きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
   051009.JPG     
 
 
 
2005.10.9 栃木県
道の駅「もてぎ」にて
 

2005.10.9(日)

 栃木県下と東京近郊の詩人有志が集まって「詩人たちのとちぎ鮎ツアー」という催しが行われました。鮎を食べたいという水島美津江さんのわがまま(^^; に皆なが付き合った、というところでしょうかね。で、当然幹事は水島さん。それに賛同した栃木の神山暁美さん。神山さんが幹事なら当然、綾部健二さん。水島さんが言い出したことには無自覚・無反省・条件反射的に引き摺られる村山精二(^^; 。こんないつもの4人が好き勝手やっているのに、集まってくれた人はなんと26名。当初はマイクロバスのつもりでしたが大型になってしまいました。

 栃木勢幹事が作ってくれた旅程は、宇都宮駅(午前10時集合)→ツインリンク茂木→道の駅「もてぎ」→須藤屋飯店(鮎昼食・詩朗読・カラオケ)→宮内庁御料牧場(通りすがりに見るだけ)→宇都宮駅(午後5時・解散)というものでした。写真で紹介しましょう。

     まず最初の写真はこちらです。ホンダ・コレクションホール「ツインリンク茂木」にあったオートバイで、ホンダCB250です。40年ほど前に流行ったオートバイ(バイクにあらず!あえて言うなら単車(^^;)で、私が高校生の頃乗っていたものですから、懐かしかったですね。ちなみに当時は無免許運転で(^^;;; 自動二輪を取ったのは22歳になってからでした。50ccのバイクは中学生から乗っていました、、、って、自慢できませんね。

 この後は
道の駅「もてぎ」に行ったのですが、そこで撮ったSLの写真は上の今月のトップページをご覧ください。
  051009-1.JPG
    051009-3.JPG    そしてこちらは須藤屋飯店で昼食後のカラオケ。もちろんこの前に朗読会をやりましたが、それは割愛します。鮎もおいしかった、差し入れしてもらった「八海山」もおいしくて、それだけで充分だったのですが、私もカラオケを楽しませてもらいました。いつも通り、クラーイ「黒の舟歌」を歌いましたから、やはり場違いで顰蹙モノでしたね(^^;
    051009-2.JPG

 ちょっと重くなってゴメンナサイ。鮎も食べ終って、朗読もカラオケも終って全員集合です。栃木勢17名、東京勢・近郊勢9名という陣容でした。皆さん、楽しい一日をありがとうございました!




個人詩誌『水の呪文』41号
      mizu no jyumon 41.JPG    
 
 
 
 
 
2005.10.15
群馬県北群馬郡榛東村
富沢 智氏 発行
400円
 

  <目次>
   詩    あぶあぶ 富沢 智 2
   エッセイ ソウルへ(「還流日誌」の始めに) 富沢 智 4
   独酒   12



    あぶあぶ    富沢 智

   死に神が腰掛けているような
   鎌のかたちした月が西の空にあって
   もちろん夜明け前
   ふわふわと家々をかすめて
   飛んで行くのはいいものです

   ぼくはそのときどこにいるかというと
   自分の家の
   妻の寝ているシングルベッドのとなり
   やや硬めのセミダブルベッドで
   どんな顔をしているのやら

   まあ お互い
   はっきりと見つめ合ったら
   事態はややこしくなってしまいますから
   知らぬふりして
   飛んで行きましょう

   みんなこんなに無防備に
   この時分には眠りこけているなんて
   空からばらばらと毒撒いてやりましょうね
   もっとよく眠れますように

   詩は真面目な冒険の一つです
   ときどきこう言っておかないと
   いいですか
   何も無いということになってしまいますよ
   そのように詩は滅びているのです

   ぼくがこうして
   それだけでは何でもないことを
   しているのも
   ちぇ
   まあ
   なまぐさいものほしさですがね

 「死に神が腰掛けているような/鎌のかたちした月」というプロローグが作品全体の性格を示しているように思います。それを直接受けているわけではありませんが「詩は真面目な冒険の一つです」という転調は、富沢詩の真骨頂と云えるでしょう。「そのように詩は滅びているのです」という指摘は面白いけど気になるフレーズです。
 エッセイ「ソウルへ」は韓国旅行記ですが、富沢節で描かれていて、詩と言っても良いでしょう。HP「
榛名まほろば」にも掲載されていますから、よろしかったら読んでみてください。




