きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.12
宮崎「西都原古墳群」にて
 

2005.7.1(金)

 一日中、昨日の出張の整理と報告書書きで追われてしまいました。出張もいいんだけど、帰ってくるとこれが待っています。部下を連れて行って部下に書かせる、これが一番なんでしょうが連れて行ける部下がいない(^^; ま、これも仕事と割り切って進めました。




詩誌『飛揚』41号
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2005.7.7
東京都北区
飛揚同人・葵生川玲氏 発行
500円
 

  <目次>
   特集・詩集という現実
   ●作品
    貝殻山――くにさだきみ 4
    野鶏――北村 真 6
    場所――みもとけいこ 8
    球形ではなく――青島洋子 10
    「人」という字から――伏木田土美 12
    風切り羽根を光らせて――葵生川玲 14
   ●書評特集・詩集という現実
    風の道「沖長ルミ子・午後の街路樹」――青島洋子 16
    思想を抱く詩のことば「柴田三吉・遅刻する時間」――くにさだきみ 17
    現代を生きる抗うこころ「くにさだきみ・訴える手」――伏木用土美 21
    「愛」から見える現在「葵生川玲・草の研究」――みもとけいこ 23
    風景の中に消えていく「沖長ルミ子・午後の街路樹」――葵生川玲 25
    カカナクチャア「くにさだきみ・訴える手」――米川 征 27
    非在と存在の通路「柴田三吉・遅刻する時間」――北村 真 29
    畑の時間と希望の種子「葵生川玲・草の研究」――沖長ルミ子 31

   ●編集後記 34 ●同人刊行詩書 2 ●同人住所録 35
                         装幀・レイアウト――滝川一雄



    風切り羽根を光らせて    葵生川 玲

   きっぱりと
   言い切ることに、憧れた日々があった。
        *
   渦中のニッポン放送・社員のなかには
   企業買収で乗っ取られたら
   「辞める」という人が多いと伝えていたが、
   「生活があるし……。」
   と言いよどむ者や、沈黙する者たちの方が
   実際は、信じられるのだけれど。
        *
   週の始まる日の朝に、
   他者の運命を握ったふうな
   雇われ経営者の顔が
   定年雇用延長のカードをちらつかせたとき、
   「ご心配なく。」
   と、念願の口調で
   言ってしまうことができた。
        *
   上昇志向の競争を
   闘わない、と決めた時から
   専門職で一目置かれることだけを目指して
   拠りかからない強さの明日を
   ひたすらに創ることができたからだった。
        *
   やはり、いまも、
   言い切ることを夢みる日々がある。

   輝く陽の中で
   私が、
   憲法九条そのものになって
   きっぱりと
   「希求する」
   と、世界に向いて語りかけることを。

   そのとき言葉は
   光る風切り羽根のように飛んでいくのだろうかと。

 「きっぱりと/言い切ること」の清々しさ。これはやはり「憧れ」ますね。しかし作者は「言いよどむ者や、沈黙する者たちの方が/実際は、信じられる」とも言っています。日本人特有の清算主義への戒めと採りました。
 だが、「きっぱりと/言い切ること」が必要な場合も勿論ある。その最たるものが「憲法九条」です。そう「言い切る」ときの「言葉は/光る風切り羽根のように飛んでいく」。言葉にこだわる詩人ならではの思想と云えましょう。「言いよどむ」ことと「言い切る」こと、この区別を考えさせられた作品です。




詩誌『馴鹿』39号
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2005.6.25
栃木県宇都宮市
我妻 洋氏 発行
500円
 

  <目次>
   *作 品
    改札口              ……矢口志津江 1
    風景/八溝嶺           ……大野  敏 3
    四つの湯船−芦野温泉にて/雨が降る……入田 一慧 4
    風の洞/爪            ……和氣 康之 17
    前方では             ……村上 周司 21
    象徴               ……青柳 晶子 23
    春の楽章             ……和気 勇雄 25
    鷺村頃日             ……我妻  洋 27
   *エッセイ欄
    プラスチックマネー時代      ……青柳 晶子 9
    私の天河神社           ……入田 一慧 10
    白河のこと            ……我妻  洋 13

