きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.6.5 | ||||
「宇都宮美術館」にて | ||||
2005.6.28(火)
二転三転していた山形出張の日程が決まって、準備で追われていました。明日29日の午後に出て、泊り、30日朝から関連会社に入って、深夜帰宅予定です。無理をすれば日帰りも可能ですが、それは止めました。今回は上司も営業担当者も行かず、私ひとりです。夜はひとり寂しく呑むしかないなぁ。でも、懇意にしている店があるので、そこで過そうと思っています。
○新・現代詩文庫31『新編 高田敏子詩集』 | ||||
2005.6.25 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
1400円+税 | ||||
<目次>
未刊初期詩篇より
宇宙の滴りをうけて・10 泉・12
浅春譜・10
詩集『雪花石膏』より
雪花石膏・13 鏡・15
小魚・14
詩集『人体聖堂』より
不吉な港 U・16 人体聖堂・17
詩集『月曜日の詩集(わたしの子どもたちに)』より
春日・19 看護婦さん・23
窓辺・20 しあわせ・24
仲よし・20 渓流・24
朝の道・21 子守うた・25
ぶらんこ・21 ペンギン・25
八月の真昼・22 電話・26
水の上の人たち・23
詩集『続月曜日の詩集』より
日盛り・27 馬の目・28
秋の日・27 飾り鳥・29
詩集『にちよう日/母と子の詩集――小さな淳に』より
小さな言葉・30 丘・32
さくらんぼ・31 新緑・33
おとうふやさん・31
詩集『藤』より
藤の花・34 ブザーが鳴る・46
花によせるソネット・34 ぶどう畑・47
別の名・35 初冬・48
庭の中・36 虫の音・48
今日と明日の間・37 梅林・49
峠の花・39 つめたい夜・50
帰る・40 櫛・50
ウエーク島・41 夾竹桃・51
見る・42 風景・52
少年・44 布良海岸・53
九月・44 波・53
車窓・45 静かに訪れて・55
詩集『愛のバラード』より
春の海辺・56 高原の馬・57
詩集『砂漠のロバ』より
砂漠のロバ・58 壕の中・66
あの鳥・58 朝・67
海・61 雨の花・68
動かない姿・62 黒い鳥・69
冷たい手・64 樹氷・69
ダガンダガンは何故蒔かれたか・64 視線・70
詩集『あなたに』より
一りんの花・72 すずめ・72
詩集『可愛い仲間たち』より
白い花・73 涙・74
詩集『むらさきの花』より
むらさきの花・74 絵に見とれる英子・77
小さな靴・75 小石・78
娘・76
詩集『季節の詩*季節の花――花のある朝――』より
花のこころ・80 すずめの来ない日・81
詩集『枯れ葉と星』より
月の夜・82 こおろぎ・83
すいれん・82
詩集『薔薇の木』より
雨の日・84 こぶしの花・86
海辺で・85 薔薇の木・87
詩集『野草の素顔』より
蝶・88 小さな花・89
詩集『こぶしの花』より
成人式・90 さくら・91
詩集『夢の手』より
白い花・92 おばあさん・104
夕陽・93 雪の下・105
貝の名・95 道・106
橋・96 叔母・106
寒夜・96 まるみ・107
夢の手・97 空を見上げて・108
閉ざされる窓・98 時・108
秋の海辺・99 鳥・109
下弦の月・l00 夕焼け・110
夏実子・101 リスの目・110
耳朶・102 声・111
薔薇・103 手の記憶・112
詩集『その木について』より
リンゴの花・114 盧溝橋・119
冬の満月・114 孔雀一羽・121
たのしい部屋・115 ギリシャの旅から・122
ボタン・116 食事・123
影・117 山への思い・124
鐘の音・117 その木について・125
産卵・118
エッセイ
詩と私・128 自由詩の探求――私にとってのフォルム・l42
詩の心・140 書きはじめのころ2 詩と死に結ばれて・144
