きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
   050803.JPG     
 
 
 
2005.8.3
馬籠「藤村記念館」にて
 

2005.8.23(火)

 午前中は部品メーカーさんと打合せをして、午後からは別件で設備に取り付ける測定器の現場説明に立ち会って、久しぶりに化学工学屋らしい仕事をしたかなぁ。化学屋でもない、機械屋でもない、でも両方のセンスが必要という面白い分野が化学工学だと思っていますが、その分野にしては地味な仕事です。本来は装置産業の大型設備設計が面目躍如というところでしょうけど、ま、そういう小さい仕事でも楽しめます。発注したものがどんな形で仕上がって来るか、それが楽しみなんです。なんか、ウキウキとした一日でした。




詩誌COAL SACK52号
     coal sack 52.JPG     
 
 
 
 
2005.8.25
千葉県柏市
コールサック社・鈴木比佐雄氏 発行
500円
 

  <目次>
   [詩]
   果て        渋谷卓男  2  肌ねむり       海埜今日子  35
   海峡        加藤 礁  3  ある日/急速に解放された/シッポのよ
   決断の丘      浜日知章  4  うな〜岡本太郎へ〜    港敦子  36
   I先生の他界    小島禄琅  5  子どものためのおばさんの詩
   ルサンチマン    埼村久邦  6             水埼野里子  37
   稲妻と裁断   たかぎたかよし 7  着物で暮れる      吉沢孝史  38
   チイサンヤオ    小松 紫  8  [翻訳詩]
   蛍        柳生じゅん子 10  零          鳴海英吉
   れじすたんす    佐相憲一  11            水崎野里子訳  40
   水と星と友ヘ    崔 龍源  12  人は永久ならず ヴァレリー・アファナシエフ
   今にして僕は駄目にんげん                 尾内達也 訳  42
           辻元よしふみ  13  [詩]
   オール・プリーツ  山本倫子  14  夏の死者        本多 寿  43
   静安の時      溝口 章  15  笑いながら行く     山本奉生  44
   夏の曲線      山本聖子  16  祭りのあとからの祭り 鈴木比佐雄  46
   木犀        青柳晶子  17  八千代市のタンポポ
   うつくしい部屋   淺山春美  18
   祈りの花を     岡崎 葉  19  [エッセイ、書評、詩論]
   嶋へ       田畑惠美子  20  もうひとつの街     李 美子  48
   海の贈りもの    大掛史子  21  月光丸(げっこうがん)  淺山春美  50
   泥と雨のハーフ   石川敬大  22  口語会話体とライト・ポエムの可能性
   ミイラと少女と二羽のスズメ                 水埼野里子  52
             朝倉宏哉  23  荒涼について      倉田良成  56
   和らぐ       遠藤一夫  24  生の深奥をさぐる現代の夢幻能    60
   探しに      曽我部昭美  25              大掛史子
   道すがら     平原比呂子  26
   つながる      下村和子  27  [批評]
   仮面の貌     宮田登美子  28  『春と修羅』の誕生(3)鈴木比佐雄  62
   曲馬団       倉田良成  29
   森の住人たち(晩秋)岩下 夏  30  戦後詩と内在批評23 鎮魂詩の詩史  66
   エレジー、路上追白 葛原りょう 31  ―與謝蕪村の「若さ」と宗左近の「始源」
   流亡のひと    星野由美子  34              鈴木比佐雄



    れじすたんす    佐相憲一

   高熱でだるくても
   彼女はまわります
   ハア ハア ゼエ ゼエ
   かぜの息荒く
   それでも
   彼女を信じる命があるから

   排気ガスにやられても
   彼女は自然体
   ガンガンガンガン
   車の音に頭を痛め
   それでも
   彼女だけが頼りの命のために

     うみがめのあかちゃんがおおうなばらへ
      <ひろいなあ>
     おらんうーたんのあかちゃんがもぐもぐもぐ
      <おいしいなあ>

   爆弾に穴あけられても
   彼女はまわります
   核実験場にされても
   彼女はまわります
   金もうけに荒らされても
   彼女はまわります
   殺されても殺されても
   こどもたち
   希望のれじすたんすが愛らしくすすみます
   うふふふふ ははははは

   彼女は夢見るものの味方です

   ワールドカップは オリンピックは
   日の丸よりも星よりも
   どんな飾りの旗よりも
   地球女史
   彼女を応援したいです

   ほら
   じわじわと 次々と こんなにも
   サポーターがホモサピエンス界にも

   オーレ!

