きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
道の駅「もてぎ」にて
 

2005.10.23(日)

 今日は本来なら伊東に1泊旅行に行くところでした。私の勤務する会社に昔、詩部というサークルがあって、そのOBが集まるからお前も来いと言われていたのです。しかし月曜日に休暇を取らねばならず断っていました。休暇が取れるわけがないと思って断っていたのですが、今にして思うと断っておいて良かったです。体調不良が続いていますので、行くと言っていたらドタキャンになるところでした。何が幸いするか判りませんけど、こういうのは幸い≠ニは言わないんでしょうね。




庄司 進氏詩集『教師』
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2005夏
千葉市中央区
こくぼ刊
1200円
 

  <目次>
    T
   靴        10   いただいたもの  12
   瑞 樹      16   きつねの話    18
   翔 太      20   呪 文      22
   おまじない    24   自分の言葉    26

    U
   貝塚の丘     30   木 霊      32
   日曜日の教室   34   けやき      36
   校 庭      38   同 僚      40
   櫻井先生の思い  42   教 師      44
   バカな奴     46   埴輪の首     48

    V
   ☆若い人☆三味線 52   ☆若い人☆オレンジ色のゴーグル 56
   ☆若い人☆利 青 58   豆腐星      60
   麦の穂      62   夕暮れ      64
   納 豆      66   あいつ      70
   バーバラ・リー  74   たわいもないこと 76
   すずめに感謝   78   すもも      80



    瑞 樹

   また 掃除が始まったのに校庭で遊んでいる
   また 女の子に意地悪を言って泣かせる
   また 追いかけっこをして喧嘩になる
   また 握りしめていたトカゲを教室で放す
   また 机のまわりはごみだらけ

        
みずき
   だけどな 瑞樹
   いいことおしえてやろうか
   先生は子どものころ
   もっと悪いことをした
   もっとおとなを困らせた

   内緒だぞ

 著者は小学校の先生で、紹介した作品は「瑞樹」という児童を描いていますが最終連が佳いですね。子供の視線に立つことができる先生で、こんな先生に教わった児童は幸せだろうなと思います。
 詩集には小学校モノと呼べる作品が多くあり、母から肝臓をもらった児童を描いた「いただいたもの」、自閉症の子を扱った「自分の言葉」などは印象深く伝わってきました。それらとは毛色が違いますが、米国同時テロ直後に発令された戦争法に唯一反対した黒人女性議員を描いた「バーバラ・リー」は「神は少数者の中に訪れる」という最終連に感動した作品です。バーバラ・リーの連邦議会での演説全文は拙HPでも紹介したことがあり、なつかしく思い出すとともに、あれから世界が変ってしまったなという感慨に捉らわれています。




月刊詩誌『柵』227号
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2005.11.1
大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏 発行
572円+税
 

  <目次>
  現代詩展望 散文的現実と詩的現実            … 中村不二夫 84
    菊地貞三詩集『蛇がゆくように』
  〈自伝的戦後詩観(11)〉 詩による交流          … 津坂 治男 88
  吉本隆明論(9) 詩の原像                … 森  徳治 92
  流動する世界の中で日本の詩とは(13)世界詩人会議ロスにて … 水崎野里子 96
  風見鶏・畑野信太郎 壷阪輝代 小寺雄造 扶川 茂 芳賀章内       100
  「戦後詩誌の系譜」25 昭和45年62誌 追祐8誌 … 中村不二夫 志賀英夫 114

  南  邦和 寓 話 4          北村 愛子 祈る思いで 30
  水崎野里子 老女の涙 6         織田美沙子 電車を乗り継いで 33
  立原 昌保 銀杏並木 8         安森ソノ子 狐 へ 3 36
  肌勢とみ子 海 10            上野  潤 和蘭物語 21 39
  宗   昇 あじさい 12         鈴木 一成 つれづれ 42
  松田 悦子 打ち上げ花火 14       岩本  健 雑詩若干 44
  中原 道夫 盆提灯 16          木村 利行 風 景 46
  小沢 千恵 霜 月 18          檜山 三郎 八十年回顧録 48
  小島 禄琅 ひまごがやってきた 20    進  一男 樹木よ 50
  川端 律子 峠 22            平野 秀哉 間歇療法 経過報告52
  大貫 裕司 蒸れた草の匂いに 24     伍東 ちか 裁 く 54
  川内 久栄 うら枯れゆく村 九月十日 26 小野  肇 あるところ 56
  山口 格郎 戦後六十年・この国の還暦 28 佐藤 勝太 ふるさとは緑か 58

  野老比左子 雪の夢幻譜 60        名古きよえ 遣唐使の望郷 72
  徐 柄 鎮 晩 年 62          若狭 雅裕 桜紅葉の散る頃 74
  高橋サブロー同窓会話題 64        前田 孝一 定 め 76
  山尾 管惠 鉛 筆 66          今泉 協子 節子の自画像 78
  清水 一郎 ワタの木だって 68      小城江壮智 傾斜する歴史 80
  門林 岩雄 風 西日 70         山崎  森 退屈な秋の幻影 82

  続・遠いうた 54 マイノリティの詩学  村の戦争 他 … 石原  武 102
  チベット詩人 ホートサング・ジグメの詩      … 水崎野里子・訳 106
  コクトオ覚書 202 コクトオ自画像[知られざる男]22  … 三木 英治 110
  言葉と命―へのいとおしさ 笠原仙一詩集『天涯の郷』  … なたとしこ 124
  東日本・三冊の詩集 丸山乃里子『回転椅子』      … 中原 道夫 126
    坂本つや子『風の大きな耳』 高橋重義『秋のぴあの』
  西日本・三冊の詩集 河上鴨『海辺の僧侶』       … 佐藤 勝太 130
    定 道明『朝倉螢』 北川清仁『途上の旅』

  受贈図書 135  受贈詩誌 133  柵通信 134  身辺雑記 136
  表紙絵 中島由夫  扉絵 申錫弼   カット 野口晋 中島由夫 申錫弼



    蒸れた草の匂いに    大貫裕司

   夏草の深い茂みの
   熱く蒸れた匂いが
   いまも記憶にある

   あのとき
   稜線を引き裂く超低空で
   いきなり轟音を叩きつけた機銃掃射

   草の茂みに伏して
   動けずにいた雑木林の
   樹上すれすれの反転に
   灼けた薬莢が降ってきた

   編隊が去ったあとの空白
   静けさに
   ひぐらしが鳴いて呪縛が解け
   夏草の蒸れる匂いの夕暮れに居た

   八月十五日
   雑木林のなかで
   戦争が終った

 それぞれの「八月十五日」という感のある詩ですが、「草の茂みに伏して/動けずにいた雑木林」と「ひぐらしが鳴いて呪縛が解け」というフレーズが対になっていて効果を上げている作品だと思います。「いきなり轟音を叩きつけた機銃掃射」というのは直接体験しなければ判らないことなのでしょうが、中学生の頃に聞いた演習場での米軍の機関銃の音を思い出しています。離れた所での音でしたけど、腹にグッと響く音でした。その機銃の標的になったわけですから「呪縛」も判るような気がします。「熱く蒸れた匂い」という嗅覚も刺激的ですし「雑木林のなかで/戦争が終った」という喪失感も伝わってきた作品です。




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