きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.8.5 長野 | ||||
戦没画学生慰霊美術館「無言館」 | ||||
2005.9.12(月)
父親が昨夜から入院しているので、仕事の帰りにでも見舞いに行こうと思ったら、なんと17時から打合せ。でも私自身が設定した時間ですから、誰にも文句は言えません(^^; 妹の情報によると、今すぐどうなるというものではないようですので、明日にでも行ってみようかと思っています。父親も80を過ぎていますから何があってもおかししくないんですが、まあ、元気な部類でしょうね。本人は、たまの入院は骨休みぐらいにしか思っていないでしょう。こっちが入院して身体を休めたいほどです(^^;
○隔月刊詩誌『RIVIERE』82号 | ||||
2005.9.15 | ||||
大阪府堺市 | ||||
横田英子氏 発行 | ||||
500円 | ||||
<目次>
風車 水月 とも (4)
涙あふれて 松本 映 (7)
三つ子の魂 石村 勇二 (10)
物語 森 かおり (12)
秋の日に 藤本 肇 (14)
鎖骨 当間 万子 (16)
刃 戸田 和樹 (18)
夏の同窓会 横田 英子 (20)
RlVlERE/せせらぎ (22)〜(29)
横田英子/石村勇二/河井洋/
釣部与志/永井ますみ
ウスバカゲロウ 正岡 洋夫 (30)
自活 安心院祐一 (32)
弥生の昔の物語(35)−魚取り− 永井ますみ (34)
風の運ぶ力石 釣部 与志 (38)
「目には目を」と腹 殿井 善隆 (38)
蛇の舞 蘆野つづみ (40)
逆流 平野 裕子 (42)
音 後 恵子 (44)
巷談・ポーズ 梅崎 義晴 (46)
受贈詩誌一覧 (48)
同人住所録 (49)
編集ノート 永井ますみ (50)
表紙写真・釣部与志/詩・永井ますみ
風車 水月とも
すきとおったなかに
ひかりをまじえて
風が
ながれる
いろとりどりの
花に
ふれて
いっそう
かがやく
ひとびとも
やくどうする
朝
ベランダに
ひとりながめる
このひとときを
よろこびとするか
こどくとするかは
心ひとつで
きまる
はたらく
場をなくし
ことばがとぎれ
とまどう
まいにち
シャカシャカシャカ
くるくるくる
なつかしい音が
まわりだす
かだんにたてられた
赤、黄、青、桃いろの
かざぐるま
いっせいに
奏でると
ことりのさえずりよりも
はるかに
にぎやかだ
ひよわな
こどうが
それにかさなり
ゆっくりと
響きはじめる
いまから
ここから
まさに「このひとときを/よろこびとするか/こどくとするかは/心ひとつで/きまる」作品ですね。「はたらく/場をなくし」とありますから、コトはそう単純ではないと思いますが、考え方ひとつで現象の理解は変ってくると思います。それが判っているからこそ、「ひよわな/こどうが/それにかさなり/ゆっくりと/響きはじめる」と書くのでしょう。読者としても「いまから/ここから」応援したくなる作品です。
○詩誌『蠻』142号 | ||||
2005.9.25 | ||||
埼玉県所沢市 | ||||
蠻詩社・秦健一郎氏 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
【詩 作
品】駅 月谷小夜子 2
二羽のカラスの対話 藤倉 一郎 6
病床日記 藤倉 一郎 10
うつろいの街 佐藤 尚 14
短かった軌跡 いわたにあきら 16
裂け目 いわたにあきら 19
【短歌日記】 穂高 夕子 22
【俳 句】亡夫 藤 彩香 23
【俳 句】自選俳句二十句
『穂高・黒部・塩の道』 川端 実 24
《エッセイ》正岡子規(1)
虚子の子規評価 川端 実 26
深沢七郎論(12)
『風流夢詳』(その1) 浜野 茂則 38
【同人随想】そんなおミズの…ブログにはまる 月谷小夜子 46
[受贈御礼]
《連載小説》蒲桜残映(22) 中谷 周 50
沈黙の太陽(4) 秦 健一郎 60
−聡太郎の山荘日記−
【詩 作
品】どくだみの花 近村 沙耶 70
おのぼりさん 井上 勝子 72
時間の森 山浦 正嗣 74
海 穂高 夕子 76
崖 穂高 夕子 78
【編集後記】おじぎ草・同人住所録 80
〈表紙題字〉故 難波淳郎画伯 〈装幀〉佐藤 尚
崖 穂高夕子
岸をはなれてだんだん沖に出て行くと
突然 視界の半分が蒼くなった
切り立った海中の崖の上に出たのだ
引きずり込まれそうで
慌てて水面に顔を出すと
そこはのんびりとした夏の海
水の中で
わたしは崖を飛び回る鳥になれるはずなのに
果ての見えないその蒼さに拒まれた
磯浜に 波はくすくす声を上げ
ぬらりぬらりと陸地をなめ回す
でも 油断してはいけない
海は何かを匿しているのだから
千葉の外海の
