きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
道の駅「もてぎ」にて
 

2005.10.18(火)

 日曜日は一日臥せっていて、月曜日は何とか会社に行きましたけど、今日はとうとうダメでした。会社へ行くことは行ったんですが、1時間もしないうちに咳が止まらなくなって、そのまま県立病院へ直行。CTで見つかった肺腫瘍はまだ小さいので安心だけど、1ヶ月後にもう一度見て、大きくなっているようだとヤバイ。でも、それまで様子を見よう、、、、って、要はこのまま(^^; 本当かな? 結構苦しいんだけどなぁ。で、気管支拡張薬をもらってオシマイ。今の病院って、死にそうにならないと真剣に見ないんですかね? ま、とりあえず生きているかないいかあ。




阿部堅磐氏著『中山伸詩集「座標」を読む
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詩歌鑑賞ノート(十)
2005.10.10
愛知県刈谷市
私家版
非売品
 

  <目次>
   詩活動を貫く (一)
   詩精神を研磨 (一)
   和して同ぜず (二)
   詩<詩集『座標』より>
     夏も終りの (二)
     獅子谷 (三)
     深夜の詩話会 (四)
     花のない季節 (六)
     辧慶思案の間 (七)
     鬼が城(八)
   詩<阿部堅磐作>
     地下街 (十)
     深夜 詩集『座標』を読む (十二)



    地下街    阿部堅磐

   一人歩きの地下街で
   あなたに似たがっしりとした肩の
   後姿に出会った
   私はふと歩みを止め
   その人を目で追ったが
   その人は雑踏の中へ消えて行った
   その人が四年も前に死んだ
   あなたであるはずがないが
   私はいつかあなたと二人で行った
   地下街の喫茶店に入り一休みする
   ゆっくりとアイス・コーヒーを飲み
   あなたのことを偲んでみる

   私がまだ若かった頃
   佐渡へ旅に出た夜のこと
   恋に敗れ 打ちひしがれた胸のうちを
   涙ながらに電話で語った時
   ――いかん しっかりしろ
   と怒鳴られたことがあった

   ある晩秋の夕
   妻と共にあなたを訪ね
   香嵐渓の紅葉を私は語った
   話題はその土地の南朝の武将
   弓の名人足助重範に及んだ時
   あなたは呟くように
    −わずか二百か三百の手勢で笠置山の後醍
    醐天皇の所へ向ったんだから 恩賞めあ
    てじゃなかったと思うよ
   そんなことを話しておられた
   あなたは明治生まれの人らしく
   何よりも信義を重んじる人だった
   そして 魂の美しいひとだった

   あなたが亡くなられる一年ほど前
   冬の寒い朝
   あなたの病気見舞いに訪れた時
   話題が芸術家の旅という話になり
    −芭蕉が芭蕉庵にいて書物ばかり読んでい
    ても いい俳句は残せなかったと思うよ
    感動を求めていい旅をしなきゃね
   そう語って微笑んでおられた
   その話を聞いてから
   前にもまして 旅好きな私は
   妻をともなってあちこちと旅に出かけた

   私はタバコをもみ消すと
   短い私の黙想を終え
   店を出て地下街を歩き始め 思った
   また一人歩きをしよう
   今日のようにあなたに似た人に
   出会えるかも知れないから と

 中山伸氏はサロン・デ・ポエート同人で日本詩人クラブ会員とありましたから調べてみたところ、日本詩人クラブに入会したのは1952年という創立直後でしたが1986年9月に退会していました。そしてその5年後に87歳で亡くなっています。退会の理由は判りませんでしたが34年間という長い間、在籍していたことは事実です。
 紹介した作品は中山伸氏と交流の深かった著者の、ある日の出来事ですが、最終連の「また一人歩きをしよう」が効いていると思います。これは一人歩きでなければならないでしょうね。追慕の情が素直に表出した作品だと思いました。




詩誌『解纜』129号
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2005.9.28
鹿児島県日置市
西田義篤氏方・解纜社 発行
非売品
 

  <目次>
   詩 台風と祖国 ……………… 中村 繁賓 … 1
     ふるさとの人々と台風 ……………………… 4
     ひとときのお茶 ………… 村永美和子 … 8
     とれないカッコ ……………………………… 11
   佳詩賞翫 ……………………… 石峰意佐雄 … 13
   詩 海辺で(内海にて)…………………………… 20
     佐多岬の日没 …………… 杢田 瑛二 … 22
     最後の二行 ……………… 今辻 和典 … 25
     梅雨の日々 …………………………………… 27
     晩夏−蜘珠− …………… 西田 義篤 … 29

