禹煥
   −『立ちどまって』より
   彫刻 160            転移 160
   銀座 160            両義の眼 161
   白磁の壷 161          ニューヨークの地下鉄 162
   街で 163

   王秀英
   孤児 164            富士山 165
   無理心中 166          お茶会 166
   アラまあ 166          月の出る町 167

   竹久昌夫
   −『月の足』より
   杏 170             染め模様 170
   高麗川 171           光る悲しみ 172
   婚礼 173            彼 173
   鐘 174

   金水善
   −『済州島の女』より
   アリラン峠 176         三十八度線 176
   夢 177             こころ 178
   選挙権 178           処女狩り 179
   済州島の女 179

   みくも年子
   −『ふるさとふたつ』より
   きもの 182           ふるさとふたつ 182
   壁 183             日日の流れの中で 183
   −『砲きつきスリ』より
   モガキ・マグロシ 184      瘡蓋 185
   −『実の種の――』より
   もどり駅 185          ビワの実 186

   崔一恵
   −『わたしの名』より
   わたしの名 188         言葉をかえして 188
   私のみちを開けて 189      彼岸の日に 190
   虹の橋を渡っていった友 191   いつも想うのだが 192
   灰色の六月 192

   李美子
   −『遥かな土手』より
   荒川 194            三日月 195
   路 195             土手下朝鮮 196
   しゅうさん 197         夏の花 198
   地理の時間 198

   安俊暉
   −『苧種子野』より
   時 200             武蔵野 201

   宗秋月
   −『猪飼野・女・愛・うた』より
   おおぎいちゃあらん 206     夜叉 207
   マッコリ・どぶろく・にごり酒 208 キムチ 210
   にんご 210           平野運河 211
   酒延 212

   尹健次
   −『旅路』より
   詩 214             思い出 214
   生きる 215           旅路 215

   李芳世
   −『こどもになったハンメ』より
   ハッハッハックッチャン 216   ぼくしってんねん 216
   パンツのゴムあと 217      空気入れ 217
   卒業の日 218          かくれんぼ 218
   ゆび 219            目薬 219
   こどもに なった ハンメ 220  子 220

   辛鐘生
   −『パンチョッパリのうた』より
   パンチョツパリのうた 222    ああ もういやになっちゃう 223
   喪失 224
   −『棄民』より
   クー 225            棄民 225
   パゴダヘ向かう 226       ぶらり(詩誌「1/2」) 228

   李承淳
   −『過ぎた月日を脱ぎ棄て』より
   鯛の断想 叩
   −『耳をすまして開いてみて』より
   謝罪 230            夜道 232
   −『風船に閉ざされた肖像画』より
   窓を拭く 232          氷に閉ざされた肖像画 234
   手相を見るように 235      風船に朗ざされた肖像画 255

   萩ルイ子
   −『白磁』より
   白磁 218            白い人・黄色い人・黒い人 238
   混血−口ごもる−2 239
   −『わたしの道』より
   春を取り戻すために 240     喪失と祈り 241
   霧氷が白くきらめいて 242    草笛 243

   嶋博美
   −『芋焼酎を売る母』より
   望郷U 246           ある哀しみ 246
   みずまくら 247         母とわたし 248
   −『畚担ぎの島』より
   畚担ぎの島 249         こいし T 250
   −『父の国 母の国』より
   声のない会話 250        八六・九・アジア大会 251

   南椌椌
   青い馬 254           笛の楽園 255
   牛は時々泳ぐ 256        土偶の家族 257
   家についての甘い考察 258    百済の桃 260

   キム・リジャ
   −『白いコムシン』より
   白いコムシン 262        歳月 262
   十六歳の人差し指 263      渦 264
   板門店にて 264         本籍地 265
   −『火の匂い』より
   こどもの喧嘩 266        火の匂い 267

   盧進容
   −『未明の街』より
   赤い月 268           崩れた壁 268
   −『コウベ ドリーム』より
   コウベ ドリーム 269      オフレコの日本 270
   −長編叙事詩『蘇生紀』より
   垣根のうた 271         表札のうた 272
   −『転生譜』より
   国際識字デー 274        転生譜 274

