きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.10.9 栃木県 | ||||
道の駅「もてぎ」にて | ||||
2005.10.11(火)
体調が悪くて困っています。風邪かと思って先週は会社の健康管理センターに行って薬をもらったのですが、一向に治りません。夜中の2時から4時にかけて咳き込みがひどく、寝ていられないありさま。寝不足が続いて、結構シンドイ思いをしています。熱はありませんから、ただの風邪ではないようです。いただいた本がなかなか読めないのは、そのせいにしよう(^^;
○季刊文芸誌『南方手帖』81号 | ||||
2005.10.1 | ||||
高知県吾川郡いの町 | ||||
南方荘・坂本 稔氏 発行 | ||||
763円+税 | ||||
<目次>
【詩】 【随筆】
ソノ時ヲ… 坂本 稔 4 ウィーン遠からじ(13) 高橋 努・悦子 12
真夜中の鳥 平井広恵 6 ウィーン通信(8) 高橋幸子 16
愛国無罪 玉井哲夫 8 南方荘漫筆(53) 坂本 稔 17
ひと粒のぶどうの種 岡 隆夫 10 【俳句】
【短歌】 水うまき山 甲藤卓雄 22
母のまぼろし 梅原皆子 2 【読者作品】
南方の窓(33) 燃える星たちの九月 自由な私=@ さかいたもつ 24
折々のうた 田井浩子 24
◇題字・竹内蒼空/表紙装画・土佐義和
愛国無罪 玉井哲夫
卒業式で
国旗の掲揚と
国歌の斉唱を強制することは
当然のことではありませんか
生徒が自主的に式を執り行うなど
もってのほかです
起立しない教師を処罰し
生徒たちの歌声の音量を計測するのも
当然のことです
愛国心は
自己愛ですから
己れだけを愛する心を育てるために
自虐的歴史観は排除せねばなりません
国家を愛せない者に
自分を愛せるわけがないでしょう
ですから
国家のために死んだ人だけを祀る神社に
一国の総理が参拝するのも当然です
日本軍に殺された中国人のことなど教えても
反日分子になるだけではありませんか
過去のことは忘れて
早く武力行使できるようにしてください
隣国に信頼されていなくても
国際社会に貢献するためには
常任理事国にならねばならないんです
そのためにも
外来の第九条を唾棄して
自衛隊を国軍として憲法に明記すべきです
いや
同じ外来でも漢字は役に立っていますから
唾棄しなくてもよろしいでしょう
それはともかく
少なくともアメリカ並みの軍事予算で
どんな敵にも負けないように
核兵器の二、三千発は製造してください
これさえあれば
第二のヒロシマ、ナガサキに
いつだってしてやれましょう
七三一部隊が研究していた細菌兵器も
オームが造ったサリンのような毒ガスも
やっぱり
最低限の兵器として必要ですよ
市民防衛の観点からは
各家庭に
拳銃と手榴弾と防毒マスクを配布すべきです
念のために
自殺用の青酸カリもお願いします
回覧板で使い方を周知すればいいでしょう
もちろん
武器や備品は全部国産でお願いします
他国の企業を儲けさせるのは
愛山国精神に反しますからね
それから
敵の侵入を防ぐためにも
すべての海岸線を
コンクリート壁で囲わねばなりません
白砂青松なんて何の役に立ちますか
テロリストが上陸するだけですよ
抗日有理
愛国無罪
国を愛していれば
何をしても無罪なんですよ
なかなかいい言葉だと思いませんか
我々も見習いましょうよ
御覧ください
新しいことは
何も起こってはいませんよ
同じことが
繰り返されているだけです
いいじゃないですか
何回繰り返そうと
それが人間の歴史というものですよ
もちろんアイロニー作品ですが、私は「各家庭に/拳銃と手榴弾と防毒マスクを配布すべきです」という箇所でドキリとしました。世界ではそういう家庭があるのは事実です。その結果として銃による犯罪が多発していることを見聞きしていると、冗談では済まされないものを感じます。
最終部分が哀しいですね。「新しいことは/何も起こってはいませんよ/同じことが/繰り返されているだけです」、「それが人間の歴史というものですよ」と言われてしまうと、その通りであるだけに力が抜けるものを感じます。逆説と捉えるにはあまりにも説得力のある詩語で、暗澹とした気持になった作品です。