        表紙絵 …………… 楠畑 裕也
                                                                                                                                                   



    台風と祖国    中村繁實

   中国、青島(チンタオ)から
   心身共に疲れきって帰ってきた
   居間の椅子に深く身を沈めて
   土産にもらった中国茶を啜り
   中国煙草を吸う
   至福のひとときだ

   テレビのスイッチを入れると
   突然の台風情報
   とてつもない勢力だ
   少々ずれても日本列島はすっぽりはいる
   ゆっくりと北上してくる

   台風常襲地の鹿児島で育ったから
   台風の怖さは骨身に泌みている
   決して慣れることはない
   土砂くずれ 生き埋めの人 怪我人
   堤防決壊 床上浸水 停電 断水 交通麻痺
   家の全壊 農作物の大被害……
   いろいろな場面が眼前に想い出されてくる
   とにかく死者がでることだけは確実だ

   日本と韓国・中国を結んでいた
   定期便は船も飛行機も欠航になった
   いい時に帰ってきたと喜んでいる場合ではない
   八月 釜山で日韓友好を誓った姜 恵禎
   青島で日中友好を誓った呉 恵萍
   二人とも「相互理解が大切ね」と云って
   恋人のように別れを惜しんでくれた

   入道雲が崩れていく
   近くの公園では熊蝉の代りに
   つくづくぼうしが鳴きだした
   台風襲来を予知しているかのように
   鳳仙花の実ははじけ
   サルビアの花は赤さを増す

   晩夏は妙にさびしく人恋しくなる
   お礼を兼ねて呉 恵萍に電話してみる
   「台風!日本に上陸してくれることを願ってるわ
   山東半島に来てもらいたくないの」
   とまくしたてる
   続けて姜 恵禎にも電話してみる
   「台風!朝鮮半島に来ないよう祈ってる
   日本直撃よ」

   テレビは奄美諸島が暴風域にはいったと告げている
   故郷に一人でいる母に電話してみるが
   なかなか出てくれない
   朝鮮人参のはいった銘茶も
   「中南海」という高級煙草も苦味だけが増す
   ぼくはだんだん不機嫌になってくる

 最初にお断りしておかなければいけないのは、第3連の「いろいろ」と最終連の「だんだん」は原文ではオドリだということです。現在のパソコンでは奇麗に表現できないので、止む無く変更してあります。強引に表現するといろ/\∞だん/\≠ニなってしまいます。
 紹介した詩は巻頭作品です。「恋人のように別れを惜しんでくれた」人たちも切羽詰ると「日本に上陸してくれることを願ってる」と本音が出て、真の「日韓友好」「日中友好」は難しいのだなと、こちらも「だんだん不機嫌になって」きますね。しかし、その本音を出したところからもう一歩進むことができるのか、と素人考えながら思います。考えさせられる作品です。




詩誌『潮流詩派』204号
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2006.1.1
東京都中野区
潮流詩派の会 発行
500円+税
 

  <目次> 表紙写真→田島美加
   特集 車
   田島 美加 緑風 7          新井 豊吉 二台目の盗難車 12
   鈴木 倫子 弔いの舞 7        丸山由美子 自転車のおけいこ 13
   加賀谷春雄 単なる排気 8       山本 聖子 テールランプ 14
   山下 佳恵 車の運転 8        水崎野里子 乳母車 15
   大島ミトリ 自転車 9         平野 利雄 コラージユ <車坂>  16
   藤江 正人 火の車 9         熊谷 直樹 古女房 17
   高橋 和彦 銀輪部隊 10        山崎 夏代 柴崎さんの車で 18
   鈴木 茂夫 下等な車は消えよ 10    山岸 哲夫 新車 18
   福島 純子 運転手はひとり 11     荻野 久子 六十年前のこと 19
   堀川 豊平 バス観光・ころんで発見 11 土屋 衛 車の消滅 20
   村田 正夫 車 12

   状況詩篇
   高橋 和彦 やってはいけない 21    井口 道生 運命のいたずら 26
   村田 正夫 電話で詐欺         夏目 ゆき えきすぽ 27
         日本海海戦一〇〇年・他 22 比暮  蓼 夢幻茫々−死者たちの
   神谷  毅 砂の階段 24                  棲む風景(3)28
   皆川 秀紀 草で描かれた花 24     伊藤 美佳 切りとられた平和 29
   山崎 夏代 八月の干からびたチーズ 25 戸台 耕二 横浜で展覧会を見る 30
   津森美代子 オープン 26        宮城 松隆 散策 30

