きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.12
宮崎「西都原古墳群」にて
 

2005.7.16(土)

 小田原市営の「いこいの森」という処で、職場の鱒つかみ取り&バーベーキュー大会が行われました。部単位でしたので参加者は家族も含めて100人を越えたのではないかと思います。

          鱒を捕まえた一瞬です。どこの子だろう?(^^;
 小川を堰き止めて鱒を放します。当初は澄んでいた小川も子どもが入って、あっという間にご覧のように真っ黒。どこに鱒がいるのか分らない状態でした。でも、子どもも保護者も楽しんだようです。

 私はもっぱらビールを呑んで、写真を撮って楽しんでいました。久しぶりに原始的な火熾しもしました。U字溝に新聞紙を敷いて、枯れ枝を乗せて、火が回ったら炭を乗せて…。最近のキャンプではこんな面倒なことはやらないなあ(^^; ホワイトガソリンの強力なバーナーを使います。夜は見つめるだけの細々とした焚き火。それも地表の虫や微生物に配慮して直火はやりません。地面より10cm以上離した台の上の焚き火です。

 おっと、焚き火のことを書き出すとそれだけでエッセイが出来てしまいますので止めましょう。川音を聴いて、子どもの歓声も聞きながらビールを呑んで、いい休日でした。





詩誌『孔雀船』66号
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2005.7.10
東京都国分寺市
孔雀船詩社・望月苑巳氏 発行
700円
 

  <目次>
   *詩 ドアを押し、叩いて/小長谷清実――――6
         木靴/鷲谷峰雄――――8
     網というもの/林 立人――――10
               キリンのいる夢/望月苑巳――――13
             姉さんの迷路/望月苑巳――――16
      ミスエリザベスグリーンの庭に/淺山泰美――――18
         不遜な蕪村/尾世川正明――――21
              狩人/谷元益男――――24
          雪闇/大塚欽一――――26
        ウィショップ氏の秘密/ 洋子――――28
   *連載 絵に住む日々《第十二回》一瞬のカラヴァッジョ     小柳玲子 31
   *吃水線・孔雀船書架/竹内貴久雄――――36
   *リスニング・ルーム/竹内貴久雄――――38
   *孔雀船画廊(15) 岩佐なを――――40
   *連載 アパショナータPARTU
                現代詩の汀〜H賞選考という読書体験 藤田晴央 42
   *試写室 
ダーク・ウォーター/空中庭園/愛についてのキンゼイ・レポート/マザー・テレサ/ふたりの5
        
つの分かれ路/ロボッツ/モディリアーニ/ルパン/星になった少年/シンデレラマン
                      嶋崎信房&清水進・選+国弘よう子 51
   *詩     劇画/岩佐なを――――56
        起伏/文屋 順――――58
     手前勝手な手紙/福間明子――――60
              主張/間瀬義春――――63
          アムール河のさざなみ/藤田晴央――――66
      彼方のさざ波/川上明日夫――――70
            ブルーシートの下から/脇川郁也――――72
      教室から/掘内統義――――75
                花鎮め/紫 圭子――――78
       僕らの悔恨を開墾しょうじゃないか/朝倉四郎――――81
   *連載エッセイ 眠れぬ夜の百歌仙夢語り《第五十二夜》     望月苑巳 84
   *航海ランプ――――92 *執筆者住所録――――91

   表紙=七宝諌鼓鶏形大太鼓 明治6年(1873)
      1873年ウィーン万国樽覧会出品 メトロポリタン美術館蔵



    ミセスエリザベスグリーンの庭に    淺山泰美

   ミセスエリザベスグリーンの庭に
   初夏が来て
   プラム・ツリーがたくさんの実をつける
   昔むかし
   この木のまわりで
   子供たちは手をつなぎいつまでも
   歌いながらめぐりめぐった
   あの唄
   あれは何という唄だったのかしら
   芝生の上
   伸び縮みする影
   その輪のなかに
   いつも見知らぬ子がひとり混じっていた
   どこの子なのか
   誰も知らない
   名前も言わない
   何も食べたがらない
   たった一度だけ口にしたのは
   プラムのゼリー
   あの子
   それっきり見かけない

   一年はあっという間だけれど
   一日は長い
   少し遠くなってしまった耳に
   ふと
   あの歌声が甦える
   今日は朝から寒けがする
   熱っぽい目で
   窓から庭を見ていたら
   あの子がふいに
   灰色の半ズボンを穿いて立っていた
   ポケットに左手を突っこんで
   ちょっとお兄さんになっていた
   静かな鏡のようなまなざしで
   ひとり
   プラム・ツリーの傍に立っていた

 西洋版座敷童子というところでしょうか。でも、ここでは成長して「ちょっとお兄さんになって」現れます。「プラム・ツリー」の精なんでしょうね。人間の一生が100年、「プラム・ツリー」は1000年とすると、人間が老いても「あの子」は「ちょっとお兄さんになって」程度であることが納得できます。これを説明するために「一年はあっという間だけれど/一日は長い」というフレーズがあるのかもしれませんが、このフレーズは単独でも魅力的です。淺山泰美詩のおもしろい部分が表出した作品だと思いました。




水崎野里子氏詩集『あなたと夜』
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ポエム・ポシェットNo.15
2005.7.1
大阪市北区
竹林館刊
800円+税
 