解説
伊藤桂一 高田敏子の人と作品・150 久冨純江 思い方ゲーム・159
年譜・164
おばあさん
おじいさんが
話す同じ話を
おばあさんは
いつも
はじめて聞くようにして
「おや」とか「まあ」など
感嘆詞も入れて
聞くのでした
おばあさんが話すとき
同じ話になりかけると
――そうとは限らないのに――
おじいさんは
「それ もう聞いた!」と
話の腰を祈るのでした
ポキンと折られた 話の枝
庭に来る 番(つが)いの野鳩も飛び去って
おばあさんは
おじいさんの着物のほころびをつくろいながら
若い日からのつづきの
愛についてを おもうのでした
新編の高田敏子詩集で、重要な作品はほぼ網羅されていると思います。高田敏子ファンは多く、研究者も多いので、ここで紹介した作品を高田敏子らしいと言ったら笑われるかもしれませんが、この詩は高田敏子のいろいろな面を見せていると思います。男の対する眼の鋭さ、女に対する優しさという敏子の視座が端的に表出していると思うのです。
それにしても巧い。第3連など、起承転結の転に過ぎないと言ってしまえばそれまででしょうが、「話の枝」と「番いの野鳩」の組み合わせは絶妙です。高田詩入門としても、詩の創り方の勉強本としてもお薦めの1冊です。
○全集『栗原貞子全詩篇』 | ||||
2005.7.2 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
6000円+税 | ||||
<目次>
まえがき 伊藤成彦
T 戦前・戦中期
一 青春時代(一九三〇−一九三一)
短歌一首 26 秋 33
赤い残像 26 闇 34
夕、遠い、ひとに 26 短歌三首 34
ゆく五月 27 あすばらがすの花のやうに 35
短歌一首 27 短歌一首 36
べにさうび 28 愁ひ 36
短歌一首 28 短歌六首 37
白いくちづけ 29 短歌一首 38
ひるの月 29 短歌二首 38
そよかぜのやうに 30 短歌一首 38
短歌一首 31 短歌三首 38
庭園風景 31 ごーるでんばつとと戀 39
短歌六首 32 むろ咲きの人間 40
孤獨の笛−SH師におくる− 32 短歌一首 40
煙草をのむ女−並木こずゑさんに送る−
33 短歌二首 41
短歌一首 33
二 ノート「太陽・戦中編」(一九三五−一九四三)
新しき真実 42 短歌六首・朝鮮の乙女 48
生きる日 42 短歌五首・秋の空 49
短歌五首・太陽 43 短歌六首・愛 49
短歌十一首・巴里陥落、ヒットラー 43 短歌二首・薔薇(シュル・リアリズムの歌) 50
短歌八首・友に 44 短歌四首・子等 50
短歌六首・晝寝よりさめて 44 再び太陽を 50
短歌七首・父母 45 愛 51
短歌四首・雷 46 短歌六首・幼き姉妹 52
短歌五首・星空の下に 46 短歌十四首・我が愛欲の記 52
短歌三首・うろこぐも 46 短歌五首・猪口美惠子様男子出生 53
短歌三首・亡き姉 47 短歌二首・雑詠 54
短歌五首・麻酔注射−歯科室にて− 47 日々 54
短歌五首・朝月夜 47 手紙−ピーター・クロポトキンに送る− 55
短歌五首・サボテン 48 短歌十三首・芽吹く比治山 55
短歌四首・吾子を抱く 48
三 『眞樹』時代(一九三五−一九四三)
短歌八首・季節の憂鬱 57
四 『黒い卵』から
熱 58 粉雪の日に 66
かいこ 59 日向ぼっこをしながら 67
新緑 59 相克 67
短歌六首・純子生まれぬ 59 すべての戦線から−平和の来る日を想いて− 68
短歌五首・挽歌−大原林子さまに送る−
60 秋の星空 68
短歌七首・竹本菊代さまに 60 短歌六首・雪の夜 69
短歌六首・人間の尊厳 61 短歌十六首・新兵の弟 69
戦争に寄せる−戦場の音の写実放送をききて−62
短歌十五首・雑詠 71
木の葉の小判 63 短歌六首・我を愛する歌 72
戦争とは何か 64 短歌六首・思い出 72
黒い卵 65 短歌五首・水田 73
