きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
道の駅「もてぎ」にて
 

2005.10.8(土)

 午前11時から日本詩人クラブ理事会、引き続いて14時から10月例会が神楽坂エミールで開かれました。私は10月1日に行われたメーリングリストによるオンライン作品研究会を報告しました。あと、この場で報告できることは第16回日本詩人クラブ新人賞の選考委員に私も任命されたことぐらいですかね。詳細は日本詩人クラブHPにも載せましたのでご覧ください。

     例会は会員3名の「詩の朗読と小スピーチ」、講演は桑原啓善氏による「日本詩人クラブ創設期の詩人たち―「前田鐡之助」―」と近藤晴彦氏による「西脇順三郎の詩的ヴイジョン」がありました。写真は身振りを交えて講演する桑原啓善氏です。この講演内容も近々『詩界通信』に載ると思います。

 ちなみに前田鐡之助は当然会員でしたが、西脇順三郎も会員でした。当時の有名詩人のほとんどが会員だったわけです。そういう著名な先達詩人に比べて、時代が違うとは云え、現会員は活躍しているかな? 私も含めて…。そんなことを考えながらお二人の講演を聴いていました。
 

 明日は朝10時に宇都宮駅に集合ですから、会が終ったあとは神田のホテルに泊りましたが、ネットで予約をしたら5000円を切っていて驚きました。もっとも、部屋にバスルームはなくて共同でしたけど、でも温泉みたいで良かったですよ。




詩誌『馴鹿』40号記念号
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2005.10.5
栃木県宇都宮市
我妻 洋氏方・tonakai 発行
500円
 

  <目次>
  (特集)−平塚幸男追悼−
   平塚幸男略年譜
   最終作品
   献詩 さよならモンシロチョウ          …… 和気康之 3
      旅人                   …… 青柳晶子 5
      風の詩人―平塚幸男詩集『流れの淵で』より …… 我妻 洋 6

  (作 品)
   高原山 ほか十二編……大野 敏 9  だんご蜂 …… 和気勇雄 15
   この手      ……入田一慧 20  痛み   ……矢口志津江 23
   晴れ間      ……青柳晶子 25  アリジゴク…… 和気康之 27
   仙人たらん    ……我妻 洋 29
  (論 考)   描く理由(絵画を考える)     …… 青山幸夫 12
  (エッセイ欄) 待合室の楽しみ          ……矢口志津江 17
          美味求真             …… 和気康之 19
   あとがき                    表紙 青山幸夫



    冬の蝶    平塚幸男

   ふと庭先を見ると
   蝶が
   無いバラの花の周りを
   飛んでいる
   死に行く
   蝶だ

     冬の真ん中

   蝶は
   鳥の羽毛だったか
   何か底の知れない
   悲しい妄想を抱いて
   風に運ばれて

     冬の真ん中

   ふとバラの花を見ると
   バラの花は無い
   蝶を見ると
   無いバラの花が一枚
   クモの糸にかかって

     冬の真ん中

   蝶は
   何か底の知れない
   悲しい妄想を抱いて
   風に運ばれて

     冬の真ん中

   今は、蝶よ
   屍のまま過ごせ
   世の中はまちがいなく冬
   うさんくさい

     冬の真ん中

   なんて季節は
   四季には無い
   何か悲しい妄想を抱いて
   風に運ばれて
   蝶よ
   お前が生きた短い時間なら
   今なお(私にも)
   永遠に続いているのに

 紹介した作品は今年5月に亡くなった平塚幸男さんの最終作品で、今年1月刊行の『馴鹿』38号に載ったものだそうです。年齢を見て驚きましたが、1949年生で私と同学年でした。享年55歳。あと1週間で56歳になるという日に亡くなっていました。自分の年齢を考えると、あまりにも若いご逝去だと思います。
 作品は繰り返される「冬の真ん中」という詩語が印象深く、「お前が生きた短い時間なら」それは「永遠に続いている」という時間論としてもおもしろい着眼点と云えましょう。「(私にも)」というところに強い意志を感じますが( )で書いている意味も考えてしまう作品です。ご冥福をお祈りいたします。




季刊詩誌『裸人』24号
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2005.10.1
千葉県佐原市
五喜田正巳氏方・裸人の会 発行
500円
 

  <目次>
   ■詩     ホイッスルは握るもの? ―― 禿  慶子 4
               汗が燃える街 ― くろこようこ 7
                  明かり ― くろこようこ 12
                  父の庭 ―― 水崎野里子 15
                 連理の鶴 ―― 水崎野里子 18
   ■エッセイ 沢田教一が遺したベトナム ―― 大石 親子 20
            樋口一葉の短歌と… ―― 水崎野里子 24
              書かでものこと ―― 五喜田正巳 27
   ■詩            小麦さん ―― 大石 親子 28
                 明日の声 ―― 五喜田正巳 30
                夢を見る骨 ―― 五喜田正巳 32
   ■雑 記         受贈書など ―――――――― 34
                   後記 ―――――――― 35
                       ☆
                 表紙 ―――― 森 五貴雄



