きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.5.7
「榛名まほろば」にて
 

2005.5.31(火)

 ふうーっ。やっと5月最終日に漕ぎ着けました。今日は、本当は6月21日です。20日遅れぐらいになると、けっこう開き直りますね(^^; いずれ挽回するさ、と思いながら鬱屈した日々を過しています。でも、気になっているのはいただいた本への礼状が遅れていること……。ごめんなさい!




アンソロジー『埼玉詩集』14集
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2005.5.15
さいたま市見沼区
飯島正治氏方・事務局 埼玉詩人会 発行
2000円
 

  <目次>
   冬の旅・二〇〇三年一月   相原 校三 12
   丘の景色          青木  滋 14
   居酒屋           秋田 芳子 16
   水の音           秋本カズ子 18
   ウイグル人の村       秋山 公哉 20
   両神山           秋谷  豊 22
   魚が溢れた日        浅井 裕子 24
   あさり貝          浅野  孝 26
   カシュガルのおき火     飯島 正治 28
   祈り            石島 俊江 30
   カシュガルヘ行く      石原  武 32
   窓を開けて         伊集院昭子 34
   トマト一個に        市川満智子 36
   柘榴            植原まつみ 38
   竹             植村 秋江 40
   写す            宇津木愛子 42
   思い出の街         大野理維子 44
   私のせんせい        大羽  節 46
   如月            小笠原 勇 48
   春の日           刑部 和儀 50
   帯留め           角田 陽子 52
   降り籠められて       笠井  剛 54
   みち            笠井 光子 56
   本日は晴天なり       金井 節子 58
   アモルフォフアルス・ギガス 金子たんま 60
   冬虫夏草の唄        狩野 敏也 62
   遠い渚           河内さち子 64
   荷物            川口 孝子 66
   声             川中子義勝 68
   父に捧げるバラード     木染 葉月 70
   灯をともす         北岡 淳子 72
   羊             北畑 光男 74
   主旨            栗原 澪子 76
   あなたの土に        呉  美代 78
   新彊博物館のミイラ     小林登茂子 80
   箱の中=望=        斎藤 充江 82
   たそがれの渚        桜庭 英子 84
   晩夏の海          佐々木一麿 86
   牡丹雪          ささきひろし 88
   涙             佐藤 泰子 90
   旬     
カキノキ     里見 静江 92
   たかが 一本の古樹…されど 塩崎 光男 94
   七草の寺          塩田 禎子 96
   玉ねぎは          品田美恵子 98
   鳥             篠崎 一心 100
   二月の空          篠崎 道子 102
   線路 二題         清水 榮一 104
   階段へのピアニシモ     白倉真麗子 106
   塩の声           鈴木東海子 108
   杭             高橋 次夫 110
   手             高橋 英夫 112
   手のひらに咲く       高橋 裕子 114
   千の薬 万の葉       篁 久美子 116
   集める           田口 洋子 118
   ナカ カズさんのこと    只松千恵子 120
   「迷宮入り」…・:   たちばなとしこ 124
   伏流水           田中 郁子 126
   シーソーがゆれて      田中眞由美 128
   ユウキくん         田中美千代 130
   教室            千木  頁 132
   子供のままで        月谷小夜子 134
   やませのうみ        対馬 正子 136
   一服            都築 紀子 138
   朝のむこう         寺田美由記 140
   推敲            巴  希多 142
   二枚のハンカチーフ     中村 泰三 144
   未明            難波 律郎 146
   花を供える         西尾 君子 148
   チーズ           二瓶  徹 150
   白石 他一編        萩原  章 152
   牡丹            萩原 康吉 154
   岬にて −冬の旅−     花籠 悌子 156
   ヒバク           浜野 茂則 158
   水琴窟           林  哲也 162
   朝の風景          原口 久子 164
   はじめての家        原田 麗子 166
   里山の初冬         比企  渉 168
   Let it be     平野 成信 170
   川霧            平野 文子 172
   彼岸  
い け        昼間 初美 174
   枯れ色を造花る      比留間美代子 176
   晩夏            廣瀧  光 178
   夜の道           福島みね子 180
   再び秋           藤倉  明 182
   五十年という歳月      古田のい子 184
   葦毛の馬          星  善博 186
   水曜日の骨         町谷 宣子 188
   括る            松下美恵子 190
   棒一本           松本 建彦 192
   もう一度          松山 妙子 194
   時計の針が逆に回っている  間中 春枝 196
   過ぎる           三枝ますみ 198
   実の種の−         みくも年子 200
   前線の蟻          水島美津江 202
   風景            峯尾 博子 204
   波の記憶          宮尾壽理子 206
   海釣り           宮坂美樹子 208
   病室            宮地 智子 210
   故郷への道         向田 若子 212
   越谷の散歩         村上 章夫 214
   鳶             村田 寿子 216
   未確認飛行物体       杜 みち子 218
   坂の上は          森田  茂 220
   正月            梁瀬 重雄 222
   釣り人           山丘 桂子 224
   かもめ(yaHKa)       山岸 哲夫 226
   いのち           山ア  馨 228
   エミール・ノルデ      山路 豊子 230
   追想            大和 友子 232
   マグロ           山根 研一 234
   鶯鳴くも          弓削緋紗子 236
   菊の花束          湯村倭文子 238
   新しい年          吉田 忠一 240
   ナイアガラの滝で      吉野  弘 242
   晩秋            吉村 明代 244
   六月のシャドー       渡辺 頴子 246

