きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.6.5 | ||||
「宇都宮美術館」にて | ||||
2005.6.2(木)
私が管理責任を負っている関連会社でミスがあって、頭を抱えています。厳密には関連会社が下請けに出している工場のミスなんですが…。最終的には製品に影響はないということまで判ってホッとしているところですけど、関連会社の対応のマズさに苦りきっているところです。人間がやっていることですからミスがあるのはしょうがないと思っていますが、そのあとの対応が問題ですね。今回は製品に影響がないんですから、これを好機と捉えて対応してくれと言っています。でも反応がイマイチ。自分の会社の人間でも動かすことは難しいのに、ましてや他の会社、、、。そんな弱気もチラッと頭をよぎりますが、会社生命を賭けてでも動かしてやるか、という気になっています。冷静さと熱さ、両方のバランスを求められる事例となるでしょう。
○貴志美耶子氏詩集『菫ほどな』 | ||||
2005.5.30 | ||||
徳島県板野郡板野町 | ||||
扶川茂氏方・そばえの会刊 | ||||
2500円 | ||||
<目次>
T 反少女
歴史…………… 8
反少女…………… 10
流し雛…………… 14
蛍…………… 16
桝…………… 20
杭…………… 24
逃げ水…………… 28
蜃気楼…………… 32
飛天……………36
琴が浜…………… 40
古里…………… 44
U 逆さ虹
逆さ虹…………… 48
海…………… 50
死らないで…………… 52
生える…………… 56
噛む…………… 58
勾玉…………… 60
石の涙…………… 62
髪…………… 66
離陸…………… 68
時間…………… 70
V 神様の小径
上陸…………… 74
蓼…………… 78
秋…………… 82
案山子…………… 84
核家族…………… 86
董ほどな…………… 88
神様の小径…………… 90
白い街…………… 92
はなびら…………… 94
午後の人々…………… 96
みおつくし…………… 98
W 葡萄園
名…………… 102
枝跡…………… 104
剪定…………… 108
花振るい…………… 112
苦腐れ…………… 116
秋の棚…………… 120
* 跋…………… 123
* あとがき…………… 128
歴史
夜の机の上で
開かれた本のページが
めくられようとして
なかなかめくられない
そこは思想が往ったり来たりする
人間の世界
そのページのなかほどで
読点のように
うっかり立ち止まってしまった虫の
ほんの少しばかりのふくらみと
見えないほどの微かな手足
遠い物思いを追っていた
親指と人差し指が
その小さな生の途上に気付かず
ページをつまんでめくる
見えない驚愕と
聞こえない悲鳴が書かれた文章に
ひとつ余分に読点がついて
閉じられる
おそらく第一詩集だろうと思います。詩集タイトルの「菫ほどな」は漱石の句菫ほどな小さき人に生れたし≠ゥらとっているそうですが、タイトル通り小さなものたちへの視線が温かい詩集です。
紹介した詩は巻頭作品です。「うっかり立ち止まってしまった虫」への慈しみに満ち溢れた作品と云えましょう。「思想が往ったり来たりする/人間の世界」の「ページのなかほどで」「驚愕」して「読点」という記号になってしまった虫。ここには人間と他の生物との関係が物語られているとも思います。「閉じられる」とただ一言だけ置かれた最終連も佳いですね。「反少女」「逆さ虹――愛美に」「菫ほどな」などと共に読み応えのある詩集でした。
○詩誌『花』33号 | ||||
2005.5.25 | ||||
埼玉県八潮市 | ||||
呉 美代氏方・花社 発行 | ||||
700円 | ||||
<目次>
作品 花の蜜 鈴切幸子 4
ただ 原田暎子 5
時の秤−母へ 鷹取美保子 6
耳鳴り 宮崎 亨 8
微笑の顔 山嵜庸子 9
さくら咲く 坂口優子 10
無人駅 飯島正治 12
冬のつつじ 湯村倭文子 13
初めての言葉 林 壌 14
ローズマリー 平野光子 15
続・韃靼幻影行 山田賢二 16
この地に来たものは 柏木義雄 18
評論 詩人としての三島由紀夫と抽象芸術(上) 佐久間隆史 20
ドイツ詩人の毛筆書道への傾斜 鈴木 俊 44
作品 愛しぶ たとえ 中村吾郎 27
コロボックルの笑ひほか一篇 天路悠一郎 28
用水路の月 都築紀子 30
2005年スナップ・ショット 峯尾博子 31
薩(さった)峠 酒井佳子 32
初冬の高尾山で 川上美智 33
浜薊 水木 澪 34
辛夷(こぶし) 佐々木登美子 35
介護の風景T・夜の嵐 青木美保子 36
水葬礼 回想U 馬場正人 37
樹 石井藤雄 38
斜面 小笠原 勇 39
月の石 田村雅之 40
川ぼとけ 高田太郎 41
日傭取一揆(ひどりいっき) 和田文雄 42
愛読書 菅沼一夫 43
私の詩法
あくまでも個人的な私の詩法 宮崎 亨 46
言葉を織る 坂口優子 48
作品 田植えどき 篠崎道子 50
かじもとさん 秋元 炯 51
支配者 山田隆昭 52
夕暮れ 坂東寿子 53
怠け者の木 狩野敏也 54
旅 丸山勝久 56
