きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.8.3 | ||||
馬籠「藤村記念館」にて | ||||
2005.8.15(月)
60回目の敗戦記念日。戦後生まれの私には口はばったく言えることは何もありませんが、少なくとも平和な60年だったことは感謝すべきでしょう。でも、ちょっと視点を変えると、わが国を基地として朝鮮戦争がありベトナム戦争がありました。現在はイラクに自衛隊が駐留する事態ですから、決して平和だったわけではありませんね。当時のベトナムに日本を攻撃する能力があったら、横須賀や嘉手納が爆撃されてもおかしくなかった状態だったろうと私は認識しています。日本の平和は、実はかなり危うい基盤の上のものだったのかもしれません。それでも平和を保たれたのは、ひとつには憲法九条があったからだろうと思います。平和憲法を持つ国を攻撃するには、国際的な糾弾を覚悟して、ということになるでしょう。
そんな、とりとめもないことを仕事の合間に考えて過しました。
○詩誌『波』16号 | ||||
2005.8.15 | ||||
埼玉県志木市 | ||||
水島美津江氏 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次> 題字 長谷川 忍
こころの河 葵生川 玲 2
自分を消す呪文 新延 拳 4
夏 カテドラルに佇んで 綾部 健二 6
巣 山田 隆昭 8
未完の風景 神山 暁美 10
居場所と文学とのかかわりについて 佐久間隆史 12
門番 秋元 炯 15
自己像 佐々木洋一 18
リリさんの音 長谷川 忍 21
アルプスだより 豊岡 史朗 24
「それぞれの美学」シリーズ15
=美しい風景との出逢いを求めて= 小川 和美 26
いま此処にいる私は 小川 英晴 30
終の棲家 村山 精二 34
開かれていた本が 水島美津江 36
後記 ダーティ・ウーマン−価値組− 美津江 40
同世代の輪のなかで 美津江 40
新年会風景 40
「波」のうねりに乾杯/波に乗って 綾部健二/神山暁美 41
未完の風景 神山暁美
サラダならスライスして二分の一
まるごとひとつで卵とじができる
カレーだと二個は必要
五個ずつネットにくるまれて
特売の百六十八円
玉葱が安かったら買ってきてほしい
出がけに父に頼まれた
老人会でのゲームに使うのか
ボランティアの景品か
三袋を買い物かごに入れる
男体山が西空を支えるこの地は
伊吹山を眺望む
ふるさとに似ている
共にくらし始めて四たびの秋
稲穂の波に風が見えるニュータウン
玄関わきの軒の下 いつのまにか
竹竿に吊るされて並んだ玉葱
父の記憶の
八十年を過ごしたふるさとの風景に
足りなかったもの
男体山(栃木県)・伊吹山(岐阜県)
題字も印刷所も変わって、新生『波』の第一弾です。水島美津江さんの個人誌ですが、私も毎号書かせてもらっています。
今号で紹介した詩は、散文的に書けば「伊吹山を眺望む/ふるさと」で「八十年を過ごした」「父」が、「男体山が西空を支えるこの地」で「共にくらし始めて四たびの秋」に「玉葱」を「玄関わきの軒の下」の「竹竿に吊る」して「並」べた、というものですけど、それが「父」にとっては「未完の風景」の穴埋めだったという作者の受けた衝撃が伝わってくる作品です。タイトルが実に見事に決まっています。おそらく精神的にも経済的にもなに不自由なく老後を送っている「父」が「未完」なもの、「足りなかったもの」に気付いた気持が、微笑ましくも物哀しくも伝わってきます。そして、それを見ている作者の精神の深さまで読み取ることができます。作者の代表作にでもなりそうな佳い作品だと思います。
○詩誌『詩風』11号 | ||||
2005.7.30 | ||||
栃木県宇都宮市 | ||||
詩風社・仲代宗生氏 発行 | ||||
300円 | ||||
<目次>
日曜日の庭から・他四編 あらかみさんぞう 1
八月の闇はしたたかに 金敷 善由 15
恵比寿ガーデンパレスにて 金子一癖斎 17
お春ちゃん 和田 恒男 15
<Book Review>
「兇牙利」の詩を読み解く
火炎のような究極の詩と詩人論