新春に想う 65 短歌六首・風媒花 73
五 ノート あけくれの歌(一九四五・一)
短歌五首・前線出動の弟へ 74 短歌七首・挽歌−須磨様の御墓前に捧ぐ− 76
短歌五首・初便り 75 短歌十首・トマトの歌 77
短歌五首・あけくれ 75 短歌一首・雑詠 78
短歌四首・供出に戦う母 75 短歌三首・遺品 78
短歌二首・月光 76 短歌六首・疎開せし友へ 78
短歌五首・純子入学の日近し 76
U 原子爆弾投下直後
一 ノート「あけくれの歌」から〔続き〕
短歌十九首・原子爆弾投下当日 82 短歌十首・秘誦 96
短歌五首・戦災者収容所に死体を引き取りに行く
83
短歌十人首・己斐国民学校収容所にて 83 廃園 97
短歌三首・米穀配給所風景 85 疲労 97
短歌四首・降伏 85 夢をゆずる時 98
短歌八首・焼け跡の街(一) 85 短歌十首・照りかげり 98
短歌三首・新聞記事 86 短歌九首・朝霧 99
短歌五首・焼けあとの街を行きて(二)
86 千年も前から 100
短歌六首・焼けあとの街(三) 87 六月 100
短歌八首・弟よ、復員哀話 87 つる草 lO1
生ましめん哉−原子爆弾秘話− 88 短歌二首・雑詠 lO2
季節はずれ 89 短歌六首・行者 102
子供の声 90 新しき神 102
短歌五首・夜更けて 90 新しい年代 103
短歌七首・ことば−ラドマン先生に− 91 星空 104
短歌六首・初雪の日に 91 結婚制度 104
開くべからず 92 芸備与論に 105
再建 93 かえり花のように 106
握手 94 短歌四首・雑詠 106
約束 94 子供達に 106
手人れ 95 短歌四首・雑詠 107
情熱 95 農夫 107
V 戦後初期
一 ノート「戦後初期編(一)」(一九四五−一九五一)
短歌十五首・挽歌 110 墓碑銘 131
広島の日は 111 自失 131
[無題] 112 予感 132
冬の薔薇 114 豫感 132
敵意 114 夏季時間 133
[無題] 115 停車場で 134
傷痍軍人 116 呼び声 135
傷痍軍人 116 旗 136
[無題] 117 [無題] 137
抵抗について 118 種まき 137
椿門 120 [無題]138
[無題] 120 鳥 139
[無題] 121 鳥 140
[無題] 122 午後 142
メーデー 123 [無題] 142
季節 124 新生 143
爆発 124 [無題] 143
月 125 老夫婦 144
電車の中で 125 自由 145
冬 126 春 145
日向 127 未来の自由 146
十字架 128 サキソフォン 146
[無題] 129 いのち 147
[無題] 130 真夜中に 148
二 『中国文化から』(一九四六−一九四七)
短歌五首・南瓜花 149 短歌五首・日々 150
短歌五首・工事場所見 149 短歌四首・戦の日を思う 150
短歌四首・奥田實三氏を悼む 149
三 『広島平民新聞』(一九四七−一九四八)
出発 151 季節は冬だ 153
仲間と共に!全国大会に出席して− 152
W 一九五〇年代
風景 156 なめくじ 178
蝶 157 或詩人たちに 179
おやさしい人間天皇さま 157 わたしはいつも歌いつづける 180
神話−朝鮮事変のころ− 159 生 181
くらい夜 160 友よ、天日のように 182
歯車 161 爆心地 183
再び日本を 162 「火」 183
火の子 163 それは囚人服よりも忌まわしい色である 185
シティ・ニューヨーク 165 橋 186
新緑はもえている 166 地獄の季節 186
原爆で死んだ幸子さん 166 拍手 187
旗(一) 168 種子 188
野の太陽 169 囚われた平和教育よ−高松の教育課程講習会事件− 189
あなたはもうやって来た 170 樹−第五回原水爆禁止世界大会によせる− 190
八月六日が近ずくと 172 日本を流れる炎の河−一九五九年第五回世界大会− 191
