きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.8.5 長野 | ||||
戦没画学生慰霊美術館「無言館」 | ||||
2005.9.26(月)
日本ペンクラブの電子文藝館委員会が15時〜17時に事務所で開催されました。今回もいろいろなことを話し合いましたが、会員の皆様に直接関係することは以下の2点に集約されます。
(1)電子文藝館への出稿は1年1作を基本にしよう、ということ。今までは2ジャンルで計2作としていましたが、もう少し緩やかにしようではないかという意見が出ました。ただし書き下ろしは不可。いずれかで発売したり発表した実績があるものに限ります。同人誌発表作品はOKです。書き下ろしを電子文藝館に出すのはもったいない、書き下ろしはどうぞ売ってください、という作家の発想です。詩人はそんなに売れるわけはないけど、まあ、準じてもらいましょう。
(2)電子文藝館の作品に付ける略歴の生年月日データは、本人の申し出があれば生年だけにします。個人情報保護法対応です。申し出がなければ従来通り月日まで載せます。
詳細は理事会の承認を得て、いずれ『P.E.N』に載ります。出稿希望者は今のうちに対応を考えておいてください。
○詩誌『馬車』33号 | ||||
2005.10.5 | ||||
千葉市美浜区 | ||||
久宗睦子氏 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
扉詩 ・・・・朱欒 山 本 みち子
蒼い空・つゆの晴れ間 ・・・・・・・・・・・ 田 中 順 三 4
とうもろこしのトンネル ・・・・・・・・・・ 堀 田 のぞみ 8
青・うつくしい季節に ・・・・・・・・・・・ ついき ひろこ 10
歌声・ふりそそぐ雨のなかから ・・・・・・・ 高 橋 紀 子 14
知っている≠ニいうこと・爪 ・・・・・・・ 小 丸 由紀子 18
記憶の階段をおりて・白木蓮 ・・・・・・・・ 山 本 みち子 22
楠・虹 ・・・・・・・・・・・ 馬 場 晴 世 26
オレンジを握りつぶした夕暮れ・治療の顛末・・ 洋 子 30
招待席
<詩作品> もどり道 ・・・・・・・・・・・・ 海 埜 今日子 34
<詩作品> 夢の残浮のように ・・・・・・・・ 篠 崎 勝 己 36
<詩集評> 森羅万象にくるまれた孤独
――本多寿詩集『天地双身』・・・・ 柴 田 三 吉 38
<詩集評> 記憶の意味を問いつづける
丸山乃里子詩集『回転椅子』(本多企画)・・ 倉 田 茂 42
<評論> 生物文学・6 ・・・・・・・・・・・ 堀 田 のぞみ 44
芍薬・助手Aとわたし ・・・・・・・・・・・ 春 木 節 子 47
夜の公園・約束 ・・・・・・・・・・・・・・ 丸 山 乃里子 50
果樹園日乗・抄 <V>
・・・・・・・・・・・・ 本 多 寿 54
「並ぶ」・上昇・笛吹童子 ・・・・・・・・・ 久 宗 睦 子 60
MEETING ROOM 64
後 記・同人名簿
芍薬 春木節子
しろい花弁がかさなる その花芯の仄暗さ
匂わないはずのやわらかなかさなりから ただよう
鼻腔をとらえる花の 勁いあやうさ
仄かに象牙色をふくんだ
花弁の白色が 闇にふかく触れたかしょから退色し
やがて ひかりを強くしていく大気に
かすかな しめったおとをさせ
花びらを かさねながら散らしていく
残像
春木節子という詩人の美意識の、一例を示している作品だと思います。「芍薬」について詳しいわけではありませんが「勁いあやうさ」という表現に出会うと、納得してしまいますね。「かすかな しめったおと」という詩句も芍薬という花を現すのに面白い表現だと思います。最後の「残像」も、そう云えるでしょう。短い詩ですが、1行1字を流して読めない作品です。
○月刊詩誌『柵』226号 | ||||
2005.9.20 | ||||