   尹敏哲
   −『火の命』より
   窓 276             追憶(3)川 277
   震災(5)霊2 277       漢江 280
   −『μの奇蹟』より
   廊下 281            剥がれた猫 282
   運命 283            ほほえみ 284

   崔龍源
   −『鳥はうたった』より
   鳥はうたった 286        馬の目 287
   サラン 287
   −『遊行』より
   海辺で 288           民衆 290
   エレジー 291          在りたい 292

   李龍海
   −『ソウル』より
   私戦 294            ソウル 294
   −『赤いハングル講座』より
   赤いハングル講座 296      くたばった詩人よ 298
   結婚 299            記憶の船 301

   趙南哲
   −『樹の部落』より
   雨 304             広場 304
   井戸 305            座布団 306
   炭 306             母 307
   −『連作詩 風の朝鮮』より
   夏 308
   −『あたたかい水』より
   私を見なさい 309        泣く 310
   −『グッバイアメリカ』より
   アメリカ16 310

   新井豊吉
   −『ふゆの少年』より
   ゆきの夜 312          追悼 312
   −『大邱へ』より
   おとうさん 313         母であったあなたへ 314
   事件 314            父からの手紙 314
   大邱へ 315

   全美恵
   −『ウリマル』より
   ミーティング 318        ウリマル 318
   1985・赤坂「MUGEN」にて 320 ビビンバ・パーティー 321
   黄土 322            オノマトペ(『21世紀日韓新鋭100人詩選集』)323
   私は?って詩を書く時の私(詩誌「さよん」) 324

   ぱくきょんみ
   −『そのコ』より
   そのコ 326           天気模様 327
   肉親 329            わたしは、しない 329
   チマチョゴリを(社会新報) 330 鶴橋一日(社会新報) 331
   中河原(社会新報) 332

   夏山直美
   −『プレパラートの鼓動』より
   名前 334            証明 334
   父親から娘への流出 335     とける 336
   おにぎりとおむすび 337     まる(詩誌「石の森」) 38
   蒼天のまなざし(詩誌「石の森」)339

   宋敏鎬
   −『ブルックリン』より
   ブルックリン 342        処遇 343
   滑稽 343
   −『ヤコブソンの遺言』より
   ヤコブソンの遺言 344
   −『パントマイムの虎』より
   パントマイムの虎 345      最初の公用語 347
   王国 348

   丁章
   −『民族と 人間と サラム』より
   前提 350            子は親もとからあの森へと消えていった 351
   祝福されるべき誕生 352
   −『マウムソリ』より
   偽満州国 354          父権 355
   在日第三の道 356
   −『闊歩する在日』より
   日本人と恋をして 357      コンビニにキムチ 358
   在日サラムマル 360

   中村純
   −『草の家』より
   戸籍の空欄 362         食道園 363
   海鳴り 364           釜山港 365
   二〇〇三年・冬 釜山の光の中を366 一九七五年 草の家 367
   パッチム(詩と思想) 369

   解放前(一九一六年〜一九四五年)

   朱輝翰 五月雨の朝(文芸雑誌一九一六) 370
   朱輝翰 葡萄の花(伴奏一九一七) 370
   朱耀翰 夜、眠る時(現代詩歌一九一八) 371
   朱輝翰 嵐(現代詩歌一九一八) 372
   朱耀翰 暗K(現代詩歌一九一八) 372
   松村紘一(朱耀翰) 怒りの月日(興亞文化一九四四) 373

   呉刀成 希望(日本詩人一九二四) 375

   金熙明 幸ひ(文芸戦線一九二五) 376
   金熙明 異邦哀愁(文芸戦線一九二七) 376

   鄭芝溶 かっふえ・ふらんす(近代風景一九二六) 377
   鄭芝溶 海(近代風景一九二七) 377
   鄭芝溶 悲しき印像畫(近代風景一九二七) 378
   鄭芝溶 金ぼたんの哀唱(近代風景一九二七) 379