世界の母へ 173 黒い羽根 194
比治山 174 うたごえはと絶えはしない 196
記憶 175 堤灯デモ 197
廃墟 176 慰霊碑の中から 199
私は広島を証言する 177
X 一九六〇年代
ビキニの日に寄せて 202 川−1山と川 250 2追憶の川 251 3洪水 251 4滑れた川 252
サハラの砂 203 5いくさ 252 6よみがえる川 253
生きのこったものの足どりを−静かな行進−204 川−1生成 254 2生態 255 3幼い日の川 255
眩暈 205 4船と筏 256 5渡し船 256 6洪水 257 7涸れた川 258
まだ時間はある 206 8廃墟 258 9よみがえる川 259
八月の記憶(一) 207 ひだるい空 260
八月の記憶(二) 208 遠いゝ呼びごえ 261
六月の砂に流された血よ 209 地下都市 262
折づる 210 空 263
平和行進を讃える−一九六〇年六月八日広島通過に際して− 211
うたわざる広島よ 213 倶会一処 264
原爆資料館 214 母子像 265
よみがえる六月 216 ひろしまのみどり 265
対話 217 影 266
不幸な主役たち 219 短歌三首 267
雪 220 黒色銀河 267
平和公園にて−原爆十七回忌に捧ぐ− 221 ことばよ よみがえれ 269
同じ空の下で−安保の学生によせる− 221 曝らされる 270
ひびわれた地球 223 佐世保 271
こえ 223 『私は広島を証言する』(第二版)序詞 272
二十世紀の船出−ソ連核実験抗議船によせて−225 半盲の鳩 272
ネバダについて 226 鉛の靴−デモのすすめ− 273
セミパラチンスクについて 227 暗い海 274
一九六一年 日本の冬 228 茶碗と箸の国ベトナム 275
夜 229 無傷の思想につらぬかれて 276
広島の使者はかえって来た−平和巡礼によせて−229 アメリカへは行くな 277
その絵 230 誰のために戦ったのか 278
犯された街 231 白よ、鎖を解かれても 279
からす 233 偽の季節 280
異形−A子よ− 234 葬送 281
失われた夏 234 暁を呼ぶこえ−一九六九年の年頭に− 282
空洞 235 エンタープライズ炎上す 283
シー・ドラゴン号 237 年輪 285
たえずつむぐ糸車のように−メノン・クマール氏らの国際平和行進によせて− 238
骨と勲章 239 祈り 286
白い虹−わが母土居タケヨをいたむ− 240 沖縄、ヒロシマから 287
ヒロシマ 241 火の洪水 289
渚にて 242 ヒロシマのさくらについて 291
黒い十字架−あなたは広島を証言した−243 未来風景 292
愛と死−わが子哲也− 244 ピカソの鳩になって 293
月見辛 245 もうひとつの空 295
問い 247 夢みるゲリラ 296
眼 248 ことばは死んだ 297
「今度はあなたの番よ」 249 りんごの詩 298
Y 一九七〇年代
旗の下に安らかな眠りはない 302 防弾ガラスの檻 340
絶後か−長崎の友に− 303 未来への入り口 341
瀕死の風景 304 ベトナム・朝鮮・ヒロシマ 342
張りめぐらされた死の壁のなかで 305 旗(二) 344
ニッポン、ピロシマ(その一) 306 猫背の神様 345
鳩 308 人間の証 346
影 309 石のなかから 348
ニッポン、ピロシマ(その二) 310 旗(三) 350
同心円−71・イワクニ、ヒロシマ− 311 無言歌 351
冬の公園 313 襲う鳩 351
偽装都市 314 儀式 352
あと何日か 315 アメリカよ自ら滅びるな−原爆投下ショウに抗議して− 353
灼かれる 316 未来はここから始まる 355
ヒロシマというとき 317 墓標の街から 358
炎の署名−ニクソン大統領にあてて− 318 祭 359
