きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.8.3
馬籠「藤村記念館」にて
 

2005.8.22(月)

 先週の出張報告を書いて、今週末の出張で使う書面を準備して、出張絡みの仕事ばっかりでした。たまの出張は気晴らしになって良いんですが、こう毎週続くと正直、疲れますね。ま、それが私の仕事と割り切ってはいますが…。実験室にこもって、好きな研究をするという、私の時代は終ったのかもしれません。




隔月刊詩誌『東国』130号
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2005.8.1
群馬県伊勢崎市
東国の会・小山和郎氏 発行
500円
 

  <目次>
     ●詩       水になる日に 2 金井裕美子
             この春の終りに 4 田口三舩
           ほのかだ/墓掘り人 6 高田芙美
              振り向いてよ 8 須田和子
                かまきり 10 斎藤光子
            癒し警報発令の朝 14 福田誠
                  義歯 16 大橋政人
               夕食の準備 18 中澤睦士
               うぐいすと 21 渡辺久仁子
              つくし/樹氷 24 掘江泰寿
                  工場 28 小保方清
                 海鳴り 30 芝根南
            足尾/斎場(にわ)32 青木幹枝
              さらきのおゆ 54 江尻潔
               美しき夜桜 55 若宮ひとみ
               大地の予告 58 山形照美
          如月にそうろう/根雪 60 遠藤一夫
                山の学校 62 野口直紀
               最後の闘い 64 柳沢幸雄
                  就寝 66 古沢克元
                  胎盤 68 関口将夫
           樹 いくつもの風が 70 本郷武夫
              吉凶の四つ角 72 愛敬浩一1
                  氷雨 74 青山みゆき
     ウェンデイ・ローズ詩篇〈5篇〉 75 青山みゆき・訳
             少年のゆりかご 86 森ノ坂一詠
               ふるえる木 89 川島完

     ●外接円 仲間褒めからの羽脱を 38 諌川正臣
   ●針の穴新川和江詩画集『人体詩抄』 43 大橋政人
         木坂涼詩集『刺繍日記』 44
  木坂涼エッセイ集『ベランダの博物誌』
        岩本勇詩集『東京生活者』 45
        鷲谷峰雄詩集『木鼠の話』 47 川島完
        房内はるみ著『庭の成長』 48
    林桂評論集『俳句●彼方への現在』 50 小山和郎
       柴田基孝著『別の場所から』 51
         松林尚士著『現代秀句』 52
               ●会員名簿 37
               ●あとがき 92
                    題字 山本聿水
                    装画 森川e一



    義歯    大橋政人

   義弟とか
   義母とか
   生きていると
   血のつながってないものが
   だんだん増えていきますね

   義足とか
   義眼とか
   カラダの中にも
   そういうものがあって

   それから
   義歯なんて
   ギシギシ言いながら
   口の中に入ってきます

   義兄は昨年死にましたけど
   義歯は死にません

   病院のベッドの横の
   コップの中に置いてきてしまったので
   通夜での死顔が
   少し貧弱でした

   生きていると
   だれでも
   口の中に
   血のつながっていないものが
   どんどん増えていきますね

   血のつながっているものを
   磨く手間が少なくなって喜んでいても
   血のつながってないものを
   磨いたり洗ったりする作業が増えていくのだから
   同じことです

 「義」がつく言葉の面白さを感じる作品です。それも「血のつながってないもの」と云われると、なるほど、と納得してしまいます。そこまでは注意深く辞書にあたったり意味を考えたりすれば、ことによったら私でも行き着くかもしれません。しかし、最終連までは無理でしょうね。結局は「同じこと」だという洞察力には敬服します。そこまで行かないと詩としては中途半端になってしまうということを教えられた気がします。ちょっとニヒルな感じも受けますが、「通夜での死顔が/少し貧弱でした」などのフレーズを見ると、その奥にある作者の人間を見るあたたかさも感じた作品です。




隔月刊誌『新・原詩人』創刊号
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2005.8
東京都多摩市
江原茂雄氏方 新・原詩人事務所 発行
200円
 

  <目次>
   心に残る2つのこと 羽生康二 1
   詩のこころをありがとう――井之川さんのこと 中原真理夫 1
   人は来たり また去る 北山 悠 2
   追悼 井之川巨 長谷川修児(転載) 2
   「反戦非戦」の詩人――井之川巨を偲ぶ 暮尾 淳(転載) 2
   井之川巨――戦後のプロレタリア詩人 西 杉夫(転載) 3
   詩 アローカナ 飯嶋武太郎 3
     明日の天気は 畑 章夫 3
   句 山野 治 3
   詩 また夏が来て 萩ルイ子 4
     春 羽生槙子 4
     落ち葉 井之川けい子 4
     ギシギシ ガタゴト 橘 安純 4
     新・治安維持法 山田塊也 4
   川柳 史 4
   読者の声 5
   事務局より 6