   李長啓 印度は××と同じですか?(文芸戦線一九二八) 380

   金炳昊 今日は朝鮮のお盆です(日本詩人一九二五) 381
   金炳昊 色々思ひながら野山を歩く(日本詩人一九二六) 382
   金炳昊 おりやあ朝鮮人だ(戦旗一九二九) 382

   金鯨波 此の地よ(文芸戦線一九二六) 384

   リー・テツ 屍精絲・リズム(野獣群一九二七) 384

   成春慶 世さらに(野獣群一九二七) 386

   李光天 殺された風景(『朝鮮詩華集』一九二八) 386
   李光天 病人の家(『朝鮮詩華集』一九二八) 386
   李光夫 無力な高唱(『朝鮮詩華集』一九二八) 387

   朴達 暴壓に抗して(戦旗一九二九) 387

   姜文錫 われらはピオニール(戦旗一九二九) 388

   白鐡 反逆と接吻(農民一九三〇) 389
   白鐡 九月一日(前衛詩人一九三〇) 390
   白鐡 再び×起へ(プロレタリア一九三〇) 393

   金籠済 アカホシ農民夜学を守れ!(プロレタリア詩一九三一) 395
   金龍済 玄海灘(プロレタリア詩一九三一) 396
   金龍済 愛する大陸よ(ナップ一九三一) 397
   金龍済 三月一日(プロレタリア文学一九三二) 398
   金村龍済(金龍済)譽れの星々(緑旗一九四二) 399
   金村龍済(金龍済)母の草履(国民総力一九四四) 400

   崔然『憂鬱の世界』(一九三一)より
   つり 401        俺は如何に生きる 401
   さまよふ同胞 402    我が魂 402
   水を汲んでおいで 403

   李箱 異常ナ可逆反応(朝鮮と建築一九三一) 404
   李箱 空腹(朝鮮と建築一九三一) 404
   李箱 線に関する覚書1(朝鮮と建築一九三一) 405
   李箱 線に関する覚書2(朝鮮と建築一九三一) 406
   李箱 線に関する覚書3(朝鮮と建築一九三一) 407

   柳龍夏 青蛙の歌(詩精神一九三四) 408

   巌星波 朝顔の花(詩精神一九三四) 409

   朱永渉 Kい河(詩精神一九三四) 410
   朱永渉 省線−夜12時(詩精神一九三四) 410
   朱永渉 冬の思ひ出(詩精神一九三五) 411
   朱永渉 康村の春(詩精神一九三五) 412
   松村永渉(朱永渉) 徴兵の詩(緑旗一九四四) 413

   朴承杰 故郷に春を感ずる(詩精神一九三五) 415

   張寿哲 ポプラの有る風景(詩洋一九三五) 416

   朴南秀 女の風俗史(日本詩壇一九三八) 417
   朴南秀 自畫像(日本詩壇九三八) 417
   朴南秀 異常な存在(日本詩壇一九三八) 418
   朴南秀 赤い機關車(日本詩壇一九三八) 418

   文哲兒 戦場(日本詩壇一九三八) 419

   金二玉 夜曲(日本詩壇一九四〇) 420
   金二玉 哀歌(日本詩壇一九四〇) 420
   金二玉 悲しき人(日本詩壇一九四〇) 421

   李海林 郷愁(日本詩壇一九四〇) 421

   「鐘奕 風景畫(藝術科一九四〇) 422
   「鐘奕 季節(藝術科一九四〇) 422

   金圻沫『童女像』(一九四〇)より
   童女像 423    悲愴夜曲 423
   夏の誘ひ 424

   金山保 みいくさみとせ(日本詩壇一九四〇) 425
   金山保 嵐(日本詩壇一九四一) 425
   金山保 愚人(日本詩壇一九四一) 426
   金山保 哀傷(日本詩壇一九四一) 426
   金山保 てがみ(日本詩壇一九四一) 426