○詩の雑誌『いのちの籠』創刊号 | ||||
2005.10.10 | ||||
神奈川県鎌倉市 | ||||
羽生康二氏方・戦争と平和を考える詩の会 発行 | ||||
350円 | ||||
<目次>
【詩】
記憶‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥山野 なつみ 2 空‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥真田 かずこ 3
ハイヒールと花と裸足‥‥‥‥‥‥‥森田 進 4 福もろて帰るやろ‥‥‥‥‥‥麦 朝夫 5
春楡‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥中 正敏 6 くらやみ坂‥‥‥‥‥‥‥‥甲田 四郎 6
星の舞踏会‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥佐相 憲一 8 月見峠‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥季 美子 9
イケイケ ドンドン‥‥‥‥‥‥‥堀場 清子 10 雷鳴の中で‥‥‥‥‥‥‥‥都月 次郎 11
八月になると‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥崔 龍源 12 人間の学校
その111‥‥‥‥井元 霧彦 13
こどもたち‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥古賀 博文 14 母の残したもの‥‥‥‥‥‥田中 郁子 15
花の街で‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥白根 厚子 16 もしも‥‥‥‥‥‥‥‥しまざき ふみ 17
君が代‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大河原 巌 18 橋‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥三方 克 19
盂蘭盆会‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥三井 庄二 20 炎に追われて‥‥‥‥‥‥‥門田 照子 22
逆立ちした戦後処理‥‥‥‥‥‥‥池田 錬二 23 不祥事‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥葵生川 玲 25
兵士は顔を持たない‥‥‥‥‥‥‥江部 俊夫 26 隠す‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥瀬野 とし 27
写真に問う‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥稲木 信夫 28 焼け野原‥‥‥‥‥‥‥‥‥成瀬 峰子 29
戦争の後‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥篠原 中子 30 千年‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥白石 祐子 31
マンガになったピカドン‥‥‥‥‥友永 淳子 32 今昔片々‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥日高 滋 33
年号のこと/一本のえんぴつ/わ‥山岡 和範 34
【エッセイ】
「マルタ」について‥‥‥‥‥‥‥池田 久子 36 北関大捷碑について‥‥‥‥葵生川 玲 37
憲法九条とオープンシティ‥‥‥‥江部 俊夫 38 国は国民を守らない‥‥‥‥羽生 康二 40
あとがき‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥43 会員名簿‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥45
