きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.5
「宇都宮美術館」にて
 

2005.6.3(金)

 日本詩人クラブの理事会がありましたが、出席できませんでした。会員の皆さまにはお詫びいたします。
 理事会は18時から始まるんですけど、仕事が終ったのが18時。神楽坂に到着すると20時になって、ちょうど会議が終ったところ(^^; これじゃあ行く意味がないということで諦めました。ま、そんなこともあろうかと事前に報告事項はEメールで送っておきましたので、議事に支障はなかったとは思いますが…。以前の職場と違って、平日にサボって行くのは難しいです。次回以降は土曜日にやってくれるそうですから安心しています。次回から会員の皆さまに委託されて仕事をしっかりやりますから、ご了承のほど、よろしくお願いいたします。




詩マガジン『PO』117号
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2005.5.20
大阪市北区
竹林館 発行
840円
 

  <目次>
   特集 桜
   「日本浪鼻派」の桜−三島由紀夫と五味康祐の場合 小川和佑……………10
                   古典に見る桜歌 櫟原 聰……………18
              幻想の桜−良寛の鞠つき唄 以倉紘平……………23
                 秋成の桜 西鶴の桜 宮内征人……………26
                     風頭山の桜 草野大二……………32
           万葉集・桜の詠みこまれた相聞歌 梶谷忠大……………36
            坂口安吾「桜の森の満開の下」 水口洋治……………40
       桜守 水上勉著について−桜に捧げる一生 藤原節子……………46
               奥琵琶湖 菅浦を訪ねて 蔭山辰子……………51
               さくらと尚ちゃんの物語   〃 ……………56
                       桜六篇 佐古祐二……………58
                    花のトンネル 藤谷恵一郎…………61
                   櫻花學/十月櫻 三方 克……………62
                  さくらと彩ちゃん 神田好能……………64
                    花びらは逝く 丈六友子……………65
                      桜しぐれ 梨 薇………………66

   詩                   で、愛 前野 碧……………69
                       雨降り まつだくみこ………70
                   有り難き私たち 清沢桂太郎…………72
                     掌のない屍 佐藤勝太……………75
                    奥沢町六番地 小柳玲子……………76
                     黄昏の決意 飯田雄三……………78
                      はしゃぐ 岡 隆夫……………80
                   天の下 地の上 藤谷恵一郎…………86
                       雑 踏 小林由実……………87
                 悲 劇/花があった 高野信也……………88
                     五月雨幻燈 桜鬼弓女……………92
                       亀の家 おれんじゆう………93
                         沢 与那嶺千枝子………94
                    通り抜ける風 佐古祐二……………98
                     サスペンス 佐相憲一……………100
                     白痴の勝利 野田祥史……………102
                    家具を並べる 北村こう……………104
                     電線合唱団 丈六友子……………106
             大草原融想/ <い> の字の夏 川中實人……………110
                  女たち/の役割 牛島富美二…………112
                    冬の逆上がり 加納由将……………116
                      小便小僧 中野忠和……………117
                  悪魔と吹き溜まり 及川謙二……………118
                       記 憶 モリグチタカミ……124
                      春を待つ 山田満世==………125
                      紅梅の枝 水口洋治……………126
                   冬の夜/希 望 長谷川嘉江…………128
              高層ビル/夕暮れ/雪の精 梨 薇………………130
                     霙降る日の 左子真由美…………133
                        連想 野島洋光……………134

                   *

   ピロティ 桜に寄せて 小川和佑……7
   ピロティ 「鑑賞」がウソつぽくなる作品 吉村良夫……8
   舞台・演劇・シアター チェーホフの遺産 河内厚郎……82
   この詩大好き 萩原朔太郎の「雲雀料理」 山崎広光……84
   ビデオ・映像・ぶっちぎり 機械じかけのピアノのための未完成の戯曲 左子真由美……96
   詩のふるさと 玉華宮 水口洋治……97
   エッセイ 続アメリカ黒人詩の流れ18 堀諭……108
   詩誌寸感 斉藤明典……120
   竹林館BOOKS 平凡な男の非凡への夢を描く−小説『アイルランドの梟』について 有馬敲……123
   読者投稿欄*POランド モリグチタカミ……136