尾崎寿一郎著『逸見猶吉ウルトラマリンの世界』 和田 恒男 24
春 ガリオン船に乗って 綾部 健二 33
繊月のまち 仲代 宗生 37
編集後記
表紙写真 栃木県立中央公園 (宇都宮市睦町)
春 ガリオン船に乗って 綾部健二
謳うでもなく
嘆くでもなく
祈りの最初のフレーズを
思い出すこと
愛するものに近づくこと
これまでの歳月
これからの歳月
つかの間の
眠りをつらぬいて飛ぶ 海鳥
かぐわしい記憶だけが
ぼくたちをつくっている
おずおずと青い波をわけ
木のきしむ音をたてて進む
帆船のイメージは
もちろん ぼく自身だ
水夫たちの陽気なほほえみ
排水量は 五百トン
十六世紀の色あざやかな 幻影
あらたな水平線にむかう航海には
旅券も出国印も無用のはずだ
誰にも聞こえない
きみのこころ 水のささやき 海鳴り
気ままな風の軌道にまかせて
地球(ここ)を漂うのもいいだろう
いつの日か
ことばを湛えなおして
ついには 伝説のカリブ海へ
なすべきことは
月蝕のように忘れること
ねむりながら泳ぎつづけること
略奪すること きみを
ずいぶんとロマンあふれる作品だなと思います。「ぼく自身」を「帆船のイメージ」にして「誰にも聞こえない/きみのこころ」を聴き、「地球(ここ)を漂う」。しかも「なすべきことは」「略奪すること きみを」と云うのですから、略奪された方は有頂天になるかな(^^; 久しく忘れていたものを刺激された思いです。
作者は男性ですから条件反射的に「きみ」は女性と採っていますが、別の見方があるかもしれません。「おずおずと青い波をわけ/木のきしむ音をたてて進む」のは、私たちの人生そのものと捉えることも可能でしょう。「略奪する」のは、ことによったら自分自身? まあ、そこまで読むのは読みすぎというものでしょうけど、そう読ませる力を持った作品と云えましょう。「なすべきことは/月蝕のように忘れること」というフレーズも佳いですね。本来の詩らしい詩を拝見しました。
○会報『かわせみ通信』62号 | ||||
2005.8.6 | ||||
神奈川県小田原市 | ||||
かわせみ合唱団 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
巻頭言 希望を創造しよう 1
詩 星ものがたり 貞松瑩子 2
短歌 柚子に寄せる 貞松瑩子 2
俳句 母に 貞松瑩子 2
風に/日日の名残りに 貞松瑩子 3
詩を寄せてくださった方の御紹介 3
詩 夢/いつの日も 橋爪 文 4
地雷のキモチ 坂尻晃毅 5
歌が聴こえる 青 英権 6
地雷のキモチ 坂尻晃毅
私を恨みますか 少年よ
吹き飛ばされたあなたの片足よ
私を恨みますか 青年よ
ちぎれ飛んだあなたの肉片よ
私を恨みますか 大地よ
いのち萌えるはずのあなたのふところよ
ひとよ すべてのひとよ
私たちは 生まれるべくして生まれたのか
あなたがたが われらの歴史と呼ぶ
その特別な時の流れのなかで
神の次に
賢いはずのあなたがたが
永い時間をかけて成長してきたはずのあなたがたがなぜこのようなものを…
答えてよ すべてのひとよ
たくさんの花の種子のかわりに
こんなにも多くの私たちを
こんなにも多くの
悲しみと憎しみの種子を植え付けた
そのわけを
ひとよ ひとよ 私たちは恥ずかしい
地中に潜み うずくまり
あなたがたの
牛の 馬の けものたちの
手や足や脳味噌を吹き飛ばす瞬間を待つ
ただそれだけのために存在する
自分たちがおぞましくてたまらない
生まれ変わることが許されるなら
幼木として
植物の種として
土に
人に
愛されるものになりたいと
祈るよりほかに術がない
この作品は記憶していますから、ことによったら拙HPですでに紹介しているかもしれません。2度目だったらごめんなさい。
「地雷」になった「キモチ」で書かれています。地雷に脳があり感情があったら、まさにその通りでしょう。「私たちは恥ずかしい」という言葉は、そのまま「ひと」に返さなくてはならないでしょう。忌み嫌われている地雷という視点で書く。発想もユニークですし、内容も考えさせられる秀作と思います。
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