きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.10.9 栃木県 | ||||
道の駅「もてぎ」にて | ||||
2005.10.6(木)
午後から3時間も掛けて環境推進委員会が開催されました。有害物質の大気放出削減が主たる任務ですが、2005年度の目標がオーバーしそうで慌てています。神奈川県に届けた自主規制量は昨年より3割ほど減になっていますけど、実は排出源は増えています。それにも関わらず減らそうという目標ですから現場は大変です。しかし環境保全は社員全員の願いですし、取り組まない企業は消費者から相手にしてもらえません。
そんなわけで意気込みは高い委員会なんですが、具体策にはいま一歩足りないかな。それを寄ってたかって智恵を出そうというものです。それなりの成果はあったかな? 来月の委員会までに各職場がどれだけの成果を出せるか…。来年3月末が区切りですから、地道に活動と卓越したアイディアが求められています。
○時代駅舎氏詩集『太陽の告白』 | ||||
2005.10.1 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
2000円+税 | ||||
<目次>
逃走 ・・・・・008
女性教師の告白 ・・・・・016
血 ・・・・・020
薔薇色の街 ・・・・・024
はりつめた乳房 ・・・・・030
殻 ・・・・・034
ミスターE ・・・・・038
ペンダント ・・・・・046
月光 ・・・・・050
枯れ葉 ・・・・・054
鍵 ・・・・・056
風 ・・・・・060
第六感性 ・・・・・064
新菜(にいな) ・・・・・070
花 ・・・・・076
地上天使 ・・・・・082
空 ・・・・・088
太陽の告白 ・・・・・092
道 ・・・・・098
AMERICA ・・・・・102
ベルカント ・・・・・122
土佐のチベット ・・・・・126
製材所 ・・・・・132
眩暈 ・・・・・134
夢 ・・・・・138
海 ・・・・・142
鍵
火をつける
薄暗いジャズ喫茶の片隅が マッチの火に照
らされる
煙草を止めて十年にもなるのに 灰皿の紅で
汚れたしけもくを吸ってしまう
隣のテーブルに さっきから座っている男が
手を合わせ 涙を浮かべて祈っている事に気
付く
どうかしたのですか と声を出そうとしたら
目が覚めた
日没
家はひんやりと暗い
私は雨戸を閉め 家の中の明かりを
片っ端から点けて回る
明るくならない 私自信が暗いのだ! わか
っているのだが……
書斎に鍵を掛け 私の内にも小さな祈りの火
を入れる
感性の一番遠くに 時折遣って来て
陽炎の様に立ち上る神よ
隠れキリシタンの私は行き詰まる度に その
信仰と祈りに油を注ぎ 細々と生命の火を繋
いで来た
新しい光の発見をするでもなく 季節の上に
唯 死滅する生き物として
私には 天国の地理も住所も
電話番号も知らされていない
助けて欲しい時に 決まって留守である神を
私は半ば呪いながら祈る 祈りは何時も空を
切り あらぬ方に舞い落ちる
ジャズ喫茶の男 私が何時から祈っているの
ですかと尋ねると アルファーからオメガま
でと答えた 更に
「アナタニ必要ナモノハ全テ与エテイル 主
ヨ主ヨト遠クヲ呼ブ声ヲ聞クガ 私ハ何時
モ側ニイル……」
男はサキソフォンでエマニュル婦人のサウン
ド・トラックを吹いて見せ 片目を瞑る
役者もやってきたという著者の第一詩集です。ペンネームには時代という一つ一つの駅を乗り継ぎ、天がけて行く(帯文より)≠ニいう意味があるようです。
紹介した作品は、この詩集のひとつの典型だろうと思います。「地理も住所も/電話番号も知らされていない」「天国」と「助けて欲しい時に 決まって留守である神を」「半ば呪いながら祈る」「私」に、神は「何時/モ側ニイ」た…。まさに詩集を解く「鍵」と云えましょう。
書き方と云い装幀と云い、新しい形の詩集だと思います。今後のご活躍を祈念しています。
○土屋秋明氏詩集『続・幻夢』 | ||||
2005.11.1 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
1200円+税 | ||||
<目次>
春
春 8 遊園地 21
さくら 10 富士 23
花の妖精 11 川 24
春の女 14 蝉 27
鴨 15 万葉の道 29
鯉 16 秋 31
夢 18 秋 32
見知らぬ男
デイジャブ 34 女 49
二人のおれ 37 雨 50
葱(ねぎ) 39 あけみ 54
見知らぬ男 41 赤い花 56
ミイラ 43 蝶 58
マダムの夜 45 雲 61
男と女 47 宇宙ショー 62
仮面
自分 68 病 82
若い男 70 宴 83
時 74 過ぎ行く人 86
暗黒の夜 75 幽閉された男 88
恐怖 78 透明人間 92
仮面 80 天馬 94
幻夢
幻夢 98 風 116
ファラオ 104 マンモス 120
街 105 よく動く 122
酔いどれ酒場 106 怒 124
海の光景 108 影 127
白い道 111 豚の世界 128
兎 114 惑星衝突 132
あとがき 138
よく動く
めがねざるはよく動く