終焉 呉 美代 57
亡きひとの柩の傍らで 宮沢 肇 58
幕 菊田 守 60
書評 菊田守詩集『タンポポの思想』
−タンポポの思想の開花 中村不二夫 62
和田文雄詩集『毛野』を読む
−今起る毛野の風土記 野澤俊雄 64
菅沼一夫詩集『ジャングルの少女』評
−詩の妙趣を読む 原田暎子 66
『花』 32号同人会報告 宮崎 亨 67
受贈詩集 68
編集後記 69
愛読書 菅沼一夫
物集高量
そりゃ何だい と大抵の人は言う
僕もそうだった
この漢字に接したのは丁度七十年前
小学枚五年生の時だった
当時は作文のことを綴方と言っていた
担任の先生が 調べたことを書け と言う
歴史好きの僕は父の本箱から一冊抜き出す
それがこの漢字との付き合いの始まり
漢字? 否 著者のお名前なんだ
モズメタカカズと読む
書名は「國史の華」
提出した綴方の題は 源 義仲
綴方は先生に誉められたけれど
調べたなんど言うものではない丸写し
その後はこの書と永いながーい付き合い
失恋した時も 子や孫が出来た時も
そして八十三歳の今も
神武天皇から徳川家康まで
主として武人中心に書かれた史書
発行は大正六年四月十三日
物集氏は明治十二年生まれ昭和五十八年没
著名な国文学者とある
武田信玄に傾倒したのもこの書から
延いては「小説甲陽軍艦」や詩誌「花」に繋
がる奇しき縁
旧体制華やかなりし時代に書かれた書物ゆえ
背に錦の御旗がちらちらするのには目を瞑る
それは信玄公の魅力とは何の関わりもない
嬉しいのは物集氏の長寿
「百歳を越えてからも精力的な著作活動」
とは没時の新聞記事
者共続け!
僕は柄にもなく大将気分になって
馬上で采配を振る
(注) 小説甲陽軍艦 土橋治重作
「物集高量」という「著者のお名前」から発した作品ですが、おもしろいですね。珍しいお名前ということもありますけど「百歳を越えてからも精力的な著作活動」というのも凄い。それを「嬉しいのは物集氏の長寿」とする作者の入れ込みようも素直に伝わってきます。それに「武田信玄に傾倒したのもこの書から/延いては「小説甲陽軍艦」や詩誌「花」に繋/がる奇しき縁」というのも綿々と繋がる日本の歴史を感じさせます。個人的な体験が歴史の一部であるということを考えさせられた作品です。
○秦恒平氏著『湖の本』エッセイ34 | ||||
日本を読む−一文字日本史 上 | ||||
2005.5.31 | ||||
東京都西東京市 | ||||
「湖(うみ)の本」版元 発行 | ||||
1900円 | ||||
<目次>
日本を読む−一文字日本史−
徳………六 位………一二 例………二八 式………三四 名………三九
親………三五 本………四一 折………四七 色………吾一 侍………五九
茶………六四 客………七〇 蛇………七六 筋………八二 遊………八七
外………九三 縁………九九 楽……一〇四 葬……一一〇 祝……一一六
職………三一 私……一二七 以上・上巻 以下・下巻
土……… 金……… 家……… 手……… 身………
治……… 天……… 死……… 人……… 暦………
物……… 女……… 花……… 風………
わが無明抄−思惟すてかねつ− 下巻
祈りと供養………… 選擇集と起請文…… 信じているのか………
静かな心…………… どう死ぬか………… 安心への道……………
人間なんだもの…… 思惟すてかねつ……
私語の刻…………………133
湖の本の事………………141
丸善の『学鐙』という雑誌に1986年から1989年までの3年間、毎月執筆した36編のエッセイが収録してありました。今号は「上巻」として22編が載せてあり、残りは「下巻」であるのは目次の通りです。一文字を題として日本史を論じようという試みは、文字に通じ日本史に通じていなければ出来ないことだと思います。
「外」とは、まだ「内」にされていないもの、と、そう考えるのが分りいい日本的論理であった。
いや世界の論理であった。
「外」を「内」に取りこむ。「内」にして行く。それを侵すとも奪うともいわず、化するのだと
謂ってきた。これはかなり日本の発想だ。帰化といい化育といい、八紘一宇の根にはその思想が
あった。その思想の根には、言うまでもない天皇制があった。「内」の内なる極まった場所は天
皇の官処(みやこ)であり、「宮内(くない)」の奥を芯にして世界は幾重にも表の「外」へ「外」へ渦を
巻いた。政治すらも日本では、いわば「外」なる機能であった。
引用が少なくてすみません。「外」というエッセイの一部です。「外」に対しては当然「内」も視野に入れねばならず、その視点で見たとき、戦時中の「八紘一宇」とは何であったかという論点です。「『外』を『内』に取りこむ。『内』にして行く。それを侵すとも奪うともいわず、化するのだと/謂ってきた」「日本の発想」を言い表しています。この内外の意識は日常生活の中に根強く残っていて、その弊害も無視できないと続きます。そういう何気ない「一文字」に潜む日本人の本性を実証し論理だてたエッセイだと思います。
そういう論が次から次へと出てくるのですから、知的欲求を刺激されて一気に読んでしまいました。「下巻」も楽しみです。
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