   後記
                    表紙 青山 幸夫



    鴬村頃日    我妻 洋

   夜明け間もなくイタドリの野道を越えネギ畑を過ぎる。
   荒れた棚田も素通りする。群生するタゼリ。だが摘む人
   影はない。チゴユリとショウジョウバカマの林縁に分け
   入る。潅木の小枝が前進を阻む。若芽が食欲をそそる。
   ツタが倒木に絡まりついている。谷川に沿ってワサビが
   葉を戦がせる。その根をサワガニが攻める。
   急に上昇したくなる。シラカシやアカシデやミズキが混
   在する樹林を抜ける。竜神山の天辺に辿りつく。池水は
   干上がったままだ。祠の前の広場は山の応接間に等しい。
   かつてはもぐりの闘鶏が行われた。負けた鶏はクヌギの
   大木の根方に埋められた。視界が開ける。村が蹲ってい
   る。履歴の消長を背負ったままだ。今はそのどちらなの
   か。辺りを占める気配の全てがその答えを探っているか
   のごとくだ。村の明日は誰も語らない。未来物語は今ま
   でどおり明るく展開すると踏んでいるのか。光はあくま
   で眩い。所を選ばず漲っている。
   人骨形の柿の苗木の下にしげやんが腰を下ろした。おし
   のばあさんが来た。ふたりの会話は堂々巡りをする。し
   げやんは先の大戦で戦死した弟の自慢話。ばあさんは嫁
   の悪口。反復される。互いの言い分だけの言語生活だ。
   しかし話題の中の人物はその瞬間輝いていく。
   陽が昇った。今日は何をしようかとふたりは考える。老
   爺は裏山の獣道を何とはなしに辿る。山頂に達する。遅
   咲きの山桜が目の前にある。老婆は衰えた両膝の治療日
   だったことに思い当たる。嫁の軽自動車で隣町まで行か
   なければならない。いつものことだ。
   老鴬は下降した。午前の光がその姿を執拗に追う。疎林
   を席巻するゴルフ場の方角に飛んだ。やがてのびやかな
   鳴き声が遥かの緑をもつらぬいていく。すると村のそこ
   かしこに谷風となって鴬声が呼応するのである。

 のどかな中にも凛としたものを感じる作品です。「鶯村」という設定はのどかですが、登場する「しげやん」「おしのばあさん」はこの世の人ではないように思えてしまいますが、「嫁の軽自動車で隣町まで行かなければならない」ことから、現実と捉えるべきなんでしょうね。その二人の「話題の中の人物はその瞬間輝いていく」というのはおもしろいと思いました。「祠の前の広場は山の応接間に等しい」という詩句も佳い喩と云えましょう。「村のそこかしこに谷風となって鴬声が呼応する」桃源郷のような世界に魅せられた作品です。




詩誌『鳥』8号
       
 
 
 
 
2005.7.15
さいたま市大宮区
力丸瑞穂氏 発行
500円
 

  <目次>
   詩 店仕舞 ………………………… 力丸 瑞穂 1
     神田川・アマリリス ………… 金井 節子 2
     パンと思い出と・見習う …… 八隅 早苗 4
     春・煙 ………………………… 山本 陽子 6
     冬の朝に・夜明けを ………… 早藤  猛 8
     息 子 ………………………… 倉科 絢子 9
     小石たちによせて・ポピー … 田鴨 純子 10
     短詩四つ・葉桜 ……………… 菊田  守 12

   書 評
     菊田守詩集『タンポポの思想』をよむ
      −妙正寺川辺りに ………… 金井 節子 14

   エッセイ
     京の旅 ………………………… 倉科 絢子 16
     ふと思う ……………………… 力丸 瑞穂 17
     関さば ………………………… 金井 節子 18

   小鳥の小径…………………………………………… 19
     □手・八隅早苗
     □神さまのバランス感覚・早藤猛
     □これから・力丸瑞穂
     □詩を書くこと・山本陽子

   表 紙 ……………………………… 西村 道子
   編集後記



    短詩四つ    菊田 守

    友だち
   玄関で毛虫に出会った
   そのまま毛虫と一しょに
   お花見に出かけた
   だって
   毛虫は桜と友だちなの

    友 情
   青虫を突突こうとした
   雀の目の前を
   白い蝶がとんでいった 
すき
   一瞬、雀が気をとられた隙に
   青虫はそそくさと
   くさむらに隠れた
   蝶の奴 なかなかやるね

    生きる
   青虫を食べて
   力をつけた黒光りする蟻が
   また歩きはじめた
   こんどは  
そら
   手の届かない空をとぶ
   白い蝶を、とでもいうように。

    
かたき
    
   川流れの弱った赤とんぼを
   川面に目だけ出していた蛙が
   パクリと食べた。
   おたまじゃくしの時
   とんぼの幼虫ヤゴに
   いつも脅かされていた
   蛙だった

 自然界は食うか食われるか。それを大前提としながらも昆虫を見る眼のやさしさを感じる作品ばかりです。ちゃんと「食べた」場面が出てくるところが、これらの作品の持ち味だろうと思います。それを残虐に書くか、あるいは書かないのが一般的だと思うのですが、作者は違います。それも淡々と「食べた」とだけ書いて、あとは昆虫の世界に任せながら観察する。作者の詩に対する姿勢も感じさせてくれた作品群です。




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