   忘れ得ぬ詩人たち
    『埼玉詩集』第十四集に寄せて 石原 武 248
   埼玉詩人会年譜 252/ あとがき 257



    居酒屋    秋田芳子

   大通りを渡り 路地に入ると
   小さな店が並んでいる
   店の中から 威勢のいい声と
   酒のにおいが流れてくる

   かますの塩焼きをつつきながら
   兄は チビリチビリと飲み始めた

   小さな会社を経営している兄は
   私に これからのことを話し出す

   空っぽになった徳利の数が増える度に
   話はどんどんふくらみ 兄は
   億万長者になっていく

   店内が混み始めると兄は
   立ち上がり レジヘ行った
   百円玉の釣り銭を一こ一こ
   確かめながら 財布にしまっている

   私達のいた場所は 忙しく片付けられ
   新しい億万長者を 迎えている

 どれもこれも紹介したくなる作品ばかりで、困りました。それほどの充実ぶりです。鉱山会社から流れた毒で大漁≠ノなった川魚を扱った浅井裕子氏の「魚が溢れた日」、肯定しているのに否定語でしゃべる少女を描いた伊集院昭子氏の「窓を開けて」、草にもなれず木にもなれない竹はクローンだと教えてくれる植村秋江氏の「竹」、自殺した同僚を偲ぶささきひろし氏の「牡丹雪」、薄皮を剥ぐ玉葱は詩に似ていると書く品田美恵子氏の「玉ねぎは」、あい≠ゥら始まる五十一音図はまだ貼られているかと問う千木貢氏の「教室」、百姓には何が一番大事かを訴え続けた父上を描く対馬正子氏の「やませのうみ」、「ヒバク」という映画を観て、トコヤに行くか映画に行くか迷った自分が恥かしいと今では言えるけど、実は今でも映画とトコヤの重みに揺れているのだと私たちの心底を突いてくる浜野茂則氏の「ヒバク」、ある日突然―自分専用の机はない―と会社から申し渡されたサラリーマンを描いた藤倉明氏の「再び秋」、天秤棒にはうれしいほどの重さ≠ェあると説く松本建彦氏の「棒一本」、闘い疲れて帰ってきた男を受け止める水島美津江氏の「前線の蟻」、遺稿となった山根研一氏の「マグロ」などなど。2001年から2004年の長い時間の集大成だから当然と言う見方も出来ましょうが、それではすまない熱波のようなものを感じたアンソロジーです。