大阪府箕面市 | ||||
詩画工房・志賀英夫氏 発行 | ||||
572円+税 | ||||
<目次>
現代詩展望 喜志邦三の芸術主義詩論 … 中村不二夫 86
「国鉄詩人」勤労詩論争の中で
〈自伝的戦後詩観(10)〉 詩の普及と多様化 … 津坂 治男 90
吉本隆明論(8) 言語と思想 … 森 徳治 94
流動する世界の中で日本の詩とは(12) 沖縄からのメッセージ … 水崎野里子 98
風見鶏・滝野澤 弘 桜庭英子 木村雅美 坂口優子 井奥行彦 102
「戦後詩誌の系譜」24昭和44年58誌追補10誌 … 中村不二夫 志賀英夫 114
詩作品□ 進 一男 石 28
小城江壮智 モズのはやにえ 4 野老比左子 詩人の炎 30
名古きよえ 六十年目の花 6 岩本 健 顔 その他 32
宗 昇 落 日 8 小沢 千恵 雷 34
川内 久栄 うら枯れゆく村 すゞ虫 10 檜山 三郎 八十年回顧 36
小島 禄琅 裏町の銭湯 12 中原 道夫 鼠 南アルプスで 38
岩崎 風子 砂少女 14 安森ソノ子 炎の着物 41
山崎 森 雨の降らぬ日は 16 立原 昌保 その日その時 44
肌勢とみ子 うしろ向きに 18 上野 潤 和蘭物語 20 47
大貫 裕司 峠道で 20 木村 利行 副工場長戦死 50
山南 律子 坂 道 22 南 邦和 龍頭山の男たち 53
前田 孝一 葬 送 24 小野 肇 まだ見ぬ夏の日 56
伍東 ちか 月 光 26 水崎野里子 焔のブーゲンビリア 58
徐 柄 鎮 砧 母像 60 織田美沙子 父の肖像 74
丸山 全友 渇 水 他 62 佐藤 勝太 節穴の眼 76
山尾 管惠 夢 64 松田 悦子 四つのおしり 78
高橋サブロー 蚊について ことばと漢字 66 若狭 雅裕 秋時雨 80
今泉 協子 星と私 68 山口 格郎 死者の数 82
鈴木 一成 僻言戯言 70 北村 愛子 「わすれないで」 84
門林 岩雄 見舞い 他 72
続・遠いうた 53 マイノリティの詩学 … 石原 武 104
小さな町の贖罪裁判 K.K.K.団に暗殺された若者たち
インドの詩人 アフターブ・セットの詩 4 … 水崎野里子・訳 108
コクトオ覚書 201 コクトオ自画像[知られざる男]21 … 三木英治 110
東日本・三冊の詩集 長谷川昭子『呼ばれて』 … 中原道夫 124
関口将夫『泣いているのは鰾かもしれない』 伊藤啓子『萌 野』
西日本・三冊の詩集 名古きよえ詩画集2005 … 佐藤勝太 128
左子真由美『愛の手帖』 四方彩瑛『飄 飄』
受贈図書 135 受贈詩誌 131 柵通信 132 身辺雑記 136
表紙絵 野口 晋 扉絵 申
錫 弼 カット 中島由夫 野口 晋 申 錫
弼
うしろ向きに 肌勢とみ子
気が付かないうちに
人生の折り返し地点を過ぎてしまったのだろうか
風向きが逆になった気がする
帰りの電車のように
見覚えのある風景ばかりが
近づいては遠ざかってゆく
思いのほか深かった川
意外にしんどかった坂道
抜けるのに手間取った茨の道
足をとられて苦しんだぬかるみ
今では車窓の風景でしかない
もうすべての災いは終わってしまったのだろうか
後向きになって
わたしは座っている
私も「気が付かないうちに/人生の折り返し地点を過ぎてしまった」気がしているのですが、それを「風向きが逆になった気がする」とするところは感覚的で佳いと思いますし、さらに「帰りの電車のように/見覚えのある風景ばかりが/近づいては遠ざかってゆく」とするところは見事です。
「もうすべての災いは終わって」ほしいですね。あとは「後向きになって」進むばかりというのはちょっと淋しい気がしますけど、それは万人に与えられた定め、受け止めるしかありません。私も含めた中年の、ある種の悟りを感じさせる作品です。
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