きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.8.3
馬籠「藤村記念館」にて
 

2005.8.19(金)

 午後から東京本社に出張してきました。製品の使われ方が変ってきて、従来の性能では問題があると販売部門から指摘されましたので、製造部門の責任者と一緒に出向きました。こちらの仕様外の使われ方ですから、責任が持てないと突っぱねることもできますけど、ほぼ独占状態の市場ですから、そんな無碍なことは言えません、、、って、実はさんざん突っぱねてきたんです(^^; でも、いつまでも製造側の都合だけでモノが言えるわけでもありませんから、ここは市場のニーズに合わせようと考え直しています。

 問題は製造機が要求される性能を出せるか…。理論的には可能ですが、現場が納得しなければ良いものが出来ません。それで現場責任者と共に要求を聞いた次第です。設備改造やオンライン測定器の設置もやるようですから、かなり設備投資が必要です。ま、この分野では何10年もコンスタントに利益を上げさせてもらっていますから、そろそろ市場に還元しても良いかな、とお互いに合意し合いました。で、販売部門も納得してくれて、一件落着。

 仕事が前向きなときのお酒は旨いですね(^^; 帰りは八重洲地下街の呑み屋さんで乾杯。もちろん銘酒「獺祭」の置いてある店です。彼はビール党なので興味がなかったようですが、無理やり呑ませたら「これは旨い!」 当り前だ。じゃあ、呑むのかと思ったら、返事は「呑まない」。なんで!? 「呑み出すとキリがなさそうだから」。うん、確かに自制心が求められる酒ではありますなぁ。自制心のない彼には勧めないで、自制心のかたまりである私がひとりで堪能しました(^^;;;



個人誌『伏流水通信』16号
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2005.8.10
横浜市磯子区
うめだけんさく氏 発行
非売品
 

  <目次>
   
   黒い部落……………………長島 三芳 2
   いのち一つ……………   〃    3
   病室にて………………うめだけんさく 4
   蜥 蜴…………………   〃    5
   蝶の死…………………   〃    6
       *
   フリー・スペース(15)
   旅の終わりに………………兵藤 和男 1
       *
   <詩集紹介>
   生と死の狭間…………うめだけんさく 7
   後 記………………………………………9
   深謝受贈詩誌・詩集等……………………9



    いのち一つ    長島三芳

   波ひとつない
   東京湾の深い秋の夜
   夜釣りの船で
   銀色の大タチ魚を釣り上げたとき
   一瞬、鋭い魚の歯で指を傷つけた
   魚でも一つの命が消えるとき
   必死に抵抗するこの鋭い力とは

   人間もそうか
   敗戦、シンガポール刑務所
   誤審により刑死した
   木村久夫の最期の歌

    おののきも悲しみもなし絞首台
    母の笑額をいだきてゆかむ

   詩友山本太郎
   少年のころ庭先で小さな昆虫を殺そうとしたとき
   祖父の北原白秋に
   ひどく太郎は叱られたと言う

   いのち一つ
   死はいつもこうした形で
   繰り返し繰り返し実存する
   そして私の指先には
   いまも銀色の大タチ魚に噛まれた傷が
   まだ消えずに残っている

 それぞれの「いのち」の具体性が良く伝わってきます。「大タチ魚」「木村久夫」「小さな昆虫」という、相互に何の関係もない命は「死はいつもこうした形で/繰り返し繰り返し実存する」のだという共通性を感じてしまいますね。「いのち一つ」という言葉の持つ重みを考えさせられた作品です。




詩誌『獣』60号
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2005.8
横浜市南区
獣の会・本野多喜男氏 発行
300円
 

  <目次>
   <詩>
   道・他2編………………………ひらた きよし 2
   生 傷……………………………新 井 知 次 8
   <エッセイ>
   ・勝手読み記……………………新 井 知 次 10
   ・後 記…………………………………………… 12