  かくめいは静かに準備されています

 「彼女」とはいったい誰かと思ったら「地球女史」だったんですね。その彼女が「爆弾に穴あけられても」「核実験場にされても」回り続けるのは「彼女を信じる命があるから」、「彼女だけが頼りの命のため」なのだとするところは一般的かもしれませんが、「彼女は夢見るものの味方です」「かくめいは静かに準備されています」という視点は新しいと思います。それを環境保護という観点で読み取ることも出来ますが、作品からはもうひとつ深いものが伝わってきます。おそらく「れじすたんす」というタイトルから受ける印象なのでしょう。いずれにしろ私も「彼女を応援したい」と思った作品です。




村田正夫氏著『詩のある人生 潮流詩派の50年
     shi no aru jinsei.JPG  
 
 
 
 
2005.8.15
東京都中野区
潮流出版社刊
2500円+税
 

  <目次>
   潮流詩派前史(1)  8             東京の気象の詩と青春
    個人誌『Kurosio』創刊        ぼくらの戦争/敗戦/戦後
    高校文芸部誌『文草』創刊          ベトナム反戦
   潮流詩派前史(2)  16           潮流詩派の一〇年 100
    『律動』(のちに(黒潮)と改題)創刊    戦後二〇年/創刊一〇年
    『早稲田詩人』創刊             風刺詩運動の始まり
   潮流詩派前史(3)  24           新宿・反戦そして風刺 112
    『黒潮』一七号から詩誌を目指す       詩画展・朗読会も平行して
    『黒潮』二六号から社会性を目指す      現代の風刺詩
                         朗読・沖縄・金芝河 124
   『潮流詩派』創刊 36              ポエトリー・アト・ニュージャズ
    一九五五年前半               沖縄再発見
   『黄色い骨の地図』刊 48            金芝河死刑宣告に抗議
    一九五五年後半              元号/日の丸/君が代 137
   社会性なるものを操る 60           空襲・疎開・敗戦・天皇
    草創期の動きとして             小熊秀雄・山之口漠・加賀谷春雄
   六〇年安保前後 72             『潮流詩派』一〇〇号 149
    海外詩特集と『列島論』連載         チャップリン死す
   戦争期の少年 84               詩人と短歌
  ------------------------------------------------------------------------------
    村田正夫                  関根弘追悼
   女の詩群 161                 潮流詩派四〇年
    鶴岡政男 麻生直子            人間縦断の詩群 223
    ポエムセクション(サンプラザ)       老死衣食住生学職婚
    村田正夫初期詩篇              二〇世紀末から
   男の詩群 173                二一世紀へ! 236
    戦争の匂い                 靖国
    8・15の意味                 テロ
    潮流詩派三〇年               アフガン詩篇
   地名人名の予感 185             愛国無残への道 249
    旅の詩(国内・海外)            イラク詩篇
    地名の背景                 解放60年追悼式典
    人名の意義                小さな執念 261
   砂漠の戦争 198                戦後60年/潮流詩派50年
    戦争と平和
    ソウル詩篇                あとがき 266
    カランバ俘虜収容所詩集
   列島縦断の詩群 210             カバー画 村田正夫詩集『東京の気象』
    奥尻島小学生詩集                       挿画 豊田一男



    秋夜    村田正夫

   秋もなかばをすぎたので夜が長くなった
   深くなった 寒くなった たくさん鳴いてい
   た虫の数も少なくなり 庭に出ても わずか
   に 二、三匹の虫が鳴いているだけだ
   北斗七星はどこだろう
   南ではあつい戦争なのに ここは静かだ 心
   細くなるほど静かだ
   暗くて良くて静かで寒い夜だ