われらの都市−K氏をはげますために−320 湖底幻想 360
ビキニよ、ヒロシマ、ナガサキとともに 321 ヒロシマを見た 361
思い出そう八月を−ヒロシマ、ベトナムのうた−323
アメリカぶた草 325 被曝 362
ひとつの朝鮮を 326 マンモス団地 363
日本告発 327 星あそび 365
ある幻想−マラッカ海峡防衛論− 329 爆心の空 366
かくれん坊の鬼のように 331 死んだ少女のこえ 367
凍てついた眼から 332 焼けた紙幣で何が購える 368
雨中交霊 333 鳥 370
悪夢 335 被爆米兵への悼みうた 371
ことばは木の葉のように 335 魚語 372
'73ヒロシマの秋 336 燃えるヒロシマ・ナガサキ・ハリスバーグ 373
昏い夏−慰霊碑前の坐りこみ− 338 ちえおくれの子らのヒロシマ 375
秋 339
Z 一九八〇年代
アメリカは何でも世界一番−ビキニに寄せて−380
王様の耳はろばの耳 381 ヒロシマの灯 444
幼いものの声 384 セレモニイの終わった後の公園で 445
わがいたみうた
−夫・栗原唯一を悼む− 密集する鳩 447
射程距離 385 昇天 386 終りのとき 386
それでもピース・ヒロシマ 447
呼ぶ 387 空席 388 知らなかった 380
スウエーデン−ベーリット・ヨンスヴィックさんに− 449
献詩−夫の一生をふりかえって− 390 円型パノラマ 450
原子地嶽の救済−このときローマ法王ヒロシマに来ませり−393
ヤスタニ 395 ヨーロッパよ再び−一九八五年ヨーロッパの冬− 451
ベラウの海の白い貝 397 よみがえる川 453
ヒロシマと裸の王様 398 アメリカの悲劇 454
裸の王様 400 あなたのやさしいほゝえみは−パルメ首相を悼んで− 456
マッチの王様 40l 序詞 457
パンと薔薇を 402 ひろしまのみどり 458
三月、ヒロシマから 403 新しい被曝者はどれだけつくられるのだろう 458
タダノリ論 404 八月の死者たちのために 460
黄金と核 406 廃墟の上の青い空を 462
戦争遺児 407 黒い鶴幻想−中曽根句碑反対座り込み− 464
『核時代の童話』序詞 408 摩羅神社 465
ワールドシマにならないために 408 早春 467
壁 410 序詞−ほろびのなかから− 467
偉大なアメリカ−『アトミック・ソルジャー』を読んで−411
若狭 413 放射能地獄 468
不沈空母の乗船を拒否しよう 414 金色の自動車 469
もうひとつの時計 415 ヒロシマ・ナガサキのシミュレーション−B・モア
少女オマイラ・サンチェス 416 スホイザー氏の「ベルリンのシミュレーション」にこたえて− 470
五月 417 生きていてよかった−T様の八十八歳をお祝いして− 473
輝くみどりの風景に 418 愛と怒りの季節−光州事件七周年− 474
知って下さい、ヒロシマを 419 沖縄−焼き捨てられた旗− 475
新しい時代への祈りをこめて 422 言葉のアヤ−体験的昭和史− 477
不吉なプログラム 423 消すことはできない 478
難民 425 昭和が終わる日 480
三十八度目のヒロシマの夏 426 北京の五月−天安門事件− 482
一九八四年二月十一日 427 ヒロシマ消去法 483
青い光が閃くその前に 428 核なき明日への祈りをこめて−和子さんへ− 485
女たちの残酷な夏 430 姑木のてっぺんの白い鳥−チェルノブイリ以後− 486
女たちの悪魔祓いのうた−女たちは二十一世紀を−432
いのちと平和の女の原理を 433 死と生と−長岡弘芳氏を悼む− 488
こどもたちの頭上に太陽を 435 からす 489
最初の誕生 437 同盟国という名の 490
春の雪 437 爆弾と花輪−ナガサキの兄妹へ送る− 491
木の葉の小判−狐退治はさあ、いまのうち−438
原爆慰霊碑の前から 440 壁が崩れるとき 493