よく動くから腹が減り山ほど食う
山ほど食うためにはよく動かねばならない
動かないなまけものは一日二枚の葉っぱでこと足りる
二枚の葉っぱで足りるためには動いてはならない
人間はよく動く
山ほど食わないが旨いものを食い快楽生活をするにはよく動かねば
ならない
よく動きよく稼いで欲望を満たす
そのためには休養を減らし快楽を減らしよく動かねばならない
おもしろい作品です。二律背反と言うのでしょうね。人間については私も日頃から感じていることで、「快楽生活をする」ために「休養を減らし快楽を減らし」て働かなければならない、この矛盾! 生き方を考えさせられる作品です。
○幸松榮一氏詩集『会話』 | ||||
2005.9.23 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
1800円+税 | ||||
<目次>
木に花咲き 6
痴漢 10
夢(夢その一) 12
夢(夢その二) 14
消えた 16
江戸の空 18
無題 22
狐 24
困るなあ 26
白鳥 28
幸福問答 30
小さな水売り一家の話(一) 32
小さな水売り一家の話(二) 34
小さな水売り一家の話(三) 35
拾いネコ 38
鴛鴦 42
心中 44
夜更けの電車 50
聖家族――昔ある所に、男と女と幼い一人娘が住んでいた 54
あちらの会話 58
女房叱るが自慢にて 62
帰郷 66
あひると亭主 70
虹 74
あとがきに代えて 76
幸福問答
*
「ああおもしろかった、これでおしまい
と言って死んでいった俳人がいる」
「幸福な人だったのね」
「さあ、それはどうかな
幼少年期は天涯孤独
あと波乱万丈の人生らしい」
「でもやっぱり幸せなのよ」
「そうだな
及びもつかないか われらには」
*伊藤柏翠平成11年8月没の有名俳人
「会話詩」と銘打たれており、「あとがきに代えて」まで会話という徹底振りです。登場人物は初老の夫婦で、会話の妙に魅せられた詩集です。新しい詩の境地を切り開いていると云えましょう。
紹介した作品は「伊藤柏翠」の句が生きていますね。それを「でもやっぱり幸せなのよ」と言う夫人の洒脱さがポイントでしょう。佳い「幸福問答」で、こんな夫婦になりたとものだと思いました。
○山野井悌二氏詩集『日々の風』 | ||||
2005.9.30 | ||||
東京都新宿区 | ||||
土曜美術社出版販売刊 | ||||
2500円+税 | ||||
<目次>
日々の風
たどるみち 8 役割 10
年末年始のご挨拶 12 雪おこし 14
はるうらら 16 さくらさくら 18
旅人は 20 それぞれに 22
真昼 24 手賀沼のある街に 26
柏 28 歳月の物語 32
ふとふりかえり 42 ほそみち 44
音にすがって 46 こごえる夜に 48
夢九夜 50
私は私
あの夜から 72 豪雨の夜 74
夜の景色 76 ひととき 78
けものめいて 80 むなしくて 82
書ありて 84 ふるさと 86
26章節の寓意 96 幸福の花 122
小さな草花124
妻よ
約束 128 いつの日か 130
手紙 132 ひかりのなかに
144
ゆらめきながら 146 妻の座敷 148
盆 156 二糎の意匠 162
跋 亡き妻への挽歌抄−詩集『日々の風』によせて− 相馬大 166
あとがき 172 題字/挿画・著者
それぞれに
半月余りの旅から我が家にもどる
みなれたたたずまいがあって
誰もいない家は深閑とした風情があって
人待ち顔にうなだれた庭の草木が私を迎える
ただいまとは言わないまでも
これが我が家の家風と納得する笑みはある
雨戸を開けて風をいれる
座敷には永遠にかわらぬ妻の笑顔があって
洋間には置き忘れたような私の本がある
庭木のもっこくが黒くちぢれていた
下枝に緑が残っているが上枝は黒一色で
鑑賞する葉が無残に色褪せて重なり
閉じられて袋虫の巣となっている
今年もまた私の旅の間に虫は精をだした
あぁそれにしても少々ひどいではないか
と腕をくんで樹を見上げるのだが
なによりも虫には生きる方程式がある
袋虫も人間もおなじ生きものではないか
仕方がないかと諦めてうなずいたとき
直感がひらめいて私は唖然となった
袋虫ともっこくの間に生存の合意があって
人間だけが除け者と気がついた今更の迂闊さ
しかし生きものがそれぞれに自由に生きる
いいではないかわが家風と微笑したりして
「座敷には永遠にかわらぬ妻の笑顔があって」というフレーズでも判りますように、夫人を亡くした著者が「半月余りの旅から我が家にもど」ったときの状況を描いた作品です。「あぁそれにしても少々ひどいではないか」と「袋虫の巣」に憤慨していますが、「直感がひらめいて私は唖然となった」ところが見事です。「袋虫ともっこくの間に生存の合意があって/人間だけが除け者と気がつ」く人はそうそういるものではないでしょうね。著者の感覚の鋭さに敬服します。
「妻よ」の章は亡き夫人への鎮魂詩篇で埋められています。なかでも「手紙」は亡き夫人へ宛てた12頁に渡る自筆の詩篇で、これは圧巻でした。この1編だけでも供養になったと思います。夫婦の深い愛情が表出した詩集と云えましょう。
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