 タイトルの通り、1955年創刊から50年に及ぶ『潮流詩派』の歴史を紹介した本です。1冊1冊の内容・特集がダイジュストされていて、そのまま日本の戦後詩の系譜となる本と云えましょう。戦後詩研究には欠かせない1冊です。
 紹介した詩は著者の最初期に位置する作品で、本著の「潮流詩派前史(1)」に収録されています。1944年に旧制中学1年のとき作文として提出したものですが、先生から「これは詩だな」と言われて、初めて詩を意識したという記念碑的な作品です。そのとき著者は12歳。小学校3年生で文集に詩「赤い花」を載せたとありますが、実質的には詩人の出発となった作品と言って良いでしょう。

 1944年といえば日本の敗色が濃くなった頃。「南ではあつい戦争なのに」というのは、サイパンの全滅、マリアナ沖海戦、インパール作戦、レイテ沖海戦を指すようですが、それは戦後になって知ったことのはずで、12歳の少年には知るよしもなかったと思われます。それにも関わらず「静か」に透視する眼を持っていたと考えられ、詩人としての素質がすでに備わっていたと思います。
 本著は『潮流詩派』の編集者としての視線を第一に書かれていますが、ところどころに表出する村田正夫という一詩人の眼も面白く、それが大きな魅力であると思います。2005年お薦めの1冊です。




平岡淳子氏詩集『クリップ』
     clip.JPG     
 
 
 
 
2005.8.15
神奈川県鎌倉市
かまくら春秋社刊
1400円+税
 

  <目次>
   クリップ  10
   どうぞ  12
   湿度  14
   ビオラ  16
   ききとれないことば  18
   花のような  20
   いのちがけ  22
   それから  24
   ひだまりに  25
   問いかけ  26
   くちずけ  28
   光  30
   ほかのだれかに  31
   いちにち  32
   碁  34
   くちべに  36
   たいせつ  38
   むすびなおす  40
   瞳  42
   いのち  44
   おもいで  45
   試着  46
   わがまま  47
   はんぶん  48
   ちからもち  50
   わたし  52
   傾斜  53
   当日券  54
   着陸  56
   あらあら  57
   山奥  58
   恋愛  59
   あなた  60
   地下室  62
   そばにゆく  64
   福袋  66
   てのひら  68
   まちあわせ  70
   鳩  72
   ことり  74
   枇杷  76
   つま先  78
   水性  79
   となり  80
   指先  82
   くつ  84
   まばたき  86
   夏  88
   頬  90
   手紙  92
   だいじょうぶ  94
   船  95
   延期  96
   ひとり  98
   おとな  100
   ものがたり  102
   ふたり  104
   むすびめ  105
   沈黙  106
   真夜中  108
   声  110
   よあけまで  112
   ひとくくり  114
   女  116
   しあわせ  118
   いや  119
   種  120
   泪  122
   落下  123
   つよがり  124
   ことば  125
   あした  126
   ざーっ  128
   はがき  130
   夜  132
   緑  133
   すきま  134
   レッテル  135
   押し花  136
   あじさい  137
   請求書  138

   あとがき 平岡淳子  141
   装幀・画 やなせたかし



    クリップ

   散ってしまいそうな
   おもいを

   消えてしまいそうな
   おもいを

   風に吹かれるまえに
   クリップでとめる

   花束のように
   美しくはないけれビ

   心にいつまでも咲く
   詩の花であったらいい

 やなせたかしさんが絵を提供しているという豪華な詩集です。紹介した詩はタイトルポエムで、かつ巻頭作品。「クリップ」という小さな物の役割へも心配りができる、著者のやさしさを表出させている作品と云えましょう。恋愛詩が多く収録されていますが、少女から大人の女への軌跡も読み取れて、久しぶりに女性の心理というものを考えさせられました。やなせさんの絵とともに楽しく読める詩集です。




   back(8月の部屋へ戻る)

   
home