きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.8.5 長野 | ||||
戦没画学生慰霊美術館「無言館」 | ||||
2005.9.10(土)
終日、日本詩人クラブDay≠ナした。午前11時から午後1時までは理事会、2時からは例会でした。理事会では、いずれ「詩界通信」に載りますが今年度の3賞(日本詩人クラブ賞、新人賞、詩界賞)選考委員の検討がありました。
例会の講演は、西岡光秋氏による「日本詩人クラブ創設期の詩人たち『西條八十』」と石川逸子氏による「日本の戦争と詩人たちの思い」でした。 写真は石川逸子氏。原民喜、槇村浩、小熊秀雄、正田篠枝を始め植民地支配下の朝鮮詩人たちに光を当てた佳い講演でした。 講演の途中でも講演後の質疑応答でも、ある女性会員がヘンなことを言い出してびっくりしました。内容は、自分も日韓併合下の朝鮮で暮していたが日本人による強圧的な支配は無かった、というもの。これは個人的な体験ですから、おかしなことを言っているなと思っても一般論で反論するのは難しいものです。それを司会者は見事に返しましたね。「あなたはそういう場面を目にしなくてもすむ、恵まれた境遇にいたのではないですか?」。 *双方の言葉は村山の記憶をもとに意訳してあります。 その言葉で一応落着しましたけど、帰りのエレベータで石川さんと一緒になって、思わず「不愉快な思いをさせて申し訳ありませんでした」と謝ってしまいました。私も一応、主催者側ですからね。石川さんに「そんなことはありません」と言っていただいてホッとしています。 なんだか、妙に疲れた一日になってしまいました。フーゥ。 |
○季刊・詩マガジン『PO』118号 | ||||
2005.8.20 | ||||
大阪市北区 | ||||
竹林館・水口洋治氏 発行 | ||||
840円 | ||||
<目次>
特集 ドイツ
「ドイツってなに?」
−今まで見たこと読んだこと− 小川和彦…………9
壁の前後に−あいたくて 鈴木 俊…………17
レニ・リーフェンシュタールの「美」 佐古祐二…………25
グリム童話を読む(伝承文学の面白さ) 藤原節子…………30
帰郷論の試み−形而上学を奪うもの 梶谷忠大…………37
ヘルマン・ヘッセ−永遠なるものへの動向線
(『荒野のおおかみ』)− 藤谷恵一郎………46
エンデのファンタジー 寺沢京子…………51
ドイツ、あれこれ 原 圭治…………56
ドイツ、その光と影 島 雄…………63
ドイツ 神田好能…………66
グーテンターク 三方 克…………69
詩
アタカマ砂漠 北川朱実…………94
傷 清ア進一…………96
ある精神遍歴 清沢桂太郎………98
木戸をくヾる 北村こう…………102
破壊者☆手 原 和子…………104
手 前野 碧…………105
もっと視る 野島洋光…………118
古墳の上のわらびたち 藤原朝子…………120
葉 佐古祐二…………122
れんげ 小林由実…………123
遡って行くと/ここからどこかへ/火炎の相貌/消え去るまで 川中實人…………124
現身喰い 瑞木よう…………128
ビタミン まつだくみこ……129
雪降る日の易鳥(いすか)/女たち(五) 牛島富美二………136
殺意/道 左子真由美………140
ららら/少年 野信也…………142
椋鳥 水口洋治…………146
気づかない心/前を向こう 長谷川嘉江………148
あにまるわーるど/歓待の表札 斉藤明典…………158
日本語講座 佐相憲一…………162
蛙/桜/詩人 中野忠和…………164
視線/紫陽花 梨 薇……………178
快哉(POEMS――――尼編3) 黒木 充…………181
父と鍬と 与那嶺千枝子……182
午後の目眩/闇の秘密のベール 及川謙二…………184
乳房の鼓動 丈六友子…………188
法灯 加納由将…………189
*
ピロティ お弁当のぬくもり 音田昌子 ……7
講演録 現代の詩における美の役割――世界の美が人々を勇気づける 佐古祐二 ……106
詩のふるさと 「送別」王維 水口洋治 ……117
舞台・演劇・シアター 高校演劇科の現状 河内厚郎 ……130
エッセイ 続アメリカ黒人詩の流れ19 堀 諭 ……132
この詩大好き 「静物」吉岡実 藤谷恵一郎 ……134
一編の小説 「女優記」林芙美子 宮内征人 ……150
一冊の詩集 八木重吉『貧しき信徒』野信也 …152
ギャラリー探訪 ギャラリー「夢雲」と皮革造形作家・河野甲 川中實人 ……155
訳詩 「千の風」 梨薇訳 ……170
ビデオ・映像・ぶっちぎり イ・ビョンホン 瑞木よう ……172
竹林舘BOOKS
山崎広光詩集『少女とえんぴつとことば』抒情的メタ詩のセンシティヴな世界 佐古祐二 ……174
『時のしずく』(改訂版)の詩人について 石井 習 ……176
エッセイ 運を捨てた話 中野忠和 ……177
詩誌寸感 立山澄夫 ……190
読者投稿欄*POランド 藤原節子 ……192
*
▽詩を朗読する詩人の会「風」例会……116 「PO」例会……154△
▽「PO」ホームページ……154 「PO」育成基金……177△
▽会員・詩友・定期購読者募集……192 受領誌一覧……193△
▽執筆者住所一覧……194 編集後記……195△
傷 清ア進一
あれは三十数年前
中学一年生の時だった
チビだという理由だけで
よく いじめられた
ある日の昼休み
「売店でパンを買ってこい!」
と ひとりの生徒がぼくに命令した