   金炳燮 淡い夕陽よ(日本詩壇一九四一) 427
   金炳燮 君は知るまい(日本詩壇一九四一) 427

   韓植「炭よ燃へてくれ」(文芸戦線一九二六) 428
   『高麗村』(一九四二)より
   多重塔 429    K壇の匣 429
   終焉 430     印度の祈祷 431

   城山昌樹 白い風景(日本詩壇一九四二) 432
   城山昌樹 凍てついた路を(日本詩壇一九四二) 433
   城山昌樹 征け(日本詩壇一九四二) 433

   朝本文商 校庭に(日本詩壇一九四二) 434

   金鐘漢『たらちねのうた』(一九四三)より
   待機 435         幼年 435
   一枝について 436     合唱について 437
   古井戸のある風景 437   風俗 438
   空山明月 438       善夫孤獨 439

    駱駝(日本詩壇一九四二) 440
   趙栫@憧憬(日本詩壇一九四二) 440
   趙栫@馬山港 (日本詩壇一九四二) 441
   趙栫@翼(日本詩壇一九四二) 441

   趙宇植 海に歌ふ(国民文学一九四二) 443

   徐廷柱 航空日に(国民文学一九四三) 444

   趙靈出 山水の匂ひ(国民文学一九四四) 445

   李燦 子等の遊び(国民文学一九四四) 446

   大島修 銃に就いて(国民文学一九四四) 447

   李家漢稷 ひとつの願(緑旗一九四四) 448

   香山光郎李光沫)わが泉(国民詩歌一九四一) 449
   香山光郎(季光沫)シンガポール落つ (新時代一九四二) 450
   香山光郎(季光沫)半島青年の決意(「朝日新開」中鮮版一九四五) 450

  二、詩論・解説

   「もう一つの日本語」と国際性――金時鐘論・雀華国論 森田 進 454
   在日の女性詩人たち                 李 美子 465
   詩史解説                      佐川亜紀 470
   在日コリアン詩史略年表 佐川亜紀 496
   あとがき 504



 長い目次になって申し訳ありません。ここまで載せるか迷いに迷ったのですが、結局、載せることにしました。それだけの大冊であるということを知ってもらいたかったし、戦前・前後を通じて現在まで、これだけの在日コリアン詩人がこれだけの仕事をしたということを知ってもらいたかったのです。佐川亜紀さんのあとがきにもありますが、それでも網羅とはほど遠いと私も思います。それだけの量を遺した、そして創り続けていることを、感動を持って目次を載せながら思いました。2日も掛りましたけど(^^;

 登場する詩人は全部で86人。そのうち「解放後」の詩人は45人。「解放後」のうち私が直接お会いしたり詩集をいただいた詩人は、たったの8人でした。この世界に身を置いて、そろそろ30年になろうとしていますが、いかに交流が少ないか判ります。でも、なかには私にとって貴重な詩人がいらっしゃるのです。李沂東さんは、実は私の高校時代の後輩のお父上で、高校2年のときに沼津のお宅にお邪魔して、生れて初めて詩集をいただきました。この本にも採り上げられている第一詩集の『記憶の空』です。もちろん今でも持っています。1967年11月8日にいただいたと記録にありますから、38年ほど前になりますね。定価は600円! その記念すべき詩集から作品を紹介します。

    石    李沂東

   墓地の片すみに
   めだたぬ
   石ひとつ置かれている
   それはかりそめに埋けた
   しるしであった
   いつのまにか
   年輪の苔がふえている

   ときどき掃除に来るひとが
   唯の石かとかたずける
   私は それを探して
   盆や 暮れに
   また もとの処においた

   あなたの記載は
   俗名も戒名も
   寺の過去帳には ないという
   訳は問わなかった
   その訳は
   いちばん私が理解していたから

   私の国のならいが
   そうであったから 家にも
   位碑のようなものや 仏壇はなかった

   私は
   石をあなただと思った
   あの時はせめて
   手に一杯かかえる石をと選んだつもりが
   今みると
   玉石ほどに小さい

   私は名前の書かれた
   恰好の墓がほしかった
   誰もが尋ねてもいいように
   位牌や仏壇がほしかった

   盆 暮れに
   重箱の中に米一升と
   三拾銭の布施袋をもって
   私と弟二人だけが
   三里の町から寺に来た

   いつもひそかな山路を登り
   ここに来るのは恐い
   しかし来れば
   石に
   感無量の懐しさがあり
   心の中で <母チャン> と
   母の名を呼んでみた