詩誌『左庭』5号
     satei 5.JPG     
 
 
 
 
 
2005.10.1
京都市右京区
山口賀代子氏 発行
500円
 

  <目次>
   俳句  暴力がまだうつくしかりし日 江里 昭彦 …2
   詩   遺伝子           山口賀代子 …6
       ダミアを聴いた日      山口賀代子 …10
   【さていのうと】
      ・京都のひと         山口賀代子 …14
      ・祀園祭裏事情        江里 昭彦 …15
   あとがき              …………………16
                  表紙画…森田道子「花」



     遺伝子    山口賀代子

      「ああこんな息子が俺にはいたのか、俺の血がこのちっぽけな躯と
      魂に受け継がれてゆくのかという熱い思いが不意に襲ってきた嵐の
      ように腹の底から込み上げてくる」(「ひたひたと」−松浦寿輝)
 
   もういつ死んでもいいのだときみはいう
   こども二人元気にそだって
   ぼくの遺伝子は確実に伝わっているから
   役目はおわったようなものだと

   水中で蛙に背後からだきつかれ泳ぐ魚をみたことがある
   繁殖期の蛙をテレビがうつしだしたときのこと
   雌蛙にめぐりあえなかった雄蛙は
   動いているものはすべて雌蛙だと勘違いしてとびつき
   いったんだきついたらはなれないのだという
   突然背後から何ともしれないものにおそわれ
   ふりおとそうとしてもふりおとせなかったあの魚の驚きは
   いかなものであったか
   無事魚としての生をながらえたものかとあんじもしたが
   子孫を残すことに死に物狂いで励む雄蛙の心情をおもうと
   笑い事ではなく
   ヒトのオスもあのようにして子孫を残すことを欲するのか

   繁殖期がなく子孫を残すこと以外の目的で交尾するのは
   霊長類ヒト科ヒト属ホモサピエンスだけらしい
   死闘をつくしメスを得て放精しただけで一生を終える魚も
   いる

   その近くで便乗放精する力弱い魚たち
   生き物のオスは強いもの知恵あるものだけが子孫を残して
   ゆく
   メスに喰われるオスもいるがそれでも子孫はのこる

   義弟の父は長兄が戦死したのち
   意に添わぬひとまわりも年嵩の義柿との婚姻を強要され
   家を継がされたと恨み
   実子である末の息子のみをわが子として可愛がるので
   妻や子や親族から疎まれていた

   戦後混血の孤児を育てたひとがいた
   南の島で里親となり子を育てるひとがいる
   子連れの男と再婚した友は連れあいの娘を育て嫁がせ
   
血のつながらぬ孫から婆(ばーば)とよばれることに楽しみをみだし
   ている

   遺伝子なんて蓮華の蜜がかすかに蓮華の味がし
   柚子の蜜が柚子の香りする程度のものではないかと
   女であるわたしはときどきおもうのだが
   きみの遺伝子は
   得体のしれない苦い蜜のようにとびかっているのかもしれ
   ないね

 「水中で蛙に背後からだきつかれ泳ぐ魚」というのは初めて知りましたが、「子孫を残すことに死に物狂いで励む雄蛙の心情」は「ヒトのオス」である私にはよく判ります。性犯罪を犯す若い男は跡を断ちませんが、「遺伝子」という観点で見ると当然なんでしょうね。犯罪に走るか走らないかは本当に紙一重なんです、と若い男を経験した立場からは言えます。このトシになってようやく「遺伝子なんて蓮華の蜜がかすかに蓮華の味がし/柚子の蜜が柚子の香りする程度のもの」と納得できますが、まあ、いろいろありました(^^; 女性と男性では、やはり違うのでしょう。「遺伝子」という観点でモノを見る、ということを考えさせられた作品です。




詩とエッセイ『回転木馬』117号
     kaiten mokuba 117.JPG     
 
 
 
 
 
