きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.12
宮崎「西都原古墳群」にて
 

2005.7.19(火)

 昨日は世間では休日でしたが、弊社工場は出勤日。休日に働くというのは何か違和感がありましたね。で、今日は世間様も出勤日。違和感は…、やっぱりあるなぁ(^^; ホント、仕事に向いてない性格だと思いますよ。遊びが大好き(^^;;
 ま、真面目に働きましたけどね。特記事項なし!




隔月刊詩誌RIVIERE81号
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2005.7.15
大阪府堺市
横田英子氏 発行
500円
 

  <目次>
   論理回路              後  恵子(4)
   地図                当間 万子(6)
   花の香りは             平野 裕子(8)
   遠近両用の眼鏡は捨てましょうか   横田 英子(10)
   谷間の底から            松本  映(13)
   暗い夜空              藤本  肇(16)

   殿井善隆詩集『異色対談』特集      (17)〜(22)
    青木はるみ/明石裸人/相馬大/釣部与志/
    中西衛/中正敏/永井ますみ/水月とも/
   RIVIERE/せせらぎ     (23)・(32)〜(35)
    河井洋/
    横田英子/釣部与志/石村勇二/永井ますみ/

   あなたのポケット          戸田 和樹(24)
   花と太陽と月            殿井 善隆(26)
   死体のある家            正岡 洋夫(28)
   不安                森 かおり(30)
   それでもなお            石村 勇二(36)
   赤い怨讐              蘆野つづみ(38)
   昭和32年大阪府条例1号       河井  洋(40)
   パラドックス            安心院祐一(42)
   太宰的発想             梅崎 義晴(44)
   妙高尼の乞い         釣部 与志(46)
   弥生の昔の物語(34) なりわい    永井ますみ(48)

   受贈誌一覧                  (50)
   同人住所録                  (51)
   編集ノート
   表紙の写真・詩/横田英子



    論理回路    後 恵子

   大和言葉でやさしく
   「あしたですね」
   漢語でいかめしく
   「みょうにちですか」
   日本語は感情細やかな言語なのか
   あいまいさが漂う

   論理の回路は苦手で
   輪の中を駆け回る
   一段のあとに二段は積み上がらない
   ジャンプすることもできない
   同じ道を回りに回って
   海につづく拡がりを期待して

   宇宙のサイクルの中で
   塵の汚れを刻みつけて
   時はいつもの刻みを打ちつける
   生が訪れようと
   死が訪れようと
   地球の中の点の存在にうごめいて
   叫び声を響かせようとするが
   論理細胞は動かなくなった

 「日本語」の「やさし」さ、「いかめし」さ、「あいまいさ」を表現していますが、「一段のあとに二段は積み上がらない/ジャンプすることもできない/同じ道を回りに回って」いるという指摘は的を射たものと云えるでしょう。「論理の回路は苦手」だから、文法も短期間が変わってしまいます。例えば副詞の呼応の全然≠ヘ、本来全然〜でない≠ニ否定の意味だったのですが、今は強調の意と辞書にも出ています。もちろん文法で生きているわけではありませんから変っても構わないんですが…。でも、悪人が強い者という意味から悪い人に変るのに数百年、凄いが悪い意味から良い意味に変るのにこれも数百年掛っているのに対し、昨今の変り様は早すぎますね。情報伝達速度の違いと云ってしまえばそれまでですけど、「論理細胞は動かなくなった」ことが原因だろうと、そんなことを考えながら拝読しました。




詩誌『烈風圏』第二期6号
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2005.5.25
栃木県下都賀郡藤岡町
本郷武夫氏方・烈風圏の会 発行
非売品
 

  <目次>
   わらじ 深津朝雄  2
   波 高澤朝子 5
   友を見舞うの記 金子一癖斎 10
   節ちゃんの涙/自慢のライカ 三本木 昇 14
   冬虫夏草 瀧 葉子 18
   父 小久保吉雄 20
   手(手相を見た帰り道) 水無月ようこ 22
   古澤履物店 六 古沢克元 24
   風を捉える 白沢英子 26
   ある家 都留さちこ 28
   春を待って 坂本久子 32
   オレンジ色の太陽に想う 立原エツ子 36
   未来 柳沢幸雄 39
   梅の木見物 たのしずえ 42
   遊びの日/野の道を走る時/彼の日曜日 本郷武夫 44
   編集後記 48
   表紙写真 芽吹く 新井克幸



    梅の木 見物    たの しずえ

   水戸偕楽園の梅林には
   幹が ねじれている古木が
   たくさんあって おもしろい

   年を経るほどに
   ねじれを増すのは
   梅の木の持つ性質 プラス
   地球の自転のせい と聞いたことがある
   たしかに
   自転と同じ左回りだ
   あまり ねじり過ぎて
   裂けてしまい
   中が空洞になっている幹もある

   一日 ぐるりと一回転
   地球に付き合っていれば
   人間にも
   何か影響はあるのだろうか

   思いつくのは 心のねじれ
   そうか
   自転のせいだ

 「年を経るほどに/ねじれを増すのは/梅の木の持つ性質 プラス/地球の自転のせい」とは知りませんでした。事実かどうかは別にしても、おもしろいですね。それを「心のねじれ」に結びつけた最終連は見事です。「地球の自転のせい」で何もかも説明できるはずはないけど、人間の至らなさを地球のせいにしてしまえば救われるものは多いでしょう。それは決して逃げではなく、ひとつの知恵かな、と納得した作品です。