  <目次>
   まえがき                                3
   あなたと夜                               6
   あなたは風                               8
   帰らざる河                               10
   季節                                  12
   鳩の朝                                 14
   星々の間を                               16
   ギリシャの思い出                            19
   花                                   20
   ぬかよろこび                              22
   雨                                   24
   ザムザの夢                               28
   ゴキブリ殺し                              30
   I am a Cockroach                    32
   I am a Mailman                      33
   蝿                                   34
   風に乗って                               36
   虫箱                                  38
   星々が降る夜                              40
   まだ目の見えないあなたに                        42
   ある朝 あなたは戦争に出て行った                    46
   わたしのこころはヴァイオリン                      49
   YESのためのサモル                          51
   エーゲ海に捧ぐ                             54
   強い風が吹く                              56
   A Breakfast at Tiffany’s:ティファニーで朝食を 60
   山を越えて                               62
   ひび割れた十字架                            64
   あなたの椅子                              66
   帰郷                                  68
   旅立ち・再び                              70
   The Sand Pipers:いそしぎ                72
   光る水                                 74
   リスト・愛の夢                             76
   夕暮                                  78
   ひまわりへのオード                           80
   早春                                  82
   あとがき                                84



    ぬかよろこび

   あら あのひと ニコニコしてる
   プロポーズしてくれるかしら
   きっと してくれるわ
   今度こそ 成功よ
   今までで一番 素敵な男性
   失敗回数 五回 今度こそ!
   一年 ひたすら めかしこむ
   一年 ひたすら ピンクの夢の中
   でも一年目 どこかへ消えちゃった
   電話しても駄目 手紙出しても駄目
   一切 音信不通
   きっと どこかの女にさらわれちゃったんだ
   帰って一人 悲しい酒を飲む

   子供がある日百点を取って来た
   あら この子 未は博士か大臣か!
   でも 次の日見てもいられない点
   あら ぬかよろこび

   あたしはいつも
   ぬかよろこび

   ぬかみそ こぬかあめ ぬかるみ
   ぬかみそ臭い女房 ぬかった

   あたしは ぬかと縁が切れない

 ライト・ポエムをまとめてみた、というだけあって肩の凝らない詩集です。紹介した作品も気軽に読めますが、でも内容は決して軽くはありません。「ぬかよろこび」は「ぬかみそ臭い女房」だけではなく男にも多いんです。「一年 ひたすら ピンクの夢の中」なんていつものことですからね(^^; 給料上がったかな? 会社の地位は上がったかな? なんて愚にもつかないことでも一喜一憂しています。「ぬかと縁が切れない」のはおんなじ。
 それにしても「失敗回数 五回」なんて、ちゃんと数えられるんだ!(もちろん作品上のことですけどね)。私は数えられないくらい多い(^^;




中村明美氏詩集『ねこごはん』
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2005.7.20
東京都葛飾区
ジャンクション・ハーベスト刊
1800
 

  <目次>
     T
   ねこごはん  6
   谷中にて  10
   十三夜   14
   家族  18
   アップルカフェ  22
   鎌倉にて  26
   その朝に  30
   私の鳥へ 34

     U
   腹筋運動のすすめ  40
   Dへ  42
   学枚  46
   アヴェマリア  48
   ナジャによせて  52

     V
   花  58
   レシピ   62
   津軽じょんがら節考  66
   蒼い幽霊  70
   ひとつの夏に  74



    家族

   たしかに
   ねずみを飼ったはずだ
   名を こじろう という

   きれいな歯ならび
   生ハムのような柔らかい耳
   白にちょんと黒の斑点
   まんまるで 豆大福とうりふたつ

   一週間で六グラム増えた
   朝起きると大きくなっている
   とうとう
   こじろうという表札のかかった
   切り株の中から
   出られなくなった
   山淑魚みたいだ
   あの 井伏鱒二の

   ひまわりの種を
   鼻で押し出す
   乾燥野菜を不味そうにかじっている
   さかな と
   ねごとをいったりする
   夜中に 自慢の歯を研いでいる
   あん あん と鳴いたりする

   大福もちは ケージいっぱいになって
   ある朝 娘のベッドを占領している
   娘はケージで眠っている
   牧草の寝床で

   たしかに
   ねずみを飼ったはずなのに
   いつのまにか
   やさぐれた猫になっている

   でも 日常ってこんなものだし
   複雑そうなものほど 単純だし
   思想って たいてい
   山椒魚だし

   猫でもねずみでも
   たいして暮らしに支障もないので
   そのまま みんなで
   暮らすことにする

 「ねずみ」が「猫」になっても「娘」が「ケージで眠」るようになっても「家族」なんだ、だって「日常ってこんなものだし」…。決して捨て鉢ではないけど「たいして暮らしに支障もない」と割り切れる、そんな著者の思いがよく現れている作品だと云えましょう。
 圧巻は「切り株の中から/出られなくなった/山淑魚みたいだ/あの 井伏鱒二の」というフレーズですね。それが「思想って たいてい/山椒魚だし」に巧く結びついています。この見方は凄い。確かに「思想」なんてものは、自分の考えに凝り固まって岩から「出られなくなった/山淑魚みたい」なものかもしれませんね。
 作品「谷中にて」では「草書で 話す」という詩句も出てきます。13年ぶりの詩集のようですが、言葉の表面的な軽さの裏にある、著者の確かに視線が伝わってくる詩集です。




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