きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.6.5 | ||||
「宇都宮美術館」にて | ||||
2005.6.12(日)
11日〜12日、日本詩人クラブ宮崎大会で、生れて初めて宮崎の地を踏みました。宮崎観光ホテルでの本大会の参加者は240名ほど、大盛会でした。地元の新聞・テレビも記者席が設けられるほどで、歓迎されているのが肌身に判って、主催者側の一員としては厚く・熱く御礼申し上げます。
講演・アトラクション・懇親会と、14時から午前0時近くまで続きましたけど、一向に疲れませんでしたね。 左の写真は郷土芸能・船引神楽「戸開き鬼人」の一場面です。天岩戸の神話に由来する舞で、勇壮。さすがは神話の国の無形民俗文化財だけのことはあります。場面はちょうど天岩戸が割れた瞬間です。 この他に民謡「椎葉地方の四季の唄」も保存会の人によって唄われて、これも珍しいものでした。 二次会はホテル付属のクラブ。手帳には「木挽き芋焼酎」を呑んだ、とありますが覚えていない(^^; 宮崎大学の男子学生や若い女性、スナックのママさんを侍らせて、大満足。単純だなぁ(^^; |
こちらはちょっと写真が大きくてごめんなさい。12日の文学散歩・西都原考古博物館の入口で撮ったものです。この博物館は変っていて、出土品の一部が触れるのです。初めてホンモノの土器を触って嬉しかったですね。ガラス越しに見るだけでなく触れるというのは、こんなにも身近に先人を感じるものかと思いました。宮崎に行ったらここはお薦めの場所です。 帰りは余裕を持っていましたので、宮崎空港で3時間ほど待機。足裏マッサージに行って、夕食を食べて…。そうそう、大阪の詩人たちとたまたま合流できて、一緒に呑んでいました。羽田に20時過ぎ。いつもの福岡出張より早い時間に帰宅しました。 宮崎の皆さん、詩人クラブ東京勢の皆さん、そして大阪の皆さん、ありがとうございました! |
○季刊詩誌『舟』119号 | ||||
2005.5.15 | ||||
東京都小金井市 | ||||
西 一知氏方・レアリテの会 発行 | ||||
800円 | ||||
<目次>
■作 品
背後に 奥津さちよ 4
海 日原正彦 6
寒立馬 駒木田鶴子 8
いつか来た道 森田 薫 10
ひらく花びらの風景 文屋 順 12
川の詩 他一篇 梶原禮之 14
小さな窓 田中作子 16
わかよたれそつねならむ みやのえいこ 18
南湖(たんぽぽ他)、作品集7 岩田まり 20
ぼくたちのそれぞれの2つのトランペット 大坪れみ子 26
■エッセイ
缶詰の土 松本 旻 28
(連載)詩についての断片67 <詩>への接し方 西 一知 31
■作 品
草の洗髪 他一篇 坂本真紀 34
素描6、7 菊池柚二 36
草むらのなかで 岩井 昭 38
人間の学校 その一〇九 井元霧彦 40
微笑みの伝説 藤井章子 42
謝恩会 鈴木 俊 44
教壇(とんこう) 朝倉宏哉 46
飛蚊症 日笠芙美子 48
影を持つ 松本高直 50
ガーゼの星屑 織田達朗 52
■エッセイ
タピエス・ノート 木村雅信 54
■作 品
エラさん 他二篇 植木信子 59
この惑星に生まれて 崔 龍源 62
彼岸の日に海からのぼる太陽を見にゆく 河井 洋 64
天の川 他一篇 黒田康嗣 66
装置の代理店 天野 碧 68
八畳間からアンドロメダヘ 松田太郎 70
呼坂峠の見える場所 25 武田弘子 72
鈴の音 なんば・みちこ 74
闇の底で眠る前に 原田勇男 76
■エッセイ
心平、不可避の蛙 日原正彦 78
■作 品
コヨーテ猫月に吠える 他一篇 経田佑介 87
喫茶店にて 渡邊眞吾 90
見えない足 花房睦子 92
はがき 長谷川信子 94
六十年目の鎮魂
あの日 あの夜 降ったのは…? いしづかまさお 96
次元上昇 尾形ゆき江 98
姿なき帰還 X、Y 合田 曠 100
底なしの飢え 他一篇 西 一知 102
「舟」、レアリテの会発足の覚え書き 106
同人住所録 108
後記●詩は個にかかっている 110
背後に 奥津さちよ
ひかえ帳がある
古いけれど
まだ墨の文字は黒ぐろと
一金 陸軍大臣
一金 参謀総長
一金 師団良
一金 警防団長
おそろしい名がつづく
わたしの生まれていない時代の
若き兵士の死と その香典料のひかえ
出費の欄のおわりには
砂糖
豆腐 コンニャク 油揚げの文字
妙に生々しい その庶民的な食材を
その日の台所で 女たちは
どんな気持ちで調理したのだろう
後日
靖国での合同祭では
女たちに黒づくめは禁止されたという
お祭りなのだから と
そして しかたなく買い替えた
一本の赤い帯締めの
出費についての記載はない
ひかえ帳が語るもの
または 背後に隠されているもの
それは 痛い
5年ぶりに『舟』を拝読しました。たぶん、懇親会でいただいたのだろうと思います。本の後に「6/11」とシャープペンで書き込んであるから間違いありません。しかし、どなたからいただいたのか忘れました(^^; 実はこの日記は7/20に書いていて、1ヵ月も前のことですからね、すみません、覚えていません。どなたかお心あたりの方、お知らせいただけると有難いです。