水無月ようこ氏詩集『花いちもんめ』
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2004.春
栃木県小山市
自家版
非売品
 

  <目次>
   遠ざかるもの 2
   わたしん家 4
   温泉の素 6
   六月に生まれて 7
   夏つばめ 8
   お花ばあちゃん 10
   花ほおづき 11
   盆おどり 13
   ふうせんかずら 14
   自転車が好き 15
   腹合わせのきんき 17
   へくそかずら 19
   南北戦争 21
   那須野が原 22
   ふるさと 23
    あとがきにかえて 24
    イラスト いそべやすこ



    南北戦争

   南部のO駅は 東京さ近いし
   此の頃家を建てる人たちは
   都会さ新幹線通勤してんだかんね
   建物だって格好いいし
   雪だってあんまし降んないから住み好いんだよ

   なにゆってんの 北部のN駅はねぇ
   皇太子ご夫妻と愛子さまが降りんので
   超有名なんだかんね
   河原〔ぬまっぱら〕湿原さ吹く風は
   野花が揺れる涼しさでエアコンとは違うんだ
   田舎だからって捨てたもんじゃないよ

   地元自慢がエスカレーターを
   上がったり 下がったり
   貶し合いさエスカレートして
   どこまで行くつもりなんだか

   あのさあ 世界ん中でもちっこい日本の
   そのまた四十七分の一の同県人同志が
   南北戦争してたらば他県の人に笑われっぺ
   ここいらで 下野〔栃木県〕の郷土料理
   しもつかれでも突っついて
   一息ついたら好かんべよ
   ほぉら お茶が入ったよ

 「ふるさとことば(方言詩集)」とサブタイトルがあり、手作りの美しい詩集です。栃木県は南北に長いので「南北戦争」ですが、これに近いことは何処にでもありますね。私の住んでいる神奈川県だと、さしずめ東西戦争≠ゥな? まあ、あまりそういう意識はありませんが、それでも時々、相模川を挟んでどうの、という話が起きることがあります。

 栃木県は好きな処で、何度か行っているのですが、作品のような方言にはなかなか出会いません。日本中どこでも標準化されてしまって、栃木県も「都会さ新幹線通勤して」いる人も多くなって、都市化されてしまっているのかもしれませんね。そういう面でも方言をきちんと伝える詩集の持つ意義は大きいと云えましょう。方言を楽しみながら拝読した詩集です。




丸山乃里子氏詩集『回転椅子』
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2005.7.20
宮崎県東諸県郡高岡町
本多企画刊
2000円+税
 

  <目次>
   野火 8
   雲雀 10
   汐干狩り 14
   影 18
   遊歩道 20
   甘い日差し 24
   振動 28
   散歩みち 32
   眠る女 36
    *
   回転椅子 40
   柏餅 46
   吉井さんと歩いた 50
   屋上から 54
   遺品 58
   しぼり染めの雲 62
   海岸にて 66
   魚網 70
    *
   九十九里浜 74
   カッ卜 78
   雀がホームに 82
   鳴き声 86
   廃業 90
   待つ 94
   歩道橋にて 98
   ヤモリ 102
   杉の匂い 106
   落日 110

   うで――あとがきにかえて 114



    うで――あとがきにかえて

   飲酒運転の男が対向車とこすれ合い、窓からぶら
   下げていた剥き出しの片腕を肘から切り落とされ、
   なお気付かずに一キロ程走り続けた、という話を
   或る本で読んで、忘れられずにいる。

   片手で運転を続ける男がブレーキを踏む様を何
   度も想像したりした。気づいたからブレーキを
   踏んだのであろう。恐れはどんな形で男へ襲い
   かかったのであろうか。
   腕がない、そういうことでか。
   腕がないのに気づかずに走っていたことでか。

    (夏は夜の中に陥ちこんでいたが、
     季節の明るさは空には未だ残っていた)
   とその本には書かれていた。

   腕が切り離された時に男は気づいていず、しば
   らくして気づいたその間の実際の分離とのずれ、
   彼にとって状況の切断は気づいた時点であったこと。
   その情景が強烈であった。

   今、私たちの時代の車はどの地点を走っているのか。
   繁栄の酔いの中。車窓から片手を……。
   或いは、もう対向車に切られて……。
   気づかずに走りつづけて……。

 紹介した作品は「あとがきにかえて」とありますから、本来ならタイトルポエムでも紹介するのが筋なんでしょうが、あまりにも印象深い作品なので、これを紹介してみました。
 「なお気付かずに一キロ程走り続けた」という記事は見た記憶がありませんけど、事実なんでしょうね。事実か創作かは別にしても、凄い話だなと思います。作品はそれをさらに「私たちの時代」に結び付けています。この最終連は見事です。私たちは今、「どの地点を走っているのか」。「或いは、もう対向車に切られて」いるのかもしれませんね。丸山乃里子という詩人にはそれが見えているのかもしれないなと感じた作品です。




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