きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.6.12 | ||||
宮崎「西都原古墳群」にて | ||||
2005.7.13(水)
職場の歓迎会が小田原でありました。仕事が忙しいのになかなか増員にならず、どうなっているのかなと思っていたら、やっと増員されました、二人も。数十人の職場ですから、二人増えた比率は大きいです。問題は頭数だけではなく能力ですが、そこも大丈夫でしょう。ひとりは席も私の隣ですし、以前、会社の社員教育で一緒に教員をやった仲間ですから、優秀さは保証できます。
ま、人物評はさておいて、やっぱりお酒を楽しみました。明日も会社ですから焼酎だけにしましたけど、ワイワイ騒いで発散しました。 左の写真は仲の良い後輩と。別の後輩の携帯で撮ってもらいましたが、髪の毛が真っ白ですね。こんなにおじいさんになったんだ! 酔っ払って目付きもイヤラシイ(^^;;; 写真は真実なのか、携帯のカメラってどこかヘンなのか判りませんが、ま、事実でしょう……。でも呑み過ぎないで、おとなしく帰ったから、少しは大人になったかな。 |
○殿岡秀秋氏詩集『人体交響楽』 | ||||
2005.7.7 | ||||
東京都目黒区 | ||||
あざみ書房刊 | ||||
1500円+税 | ||||
<目次>
右腕が伸びて……10
逃亡=……12
テーブルの下……16
源泉は黄泉の国から……20
夢の水滴……24
水が嫌いな神……26
宝探し……30
噛みつく自転車……34
ヘッドダンス……36
尻尾のある男……40
突き指……44
ナメクジ……48
異界の入口……52
秘密の部屋……56
イボ……58
岩魚……60
猿人が消える……62
パリでダンスを……66
鏡の部屋……70
俗人テーマ館……72
雪ダルマ……74
なぞなぞ……76
卵生児……78
眼鏡の挨拶……80
あとがき=84
ジャケット・本扉イラスト=藤富保男
尻尾のある男
言葉が胃液に漬かると化学変化を起こして屁理屈になる。ゴムのよ
うに収縮した胃から言葉が排水管の食道を音を立てながら上って口
に入る。屁理屈は唾液にまじって唾と一緒になって、目の前の相手
に飛びかかる。相手が横を向き、灰色の土壁になる。それを見て、
男は勝利を感じる。
男は陽だまりになる頬の窪みを失っていた。人のまなざしは鼻を伝
わり雪の斜面のように滑りおちる。狭く深い額の皺。人の溜息をは
いりこませない。
ところが男は権力者の前に立つと唇をひきつらせて笑顛を作る。尾
骨からは尻尾が生えて犬のようにそれを振る。後ろから見ている
人たちが笑うのではないか、と気にしながら。
どこからか笑い声がしても、自分の尻尾を笑われたと勘違いして復
讐を決意する。それも屁理屈を吐きかけることで。
男は権力者の言うことを鸚鵡のように繰り返す。怒る母親を見るよ
うに眼は落ちつかない。権力者が笑うと母親に叱られないですむ幼
児のように安心する。
男は屁理屈を言っている間は尻尾があることを忘れている。実際他
人に尻尾は見えていない。それで屁理屈を言っても反論してこない
者をいつも探している。
著者の第6詩集にして初めての散文詩集、夢を素材にしたそうです。詩集のタイトルが「人体交響楽」とある通り、身体のいろいろな部分、腕であったり指であったりしますが、それらを材料にして作品化されています。
紹介した作品では「言葉」ですね。「権力者の前に立つ」「男」、「権力者の言うことを鸚鵡のように繰り返す」「男」はあながち夢の中ばかりとは云えません。「屁理屈を言っても反論してこない者をいつも探している」のは私たちの哀しい性のように思います。
パソコンで表記できない漢字がありましたので画像で貼り付けました。見苦しくてすみません。
○詩誌『饗宴』44号 | ||||
2005.7.1 | ||||
札幌市中央区 | ||||
林檎屋 発行 | ||||
500円+税 | ||||
<目次>
詩 論
「荒地」派残照−新保町一丁自三番地− 平原 一良……4
作 品
猫とサクソフォーン 村田 譲……6
明日 谷内田ゆかり…8
野球服の少年 尾形 俊雄……10
かみすながわ 嘉藤師穂子……12
庇 木村 淳子……14
短かいフーガ 塩田 涼子……16
ミッドナイト・セルラー 瀬戸 正昭……18