岩のそそり立つ崖っぷちには
ガクアジサイが淡く咲いている
見上げるわたしの上を
なめらかな線を引いて鳥が行く
その上はどこまでも空しかない
太陽を遊ばせ 輝きを降りそそぐ
地面にわたしは安堵して立つ
水面にわたしは安堵して浮く
鳥にも魚にもなれない二次元のわたしだから
今は ここで水平線を見ている
この作品はスキューバダイビングをしている時のものと思われます。日本の詩では珍しい作品と云えましょう。私は、スキューバはやりませんでしたが「沖に出て」スキンダイビング(素潜り)を多少やっていましたので、海面から見える「岩のそそり立つ崖っぷちには/ガクアジサイが淡く咲いている」情景や「見上げるわたしの上を/なめらかな線を引いて鳥が行く」光景というのは良く判るつもりです。最終連の「地面にわたしは安堵して立つ/水面にわたしは安堵して浮く」という感覚も判りますね。これは三次元なのですが「鳥にも魚にもなれない二次元のわたし」と規定するところに作者の謙虚さを感じます。いずれにしろ、こういう世界を書ける人は少ないので、大事にしていただきたいものだと思います。
○詩誌『EOS』7号 | ||||
2005.8.31 | ||||
札幌市東区 | ||||
EOS編集室・安英 晶氏 発行 | ||||
500円 | ||||
<目次>
イ短調のらくだ*小杉元一/2
昆虫の書(九)*高橋渉二/6
メリー・ゴー・ラウンド*安英 晶/10
題字・表紙絵 高橋渉二
イ短調のらくだ 小杉元一
Rは口を動かしたり歯をむきだしたりしながら
わたしたちらくだになってしまったようだと云う
しない草を食みながら
わたしもそう思うと長いまつげでうなづく
Rは白濁した眼で空をさがしている
痰のからまる丸い朝
からだの砂を落としながら水を斜めに
ゆっくりと身を起こす
さてと
わたしたちは
まずは毛の顔を突き出しわれらとなり
夢の音たてて砂を噛み
われら
擦り切れた口語の鞍を置く
夜明けの錫杖ひびくイ短調のらくだ
さむい顎ひき
大股歩き揺らめきながら
聖なる一族となり
ひとすじひとすじ崩れる砂の背を仰ぎ
浮遊しながらはげしく放尿する
泡立つ傷口またぎ
時空を忘れ
塩が崩れ
沿道のひまわりはくろぐろと燃えていく
Rはうたう
弥陀は偉大なり
弥陀のほかに仏はなし
われら弥陀の思し召しのままに歩むらくだ
自力のこころひるがえし他力をたてまつる
地べた座りの黄色い若者たちがふり向いて哄笑する
われらいずれの行にても生死をはなるることかなわざる
ただ自死の行のみたのみたてまつる
さんそふらふと
Rも哄笑する
砂の孵化する陽炎のむこう埋もれた寺院の折れた声
陣太鼓は高くひびく
らくだは痩せた瘤にいくつもの信管を巻き付けながら
いっせいに疾駆する
弥陀の旗をふりたてて
むかしわれらは水に浮かぶらくだであったとさ
千年の未明を駆けぬける風の骨であったとさ
わたしはひとりで「4手のためのアレグロ」を弾く
Rが耳元でささやいている
涎を垂らしながら
重い水辺でなんども寝返りをうちながら雨の音で目ざめる
カーテンをあけると世界ははげしい雨にうたれ
夢は濁流となり
タイトルのおもしろさに魅かれましたが、内容はかなり難しいですね。「らくだ」の喩はもちろん「わたしたち」で構わないと思いますし「われら/擦り切れた口語の鞍を置く」などのフレーズには惹かれますから、解釈≠ヘ私なりにいろいろできるでしょう。しかし、ここはあまり解釈にこだわる必要はないと思います。「われらいずれの行にても生死をはなるることかなわざる/ただ自死の行のみたのみたてまつる」などの言葉も楽しみ、考えながら鑑賞してみました。素通りできない詩篇であることは確かです。
○アンソロジー『ポエム横浜』’05 | ||||
2005.8.27 | ||||
横浜市西区 | ||||
会長 浅野章子氏・横浜詩誌交流会 発行 | ||||
1000円+税 | ||||
<目次>
わたしの青空 浅野 章子(青い階段)………………6
逃げ水 新井 知次(獣)………………………8
霧の山小屋 荒波 剛(横浜詩人会議)…………10
講習会 石川 敦(掌)………………………12
夢 石原 妙子(地下水)…………………14
老いてゆく風景 いわたとしこ(象)……………………16
樹海の果てに 植木肖太郎(詩のパンフ)……………18
球 体 うめだけんさく(伏流水)……………20
顔 小沢 千恵(青い階段)………………22
耳塞ぎ 加瀬 昭(象)………………………24
雨の歌 方喰あい子(地下水)…………………26
槐の花散る 唐澤 瑞穂(よこはま野火)…………28
水槽の中 木村 和(紙碑)……………………30
夢、それは 木村 雅美(地下水)…………………32
模 様 阪井 弘子(よこはま野火)…………34
関 係 坂多 瑩子(青い階段)………………36