   詩篇
   林  洋子 花筏の木 32        麻生 直子 すべての爆弾の母 46
   時本 和夫 大岳山・残照2 32     夏目 ゆき 決心 46
   藁谷 久三 女のつもりになってみたが33 原崎 恵三 笑ってはいられない
   清水 博司 いわなくては 34            八月御真影が逃げた夜 47
   勝嶋 啓太 夜を 歩き続ける 35    尾崎 義久 ひたひたと……… 48
   桐野かおる 絵金祭り 36        永澤  護 完璧な袋小路にて 48
   清水 洋一 鳥 37           まちえひらお 足のない影 49
   若杉 真木 おかしなもんだね      市川 勇人 リボン 49
          白い部屋・他 38     土井 正義 蝉 50
   中田紀子 ポテト・馬鈴薯・ジャガタラ芋40 飯田 信介 転落 50
   千葉みつ子 心理 40          竹野 京子 チャリンコ・ラップ 51
   山入瑞利子 あの頃 41         タマキケンジ 駒苫高の二連覇 51
   島田万里子 鮎の塩焼き 42
   中森 隆子 自由 42          ●世界の詩人たち(10) 水崎野里子
   藍川外内美 帰路 43
   中村 恵子 ルナールの少女 44      オーストラリアの詩2 54
   鶴岡実直子 丘 45

   愛国無残への道 潮流詩派からの報告(21) 村田正夫 56
   その戦争と平和 
上田幸法論(8) 丸山由美子 62
   シルヴィア・プラス 
海外詩随想(10) 中田紀子 64
   ルシール・クリフトン 
英米詩の紹介(14) 水崎野里子 66
   留学生事情 
ロサンゼルス通信(10) 福島純子 68
   一人の人間として 
加賀谷春雄詩集『二つの行方』評 清水博司 70
   岐路に立って 
加賀谷春雄詩集『二つの行方』評 山岸哲夫 72

   ブックス 鈴木茂夫 森田進・佐川亜紀編『在日コリアン詩選集』・他 74
   マガジン 山崎夏代 『鮫』 『日本未来派』 『国鉄詩人』・他 76
   前号展望 山本聖子 船は日本人の精神性においてもまだ 8
   資料 村田正夫『詩のある人生 潮流詩派の50年』あとがき 80
   メモランダム 83
   リスト・入会ガイド・編集後記 84→87



    ポテト・馬鈴薯・ジャガタラ芋    中田紀子

   肉ジャガ ジャーマンポテト
   ポテトコロッケ ポテトオムレツ
   ポテトキッシユ はるさめベーコンポテト
   まるやきポテト ポテトスープ

   献立も底をついてきた
   ポテトの顔色をみるのもめんどうになって
   夏のあいだ放っておいたら
   ピーナツ入りのかりんとうのように
   あちこちの窪みから 芽がつっぱっている
   ああ これは植物だったのだ
   男爵さま メイクイーンさま
   なが年 地下の栄養をありがとう

   いそいそまたポテトを買ってくる
   猛毒で入院したひとのニュースをきいて以来
   黒い窪みはめのかたき X字に切りとる
   捨てられた芽はあせっているだろう
   もういちど淡紫色の花弁をひらいてみたかったと
   毒をもり だれもよせつけないぞと
   でもね わたしはやっぱり料理する
   バターやチーズ 醤油とあいしょうのいいあなたを

   きょうも 泥を洗い 皮を剥ぎ
   ひっくり返し 色艶をうかがう
   かたちがさだまらない かたい澱粉質は
   わたしの手にかかれば まるく ほくほく
   いじわるな女の執念が
   ジャガタラ出身者を むりやり夜の主役にする
   故郷アンデスの山はまだ浅く朝もやに霞んでいる
   鈴をさげた馬が一頭 食卓から駆けていった

 第1連を見て、よくもまあこれだけ挙げたものだと感心しました。私は小学生で北海道に住んでいたとき、同級生の家でご馳走になった、ただ茹でて塩をたっぷりと振ったじゃが芋の味が今でも忘れられませんけど、あれはきっと「男爵さま」だったのでしょうね。
 そういえばじゃが芋というのは、もとは「アンデスの山」が産地だった、という話を思い出しました。そこから「ジャガタラ」へ行って日本へ来て、気の遠くなるような時間が経っているのでしょう。歴史的な「植物」だと気付かされます。ところで何で「馬鈴薯」なんでしょうか? やはり「鈴をさげた馬」と関係があるのでしょうか? 新たな疑問が湧いてきました。




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