「自分で行ってよ」と断ったぼくに
鉄拳が飛んできた
額に三針縫う大怪我をした
後日 教師に連れられて
殴った生徒が家まで詫びに来た
いつもは 温和しい母だったが
許さなかった
「死んでしまいなさい」
と 冷たく言い放った
翌日から その生徒は
登校しなくなった・・・
今でも時折 額に手を当てて
傷跡を指でなぞってみる
なだらかに盛り上がって
硬くなっている
この傷が 消えることはない
あのときの生徒が負った
傷も
母が負った
傷もまた
これは辛い詩ですね。「『死んでしまいなさい』/と 冷たく言い放った」、「いつもは 温和しい母」が一番傷ついたと思うのですが、その気持ちがよく判るだけに辛い。何かもっと別の言葉があったでしょうが、おそらく母親としての正直な気持ちでしょう。
「ぼく」も「母」も「あのときの生徒」も、そうやって人間は傷ついて生きていくしかないのかと改めて思います。それを認めた上で、改めて出発するしかないのでしょうね。人間の深い業を考えさせられた作品です。
○文芸誌『ノア』7号 | ||||
2005.9.30 | ||||
千葉県山武郡大網白里町 | ||||
ノア出版・伊藤ふみ氏 発行 | ||||
500円 | ||||
<目次>
詩 一服/三角とり……… うこん りょう 4
一件落着……… 筧 槇二 5
笑って、ねぇ笑って……… 川田 裕子 6
会釈……… 森下 久枝 7
カラスの里……… 小倉 勢以 8
記憶の底……… 伊藤 ふみ 9
俳句 母の夏……… 魚住 陽子 10
エッセイ 切り取られた風景……… 馬場 ゆき緒 11
エッセイ コレット……… 遊佐 礼子 12
エッセイ さまぎまな出会い……… 保坂 登志子 15
俳句 板橋東芳寿会作品……… 16
エッセイ アート・ノート……… 望月 和吉 17
エッセイ 人生九十歳……… 今井 千代乃 18
童話 ネコのピーター……… 伊藤 ふみ 20
ご案内 ……… 21
編集後記 ……… 22
一服 うこん りょう
肺ガンの原因に
なぜ、いつも
タバコがあげられるんじゃ
一服つけながら 考える
失礼ながら、思わず笑ってしまいました。私は喫煙者ですから、この気持ちはよく判りますね。本当に「一服つけながら 考え」てしまいます。タバコはWHOが指摘しているように、確かに最も大きな「肺ガンの原因」かもしれませんが、身体に悪いモノって、昔から旨いと相場が決まっています(^^; それより、国家が国民の健康に異常な関心を示す時って怖いですよね。健康な肉体に(国家にとって)健全な精神が宿るのかもしれませんけど、不健康でも自分の思考を持っていたいものです、、、って、最近はこの論法も迫力が無いなぁ。「一服つけながら 考え」よう!
○南原充士氏詩集『固体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方・ほか』 |
2001.9.20 | ||||
東京都文京区 | ||||
近代文芸社刊 | ||||
1500円+税 | ||||
<目次>
個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方――――――――3
力みすぎた肩をもつホモサピエンスのための断片的なエスキス――――45
少年の部屋―――――――――――――――――――――――――――57
あとがき 98
著者略歴 99
1
限りなく広がっていく意識の電波
無性に投げつけたくなる悪態
この見えないネットで捕まえたピチピチ生体
干渉しあう意地悪な視線
射抜くようなしびれの首筋と不整脈を
だれのせいにして 悪口 かげ口 きき放題
日々くりかえされる何でもないこと
そのなかで 気がつけば何かが変る
どうして戸惑うような出会いばかりなのだろう
それでも 好き嫌いを捨て去ると
見えてくるすがたを見きわめることとしよう
2
少なくとも 人類は 月に足を踏みおろし
火星や土星の至近距離からの撮影にも成功した
地球上から天然痘は追放され
抗生物質は結核患者を治癒させる
核兵器は確実に人類に自殺能力を与えた
目次を見ると3編の長詩のように思いますが、中は違いました。「個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方」は0から23の章立てになっており、「力みすぎた肩をもつホモサピエンスのための断片的なエスキス」は1から5、「少年の部屋」は16編の短詩から成っています。ここでは「個体から類へ涙液をにじませるfocusのずらし方」から1、2を紹介してみました。これだけを取り出したのでは全体が見えないのですが、全体を見たい場合は原本に当ってもらうとして2について考えてみたいと思います。
たった5行の作品ですが、これは佳品だと云えましょう。最終行の「人類に自殺能力を与えた」が良く効いています。核兵器=破滅という図式はよくあるパターンですが「自殺能力」という言い方は無かったと思います。この行は前4行を受けていますから能動的な「能力」が必要なわけですね。この論理の組み立ては見事と云えましょう。
詩集タイトルからは取っ付き難い感じを受けるかもしれませんが、内容はご覧のように比較的平易な言葉で書かれていますから機会があったら読んでみてください。平易な言葉にだまされないないようにしなければいけませんけどね(^^;
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