失われた情念 佐藤 裕(象)………………………38
家 族 篠原 あや(象)………………………40
喜寿を前に 志崎 純(掌)………………………44
リクとリキ 島峰 信子(横浜詩人会議)…………46
池を埋める 進藤いつ子(よこはま野火)…………48
宿り木の下で 菅野 眞砂(よこはま野火)…………50
境 内 杉浦 鷹男(横浜詩人会議)…………52
深 雪 杉浦 鷹男(横浜詩人会議)…………53
マーブリング 宗田とも子(じゅげむ)………………54
刃 物 宗田とも子(じゅげむ)………………55
ボンゴ 田村くみこ(じゅげむ)………………56
足 音 寺田 公明(横浜詩人会議)…………58
足取り 西村 富枝(アル)……………………60
探しもの 富家珠磨代(じゅげむ)………………62
眩 惑 林 袖維(地下水)…………………64
台風が生まれる 馬場 晴世(よこはま野火)…………66
波 動 ひらたきよし(獣)……………………68
時のこと ひらたきよし(獣)……………………69
豹留(ひょうどめ)の碑(ひ) 府川 清(横浜詩人会議)…………70
別 れ 福井すみ代(青い階段)………………72
よせがき 古久保和美(横浜詩人会議)…………74
津 波 保高 一夫(地下水)…………………76
栗鼠と雀(他三編) 掘井 勉(掌)………………………78
夜のカフェ 宮内すま子(よこはま野火)…………80
どくだみの花 森口 祥子(青い階段)………………82
ワープ 八潮 煉(青い階段)………………84
苦 瓜 米原 幸雄(京浜詩派)………………86
▽加盟誌プロフィール
▽横浜詩誌交流会二年間の歩み
▽横浜詩誌交流会規約
▽横浜詩誌交流会講演一覧
▽あとがき
<表紙デザイン>
今井喜久麿
<表紙絵>
津島 亜喜
球体 うめだけんさく
おんなが
こっちを見た
深い海の色をした目で
ぼくは
その瞳の奥に
執念を感じていた
宙を舞う球体は
昼と夜の間を
苦しげにぐるぐる回っているが
ぼくは仕事場を右往左往している
おんなの目を
背に貼り付けたまま
ときに
言葉をかけようとするのだが
吐き出された声は
けものの叫びに似たもので
悲鳴に近い
うまくはいかないものだが
両手にくるんで
温め
深い海の色をした
執念と疑いの目を
溶かすことができたら
ぼくはうれしくなる
だが おんなの喜ぶ顔を
まだ見ることができない
目を瞑ると
水をたたえた球体が
宙を
回っている
「宙を舞う球体」「水をたたえた球体」とありますから「球体」とは地球のことではないかと思います。そうすると「おんな」は太陽か月か、他の天体かと思うのですが、ちょっとイメージが結びつきません。あるいは、そういう喩と捉えることが間違いなのかもしれませんね。しかし、私はそんなイメージで鑑賞してみました。うまく解釈≠ナきないのですが惹かれる作品であることは確かです。私の頭の中で早く「おんなの喜ぶ顔」を結実させたいものです。
○詩誌『青い階段』78号 | ||||
2005.9.10 | ||||
横浜市西区 | ||||
浅野章子氏 発行 | ||||
500円 | ||||
<目次>
めざし 荒船 健次 2
「貧しい食事」 浅野 章子 4
通俗的な午後 八潮 煉 6
改心 鈴木どるかす 8
茄子の花 森口 祥子 11
魚 坂多 瑩子 12
かがり火 福井すみ代 14
庭 小沢 千恵 16
ふたり 廣野 弘子 18
花の剪定 野村 玉江 20
ピロティ
福井すみ代・小沢千恵・坂多瑩子
編集後記
表紙 水橋 晋
改心 鈴木どるかす
ドアがカサコソと震えている
勢いよくベルを鳴らせばいいのに
またドアに頭を打ちつけている
私を狂わせるかもしれないクマ
私が歩み寄ると
ドアの隙間から まじまじと見つめている
この一頭のクマのために
不幸しか頭に浮かばなかった
茶色の痛んだ毛皮を着て
蜂蜜とイナゴしか食べないような顔をしている
クマの黒い瞳が私を飢えさせる
何かを失ったような心細さ
物乞いに来ているのはクマの方だから
小銭を握らせ 帰そうとしたが
彼は出て行こうとしなかった
私が居てくれと嘆願するまで
タイトルに惹かれましたが、何が「改心」なのかよく考えると難しいですね。最終連の「私が居てくれと嘆願するまで」を「改心」と採っても良いでしょう。しかし、それだけではないように思います。「私を狂わせるかもしれないクマ」というフレーズも合せて考える必要があるでしょう。
そういう解釈≠ヘ措いて、このメルヘンのような肌触りだけを楽しむのもひとつの鑑賞法だろうと思います。何度も繰り返して読んで、日を経て読んで、ある日、この世界の意味がパーッと判る、そういう作品であるのかもしれません。
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