きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.12
宮崎「西都原古墳群」にて
 

2005.7.4(月)

 何事もなく過ぎていく一日。平和だなあ(^^; でも世界に眼を転じれば紛争、戦争…。自分は安全なリビングルームでリアルタイムの映像を観て、アメリカの一極主義に憤り、子どもまで巻き込むテロに怒りを覚える…。力のない者がいきり立つ…まさに「ごまめのはぎしり」の世界ですね。そんな一日でした…。




月刊詩誌『現代詩図鑑』3巻7号
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2005.7.1
東京都大田区
ダニエル社 発行
300円
 

  <目次>
   鳥を捕るひと      水野るり子 …… 3
   約束          野間 明子 …… 6
   網の中で        岡島 弘子 …… 10
   水鳥          荻  悦子 …… 14
   主義・ロボット     高木  護 …… 18
   ディスパラテスをわたる 高橋 渉二 …… 21
   菖蒲と鯉        枝川 里恵 …… 26
   誘引・季節       竹内 敏喜 …… 30
   行方知れずの男     嵯峨 恵子 …… 33
   王統紀         倉田 良成 …… 37
   空き家の庭       佐藤真里子 …… 41
   墓参りの車の中     結城 富宏 …… 44
   表紙画『ある朝の出遭い』………… 来原 貴美



    主義    高木 護(たかきまもる)

   この国は
   平和です
   自由です
   悪人もいないです
   貧富の差も
   人としての差別もないです
   わたしはしあわせです
   と思って

   目をつぶる
   耳に栓をする
   口を閉じる

 この強烈なアイロニー! そうか、徳川封建時代の見猿、云わ猿、聞か猿≠ニ一緒か、現代は…。
 作品の構成上は「と思って」という接続語が良く効いています。ところで、タイトルの「主義」は、〜主義と考えればいいのでしょうか? それは読者が勝手に考えてください、ということだろうと思います。三猿主義でも、瞑栓閉主義(最終連から付けました)でもいいんでしょうね。短いけど印象深い作品です。




季刊・詩と童謡誌『ぎんなん』53号
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2005.7.1
大阪府豊中市
島田陽子氏方・ぎんなんの会 発行
400円
 

  <目次>
   柔らかな言葉/おじいさんの遊び場      富 田 栄 子 1
   たんぽぽの旅/切符             中 島 和 子 2
   帰り道/健康診断              中 野 たき子 3
   いもうと/たぬき              名 古 きよえ 4
   うんめい いらん              西 浦 ひろき 5
   けむし/一まいの紙/滝           藤 本 美智子 6
   見つかるのかなあ/パンダのうた       前 山 敬 子 7
   かすみ草/ぶらんこのったら         松 本 純 子 8
   そうらん節                 萬里小路 和美 9
   水ぎらい パル               萬里小路 万希 10
   水仙/子犬のきた日             むらせ ともこ 11
   たつと うれしい              も り・け ん 12
   古いドレス                 ゆうき あ い 13
   星空の下で/疑問のはじまり         池 田 直 恵 14
   耳/目/鼻/入れ歯             いたいせいいち 15
   スケッチ/至福               井 上 良 子 16
   五月、ユウちゃんと/満員電車/白いTシャツ 柿 本 香 苗 17
   シロくん・フクちゃんの 日常レポート(2)  河 野 幹 雄 18
   10歳/神さんのごほうび           小 林 育 子 19
   くらべっこ/予感              相 良 由貴子 20
   もうすこし                 島 田 陽 子 21
   言葉ひとつ/春の味             すぎもとれいこ 22
   枯れないように/しんぶんであそぼ      富 岡 み ち 23
                   本の散歩道 畑 中・島 田 24
               かふぇてらす 中野・畑中・萬里小路 26
             INFORMATION         27
                    編集後記         28
                  表紙デザイン 卯 月 ま お