人類が滅びぬ前に 443 ヒロシマ、アウシユヴィッツを忘れまい 494
[ 一九九〇−二〇〇〇年代
人間が人間でなくなった日々 498 状況詩チャンネルを廻せば 544
ヨーロッパに春がきたのに−再びナガサキの友へ−499
アピール世界の夜あけを呼ぼう 500 ヒロシマの道標 546
悪い政治と闘って−大原亨先生を悼んで− 503 ヒロシマからのメッセージ−豊かな海といのちを売るまい− 547
歴史の立会人だったのだから−永瀬清子様に−504
雨 506 献詩−弟を悼む− 552
セミパラチンスクの女神−カリンベック・クユコフさんへ−507
コンニチワ ヒロシマ 508 裏切りの夏 554
たんぽぽ−江草恭子さんにおくる− 509 死者たちの証言 554
日の丸の旗は なぜ赤い 509 新たな轟砲−アジア競技大会の統括− 556
武器より薔薇を 511 慈悲深い国 アメリカ 558
黒い海の渚(なぎさ)で 512 ぼく 青だったのに
559
ヽヽヽヽヽ
世界と共に 513 アメリカン・ドリーム じゃめりか 560
海の掃除にGO!GO!GO! 514 被爆五十年一月 阪袖大震災 562
崩れぬ壁はない−三十六年と四十六年と−
515 崩れぬ平和都市を−たちあがる阪神被災者たちによせて− 564
何のために戦ったのか 517 歴史の残像 565
掃海艇帰還の日−一九九一・一〇・三〇− 518 いまは安らかに眠りませ−山手久子様に− 566
原爆紀元四十六年Iヒロシマの詩は脅迫に屈しない−520
影の時代 521 沖縄怒りうた 567
反PKO 523 人類の未来を閉ざすまい 570
都市風景 523 始めに言葉ありき 523 許すな戦争への道 524 夾竹桃−忘れじのヒロシマー 526
寂莫を希望に−大原・今堀先生を悼んで− 527 許すな戦争 アジアはひとつ−新安保ガイドライン− 571
日本告発 529 杖 574
矢鴨 530 無題 574
CHANGE 532 無題 575
逆転 533 亡き人と共に生きよう 575
ヒロシマの人体実験はまだ続いている−羽原好恵様を悼んで− 535
わたすの母子像 538 夾竹桃 576
犬死論争−アジア太平洋の民衆の裁き−539 無題 576
言葉でとりもどそう 542
年譜 577
生ましめん哉――原子爆弾秘話――
こわれたビルディングの地下室の夜であった。
原子爆弾の負傷者達は
くらいローソク一本ない地下室を
うずめていっぱいだった。
生ぐさい血の臭い、死臭、汗くさい人いきれ、うめき声。
その中から不思議な声がきこえて来た。
「赤ん坊が生れる」と云うのだ。
この地獄の底のような地下室で今、若い女が
産気づいているのだ。
マッチ一本ないくらがりの中でどうしたらいいのだろう。
人々は自分の痛みを忘れて気づかった。
と、「私が産婆です。私が生ませましょう」
と云ったのは、さっきまでうめいていた重傷者だ。
かくてくらがりの地獄の底で新しい生命は生まれた。
かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまま死んだ。
生ましめん哉
生ましめん哉
己が命捨つとも
二十、十一、二十五
峠三吉、原民喜と並ぶ広島の原爆詩人・平和運動家の栗原貞子がこの三月六日に92歳で亡くなって、それから四ヶ月も経たないのに『栗原貞子全詩篇』が出版されて驚いています。栗原貞子の詩で最も有名な「生ましめんかな」を紹介してみました。かな≠ヘ当初は哉≠セっようで、ここではそれを採用しました。
実はこの詩集は『詩と思想』9月号で私が詩集評の中で紹介しています。詳しくはそちらを見ていただきたいのですが、論点は「ヒロシマというとき」にあります。日本の原水爆禁止運動の視点を変えた(実際にそうなったかは知りませんが)作品だと思います。反戦詩を書く上でも重要な視点です。拙文で充分伝えられたか不安は残りますが、「生ましめんかな」論と合せてご覧いただければ幸いです。