創刊記念の会のお知らせ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥45 詩・いのちの籠(中 正敏)‥‥‥‥表紙裏
いのちの籠 中 正敏
人は水にすぎぬものとしても
水が漏れぬよう
いのちの籠をたんねんに編む
編み糸や葭 ひご あじろなどの竹類
もので編んでは隙きまが洩らす
自身の深い井戸底
暗いおもいが光の芒で籠を編む
遮るオーバー・ハングの壁は
爪で剥がして爪をそぎ
血まみれになって空を捜して
千年 あるいは万年疑って なお
ピアノ線よりしなやかに弾み
まっすぐ伸びる光の糸で
億年 人はいのちの籠を編みつづける
(二〇〇五年四月)
故鈴木初江さんがやっていた「戦争に反対する詩人の会」が2002年1月に解散したあと「戦争と平和と詩の問題を話し合う会を何らかの形でもちたい、と考える人たちが集まった(あとがきより)」会の雑誌の創刊号です。誌名は紹介した中正敏さんの作品「いのちの籠」から採ったそうです。
第1連が佳いですね。「いのちの籠をたんねんに編む」という中さんの姿勢がよく出ている作品と云えましょう。それを誌名とした会の見識の高さに敬服します。今後のご活躍を祈念しています。
○隔月刊誌『新・原詩人』2号 | ||||
2005.10 | ||||
東京都多摩市 | ||||
江原茂雄氏方 新・原詩人事務所 発行 | ||||
200円 | ||||
<目次>
井之川巨さん逝去を惜しむ 和田喜太郎 1
状況詩のほうへ――追悼 井之川巨さん 下前幸一 1
短歌 書かねば 大田敦子 1
詩 この旅は続く 佐相憲一 2 ぶかぶか 竹内 元 2
へたな詩 井之川けいこ 2 身勝って者 丸山全友 2
旅の記憶 稲木豊實 2 孤独の意味 萩ルイ子 3
モスタルの橋 江原茂雄 3 大地がゆれた 墨 微 4
八月に 長谷川修児 4 悪夢 伊藤眞司 4
みんな生きている 橘 安純 5
井之川巨さん、いままでありがとうございました 丸山未来子 3
川柳における客観・主観 安藤裕三 5
川柳 乱 鬼龍 6
ズドンとやられぬために 山本日出夫 6
読者の声 5
事務局より 6
悪夢 伊藤眞司
島ぜんたいが戦場となった沖縄
戦い終わり散乱する彼我の死体 目のあたり
首のない 手のない 両足のない 四散した血の死体
米軍の戦死体は長さ二メートル深さ二メートルの穴掘り
一体ずつ埋め十字架を立てずらっと美しく線をそろえた
日本側の軍や住民の死体はブルドーザーで
荒々しく谷に押し落とされ
こわれた砲や銃、廃棄物といっしょにごろごろ落とす
戦場処理に使役された捕虜の代表が
「せめて大きな穴を掘って
日本側の屍を合葬させてください」
と訴えたら忽ち銃殺され同じように谷に投げ込まれた
米軍基地となった広大なアスファルトの下には
いまなおやすらがぬ無数の骨が呻き軋む音がするのだ
語り部として戦争の悲惨を話す婆(ばば)の片目
砲弾の破片でつぶされた面貌を私はしずかに見る
婆はなおも語る
火炎放射器で焼かれた洞窟の中の人々
ひめゆり学徒の胸ポケットに焼け残っていた父母の写真
死んだ赤ん坊を抱いてうずくまる
血だらけ海だらけの母親
不発弾の処理にはまだ百年もかかるという
かつて日本軍も勝ち進んだ中国や南方で
どのような残虐をはたらいたか
人間はみな骨の上を歩いているのだ
こおろぎの音色と私の耳なりとごっちゃになって
喜屋武岬の怒涛がひびく真夜中である
怒涛をつらぬいて女や男の悲鳴がつぎつぎ落下する
六〇年前の悲鳴がいまも
聞こえる
※参考文献=大沼洸著(紅ファクトリー)
『岡部伊都子へのめぐる想い ▼桜 レクイエム』
(「人間詩歌」371号より)
私は戦後生まれですけど、太平洋戦争や沖縄戦のことは色々な書物を読んでいますから、かなり判っていた気でいましたが、第2連・3連のような状態だったとは知りませんでした。「不発弾の処理にはまだ百年もかかるという」ことも初めて知り、不明を恥じています。
この作品のすごいところは被害者としての沖縄だけでなく「かつて日本軍も勝ち進んだ中国や南方で/どのような残虐をはたらいたか」と問いかけているところにあると思います。そして「人間はみな骨の上を歩いているのだ」ということを改めて認識しました。「六〇年前の悲鳴がいまも/聞こえる」ことを考えさせられた作品です。