    柔らかな言葉    富田栄子

   席をゆずると
   お婆さんはていねいに頭を下げ
   にこにこしながら腰をおろした

    アマエサセテ・イタダキマス

   おもいもかけないお礼の言葉
   私はどぎまぎしながらも
   何か美しいものに出合ったような気がした

    ありがとう≠ナも
    どうも≠ナもなく

    アマエサセテ・イタダキマス

   この柔らかな言葉が
   家に帰ってからも胸を打ちつづけた

 「アマエサセテ・イタダキマス」、久しく忘れていた言葉を見ました。私の「お婆さん」の年代は、確かにこういう言葉を遣っていましたね。他人様には甘えるものではない、でも、本当に必要な場合には「アマエサセテ・イタダキマス」。98歳で亡くなった祖母からこう教わった覚えがあります。学問は何もない人でしたが、そういうことはちゃんと知っていた…。巻頭作品から佳い詩に出会って、こちらが「何か美しいものに出合ったような気がし」ました。




隔月刊詩誌サロン・デ・ポエート256号
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2005.6.25
名古屋市名東区
滝澤和枝氏方・中部詩人サロン編集
300円
 

  <目次>
   作 品
    あたらしい太陽 …………………………… 野老比左子 …… 4
    夏になると ………………………………… 伊藤 康子 …… 6
    歩   く ………………………………… 横井 光枝 …… 7
    はるかな夢 ………………………………… 高橋 芳美 …… 8
    春の逝く …………………………………… 甲斐 久子 …… 9
    (続)ヨーロッパ旅行記 ………………… 荒井 幸子 …… 10
    捕 物 帳 ………………………………… 小林  聖 …… 12
    名古屋城西北角櫓 ………………………… 足立すみ子 …… 13
    夜の庭で …………………………………… 阿部 堅磐 …… 14
    静かな訃報 ………………………………… 三尾みつ子 …… 17
    猫 日 記 ………………………………… 滝澤 和枝 …… 18
    職   暦 ………………………………… 稲葉 忠行 …… 20
    蚊   取 ………………………………… 古賀 大助 …… 21
    郷   愁 ………………………………… 及川  純 …… 21

   散 文
    コトバ・レンジャー(1)心理の数学 …… 古賀 大助 …… 23
    詩集『柳絮』に触れて …………………… 阿部 堅磐 …… 24
    詩集『返信』を読む ……………………… 阿部 堅磐 …… 25
    愛しき短歌 ………………………………… 阿部 堅磐 …… 26
    あの頃の短歌 ……………………………… 阿部 堅磐 …… 27
    <朗読会>レポート ………………………… 阿部 堅磐 …… 28
    同人閑話 …………………………………… 諸   家 …… 29
    詩話会レポート …………………………………………………… 33
    受贈誌・詩集、サロン消息、編集後記
    表紙・目次カット ………………………… 甲斐 久子