                   *

   ▽会員・誌友・定期購読募集……83      「PO」育成基金……122△
   ▽詩を朗読する詩人の会「風」例会……122    「PO」例会……137△
   ▽「PO」ホームページ……137          受領誌一覧……139△
   ▽執筆者住所一覧……140              編集後記……141△



    黄昏の決意    飯田雄三

   黄昏に包まれ オレシジ色に染まった縁側で
   新聞紙を敷き 爪を切る
   パチン
   ひときわ大きな音とともに
   どこかに飛んだ
   探してもなかなか見つからず諦めかけた

   ふと見上げると新月が西の空に浮かんでいる
   おおそんなところにいたのか
   新月は言う
   おまえの爪と一緒にするな
   俺のバックには大宇宙がある

   薄暗くなった東の空には流れ星
   おおそうか 昨日抜けた白髪は流れ星になったか
   流れ星は言う
   おまえの髪と一緒にするな
   俺は悠久の時を刻んでやってきたのだ

   それならば
   それならば
   それならば
   と肩に力を入れてみたが・・・

 スケールの大きな作品で楽しくなりました。「爪」は「新月」、「白髪は流れ星」というのは佳い発想ですし、それに対する「バックには大宇宙」「悠久の時を刻んでやってきた」という反語も人間を超越したものを感じます。そんな小さな人間と大宇宙を一緒の舞台に乗せたところが素晴らしいですね。最終連の無理がなく好感を持ちました。
 作者の年代は判りませんが、50も半ばを過ぎた私はタイトルにも魅かれています。老境を前にした「黄昏の決意」と、自分に照し合せて思ってしまうのです。作者の意図とは違ってしまいますが、少し「肩に力を入れてみ」て、もうちょっと頑張ってみるかと思った作品です。




詩誌『1/2』19号
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2005.6.1
東京都中央区
近野十志夫氏方・詩誌『1/2』発行所 発行
400円
 

  <目次>
   赤い口/冬の夜の子守歌               都月次郎 2
   北京 胡同にて                   館林明子 6
   うその人                     黒 鉄太郎 8
   キムチの山                     芝 憲子 10
   老人ホームで −きんさん100歳−          西條スミエ 11
   リフトの上から                  呉屋比呂志 12
   願い                        枕木一平 14
   音/ふたつの声                   宮本勝夫 16
   冬のケヤキ/お風呂でふやけた話           薄葉久子 20
   また明日に向かって               佐伯けんいち 24
   そのむこうに 武 力也さんに/あと半分 もう半分  宮川 守 27
   雑音(ノイズ)/相対性原理             近野十志夫 30
   碧玉の櫛        タチャーナ・スメルチナ 藻利佳彦 訳 32

   辛鐘生作詞・曲CD「心のままに」から 38
   「武力也朗読詩集」CDのお知らせ 39
   あとがき 40



    うその人    黒 鉄太郎

   あなたの病は
   千のうそを
   真実のように装うところにある
   これは歴史に残る名文句であろう
   ――自衛隊がいるところが
   非戦闘地域です
   あなたは
   素晴らしい名言であると
   一日中ほくそ笑む
   そう
   物事がうまくいったという笑いである
   これを聞いた数千万人の民は
   確かに私たちは馬鹿にされていると
   直感的に苦笑した
   そしてこの人のねじのゆるさに
   哀れみさえ覚えた

   あなたの病は
   千のうそを
   真実のように装うところにある
   それは悲しいことであるが無知であるということを
   自覚していないところにある
   ――自衛隊がいるところが
   非戦闘地域です
   あなたの病は
   峠を越えて危篤である
   ――法律上ということであれば
   自衛隊が活動している地域が非戦闘地域である
   いまだに
   世界の民に
   苦笑を与えている

