きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.8.5 長野
戦没画学生慰霊美術館「無言館」
 

2005.9.9(金)

 急な出張で、8日〜9日、山形に行っていました。業務委託をしている会社が新庄市の隣の戸沢村という処にあります。性能試験機も貸し出してあるのですが、急にオーバーホールをすることになって、立ち会ってきました。基本的な性能に問題がないことが判って、やれやれ、です。微調整をしなければならないことも判りましたけど、それは相手の会社の技術部門が引き受けてくれることになって、どうにか帰ってくることができました。

    050908.JPG    ここのところ台風の合間を縫って出張することが続いていますが、今回もそうでした。写真は行きに撮ったものですが、宇都宮駅を過ぎた処です。厚い雲の隙間から漏れる夕陽が奇麗でした。見方によっては暗雲立ち込めて≠ニ見えなくもありませんがね(^^;

 仕事は80点ぐらいしか付けられませんでしたから、やっぱり暗雲だったのかなぁ。下手をすると帰れないと思ったほどでしたけど、まあ何とか決着をつけた、というところです。

 早く仕事にケリをつけて、風景や花を愛でる日々を送りたいものですが、あと3年半は我慢するようですね。そうやって先輩方も定年を迎えていたのだろうなと、ようやく判りかけたこの頃です。




季刊・詩の雑誌『鮫』103号
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2005.9.10
東京都千代田区
鮫の会・芳賀章内氏 発行
500円
 

  <目次>
   鮫の座  水野富士夫―――――表紙裏
   [作品]
   かじりつく壁をなくして  大河原巌―――――2
   聞いすんで  飯島研一―――――4
   ひきこもり  いわたにあきら―――――6
   赤い夕日に照らされて  高橋次夫―――――10
   地 球  岸本マチ子―――――12
    [『大河原巌詩集』特集]
   “戦争”と詩人の戦争責任  羽生康二―――――14
   自己省察の場から未来へ  白井知子―――――16
   はげしく共感したなかで  黒羽英二―――――18
   主体の生成へ向かわせるもの  高橋次夫―――――19
   [作品]
   水の戸口  井崎外枝子―――――50
   幻影の橋  松浦成友―――――24
   碁石の話  芳賀稔幸―――――26
   通りゃんせ  瓜生幸三郎―――――28
   石斑魚(うぐい) 今駒泰成―――――30
   [飯島研一詩集『愛しき女への詩』特集]
   二律背反の妙  山川京子―――――52
   牙を抜かれた男どもに  村山精二―――――35
   無頼への郷愁  吉岡又司―――――35
   恋のしがらみ草紙 賛  今駒泰成―――――37
   [作品]
   予 感  前田美智子―――――39
   うつしき青人草に  原田道子―――――40
   漠然とした不安 仁科龍―――――42
   漂民のレクイエム  水野富士夫―――――45
   日 記  芳賀章内―――――48
   缶詰の思想  ―――――50
   [謝肉祭]
   「イクサ」と「平和」 原田道子―――――52
   ノイズ、上がりて  芳賀稔幸―――――54
   遊びたい・む  前田美智子―――――56
   「詩誌探訪」原田道子―――――57
   編集後記   表紙・馬面俊之



    通りゃんせ    瓜生幸三郎

   さりげなく
   通り過ぎたい道がある
   けれど
   軟体動物のような
   得体のしれない亡霊が
   しつこく付きまとい
   あげくの果てに通せんぼをするのだ

   夢と現実のあわいに
   一瞬を生きる宇宙の微粒子

   夢は荒野をかけめぐるが
   現実は夢を轢断する

   二度と通りたくない道がある
   その道に橋をかけるため
   衆人が三猿に成り下がることを念ずる
   神話捏造造幣局も実行犯も
   この国には存在するらしい

   知らないことは恥である
   けれど 知りながらなお
   知らなかったとしらを切る自己欺瞞を
   自らに押印するなら
   それは恥の上塗りではなく
   破滅への片棒かつぎだ