 そんな優れた作品群の中で、とりわけ紹介したいと思ったのが秋田芳子氏の「居酒屋」でした。私も居酒屋好きで毎週のように行っているから、ということもありますけど、佳い視点だなと思います。「話はどんどんふくら」んで、いつの間にか「億万長者になっていく」ことはよくあること(^^; でも現実は「百円玉の釣り銭を一こ一こ/確かめながら 財布にしまっている」状態。ここは巧いと思いましたね。でもそれ以上に感嘆したのが最終連です。百円玉までは私でも書けるかもしれないれど、「新しい億万長者」までは無理だったなと正直、思います。この一歩が作品の価値を決めるのでしょうね。敬服しました。




会報『埼玉詩人会会報』57号
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2005.5.8
さいたま市見沼区
飯島正治氏方・事務局 埼玉詩人会 発行
非売品
 

  <目次>
   埼玉詩祭―現代の抒情を求めて
    第11回埼玉詩人賞 原田麗子詩集「眠らない水」に 1
    表題作「眠らない水」 原田麗子 2
   文学散歩 風たちぬ―信濃路を訪ねて 3
   第18回現代詩サロン 4
   お知らせ 6
   新入会員の紹介 7
   会員情報 7
   このほしのどこかに―宮澤章二先生に捧ぐ― 対馬正子 8
   訃報 8
   あとがき ささきひろし 8



    眠らない水    原田麗子

   古木の根が張る坂道のゆく手
   ちいさい道しるべをみた
   岩槻 慈恩寺 秋葉 上尾 与野
   石塔表面の凸凹にふれたわたしの手に
   やわらかな 秋の陽と風

   畑をすぎると
   星あかりのように人知れず湧いている水
   幾度も夢でみた それは
   武蔵野の 深呼吸
   どんな喧騒もなだめ
   とふとふ といのち滾らせて
   千年の月日を湧きあふれる水のやさしさ
   樹木の繁る崖の下 眠らない水のえくぼ
   三貫清水 さんかんしみず
   掌に掬う水は
   いましがたくちびるをしめして立ち去った
   縄文びとの透明な影を映している
   たくらみもなく
   かたわらの葦原さわがせて
   眠れぬままに訪う水のほとり その崖の上
   失われた現代びとの けもの道のような
   仄暗い雑木の中の 旧い鎌倉街道
   燃えさかる秋の葉を散らし
   かるく風をまいあげ
   水を
   渇望して
   なにものかが
   混沌の大都会からひた走ってくる

   遠いバイパスの騒ぎ
   水と鳥が呼びかける新しい声
   ふるいたつその静けさを吸い わたしは
   ようよう潤いながら
   心臓の鼓動をきいている
   とふとふという音
   眼らない水の

 第11回埼玉詩人賞を受賞した原田麗子氏の詩集『眠らない水』から、表題作が載っていましたので紹介してみました。「武蔵野の 深呼吸」「眠らない水のえくぼ」などのフレーズが佳いのですが、何より水は「眠らない」という視点が斬新だと思います。「武蔵野」、「旧い鎌倉街道」というイメージを背景にした佳品で、さすがは埼玉詩人賞を受賞するだけのことはあると敬服した作品です。




詩誌『しけんきゅう』144号
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2005.6.1
香川県高松市
しけんきゅう社 発行
350円
 

  <目次>
   〈詩作品〉
   エルフリーデの性の牧場と工場 ………………… 笹本 正樹 2
   今日/永遠/あなたへ …………………… かわむら みどり 4
   春雨にじむ ……………………………… かんだ くじゅうく 8
   この道/函館物語 ………………………………… 水野ひかる 10
   眉 毛 ……………………………………………… 倉持 三郎 14
   時はどこから ……………………………………… 葉山みやこ 16
   鉄塔と少女 ………………………………………… 秋山 淳一 18