   うそも万遍繰り返すと
   聞かされるほうは真実と思い込んでしまう
   その悲しい歴史はあるが
   苦笑中の私たちの意味は恥ずかしいという笑いであり
   世界の民の笑いは
   理解に苦しんでいる笑いである
   峠を越えれば展望が見えるはずなのだが
   よほどブッシュにいい子いい子と頭をなでられたに違いない

   物笑いの種をまき続けるあなたよ
   うそを真実のように語る喜劇に
   私たちは
   もう、苦笑も失われたよ

 まったく、国民を愚弄するにもほどがある、と思ったのが例の「――自衛隊がいるところが/非戦闘地域です」という言葉ですが、それを良くぞ書いてくれたと拍手喝采したい作品ですね。日本人の「苦笑中の私たちの意味は恥ずかしいという笑いであ」るが、「世界の民の笑いは/理解に苦しんでいる笑いである」という点もきちんと押さえていて、作者の確かなモノの見方を表出させていると思います。
 それにしても苦々しく思うのは、こういう人物を選んだのは、歴史の客観性に照らして言えば我々であるということ。歴史の前では、オレは投票していないゾは通用しませんからね。戦後生まれの我々にも親父世代の戦争責任を負っていると同じように。戦後最悪の政権に恥じ入るばかりです。




武 力也朗読詩集津軽三味線と詩で語るふるさと
       
朗読:武 力也 三味線:山本竹勇
2005.4.2
東京都中央区
OFFICE KON 発売
1500円
 

   2004年11月13日 西荻窪・奇聞屋にて収録

   1.相棒(竹勇版)    7分(「詩人会議の高橋さん・竹勇版」改題)
   2.屋根ふき稼業     7分
   3.頭突き一発      8分(「濁点について」改題)
   4.ひかる釘       3分
   5.ばっちゃのダダダコ 32分
     (収録時間 計57分)

   ≪武 力也略歴≫
   1943年●秋田県男鹿市に生まれる。
   1963年●20歳、単身上京。
   1983年●40歳、入院を磯に詩作を開始、新聞・詩誌へ投塙。
   1990年●詩人会議新人賞佳作第一席に選ばれる。
   1991年●処女詩集『釘を打つ』(詩人会議出版)刊行。
   2002年●朗読詩集『長いハシゴを上っていけば』(
OFFICE KON)刊行。
   2003年●詩のボクシング山形大会チャンピオンとなる。
   2004年●詩のボクシング全国大会に出場、準決勝進出。
       12月6日 心筋梗塞により永眠。
   (詩人会議会員、千葉詩人会議・千葉詩人クラブ、グループ耕、この据とまれ所属)



 上述の「
詩誌『1/2』19号」にも案内が載っていましたが、私のもとにも同封されて送られてきました。ありがとうございます。
 武力也さんについては、滅多に観ない「詩のボクシング」でたまたま拝見していましたし、亡くなったときはNHKのニュースでも報道されていたと記憶しています。いずれお逢いできる方と思っていただけに残念です。高名な割には、職業がブリキ屋でそこからペンネームを採った程度にしか知らなくて、経歴もわかりませんでしたのでCDに書かれていた略歴も載せてみました。

 まだ2回しか聴いていませんが、気取らず、味のある朗読です。それに三味線が佳い。現代音楽風にアレンジしたところなどは、おやっ?と思わせました。ぜひ聴いてみてください。「
OFFICE KON」は詩誌『1/2』発行所の近野十志夫さんの事務所です。購入にはネットで検索すれば引っかかると思います。無理なようでしたら私のアドレス pfg03405@nifty.com にメールをください。仲介します。




文芸誌『未知と無知のあいだ』23号
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2005.6.15
東京都調布市
方向感覚出版 発行
250円
 

  <目次>
   岡林孝郎さんのこと     渡辺一衛 1
   喪の時間         岩佐壮四郎 2
   D・Xに向き合う     平田由喜子 4
   下山事件のナゾの出発点   佐藤 正 5
   日々の断片(非日常)ローマ 進ありこ 7
   金子みすゞノート     坂井のぶこ 8
   その日日          貞松瑩子 9
   野川物語 第六話      遠丸 立 11
   あとがき               16