   その はた目には丁寧語を使う
   善人の貌が
   いつしか亡霊の貌になり
   沿道を埋め
   道行く人に通せんぼをするのだ

 「さりげなく/通り過ぎたい道」「二度と通りたくない道」を、今の日本は歩んでいるのだなと思います。私は戦後生まれですから、その道の経験はありませんが、経験をした先輩方にとってはいつか来た道≠実感しているのでしょう。「衆人が三猿に成り下がる」という言葉も、体験者には実感があるのだろうと思います。「知らないことは恥である/けれど 知りながらなお/知らなかったとしらを切る」輩も多く出てきたのが現在の日本でしょうか。詩としても優れた作品であるだけに、怖さを感じています。

 今号では私の拙い感想文(にもなっていませんが)も載せていただきました。ありがとうございました。




詩誌『帆翔』36号
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2005.8.30
東京都小平市
<<帆翔の会>>岩井昭児氏 発行
非売品
 

  <目次>
   いろは文字              小田垣晶子 1
   春眠                 荒木 忠男 2
   花菖蒲                坂本 絢世 4
   白い偽装のヤマボウシ         長谷川吉雄 6
   A子へ                茂里 美絵 8
   犬/浦島               三橋 美江 10
   トビ魚                大岳 美帆 12
   孤独                 渡辺 静夫 14
   ハンドバッグ             堀内みちこ 22
   灯台守のエレジー           岩井 昭児 18
   ポスト                青木 幸子 17

   随筆 居酒屋「武蔵屋」物語      長谷川吉雄 20
      『白』の記憶          渡辺 静夫 21
      吊縁台             荒木 忠男 26
      怪人(ファントム)に会いたくて 坂本 絢世 27
      身辺の神秘           茂里 美絵 28
      手向草(七)          三橋 美江 29
      不意に訪れるもの        大岳 美帆 32
      死海のほとりで         小田垣晶子 33

   時代小説・暁暗の星(六)       赤木 駿介 36
          *    *    *
   読者だより              藤野 邦夫 34
    ※受贈詩誌・詩集等紹介             2〜
    ※あとがき/同人連絡先          表紙の三



    犬    三橋美江

   犬との別れがこんなに辛いのは
   後で電話をすることも
   手紙を出すことも出来ないからだ

   それでも犬は
   十年後に再会しても
   ちゃんと尾を振り
   飛びついて来てくれるんだ

 これは犬好きにはたまらない作品ですね。人間と違って「後で電話をすることも/手紙を出すことも出来ない」というのは、当り前なんですが、その当り前が出来ないから「辛い」のだと言われてしまうと、胸のつかえがスッキリと降りる気がします。そして「十年後に再会しても/ちゃんと尾を振り/飛びついて来てくれるんだ」というのも良いですね。人間は10年経ったら赤の他人になってしまいますけど、犬は「ちゃんと尾を振」る。この素直さが犬の良いところで、それをちゃんと押えています。犬を見る眼のある人は、人間を見る眼もあるんだろうと、ひとり納得した作品です。




詩誌『墓地』54号
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2005.9.7
青森県北津軽郡鶴田町
高橋玖未子氏方・山本十四尾氏 発行
500円
 

  <目次>
   夕焼けのきれいな日に 岩崎和子
   供物 大掛史子
   焼却 高橋玖未子
   さつる つねる 山本十四尾



    夕焼けのきれいな日に    岩崎和子

   夕焼けのきれいな日に
   ホズミさんは逝った

   最期にホズミさんが見た空は
   これから行くあちらの
   入口の明かりみたいだと
   娘さんたちが鼻をつまらせている

   「いたりませんで……」
   診療所の医者がお辞儀をして帰ると
   ホズミさんは
   冒された直腸も肝臓も肺もみな
   真新しい着物につつまれ
   それから薄化粧をほどこされた

   淡く紅をひいたホズミさんの枕辺で
   じいじの声がつまった
   「まるで嫁っこにきたころの
    母さんのようだ……」

   幼子が三人
   不思議そうにじいじを取り囲み
   口々にはやしている
   「じいじが泣いた じいじが泣いた!」

 タイトルが象徴的で良い作品だと思います。「ホズミさん」という固有名詞も生きています。ヒトが亡くなった詩ですから、本当は暗くなければいけないんでしょうが、なぜか明るい。「冒された直腸も肝臓も肺もみな/真新しい着物につつまれ」というフレーズから、難病の末に亡くなって、それは故人にも遺族にも救いだったのかなと想像しています。それが明るさを表出させているのかもしれません。「診療所の医者」も「じいじ」の人間性もよく見える作品と云えましょう。




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