    生傷    新井知次

   お前はいい顔ばかりを晒しているので
   頭蓋のなかは生傷でいっぱいだ
   美しい人のどんな行為にも鷹揚に笑ってみせる
   仕事は落ち度なく気配りを見せて
   暮らしを守ろうとして暮らしから遠くなる
   駅から吐き出される人の流れに旨く乗ろうとするが
   なぜか前に進まないのはその時生傷が痛むからだ
   流れに争う格好の悪い背中は
   あるいは抵抗の姿に見えるのだろうか
   それならそれでお前はその影を引きずって
   傷に絆創膏でも貼って暮らしていくしかないのだ

   自分のうんちを五分間いや一分でも
   目を反らさず凝視できるだろうか
   こんな設問はしかし間違っている
   自分自身がどっぷりと汚物に浸っているから
   武器が砂漠の国を飛びかっていても
   毎日暖冷房のきいた電卓に乗っている
   タンス レジスタンス 箪笥のなかの
   詰め込んだ思いが時に溢れ出てしまうと
   樟脳臭い毒消しの手がお前の頭を叩いて
   デモクラシーの力だと 暮らしを狭くする
   油が欲しいと迷彩服を送り出しているお国柄の
   お前は汚物の海に溺れている一滴の汚物か
   生傷の養生をさりげなくしている

 「暮らしを守ろうとして暮らしから遠くなる」というフレーズに魅かれています。なぜ「仕事は落ち度なく気配り」してやっているかと云うと「暮らし」のためです。しかし、そうすることでどんどん「暮らしから遠くなる」というパラドックスに陥っています。いわゆる文明先進国が抱えている基本的な問題を、この1行は見事に言ってのけていると思います。そんな先進国の実態は「自分自身がどっぷりと汚物に浸っている」状態。「生傷」は個人だけでなく国家という点でも同じだと教えてくれた作品です。



詩誌『衣』5号
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2005.8.20
栃木県下都賀郡壬生町
森田海径子氏方「衣」の会・山本十四尾氏 発行
700円
 

  <目次>
   かぐや姫のように    金屋敷 文 代  二
   鳥葬          大 原 勝 人  三
   つばめの寸志      豊 福 みどり  四
   花嫁          小 森 利 子  五
   電柱男         葛 原 りょう  六
   体温          四 宮 弘 子  七
   エゴ          仙 波   枕  八
   雨あがり        岡 山 晴 彦  九
   紫陽花染め       相 場 栄 子  一〇
   晩夏          山 田 篤 朗  一一
   電話          鶴 田 加奈美  一二
   草原の星        おしだ としこ  一三
   水芭蕉の里       田 村 あ い  一四
   風通し         上 原 キ イ  一五
   
Footsteps the footfall 岩 下   夏  一六
   コントローラ      森 田 海径子  一七
   潤声          山 本 十四尾  一八
   後記                   一九
   同人近況                 二〇・二一
   同人詩集紹介               二一
   同人住所録                二二



    かぐや姫のように    金屋敷文代

   羽音が消えた寡黙の街

   カーテン越しに
   闇をすくいあげている
   スプーン形の月
   どこまでも無限な世界
   に
   刺きさしている月

   窓から
   わたしの寝床を俯瞰する
   ―そろそろ月におかえりか?

   未知数の解答をもとめて
   生きています
   小数点ばかり
   刻んで生きています
   あきれるほど
   苦手な世界という名の数式

   こんやは
   月とお話します
   まだ
   童話が信じられないほどには
   世界に飽きてはいないから

   月が語りだす
   ―宙の始源は詩だった―
   そんなところから
   わたしたちは
   ひとあし ひとあし
   堕ちてきた痕跡が
   入れ墨されている細胞
   かぐや姫は人工衛星に乗り
   ライカ犬と行方不明
   そんな話題が流布している月

 「小数点ばかり/刻んで生きています」というフレーズが佳いですね。堂々と整数を歩む人生ではなく、小さく小さく小数点を刻む。作者の人となりを現す詩句と云えましょう。最終連の「―宙の始源は詩だった―」という「ところ」から「堕ちてき」て「入れ墨されている細胞」が「わたしたち」だという設定もおもしろいですね。柔らかい頭脳を持ち、見るべきところはキチンと見ている作者の姿勢を感じた作品です。




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