2005.9.30
千葉市花見川区
鈴木 俊氏 発行
非売品
 

  <目次>
   詩    誕生日            朝倉 宏哉 4
        お墓道 桜道         川原 公子 7
        母にも言わなかったこと          8
        感謝の言葉          小笹いずみ 11
        こわれた器                12
   エッセイ 仕立屋気質(かたぎ)      大川 節子 14
        奥只見の旅          杉  裕子 17
   詩    かもめ達は          佐野 ヤ子 21
        夏の庭            つむり葉月 22
   エッセイ 澤地久枝さんのこと      田中 ひさ 25
   詩    桜              中村 弘子 27
        白百合                  28
        ウ ソ            長沢 矩子 31
   エッセイ 約束の地・国東半島にて    橋本 榮子 34
        迷い込んだ狸君        那須 信子 38
   詩    庭の樹木           村上 久江 43
        小さな獣                 44
        トマト                  46
        幼稚な質問          鈴木  俊 49
        スイス人の俳句              51
         
愛知万博スイス・パヴィリヨンに展示された作品から
        受贈書籍・詩誌等御礼           53
        編集後記                 55



    かもめ達は    佐野ヤ子

   朝
   まだ暗い犬吠埼の海面から紅の太陽が頭を出す
   それが合図だった
   十五・六羽でグループを作ったかもめ達

   同じ方向にまっしぐらに飛んで行く
   数百羽はいたか
   声もなく
   ヒッチコックの「鳥」を思い出させるように

   昼
   銚子港に行く
   おびただしい数のかもめ達がのんびり防波堤を占領している
   今朝の異様さが嘘のよう
   聞けばかもめ達の日日
(ひび)の行動とのこと
   なあんだ そうだったんだ

   あ 防波現にわたしもいる
   左から三十番目あたりに

 最終連が佳いですね。「かもめ達」と同じ目線になっている、目線を低くしていると感じられ好感を持ちます。「三十番目あたり」という数字も「数百羽」に対して謙虚で、ここも好感を覚えます。それまでの連は情景描写が主で、謂わば散文的だったのですが、この最終連で詩になったと云えましょう。作者のお人柄が見える作品だと思いました。




詩誌『よこはま野火』49号
     yokohama nobi 49.JPG     
 
 
 
 
 
2005.10.1
横浜市戸塚区
加藤弘子氏方・よこはま野火の会 発行
500円
 

  <目次>
   恩師             森下 久枝 4
   ミナト・ミライ二〇〇五年 夏 菅野 眞砂 6
   み れ ん          真島 泰子 8
   泉のほとり          阪井 弘子 10
   記憶             加藤 弘子 12
   池             はんだゆきこ 14
   杏              唐澤 瑞穂 16
   雀              疋田  澄 18
   かわせみ           馬場 晴世 20
   「夜のカフェ」        宮内すま子 22
   にぎり飯           浜田 昌子 24
   鬼婆になった         進藤いつ子 26
          *   *
     よこはま野火の会近況 編集後記    28
     表紙 若山 憲



    ミナト・ミライ二〇〇五年 夏    菅野眞砂

   地下五階のみなとみらい♂wからエスカレーターを上る
   運河に沿って狗尾草
(えのころぐさ)が夕日に金色の波を立てている
   河は青く銀色に輝きながら風をうけている

   明治二十九年完成のドックは
   ドックヤードガーデンと名付けられ国の重要文化財だ
   近代化遺産の階段をくだりドックの底をあるく
   船の底が触れた位置・エレベーターなら地下の三階
   古い石積みに囲まれた空間は谷のように静かだ
   新しい鉄道は東京近郊の客をザンブと運んでくるが
   ここに人はいない

   ハイカラに修復された赤レンガ倉庫が窓々に灯りをつけ
   澄まし顔に並んでいる
   中は商魂という名の香水を撒かれた人とモノが詰まっている
   六十年前の五月二十九日
   すき間なく爆撃機を映したこの海
   白い大型の遊覧船を浮かべている

   中華街・モトマチ・港のみえる丘
   日常から切り離された空間
   この海のつづきに戦艦が並び
   爆撃の絶えない地があることを忘れさせる

   茜色の空に浮かぶ薄墨色の富士は太古に変らない
   海の中に創られた新しい街が夜に彩られる
   花火を模したイルミネーションが
   パッ パッ チカッと点滅をくり返す