それはそれとして、さすがに力のある同人が揃っているなと思います。特に紹介した詩は巻頭作品で、佳い視点をお持ちだと感じます。「おそろしい名」という感覚、そして「背後に隠されているもの/それは 痛い」という感覚は、国が右傾化していく現在、きちんと表現すべきものだと思います。良心を軌範としているこの詩誌の、巻頭にふさわしい作品と云えましょう。
○同人詩誌『蠻』141号 | ||||
2005.6.15 | ||||
埼玉県所沢市 | ||||
秦健一郎氏方・蠻詩社 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
【詩作品】 罫線をひいた夜 いわたにあきら 2
蒼ざめた朝に いあたにあきら 5
祈り 藤倉一郎 8
二羽のカラスの対話 藤倉一郎 10
樹木のそよぎに 月谷小夜子 13
風鈴 月谷小夜子 14
届かないこころ 月谷小夜子 16
谷間の音 山浦正嗣 18
気泡 山浦正嗣 20
【短歌日記】 穂高夕子 22
【俳 句】 藤 彩香 23
【俳 句】 自選俳句二十句『白き柑』 川端 実 24
【ものがたり】華笛(最終回) 川端 実 26
《エッセイ》 深沢七郎論(11) 浜野茂則 36
『笛吹川』を通して(その2)
【同人随想】 そんなおミズの…サイン会 月谷小夜子 46
【受贈御礼】 51
【ものがたり】雛を売る 中谷 周 52
《連載小説》 沈黙の太陽(3) 秦健一郎 62
一聡太郎の山荘日記−
【詩作品】 革を引く 穂高夕子 72
絵の前で 穂高夕子 74
季節 井上勝子 76
影・ゆらめき 佐藤 尚 78
春雷 近村沙耶 80
【編集後記】 おじぎ草・同人住所録 82
草を引く 穂高夕子
草を引く いのちを引く
石だたみの小さいすきまに
やっと芽を出したこの草を
わたしの自由と草の自由が交わって
プツンと切れる
雨が降ったあとの
土のにおいが押し寄せる
太古からの大地のやさしさにふたをして
道でおおったにんげんに届く
手を合わせることで
許されるとは思わないが
生かされていることに頭をたれて
やわらかな光に打たれている
「草を引く」という何でもない行為を、実は「いのちを引く」ことだ、それに対して「手を合わせることで/許されるとは思わない」とするところに作者の真摯な姿勢を感じます。避けられない「わたしの自由と草の自由」の「交わ」りがあるとしても、「にんげん」は「太古からの大地のやさしさにふたをして/道でおおった」ではないか、という点は静かな憤りを表出させたいるのだと思います。
最終連は、そんな人間の行為を一身に負って「生かされていることに頭をたれて/やわらかな光に打たれている」と読み取りました。物静かに中に人間の業を感じさせる作品と云えましょう。
○秋山公哉氏詩集『夜が明けるよ』 | ||||
2005.6.10 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
2000円+税 | ||||
<目次>
T
曲がったこと 8
背の順 生まれた順 成績の順 12
春の刺客 16
ヘブンリーブルー 20
背負い籠 24
セイタカアワダチソウ 28
細い糸 30
冬枯れと大地 34
U
森へ 38
春と雨 40
朱い薔薇 44
揺れる葉 48
高度一万b 52
秋の夜を殺したのは誰か 56
スター ライト 60
冬空のピノッキオ 64
匂い付け 68
V
夜が明けるよ 72
飛行機雲 76
放置自転車 80
祈り 84
平野 86
病室と風景 90
痛み 94
記憶のパン 98
雨だれの中に 102
あとがき 06
曲がったこと
長い出張を終えて
一年振りに家に帰ると
前の道が太く真っ直ぐになっていた
雑木林は切り払われ
田んぼは埋められ
裸にされた家々が寒そうに立っていた
足元をしらちゃけた風が通り抜けるばかりで
思わずくしゃみが出た
真っ直ぐな道なんて歩けやしない
百b先にゴールテープが張ってあるようで
駆け出してしまいそうだ
誰かが張ったゴールテープ
走っても走ってもまだまだ走らされるんだ
祖母や母に作ってもらったドテラを剥がした家は
既成の小綺麗な服をあてがって
並べかえるんだそうだ
整然と並んだ家なんて
朝礼をさせられているみたいで
恥ずかしい
隠れて地面に落書きしたくなるじゃないか
前に並んだ奴の頭を小突きたくなるじゃないか
ゴールテープが張ってあっても
朝礼をさせられても
うちだけは
あさっての方を向いていてやるんだ
8年半ぶりの第3詩集だそうです。紹介した詩は巻頭作品です。第6連が特におもしろいですね。「朝礼をさせられているみたい」な「整然と並んだ家」という感覚は新鮮です。家という面では「裸にされた家々」「ドテラを剥がした家」という詩句も斬新で、著者の家に対する姿勢がよく読み取れます。最終連の「うちだけは/あさっての方を向いていてやるんだ」というフレーズはタイトルの「曲がったこと」とも呼応しています。「曲がったこと」は大嫌いだけど「走っても走ってもまだまだ走らされる」「真っ直ぐな道なんて」もっと大嫌い、そんな著者の姿勢が表出している作品で、詩集全体もそういう視点が貫かれていて気持ちよく拝読しました。
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