    猫日記    滝澤和枝

   何もすることがなかったので お−い雲よ と呼んでみた 遠す
   ぎて話にもならない 足元に寝そべっていた猫をみると 滝澤チー
   コちゃん と書かれた猫病院の診察券が 俺の歯医者の診察券の
   上に乗っていたのを思い出した おまえ いつ 俺の家族になっ
   たんだ と聞くと 猫は薄目を開けて しらねえ とばかり知ら
   んふりを決め込んだ 誰に食わせてもらってるんだ と言うと片
   足をひょいと上げて 女房が出かけていった三泊四日の温泉旅行
   の方向を指差す その女房を食わせてやってるのは誰なんだと
   さらに問い詰めると 今度はあごをぐいと おてんとう様に向け
   る その態度に一瞬 会社の連中の だれかれの顔を思いだし
   かっとなって首を取ろうとしたその手を がぶりとやられた 傷
   害罪で訴えてやると怒鳴ると 逃げるそぶりを見せたものの 結
   局仕方がないと観念した様子で 頭を下げ お縄頂戴をした
   人間ばかりの裁判所の中で 敵ながらあっぱれというか さすが
   我が家の猫と自慢したくなるような堂々 悠々の有様に すっか
   り感激して 明日の判決の前に チーコを許して和解をしようと
   思い立った 煮干を ケチだと思われないように五、六匹はやろ
   う といい気分で 裁判所の門を出たところで 灰色猫が猫待ち
   顔で待っていて 俺の後について来たチーコと 手を取り合って
   さっさと帰っていった
   夜 屋根の上で二匹は 俺に当てつけるように鳴き合っている
   ついには 盛りのついた町中の猫どもが一緒になって 一晩中鳴
   きわめいた うるさくて 眠れたものじゃあない
   翌日 眠い目をこすりながら裁判所にかけつけると チーコはも
   う被告席についていて すっきりとした顔つきながら うらめし
   そうに俺をみた うらめしいのはこっちの方だと睨みつけると
   にゃっとして横を向いた 縛り首だ 思わずそう言うと 縛り首
   だ 縛り首だ 突然 俺の声がとてつもなく大きくなってもどっ
   てきた 猫の鳴き声で一睡も出来なかった人たちが 傍聴席を埋
   め尽くし 叫んでいた 声は大きく渦まいて 裁判所をのみ込み
   さらに 大きな津波となって 町にくりだしていった 裁判長は
   眠い目をこすりながらも厳かに 町中の猫に縛り首を宣告した
   静かな夜がもどった ぶち猫で決して美人とはいえなかったが
   ふくらんだほっペたに愛嬌があった 焼酎を飲みながら可愛そう
   なチーコを偲ぶ

 猫についてこんな風にも書けるのかと感心した作品です。普通は可愛いとか、貴婦人のようだなんて書く作品が多い中で、ここでは「町中の猫に縛り首を宣告」。もちろん「ぶち猫で決して美人とはいえなかったが/ふくらんだほっペたに愛嬌があった」と書いていますから、その面も忘れてはいません。猫だけではなく、視点を変えるとこんな書き方も出来るのだ、という見本のような作品ですね。




進 一男氏詩集在ることのための
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2005.7.1
宮崎県東諸県郡高岡町
本多企画刊
3500円+税
 

  <目次>
   序詞9 発語10 扉11 あなたのために12 足跡14 眼について15
   火17 彼のこと18 それについて19 土の十字架20 私のこと22
   私は出来ない24 ここでもわが汚辱の時25 再び汚辱26 別れの言
   葉27 書簡29 崩壊30 夢想31 風32 ある女34 愛35 時間36 何
   を37 鳥38 絶望39 公園にて40 ある場面を見ながら42 蜜43
   再び母のこと44 壺46 空47 命48 石49 椿50 人もまた51 鯨52
   狂気53 脳54 のたれ死に思想55 私であること58 掴む60 追憶
   62 夜63 再び夜について64 うずくまる65 明日と過去67 無為
   69 抵抗71 あなたよ72 あなたが73 あなたは74 あなたを76
   あなたと78 何であるか79 言葉81 欠乏症82 死者と脳髄83 私
   は84 夜の人86 雲87 時88 問90 独り91 夢を見る92 静寂の中
   で94 内なるもの96 野の花98 空間100 世界102 地点103 あの時104
   乾杯105 あの時のこと106 時代107 面影108 思い出110 ボレロ112
   三人113 終末から114 鳥たち115 そして一羽の鳥が115 あの時の中
   で118 またも私は120 再び風122 何かが124 眠り127 迷う128 結び130



    (絶望)

   犬は絶望しない それがお前と俺の違いか
   その俺にしたところで 本当に絶望したか
   死に至るほど絶望しなかったが故に
   俺はこうして生きている つまるところ
   死なずにすむ程度に絶望し
   生きておれる程度に絶望するだけの俺か
   犬よ

 「絶望」について深遠な見方だと思います。いま生きている私たちは日々大小の「絶望」を味わっていますが、それは「つまるところ/死なずにすむ程度に絶望し/生きておれる程度に絶望するだけ」だと気付かされました。非常に哲学的で、考えさせられることの多い詩集です。ちなみに作品のタイトルは全て( )で括られており、ここにも著者の思想を見る思いをしました。




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