○詩誌『ONL』81号 | ||||
2005.9.30 | ||||
高知県四万十市 | ||||
山本 衞氏 発行 | ||||
350円 | ||||
<目次>
現代詩作品
俳句作品
山下千恵子 止まった時 1 吉川 香乃葉 夏が逝く 19
大山 喬二 石を投げる 2 瀬戸谷はるか 埴輪の目 19
草原の少年 2
河内 良澄 ふるさとは 3
土居 廣之 総選挙 4 随想作品
柴岡 香 カツオ釣り 4 芝野 晴男 秋が来たよ 20
西森 茂 咲き誇る紫陽花に 5 秋山田鶴子 その後に 20
徳廣 早苗 とどけたい 6
葦 流介 岩清水 7 現代詩の集い特集
丸山 全友 椅子 7
森川 彩美 新聞紙の行方 8 記念講演 本多寿
水口 里子 慈雨 9 『この頃思うこと』
北代 佳子 無作法時代 9 〜詩をよむということ〜 22
小松二三子 孫 10
福本 明美 不在 11 朗読作品 葦流介・他 40
大森ちさと 天空の風 11 朗読に参加して 43
柳原 省三 機上の星は瞬かない 出席者ご芳名 45
村の夏 12
浜田 啓 生命 13 後書き 45
土志田英介 天日 14 執筆者名簿
岩合 秋 電車の中 15
山本 衞 筒っぽ 16 表紙
輸送船 17 田辺陶豊 《 飛翔 》
名本 英樹 優しい風 18
総選挙 土居廣之
猛暑
豪雨
異常気象による
甚大な自然災害
文明発達による副産物
あまりに被害が続出するため
願望総選挙を行った
人間区当選
自然を元に
生物区当選
人類の消滅
「総選挙」というタイトルですから当然、衆議院総選挙を連想したのですが、これは一本やられました。小選挙区、比例代表選挙区に対しては「人間区」・「生物区」。そこで次々と「当選」をはたしていくのは「人類」ではないんですね。「人類の消滅」は「願望総選挙」の民∴モだったようです。いずれ私達は地球からそのような結論を指し示されるのだなと思った作品です。
○詩誌『独楽』62号 | ||||
2005.10.20 | ||||
千葉県船橋市 | ||||
独楽の会・寺田 弘氏 発行 | ||||
非売品 | ||||
<目次>
鎗田清太郎 銀 杏 4
「時間」とは何か 3
西岡 光秋 旅と貧乏神 8
いつまでも回り続ける独楽を 7
故成田武夫 上毛高原(絶筆) 12
昨今の所感 u
菊田 守 生きるって素敵ね 16
鳩の脚 15
金子 秀夫 反射光 力
渡辺華山記録少々 19
寺田 弘 三虎飛天
上林猷夫詩碑を訪ねて 23
追悼「独楽詩集」X 評 28
『独楽詩集』X 出版記念会(記録・松田悦子)27
表紙・寺田幸三
三虎飛天 寺田 弘
三虎飛天という熟語はない
虎は猛獣であるが
十二支の寅は張り子の虎のようにおとなしい
三虎とは同じ寅年に生まれた三人の総称で
二十年前に結成した
上林猷夫の造語である
三稀会
七十歳になった三人の友が
古稀を迎えて飛昇しようという
決意である
大滝 清雄
寺田 弘
上林 猷夫
大正三年寅年生れの仲間であった
八十歳には傘寿の三傘会
そして九十歳の卒寿会では三人で詩集を出そう
これが三稀会結成のときの約束だった
七十七歳の喜寿もすぎ八十歳の傘寿もすぎた
八十八歳の米寿もすぎ
九十歳の卒寿がきた
ふりかえると二人は居ない
飛んでしまった
天界の彼方へ
二虎昇天
残されたあとはひとり
三虎飛天の言葉だけが
詩集の扉にひっそりと
生きている
張りついている。
1999年4月1日発行の61号以来、実に6年ぶりの62号です。その間の2003年4月22日にはアンソロジーの『独楽詩集X』を出していますから3年ぶりという見方も出来ますね。
今年91歳になった寺田弘さんが「二虎昇天」のあとに残されて、詩友たちに支えられて出版した62号には万感の思いがおありだろうと拝察しています。紹介した作品にはそんなことはまったく出てきませんが、行間にそれを感じます。「七十七歳の喜寿もすぎ八十歳の傘寿もすぎた/八十八歳の米寿もすぎ/九十歳の卒寿」も過ぎ、次は白寿。それまでに63号、64号と拝読させていただきたいものと思っております。
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