きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.8.5 長野
戦没画学生慰霊美術館「無言館」
 

2005.9.5(月)

 9月最初の月曜日は特記事項なし。特記と言えるのは、午前8時半という早い時間にメーカーさんと打合せしたことぐらいかな。




個人詩誌『玉鬘』33号
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2005.8.9
愛知県知多郡東浦町
横尾湖衣氏 発行
非売品
 

  <目次>
   ◆詩 「知多狐」
      「毛氈苔」
      「待宵草」
      「柿蘭」
      「野花菖蒲」
   ◆御礼*御寄贈誌・図書一覧
   ◆あとがき



    待宵草

   いつのころだつたか
   月見草は白い花だと知った
   絹のような
   うすい花びらを持った

   月の欠片のような
   あの淡い黄色い花は
   待宵草という

   その花こそ
   少女のころ月見草だと思っていた

   宵を待って
   四枚の花びらが夢見るように
   微かに音を立てて開く
   そして月を見上げる

   思う人を
   じっと待っているかのように
   一夜を過して

   ひっそりと咲いた花は
   昼にはしぼんで赤くなる

   あの花は待宵草
   わかってはいるのだけれども

 ちょっと気障な言い方をすれば、これこそ美しい誤解≠ニ言えるのかもしれませんね。私自身は花には門外漢で、誤解以前の問題で、「月見草」も「待宵草」も区別がつきません。
 それはそれとして、花を見る作者の眼は確かだと思います。「宵を待って/四枚の花びらが夢見るように/微かに音を立てて開く/そして月を見上げる」、「ひっそりと咲いた花は/昼にはしぼんで赤くなる」。これらは花好きには当然の感覚なのかもしれませんが、私にとっては軽い衝撃です。繊細な詩人の魂に触れた思いのする作品です。




詩誌『流』23号
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2005.9.9
川崎市宮前区
宮前詩の会 発行
非売品
 

  <目次>
   詩作品
    竹野 京子 シクラメンの忍耐力 チェロ幻想 ひとりはユカイ 2
    中田 紀子 六月 穴を通る 桜スィックネス 8
    西村 啓子 寝太郎の国 新型テレビ 天空のさくら 14
    ばばゆきこ 笑えない 湯あたり桜あたり 不安症 20
    林  洋子 ねじ木 角榛 26
    福島 純子 ひとりだけの音 津波の記憶 30
    山崎 夏代 鳩の伝説 木は 戻れない旅 36
    山本 聖子 スネークハウス 隣人A 三連休 42
    麻生 直子 溶ける足 48
    島田万里子 他者の器 円グラフ ファスナー&ボタン 60
   海外の詩・エッセイ
    シルビア・プラス「あなたは」 中田紀子訳 56
    福原 恒雄 確かな言葉は熱いのだ 島田万里子詩集『緋の器』を読む 58
    山本 聖子 奔流 −現代詩の行方−「4 言葉を掬う」 62
    西村 啓子 最近の詩集から 64
    山本 聖子 最近の詩誌から 66
                        会員住所録 編集後記



    寝太郎の国    西村啓子

   それはキケンな男だった
   ニコニコとひじ枕で寝そべっていても
   腹の中は分からなかった
   ただ金を持っているので
   遺憾なことがあっても
   人々は金銭を要求して収めるのであった

   寝そべってニヤニヤしているだけの
   男が
   えばりたいと思うようになった
   金で買える尊敬度はしれていたので
   腕力を使おうと思った

   男は立ち上がることにした
   上半身を持ち上げるといやに重い
   体の中にプルトニウムが流れているからだ
   五十二基の原子炉から
   トラックに乗って運ばれる廃棄物

   キケンな男が
   交通事故にあったら
   爆竹を投げ込まれたら
   まわりはすべて放射能汚染
   周囲の海では生き物が死の乱舞
   海老の形でのたうちまわるだけではすまないのだが

 この作品は日本のことを謂っていると思います。地図で見る日本列島は「ひじ枕で寝そべってい」るように見えますし、「遺憾なことがあっても/人々は金銭を要求して収める」のは得意の無償援助。「金で買える尊敬度はしれていたので/腕力を使おうと思った」のは自衛隊の海外派兵。「五十二基の原子炉」は日本国内の原子炉数だったと思います。「キケンな男」はいつまでも「寝太郎」のままの方が良いのかもしれませんね。おもしろい作品です。



横山せき子氏詩集『永劫の記憶<上> あなたへ』
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2005.7.29
東京都千代田区
美研インターナショナル刊
5000円+税(上下)
 

  <目次>
   あなたを語る …… 7
   心の糸 …………… 95
   幼き日々 ………… 139



    春の日に

   よく晴れた日にこの山に登ると
   新宿副都心や横浜港とその周辺が
   一望に見え背後には富士山の
   雪景色をのぞむことが出来る

   初めて夫に連れだって
   登った日を思い出す

   この山には原始人が住んでいたという
   夫は少年の頃から石器時代の
   器具類に興味をもっていて

   あの日も今日のように
   さわやかな昼さがりだった
   私はだまって夫の話を聞いていた

   いま夫は私の中で語りつづけている
   私はあの日のように
   夫の話に耳を傾けている

 上下2冊の詩集が一つの函に入り、しかも全作品に写真・絵が付くという豪華本です。紹介した詩は上巻の巻頭作品ですが、亡き夫君との日々を回想しており、夫君のお人柄も伝わってくるような作品ですね。最終連がよく効いていると思いました。




横山せき子氏詩集『永劫の記憶<下> 慈愛につつまれて』
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2005.7.29
東京都千代田区
美研インターナショナル刊
5000円+税(上下)
 

  <目次>
   詩の中で ………… 7
   旅路 ……………… 37
   自然の美 ………… 79
   ローソクの灯 …… 109



    ローソクの灯

   誕生日のデコレーションケーキは
   娘の手製だった
   歳の数だけ点されたローソクの火

   それはあかあかともえて
   クリームを溶かすようにも見えた

   だが とある日
   私の躯は炎の中に消えて
   白い姿に変るだろう
   天に召されるその日には

 こちらは下巻の最後に置かれた作品を紹介してみました。最終連が佳いと思います。詩人としての覚悟、人間としての覚悟が表出しています。「あかあか」とした「ローソクの火」と「白い姿」という対比は色彩的にも見事と云えましょう。




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