   盛り土がならされ
   今も そのしるしとて
   石 ひとつがある

   石に雨が降っている日があり
   石に蜥蜴が這っている日があり

 李沂東氏の頁の冒頭に簡単な略歴が書かれていました。1925年、4歳のときに母上と二人で渡日した、とあります。詩作品ですから、現実とは切り離して鑑賞すべきですが、「あの時はせめて/手に一杯かかえる石をと選んだつもりが/今みると/玉石ほどに小さい」というフレーズは幼少時に母上を亡くされたと読んでよいでしょう。「その訳は/いちばん私が理解していたから」というフレーズは、日本人の一人として辛いですね。私たちの両親、祖父母の時代に何があったのか、作品で声高に抗議しているわけではありませんが、底に潜む「恨」を感じます。
 この作品が発表されて少なくとも40年は経っているでしょう。この40年で日本人は根底のところで変わったのか、靖国・教科書問題を考えると肯定できないと言わざるを得ないでしょう。考えさせられます。




川端律子氏詩集『赤い川』
    akai kawa.JPG    
 
 
 
 
2005.6.10
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
2000円+税
 

  <目次>
    T
   赤い川 8
   インスリン 10
   からだの声を聴きながら 12
   血管が切れた 14
   爪 17
   ひとりごと 20
   輝き 22
   きゅうす 24
   二銭の郵便はがき 26
   亡母を 憶う 28
   グロッソプテリスの化石 30
   深海流 33
   彼の手紙 36

    U
   輪ゴム三本 40
   盲点 42
   盲点U 44
   プロの教師なら 47
   盲目の踊り子 50
   柿落ち葉 53
   イラク戦争に思う 56
   世界平和を 祈る 59

    V
   ふじあざみ 66
   ミモザ 68
   対面 71
   万年青 73
   花の笑顔 75
   いなだ 77
   私の水平線 79
   からつき落花生 82

    W
   わたしの友だち 86
   エーゲ海で 89
   ウェールズの丘 92
   ピラトス山頂にて 94
   故郷仙台 97
   トウグリギン・シレー 99
   奇跡の旅 102
   喜望峰 104

    あとがき 108



    赤い川

   地球の大地を流れる
   数え切れない 川

   私のなかにも流れる川がある
   無数に枝分かれして
   くまなく私のなかを巡っている
   私の命の細胞を養い 心を育ててくれる 赤い川
   無意識のうちに流れている

   私は意図して
   からだを支配する脳細胞に
   赤い川が流れるように刺激する
   定冠詞の使い方確かめようと
   英作文 つぎに暗誦
   大脳の運動野に赤い川が流れるようにと
   手足の指一本ずつ やさしくさする
    流れよ 流れよ 手の指先から足の先まで
   ことばを紡ぎ作品を織り上げる
   大脳の前頭連合野に赤い川が流れるようにと

   たゆまず続けていると 機能の動きも 見えてくる
   からだには不思議がいっぱい

   人間は小さな惑星だ

 詩集のタイトルポエムで、かつ巻頭作品です。著者の思い入れが判るような作品ですね。「からだを支配する脳細胞に/赤い川が流れるように刺激する」するとは良いことだと思います。私も意識して脳細胞で風邪ぐらいは治すようにしています。それが意外と治ります。やはり「からだには不思議がいっぱい」だなと思います。それは「人間は小さな惑星」だからなんでしょう。これからも「大脳の前頭連合野に赤い川が流れるように」していきたいものです。



詩とエッセイ『千年樹』22号
    sennenjyu 22.JPG    
 
 
 