   〈ネットコーナー〉
   ゼリー …………………………………………………… Nao 20

   〈創 作〉
   シャボン玉の中から見た宇宙  ……………… さや まりほ 22
     (ナルシスへの伝言シリーズ)

  〈評 論〉
   シェイクスピアの劇中歌 …………………………… 倉持三郎 26

   広 場(すくうぇあ) …………………………………………… 30



    眉毛    倉持三郎

   眉毛だけがベッドの白いシーツの上に残されている

   朝 日をさましたとき
   会義のことが気になりだして
   眉毛をつけるのをわすれて
   勤めにでかけた
   寝るときは
   眉毛をはずしてシーツの上におかないと
   落ち着いて眠れない

   勤め先でも
   眉毛をベッドの上に忘れてきたことに気がつかない
   額のあたりの邪魔物がない
   会義中はいつもとちがう
   部長に業績のことをいわれても
   平然としていられる
   クビになるかとびくびくすることもない
   お客のクレームの電話にも落ち着いて応対する

   眉毛はきれいに
   左右に並んでシーツの上に残っている
   右側のには一本長い白毛がある

   眉毛だってすこしは休息をとりたい
   上役の前であげたりさげたり
   お客の前で
   ピクピク動かしているから
   たまにはのんびりとねころんでいたい
   眉毛のないご主人の顔を思いだしながら
   並んでベッドにのんびりよこたわっている

 おもしろい発想の作品です。現実には「眉毛をはずしてシーツの上にお」くなんてことはなく、「額のあたりの邪魔物」だったのかもしれませんが、それはそれで役割を演じていたのだと気付かされます。「上役の前であげたりさげたり/お客の前で/ピクピク動かしている」眉毛の苦労も判ろうというものです。昨今はあえて眉毛を剃る若者もいますけど、それはちょっと意味が違いますね。大人の眉毛にはこんな意味もあるんだぞと知らせてやりたくなる作品です。




佐相憲一氏詩集『永遠の渡来人』
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2005.5.21
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
2000円+税
 

  <目次>
   侵略戦争を隠すものたちへ 6
   くちづけ 8
   アウフヴィーダーゼーン 12
   港、命の灯 19
   ペキン原人の時間 24
   新世界 34
   極東ゴマフアザラ詩 37
   シーソー 40
   横浜 42
   アンニョンハセヨ 48
   プレー再開! 51
   国家病棟 56
   コウモリ 60
   フランス 63
   すべりり台 69
   九条詩人の夏休み 72
   夜の海 78
   長崎 81
   大阪 84
   私という奇跡 87
   願いの生物学 90
   予言とバッシング 94
   メランコリー 96
   それでも彼女は詩を書く 99
   実況オリンピック 104
   笑顔
(かなしみ) 118
   夏のしおり 122

   掲載誌紙一覧 124
   あとがき 126



    予言とバッシング

   地球はまるい
   と言ったら
   バッシングされた のは
   地球がまるいと困るヒト達がいたから
   だが ずいぶん経って
   わかった
   地球はまるい。

   平等である
   と言ったら
   バッシングされた のは
   平等だとまずいヒト達がいたから
   だが ずいぶん経って
   常識になった
   平等であるべきだ。

   平和憲法
   と言ったら
   バッシングされる のは・・・・・

   地球はまるい
   と言ったら
   詩になった
   九条という未来の比喩
   はて
   わかるまで
   どれくらいかかるのだろう

 著者は、私も参加表明をした「九条の会 詩人の輪」のよびかけ人のお一人です。目次でも窺えると思いますが、その意図で創られた詩も多く収録されています。紹介した詩はそんな中でも抜きん出ている作品だと思います。「地球はまるい」「平等」という歴史の延長線上に「平和憲法」「九条」を置く視線は見事です。歴史に学ぶということはどういうことなのかを改めて感じます。
 しかし、一抹の不安もあります。本当に「わかるまで/どれくらいかかるのだろう」と考えてしまいますね。個人の生活を超えた大きな視点の詩集と云えましょう。




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