   野川「わしらの素(もと)は水ぢゃ。宇宙だの、この地球だのをかたちづく
   っておる原素材ぢゃ。それは時と場所、天の与えた環境のもとで、
   かたちを変えるもの。あの雲を見さっしやい。悠々流れていく……
   あれも水の変化したかたちのひとつ。わしらの親類筋でな…わしら
   の親類は…そのほか水蒸気、雨、氷、雪、霧、湖沼、海…さまざま
   なかたちに変って生きておる。わしらが生きるということは、つま
   り、かたちを変えること、変化することと同じなんぢゃ。川の流れ
   は、その変化のかたちの一つにすぎぬ。
    原素材、水は宇宙のあらん限り生きつづけるぢゃろう。時々にか
   たちを変える…その一点を注視して、あんたら人間さんは、それを
   死と呼ぶようぢゃが。
    雲、水蒸気、雨、氷、雪、霧、湖沼、海……わしらの変化したも
   ろもろのかたちの原素材は水なんぢゃから、時が巡りくれば原素材
   に還るんぢゃ。互いに、云うならばぢゃ、手を取りあい、扶助しあ
   い、かたちを変えながら生きておる……そうぢゃのう、ウム、天意
   というものの自然の流れに従って、ぢゃ、天意というのはな、宇宙を
   根本のところでうごかす力、または法、ということよ。
    ひとつのかたちが他のもうひとつのかたちを <殺す> なんぞとい
   う無法は、わしらの頭の考えでは及びもつかぬこと、どういうこと
   かい?  <みずからを殺す> ……これはいったい何のことぢゃい?
    ひとつの川ともうひとつの川は、まったく別個のものぢゃ。一個の
   川はな、それぞれ悠然とおのれの欲するままに流れておる、そう、
   天意のままに、な。集団などというものとは縁を切っておる。独り
   ぼっちの川流れというかたちに自足しておる。しかし、しかし……
   大地のあちらこちらにてんでんばらばら流れておる。云うならば<仲
   間> の川の存在はよく承知しておる。それぞれの川は、おのれの母
   地をへ巡り流れる他の川を小手をかざして、親愛のまなざしで望み
   見ておるよ、同じく川である誼みに、な。
    わしらは、みんな <仲間> なんぢゃ。それ以外の何者でもないわ。
   わしら、すべての川は……すべての水は……つまり水蒸気、雨、雪、
   雲、霧、氷、湖沼、海は……一身同体なんぢゃ。すべて平等に水な
   んぢゃからな。わしらは、すべて同胞ぢゃと思うておる。同胞のま
   なざしで他の川流れをそれとなく眺めて愉しんでおる。わしら同士
   が親愛感をもつのは、至極当然ぢゃろう?この道理に <殺す> なん
   ぞというマカフシギなことが忍び込む余地はないわ」

 遠丸立氏の連載「野川物語」も第六話を迎えています。「野川」という川(これは調布市を流れる実在の川と考えてよいでしょう)と、そこを散歩する無師野氏の会話という形を採っています。ちょっと引用が長くなりましたが、紹介した部分は無師野氏が人間の自殺や殺人について語り、それに対する野川の反応です。
 ここで注目したいのは「原素材、水は宇宙のあらん限り生きつづけるぢゃろう。時々にかたちを変える…その一点を注視して、あんたら人間さんは、それを死と呼ぶようぢゃが」という部分です。確かに水には死はありませんね。「時々にかたちを変える」だけです。死を水という観点で見るとこう見えるのか、と、ちょっと驚いています。考えれば当り前のことですが、視点を変えるとどうなるかということを教えてくれているように思うのです。人間も元素の塊ですから、その単位では死は無いと云えるでしょう。「一個の川はな、それぞれ悠然とおのれの欲するままに流れておる」が、しかしその一方で「すべての水は」「一身同体なんぢゃ。すべて平等に水なんぢゃからな」という点にも注意が必要だと思います。個として独立しながら「一身同体」であることは民主主義の基本とも云えるでしょうね。野川に教わることはまだまだ多いな、という思いを強くしました。




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