ハイブリッド・ティ/砂丘/短か夜の/潰れる 新妻 博……20
特 集 芸術エッセイ集
外形が卵形を整いはじめる 尾形 俊雄……22
ジャクリーヌ・デュ・プレ 木村 淳子……24
鋳造のほとりで 塩田 涼子……26
芸術も、氏より育ち? 佐藤 恵一……28
連載エッセイ
林檎屋主人日録(5)(2005.3〜2005.5) 瀬戸 正昭……30
受贈詩集・詩誌……29
「饗宴」夏季詩話会……42
饗宴ギャラリー
武藤ゆかり「水」……2
猫とサクソフォーン 村田 譲
陽焼けのしすぎ
それとも外国から来たのかい
肥り具合はアメリカ的とも思えるが――
でもな旭川で吹いているぐらいだから
地元かな、やっぱり
観客はボクと
足元にいる茶色の猫
彼の服と同じ色の猫
みつめる先を
やけに姿勢正しく背筋を伸ばす
そいつ もの
奏者を見慣れている人は
足早に通り過ぎるのだが
聴衆のためにか
真鍮の靴を陽で照らし
どっしりと
気持ちを楽器におとしている
聞き飽きるまで
立ち止まったボクという彫像が
急な雨粒に動くまで
しかし彼らは気にしない
そっけないほどに また合うのだ、と
いつまでも――
ただ冬になるとちいさな友達が
どこかに埋もれるようにいなくなる
だから雪が降ったら白い三角帽子で吹いている
その足元を世話してやってくれ
買い物公園を真直に
珈琲屋のまえ
ああ、彼
音をみせるサクソフォーン
「旭川」の「珈琲屋のまえ」で「吹いている」「サクソフォーン」の「観客はボクと/足元にいる茶色の猫」。侘しいと云えば侘しいのでしょうが、「観客」の「ボクと/足元にいる茶色の猫」にとっては贅沢な時間なのかもしれません。しかも、観客が少なくても「立ち止まったボクという彫像が/急な雨粒に動」いてしまっても「彼らは気にしない」。これはストリートミュージシャンにとっては普通のことなのかもしれませんが、「そっけないほどに また合うのだ、と」考えているだろうことを「ボク」が見つけたことは、新たな視点のように思います。ただ観ているだけでなく、彼らの心境まで見ていることがこの作品の持ち味と云えましょう。脇役である「茶色の猫」の存在感もある作品だと思いました。
○詩誌『餐』26号 | ||||
2005.7.7 | ||||
千葉県流山市 | ||||
上野菊江氏 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
山根研一小詩集 遺稿
錨をあげ ともづなを解け 1
*第1の夢 2
*第2の夢 3
*第3の夢 4
*第4の夢 6
*第5の夢 8
*第6の夢 9
*第7の夢 10
出港 11
惜別 山根智子 15
あとがき 上野菊江 17
出港 山根研一
わたしは 出航を命じた
錨をあげよ
何かワーグナーの
旋律が ふさわしい
来た方を見ると
周囲の木々が倒され
誰も利用しない
公園を作っている
何を考えているのかね……
土石流が見え
地震が発生
これも神の意思なのか
カリフォルニアでは
森林が燃えさかって
いる とか
シベリアの森林でも
開発が かなり
進んで いる と賢者の
フクロウが 訴える
地球温暖化に
つながるからな
南極では 巨大粗大ゴミ
を撤去する
というが
エスキモーのひとたち
悲鳴を あげている
異常高温で
食糧が 取れない
広大な砂漠が続く
それが いつ迄も
そして中国大陸まで
延々と
しかし 人類は
いつも それらを
乗りこえて きた
それらを解決するのも
21世紀の 君たちだ
あらゆる英知と 勇気で
乗りきってきた
あっ 危ない
無数の危険物 粗大ゴミ
が こちらへと
向かってくる
わたしたちは
星となって 輝く
楽しかった 一瞬の
人生
あのギリシャ神話の
小さい 星になるのだ
今年、若くして亡くなった山根研一さんの遺稿特集です。「錨をあげ ともづなを解け」から「出港」までが章立てした1編の作品です。おそらく絶筆だろうと思います。
「*第1の夢」から「*第7の夢」まで一貫して人類の危機を訴えています。紹介した「出港」にも勿論それは見え、癌に侵されながらも自分のことではなく、人類全体を心配しています。これこそが本物の詩人の生き方であり死でありましょう。「あのギリシャ神話の/小さい 星にな」った山根さん、心からご冥福をお祈りいたします。
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