 「ドックヤードガーデン」は私も好きな場所ですので、たまに訪れます。しかし「国の重要文化財」とは知りませんでした。どこかな書いてあったか無かったか…。そんなことを書きたてないのが横浜の良いところかもしれません。
 「六十年前の五月二十九日/すき間なく爆撃機を映したこの海」をハマっ子は忘れていませんね。それだけでなく「この海のつづきに戦艦が並び/爆撃の絶えない地があること」までちゃんと把握しています。この感覚が生粋のハマっ子だろうと思います。「パッ パッ チカッ」は、遠くの爆撃の火かもしれません。




詩誌『木々』32号
     kigi 32.JPG     
 
 
 
 
 
2005.10.25
東京都小平市
小林憲子氏方・木々の会 発行
700円
 

  <目次>
  〈扉〉三月の雪の踊り子………中山 直子 1   旗を焼く………………………………伊藤 桂一 48
  ●抒情詩への道(一)…………鈴木  亨 2   晩夏……………………………………菊地 貞三 49
   鳩………………………………菊田  守 16   リリーエン・タンツ…………………川田 靖子 50
   花いちもんめ…………………伊勢山 峻 18   八月の底………………………………比留間一成 52
   狐さん…………………………戸田 正敏 19   菜の花の記……………………………内山登美子 54
   こんな一日には………………岡田壽美榮 20   庭………………………………………宮田 澄子 56
   しいんと冷えた土……………岩井 礼子 21   針槐の林で……………………………来栖美津子 57
   合歓の花………………………久宗 睦子 22   腫れもの………………………………春木 節子 58
   はなばなの……………………山本みち子 24   残照……………………………………弓削緋紗子 59
   ヒヨドリ………………………小林 憲子 26   白砂青松………………………………天野さくら 60
   望郷……………………………関野 宏子 28   ドーマン・セーマン…………………石渡あおい 61
   今日も一日が暮れる…………宮城 昭子 29   花火の夜………………………………所  立子 62
   六十年前の遠い夏の思い出…服部 光中 30   おんな 三界に………………………舟木 邦子 64
   お地蔵さんと鳩………………石井真智子 31   垣根ごしにそそがれる水が…………越路美代子 66
   クマノミのように……………柳内やすこ 32   遊び……………………………………鈴木  亨 68
   盆参り…………………………立川 英明 34  ●「ハンブルクの
   スター・サファイア…………細野 幸子 36     戦争展」に寄せて………ホルスト−ラルフ 69
   五月の光景……………………松沢  徹 38  ●『春の星』を読んで……………ジルケ−ラルフ 70
   古いバッグを…………………原 利代子 39  ●静かに立つこと………………………草野 信子 72
  ●萩原葉子さんとのことなど…舟越 道子 40  ●「中位」など…………………………原 利代子 74
  ●萩原葉子さんを悼む…………比留間一成 42  ●ロングセラー全集……………………服部 光中 76
  ●木の下さんの家………………中山 直子 45  〈木の椅子〉呆れはてた詩壇?意識…菊地 貞三 79



    こんな一日には    岡田壽美榮

   蝉の なきがらを赤マンマの道に
   そっと置いてきた

   傷ついているから夏の日暮の海に浸る
   海は小さな欲望を流して呉れる
             
ゆう
   手をあらう 飛び散る夕ベの光

   もたれかかっても重いと言わない椅子や
   ほんの少し空気の揺れがあるらしく
   寝乍ら耳を立てた犬
   静まっている部屋
   ラベンダーは何の尻尾だろう

   スゥイッチボンでテレビも消せるが
   世界も消せる

   手抜き工事は事故を生む
   手抜き子育ては事件を生む

   涙が出るから涙を止める薬を出す
   医師は変だ
   涙が何故出るのか を確めて
   涙の原因を除いて呉れる医師がいい

 後半の3連が佳いですね。「スゥイッチボンでテレビも消せるが/世界も消せる」でドキリ。「手抜き子育ては事件を生む」でまたまたドキリ。圧巻は最終連です。本当に「涙の原因を除いて呉れる医師」はなかなかいません。ほとんどが対処療法に終始しています。対処療法の処方はコンピュータに入っていて、私も医者と一緒に覗き込んだりしますけど、あれはデータの蓄積なので、専門用語の意味さえ知れば素人が見てもよく判ります。それはそれで大事な人類の蓄積なんですが、患者が本当に知りたいことは原因なんですけどね…。そこをちゃんと押えた作品で、胸のすく思いをしました。




   back(10月の部屋へ戻る)

   
home