    明日の声    五喜田正巳

   遠くの方から来る風のような
   行き場のない昨日の魂のような

   眠ろうとする私を押しとどめる影
   原野はとうに日暮れて
   空は天蓋となり私を待っている

   いつの間に巣を組んだのか
   耳の底で蝉が鳴いている
   セーラー服が蛾の翅にからまり
   折れたパラソルが捨てられて
   あなたも私も老いずいた

   ひとり二階で眠る私
   あなたと居るように横を向いて
   片方の耳で地の音を
   片方の耳で天の音を
   ゆきあいの雲は
   衣ずれのように艶めかしい

   明日があるような
   明日がないような
   シャーマンの貌をして
   秋の窓から魂がささやく

 「明日の声」の豊富なイメージに感心しています。「遠くの方から来る風のような」から始まって、すべての喩が「明日の声」と採ってもよいと思います。第3連が非常に魅力的で、ここも例外ではないでしょう。
 「横を向いて」「眠る」ことは「片方の耳で地の音を/片方の耳で天の音を」聴くことだ、という詩句も納得できます。今までそんな風に考えたことはありませんが、確かに…。私の場合「衣ずれのように艶めかしい」「ゆきあいの雲」が出てこなかったのは、そこまでの感覚が無かったからなんでしょうね。「秋の窓から魂がささやく」ことに耳を傾けてみたいと思います。




季刊・詩と童謡『ぎんなん』54号
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2005.10.1
大阪府豊中市
島田陽子氏方・ぎんなんの会 発行
400円
 

  <目次>
   ぼくはハリネズミだ/ゴム風船/なみだ        中 島 和 子 1
   私は/飛行機                    中 野 たき子 2
   あやかちゃんのあやとり/都会のすずめ        名 古 きよえ 3
   いのちほしい                    西 浦 ひろき 4
   ふしぎなパン/ブーメラン/リボン          藤 本 美智子 5
   おーい! どこにいるの!/わたしは天才チンパンジー 前 山 敬 子 6
   万願寺とうがらし                  萬里小路 和美 7
   おてだま                      萬里小路 万希 7
   こねこ/うめぼしの赤ちゃん             むらせ ともこ 8
   なるもんか なるもんか               も り・け ん 9
   さがしもの                     ゆうき あ い 10
   かなしいポニーテール/パパのコップ         池 田 直 恵 11
   ぼくの猫語/ワカンナイ               いたいせいいち 12
   月光/冠                      井 上 良 子 13
   日本語/試験前日/文化祭前日/線香花火       柿 本 香 苗 14
   ポリープのためのレクイエム             河 野 幹 雄 15
   毎日/「の」                    小 林 育 子 16
   出会い                       相 良 由貴子 17
   退院                        島 田 陽 子 18
   せみ/ある日                    すぎもとれいこ 19
   まちがいないわ/雪と山               富 岡 み ち 20
   母の日に/夏休み鉄道                富 田 栄 子 21
                      本の散歩道  畑 中・島 田 22
                     かふぇてらす 池内・柿本・西浦 24
                INFORMATION          25
                       編集後記          26
                     表紙デザイン  卯 月 ま お



    パパのコップ    池田直恵

   パパが まいにち
   つかうコップに
   ぼくのミルクを いれてみた

   きっとコップは
   まちがえるだろう
   パパしか つかったことがないんだから
   おさけしか はいったことがないんだから

   あーあ ざんねん
   ちゃんと ミルクのあじがした
   ぼく よっぱらうを
   したかったのに

   だまされなかったな
   コップ

 「おさけしか はいったことがない」「コップ」だから「まちがえ」て「ミルク」がお酒になってしまうかもしれない、というユニークな発想に驚きます。「ぼく」の視点しかありませんから、正確な意味でコップが擬人化されているわけではありませんけど、この手法もおもしろいですね。「ぼく よっぱらうを/したかったのに」は日本語になっていませんけど、これはこれで判るし、味があります。3歳児あたりを想定していると思いますが、うまく表現できた作品だと思いました。




隔月刊詩誌『叢生』140号
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2005.10.1
大阪府豊中市
島田陽子氏方・叢生詩社 発行
400円
 

  <目次>
   
   自画像     八ッ口生子 1   B         山本  衞 2
   夫婦愛     由良 恵介 3   六十年日の瀬音   吉川 朔子 4
   八月の秋刀魚  江口  節 5   あの日 あの時(一) 秋野 光子 6
   花火      姨嶋とし子 8   運命(さだめ)    木下 幸三 9
   四行連発 1  佐山  啓 10   水にんげん     島田 陽子 11
   明るい処    下村 和子 12   提灯        曽我部昭美 13
   天の竪琴    原  和子 14   うつろい 他    福岡 公子 15
   巡り会い(2) 藤谷恵一郎 16   もうあれへん    麦  朝夫 17

            本の時間 18
            小  径 19
            編集後記 20       表紙・題字 前原 孝治
      同人住所録・例会案内 21       絵     広瀬 兼二



    秩序    福岡公子

   この辺りでは
   今のところ

   梅
   桃
   桜

   梅
   桃
   桜

   と
   咲き姑める

   空の青さのうつろいには
   この順序が
   似合っている

 思わず「梅」の時期の「空の青さ」、「桃」の時期の「空の青さ」、「桜」の時期の「空の青さ」と「うつろい」を思い浮かべてしまいました。確かに少しずつ「うつろ」っていますね。見事な観察眼だと思います。「梅/桃/桜」と二度繰り返すのは毎年の「秩序」だった「順序」を意味していると思います。佳い感覚と云えましょう。色紙にでも書きたいような作品です。




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