きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.8.5 長野
戦没画学生慰霊美術館「無言館」
 

2005.9.19(月)

 敬老の日で休日。終日、いただいた本を読んで過しました。それと、日本詩人クラブのメーリングリスト(ML)構築。一応、登録はとっくに終っていたんですが、稼動できないでいました。その原因がようやく判りました。日本詩人クラブのEメールアドレスを使って設定していたのですが、それ自身を登録しないと作動しないんですね。要は、自分自身を登録しないとダメということ。判ってみれば何と言うことはないんですが、ここに来るまで試行錯誤の連続で、オレって、相当アタマ悪いんだと思いましたよ(^^;

 このMLは当面、オンラインの現代詩研究会に使います。10月1日に第1回目を予定しています。オンライン研究会はまだ試行段階ですから、今回はこちらからの指定者に限らせていただきます。軌道に乗ったら会員・会友に開放します。それまでしばらく、年内かなぁ、お待ちください。




詩歌文藝誌GANYMEDE別冊
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2005.10.1
東京都練馬区
銅林社 発行
2476円+税
 

  <目次>
   
ミリュウ
   
Milieu 田園の論理 腰原哲朗8
   水旅 石田瑞穂16
   白い花 中神英子24
   台風の日に 
他五篇 山岸哲夫36
   カラー印刷を食べる 小笠原鳥類48
   吃音 
他二篇 たなかあきみつ58
   それぞれの道 浅見洋子70
   一枚の絵 
他四篇 市川つた84
   弱々しく立っている、革命的な キキダダマママキキ96
   ただ白い紙の海にいのちは沈む 
他二篇 山家常雄106
   ムツゴロウ記 
――諌早湾の 松本一哉120
   楽中 
他三篇 山内まゆみ134
   冬のバラ 
他四篇 工藤優子146
   角笛 
――イエス、その愛 荒井愛子160
   ちかごろはやるうた
    アメリカがくれたでもくらしい 丸山勝久174
     おもしろうてやがてかなしき
   古い酒場で 
 阿部堅磐190
   切り取った枠の中で 
他四篇 梢るり子202
   赤い犬 
他四篇 平野光子218
   不動の滝 
他四篇 菊池唯子234

    あとがき247



    古い酒場で    阿部堅磐
      ――亡きK・Tさんへ

   職場の宴会もハネ
   その会場から程近い
   路地裏の古いスタンド・バーヘ
   たった一人で立ち寄りました

   店には客も居ず初老のママさんが
   カウンターの中で煙草を吹かしていました
   Tさん ここはあなたと共に
   二 三回 飲みに来たことのある店です

   あなたは三年も前に亡くなった人なのに
   今夜は何故かここで
   あなたがママさんを相手に
   静かに飲んでいるような気がしました

   私が若い頃 ある文学賞の佳作を獲った時
   あなたが 二人だけの祝賀会をやろう
   そう言って連れて来てくれた店です
   あの晩は私もすっかり酔ったものです

   生きてゆくには有言実行がいいのかなぁ
   と私が呟くとあなたはすぐ
   いや 不言実行がいいんだよ
   そう力強く断言されました

   続けてまたあなたはこうも言いました
   まあ むずかしいのは
    知行合一だろうよ
    これはキビシイ生き方だからね

   あの晩 話し合ったことが思い出されます
   そこで店のママさんと二人で
   あなたの思い出話に花が咲きます
   あの頃と変らぬ飾りのない店です

   私がまだ一人身の頃
   おせちを食べにおいでよと
   元旦には奥様とお二人で
   私を自宅に招いて下さいました
   茶の間には黒い艶のある九官鳥がいて
   ワッハハハ≠ニ時折大声で鳴きました
   その声はあなたの声そっくりで
   お屠蘇を頂きながら皆で笑い合ったものです

   あなたも私も越後生まれ 二人とも酉歳で
   あなたは私より一回り上でした
   二人ともそれぞれある気質を持っていました
   あなたは早稲田魂 私は國學院魂という具合

   あなたがいつか話してくれた
   尾崎士郎の『人生劇場』のストーリー
   その後 私は三州吉良を訪れ
   公園にある青成瓢吉の銅像を仰いだものです

   職場での休憩時 私が和菓子を勧め
   お茶が入りましたよ Tさん
   そう声をかけると決って断られました
   いらない 酒が不味くなるから

   こよなく洒を愛し毎夕旗亭に顔を出し
   平凡ながらも知行合一を心がけた
   あなたの生き方を思い浮かべ
   私はしみじみと今夜は一人盃を傾けています

 今号は作品について「鑑賞の手引き」と称して作者自身が解説をするという面白い趣向になっていました。紹介した作品の解説は次の通りです。

    「古い酒場で」――私の職場の亡き先輩Tさんを偲んでの作品。Tさんは私と同じ新潟県の出身
   で、私より十二歳年長。私と同じく酉歳。早稲田大学英文科卒。教職にあった。若い頃、何でもや
   ってやろうという義の <ヤロー会> を職場の仲間と組織し活躍。私は若い頃からよく面倒見てもら
   い、独身の頃、数年間毎年元旦に招待され、励まされた。時々は酒を酌み交わし人生を語り合った。

 解説は解説で良いと思いますが、やはり詩作品が本筋でしょうね。その面では「Tさん」のお人柄が佳く出ている作品だと思います。作品は結局、人間が描けるかどうかが問われるわけですが、そこは申し分ないと云えましょう。




詩・仲間ZERO12号
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2005.9.20
北海道千歳市
綾部清隆氏方「ZERO」の会 発行
非売品
 

  <目次>
   斉藤征義 それから それから
   森 れい 美学
   綾部清隆 地下水



    地下水    綾部清隆

   時の風に翻弄されたか
   水神様のお札が
   すすけた柱に
   破れたまま 貼りついていた

   かなしんでいるのは
   神様 あなたですか

   若かった母の掌から飲む
   汲みあげられた一杯の水の至福
   こどものころの思いが
   痛いほどに ゆれた

   清浄と汚染が
   交錯する地下水
   聴こえてくるのは
   よどんだ不穏な ひびき

   地下の水路には
   埋没したままの
   赤茶けた骨の叫びが
   反響している

   一滴の雫さへ含めずに
   落命していった若者たち
   時代は水すら
   乾してしまった

   地下の水脈は
   時として 人間を怖れ
   人目を避けるかのように
   分水を模索する

   コンビニの棚には
   名水と称して
   全国の水が並んでいる
   墓標のように

 水は「若かった母の掌から飲む/汲みあげられた一杯の水の至福」に象徴されるように、人間には無くてはならないものですが、現実は「清浄と汚染が/交錯する地下水」となっています。そのためか「地下の水脈は/時として 人間を怖れ/人目を避けるかのように/分水を模索する」ありさま。それにも関わらず人間の「コンビニの棚には/名水と称して/全国の水が並んでいる」。まるで「墓標のように」。
 こう書いてしまうと散文的過ぎますが、内容は切実なはずです。「かなしんでいるのは」、本来は人間であるべきなのに「神様」かもしれないとするところが、この詩の持ち味だと思います。「落命していった若者たち」は、これからも増え続けるのかもしれませんね。怖い詩です。




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