 
2005.5.22
長崎県諌早市
岡 耕秋氏 発行
500円
 

  <目次>
    詩
   サッカー・夜道で        早藤 猛 2
   歴史・機織り          植村勝明 4
   うそっこ            和田文雄 8
   夜のなかに・ひとつの朝     鶴若寿夫 10
   心を抱く・本当の心、雨     大石聡美 16
   春の習作から四篇        岡 耕秋 20

    エッセイほか
   ウエストミンスターの鐘(五)  日高誠一 30
   古き佳き日々(一九)      三谷晋一 36
   よみがえれ「宝の海」有明海   鮫島千秋 43
   読者からの手紙         中田慶子 46
   鶴若寿夫詩集『回帰』評
   この溢れる叙情−鶴若寿夫『回帰』について
                   大石聡美 48
   『回帰』まで           鶴若寿夫 51
   菊池川流域の民話(一六)    下田良吉 54
   樹蔭雑考            岡 耕秋 63
   編集後記ほか          岡 耕秋 64



    カラタネオガタマ    岡 耕秋

   昨秋 鉢から庭におろした
   七〇センチの若い木が
   四月の末 多くの花をつけ
   中庭いっぱいに香気を放った

   四センチほどのこぶりな花
   黄を帯びた六枚のうす紫のはなびらは
   薄緑の雄しべに数十の雌しべを
   抱いている

   「くだものの芳香ね。バナナかな」
   帰省した娘が庭に入った途端にそういった
   「バナナの木」ともいうんだよ
   「とてもいい匂い」

   この一本の匂いのよい木があること
   「とてもしあわせ」
   とそのひとは言った

   むかし
   国民学校のクラスの子が
   この枝を学級にもってきた
   どの子もその花を分けてもらい
   大切に家にもちかえったのだと

   六十年も前のことを
   私たちは不意に思い出す
   期せずして声をあわせ
   「風防
(フウボウ)ガラスの匂いだ」
   といった

   風防ガラスのひとかけらを
   子どもたちは大切に筆箱のなかに入れ
   こすってはその甘い匂いを楽しんでいた
   風防ガラスは
   遠い悲しいくやしい
   日々も思い出させる

   青い空が広がっていて
   日の丸をつけた練習機が飛んでいた
   突然あらわれたグラマン機二機が
   機銃掃射をする
   装備の無い練習機は玩具のように
   もてあそばれて
   きりもみになって撃墜された
   若い航空兵が殺されていた
   風防ガラスは焦げて燃えていた

   あの練習機にも
   零戦や日本の軍用機のほとんどに
   風防ガラスは装備されていたのだろう

   私たちは辛い思い出を追わねばならない
   理不尽な戦争のなかで
   殺し殺されていった
   一族の秀れた若者たちのこと
   いまは身寄りすら思い起こさなくなった
   多くの死者たちのことを

   そして
   三月九日、八月六日、九日も そのほかの日々も
   毎日が世界中の命日であった
   狂気の吹き荒れた
   六十年も前の愚かしい日々を

   カラタネオガタマは
   なんのたくらみもなく高く匂うだけなのに

 「大切に筆箱のなかに入れ/こすってはその甘い匂いを楽しんでいた/風防ガラス」を、実は私も記憶しています。おそらく1960年頃だったろうと思います。小学生で体験していますから、飛行機の風防だということは認識していましたが、「遠い悲しいくやしい/日々」までは判りませんでした。この作品を通じて、それが戦中からあったものだと知りました。おそらく私が持っていた物も撃墜された「日本の軍用機」の物だったのかもしれませんね。

 そういう思い出もありますが、この作品で見なければいけないところは「いまは身寄りすら思い起こさなくなった」「一族の秀れた若者たちのこと」だろうと思います。「身寄りすら思い起こさなくなった」というフレーズに少なからぬ衝撃を覚えました。それが風化なですね。風化を止めるのは文学だと感じた作品です。




   back(5月の部屋へ戻る)

   
home