○倉知和明氏詩集『症候群』 | ||||
2005.6.30 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
2000円+税 | ||||
<目次>
あなたへ 8
クニのカタチ 12
エノラ・ゲイ号 16
かくれんぼ 22
帰還 24
蒼民 28
徴兵令 30
日章旗 32
回想 34
祖の国よ 38
道 42
満蒙開拓団碑 44
帰国 46
孤児 48
神さま 50
芝生の吐息 54
北赤道海流 56
雫の音楽師 60
ぶらんこ 62
少年自衛隊員募集 64
ブロンズの像 68
七月の回想 70
ブラックホール 74
同席 76
未来 80
枯れ葉 82
ぼくのラッパ 84
花のつぶやき 86
竹の子 88
自画像 90
妻へ 94
(補)近衛上奏文 98
あとがき 106
徴兵令
知っていてほしい
国家保護の基のために徴兵令のあったことを
大日本帝国憲法の作られる以前の法律だ
日本中の青年が狩り獲られたことを
一枚の召集令状で人間狩りだ
知っていてほしい
馬鹿げた戦争をしたことを
若者たちが兵隊に召し取られて
十五歳の少年までが志願して
戦場に赴いたことを
そして
悲惨な死に方をしたことを
知っていてほしい
稲は実れば苅り取ることを
家畜は育てて屠殺することを
兵役は生血で納める税なのだと
国家権力は最大の暴力なのだ
国法に叛けば罪になる
国家は人肉を喰ってきた
詩集タイトルの「症候群」という作品はありません。詩集全体で戦争をしたがる「症候群」、戦争に無頓着な「症候群」を謂っていると思います。著者は1927年生まれですから1945年の敗戦時を18歳で迎えたことになります。その戦争体験からこの「徴兵令」は出ていると云えるでしょう。私たちに呼びかけられた「知っていてほしい」という言葉の重みを感じます。国が右傾化している現在、「兵役は生血で納める税なのだ」というフレーズを改めて噛み締める必要があるのではないでしょうか。
○北川山人氏詩集『仙人ブナ』 | ||||
2005.7.1 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
1900円+税 | ||||
<目次>
仙人ブナ 6
風の読経 10
風の浄土 14
白神山 18
清らかなブナ林 22
風のブナ林 24
滝と行者 26
天然の詩 28
澄んでいる森 30
美しい風 32
銀河の森 36
冬の巡礼者 40
源流行 42
ブナ林の聖なる時 44
白神のブナの森 46
深山のカジカガエル 48
青鹿岳 50
カモシカ 54
天の川をイワナは泳ぐ 56
ブナ林は砂漠の匂い 60
露営 62
しぐれのブナ林 64
ブナ林の夕風 66
ブナ林の初雪 68
蘇る森 72
落葉の埋葬 74
最後の舞い 78
ブナの念仏踊り 82
老いは風に乗って 86
老い 88
あとがき 「仙人ブナ」覚書 90
仙人ブナ
老いた命が澄んで
白く光るとき
風は サワ サワ……鳴り
チシマザサは透明に揺れる
白神の奥深い森で
深みを増して
透き通る歳月
ある風の吹く日
老いの日は密かに始まり
ブナの古木に
日は枯れ
乾いて
うすい命の冷え……
細く流れる
苦のはるかな山河
越え渡りきた生涯の果てに
なお 永遠と命と
果てしない宇宙の天然の時の流れ
天寿を果たした
仙人ブナの老木
神々に枯れ枝を差し延べて
ひっそり 昇天の日を促している
詩集のタイトルポエムです。口絵には10葉のブナの写真があり、そこに「天寿を果たした/仙人ブナの老木」も写されていました。「仙人ブナ」とは四、五百年生きた貫禄のあるブナを謂うようです。現在では老いは醜いもの、避けなければいけないものとされているが、そうではないだろうというのがこの詩集を通して訴えたい著者の気持と読み取りました。今までに300回以上「白神の奥深い森」に入ったという著者の、ブナに対する愛着と、それを通して人間に対する愛情が見える詩集です。
(6月の部屋へ戻る)