    追悼 井之川巨    長谷川修児

   半年前に
   はずむまりのように母がいってしまい
   まだ 気落ちしているぼくに
   つぎつぎに訃報がとどき
   今度はあなただ
   はじめて出会った違い日
   あなたの顔 話振り
   あたたかくゆたかにあなたはいた
   かきしるす文字
   一画一画から伝わってくる日の光りのような文字
   祈りにも似た
   文字がかかれることはもうない
   ふと顔をあげると目の前に乳母車がいた
   満面の笑みのみどり児に思わずぼくはたじろいだ
   一瞬
   未来のかたまりの前にひろがる時代が見えた
   風が吹いた
   眼鏡をひからせてあなたが通りすぎた
   あなたからの最後の手紙を残して

 この3月に71歳で亡くなった井之川巨さんがやっていた誌『原詩人通信』は、120号をもって終刊となりました。その井之川さんの志を引継ぎ、新しく創刊されたのが本誌です。文学の同志意識に敬意を表します。
 そんな経緯から創刊号は井之川さんの追悼号の観を呈しました。紹介した詩はそんな中の作品で、故人に対する親愛の情が色濃く出ていると思いました。井之川さんとはお会いしたことはありませんが、その人となりが良く出ていると云えましょう。写真でしか拝見したことはありませんけど「あたたかくゆたかにあなたはいた」「一画一画から伝わってくる日の光りのような文字」というフレーズに井之川さんの大きさ、あたたかさを感じています。
 『新・原詩人』の今後のご発展をお祈りいたします。




季刊詩誌『天山牧歌』68号
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2005.7.31
北九州市八幡西区
秋吉久紀夫氏方『天山牧歌』社 発行
非売品
 

  <目次>
   詩 種を撒く者 昌輝(中国) 秋吉久紀夫訳 1
   悪魔の微笑み―日本軍の生物化学兵器― 秋吉久紀夫 2
   中東イスラム圏の詩(三) ハサン・ホザンナの詩(イラン) 秋吉久紀夫訳 15
   詩 マドリードのフラメンコ 秋吉久紀夫 16
     洗濯 他一篇 稲田美穂 18
   受贈書籍 19
   編集後記・身辺往来 20



    マドリードのフラメンコ    秋吉久紀夫

   スペインと日本との時差はマイナス八時間、
   だとすれば、マドリードの午後九時とは、
   東京では雲間から東方紅
(しののめ)の射す午前五時。
   でも、ここではやっと夕闇の漂い来る黄昏の頃、
   路地に面した家々の前には人々の団欒の顔。

   今宵、わたしの目指すタブラオは、
   フラメンコを見せるレストランのことで、
   アトーチャ通りの南側地区の一角にあった。
   舞台を取り囲む座席は、明かりもない
   薄暗がりなのに客の眼は鱗のごとく燦
(きらめ)いている。

   突如、ドラムがひとしきり鳴り響くと、
   一斉に綺羅星
(きらぼし)のような天女たちが舞い降りた。
   どれもみなみごとな漆黒のながい頭髪を垂らし、
   やや日焼けする皮膚に、際立つ白い歯。
   明らかにわたしたちと同種の東洋人の末裔だ。

   床を連打する激しいタップと翻すスカートは、
   アレキサンダー大王の古代から幌馬車に乗り
   永遠の住居を求める天涯への流浪の旅路と、
   どんな弾圧もどんな虐殺も、真の自由の前には、
   まったく楔
(くさび)にも成り得ないという命の叫びか。

   今ではロマ族と自称するかつてのジプシーの
   言語学的原点は、カラコラム山脈の南麓、
   インダス河上流の奥インドの西北が有力説。
   見よ、彼女らの肌から噴き出す強烈な情炎を。
   あれは絶対知のロマも人間だという直言なのだ。
                   (2005・7・30)
    注
     1、ロマ族の虐殺でもっとも被害甚大だったのは、第二次世界大戦中、ナチスドイツ
      によるポーランドのアウシュヴィッツ収容所で執行された大量虐殺事件(ホローコ
      ースト)で、六〇〇万のユダヤ人が殺害されたが、当時その場所で六〇万人の旧称
      ジプシーが殺害きれていたことは余り知らされていない。
     2、「ロマ」(Rom)の原義は、ロマ詣で「人間」という意味で、ジプシー(Gy
      psy)という英語は、「惨めな人たち」という意味である。

 「明らかにわたしたちと同種の東洋人の末裔だ」というフレーズのせいかもしれませんが、「ロマ族と自称するかつてのジプシー」を見る眼の暖かさを感じる作品です。注にある「
当時その場所で六〇万人の旧称ジプシーが殺害きれていたことは余り知らされていない」という言葉も読者がジプシーの置かれた立場を理解するのに役立っていると思います。「言語学的原点は、カラコラム山脈の南麓、/インダス河上流の奥インドの西北が有力説」というのは、作者の職業柄必要なことなのかもしれませんが、この詩句によって、単なる旅行記ではないことも判ります。ただの観光ではなく、こういう視点を持った旅行をしたいものだと思った作品です。




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