きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
道の駅「もてぎ」にて
 

2005.10.24(月)

 会社の下期が10月1日から始まっていて、今日は二人の部下と面談しました。この下期で何をやるか、個人目標を提出してもらったのです。ひとりは定年まで10年以上ある女性、ひとりは来年定年を迎える男性です。二人とも真面目なのでちゃんと考えてくれていますので助かります。
 むしろ私の方が問題だな(^^; あれもこれもとちょっと手を広げすぎた感があります。かなりの担当品種をディスコンしましたけど、まだまだ多いと思います。社会的な供給責任と企業としての利益の板ばさみ、と言ったら格好良過ぎですけど…。あんなに鳴り物入りで売り出した商品の幕引きをオレがやるのか!という不満はありますが、まあ、誰かがそういう役を引き受けるものだと諦めていますけどね。何か、それぞれのモノたちに引導を渡している気分です(^^;




詩誌『梢』39号
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2005.10.20
東京都西東京市
事務局・山岡和範氏方 井上賢治氏 発行
300円
 

  <目次>
   「一陣の風」 宮崎由紀………………………………2
   「延子についてのメモ」 山岡和範…………………5
   「バンザイクリフ」 山田典子………………………7
   「カラオケ」 井上賢治………………………………9
   「二〇〇五年の松島で」 江崎友香…………………11
   「お茶ゼリー」他1編 北村愛子……………………14
   「菜の花をわたる風」他3編 日高のぼる…………17
   「姉を見舞う」 藤田紀………………………………27
   「あの力をもう一度」 牧葉りひろ…………………30
     「梢」38号感想紹介………………………………33
     事務局だより………………………………………36
   表紙 イラスト−キンモクセイ 山田典子



    お茶ゼリー    北村愛子

   スプーンでおかゆをすくい
   食べさせていると
   母はじーっとわたしをみつめる
   奥深い眸で

   前には
   わたしはだあーれと
   聞いたことがあるが
   もう聞かない
   母は「こども」にかえっているから

   聞けば
   「ははおや」
   と答えるだろう

   スプーンでお茶ゼリーを
   すくいながら
   母の口元にもっていくと
   かすかに音をたててすする

       *お茶ゼリーは、嚥下障害の人の脳梗塞予防に欠かせない。

 北村さんの詩には母上を扱った作品が多くあり、いずれも感動的なのですが、なぜ感動を呼ぶのか「お茶ゼリー」を拝見して少しは分かった気がしました。母上に対する動作に愛情があるのではないでしょうか。この作品で表出しているのは、第一連の「スプーンでおかゆをすくい/食べさせている」と、最終連の「スプーンでお茶ゼリーを/すくいながら/母の口元にもっていく」というフレーズです。この最初と最後に置かれた動作を読者は無意識に記憶して、中間の連を読み込んでいるように思います。やさしい手の動きが見えるようです。その上で母上との会話を読んでいますから、そこに静かな感動を呼ぶのではないかと考えられます。感覚で読まなくて分析的で申し訳ありませんが、そんなことを意識した作品です。




高本正之氏詩集『限りなき世界』
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2005.10.30
横浜市港北区
千書房刊
1200円+税
 

  <目次>
   T 探求
   49 だれだろう?     12   48 存在      14
   47 願い         18   46 もしも誰かが  22
   45 憧れ         26   44 謎       30
   43 距離         34   42 つかの間    36
   41 予言         40   40 恐れ      44
   39 挽歌         48   38 希望      54
   37 私たち        58   36 眠り      62
   35 風景         66

   U 生誕
   34 叫び         72   33 廃材      74
   32 2054328    78   31 出会い     82
   30 幸福         86   29 受胎      90
   28 転身         94   27 大地の鷲    98
   26 宇宙         102   25 部屋      104

   V 大地
   24 足跡         110   23 落下と上昇   112
   22 過去・現在・未来   116   21 決意      120
   20 詩人         122   19 背後      126
   18 そして ふりかえれば 128   17 一階の住人   130
   16 生物         134   15 片隅で     138
   14 彼方へ        142   13 憩い      146
   12 魚          150   11 曲芸師     154
   10 百姓の仕事      156   9 食糧      158
   8 自由への歩み     162   7 人類の従僕   166
   6 虐げられた女     170   5 貧しい男    174
   4 潜行         178   3 精神の土地   182
   2 光と闇のはざまにて  184   1 揺れる大地   190
   ∞ 限りなき世界     194



    T44   謎

   私の額は平凡である
   私の手や足はだらしがない
   私の胸は空しい鼓動を繰り返す
   私の尻は愚かにもこの世の美の化身のつもりだ
   ………………
   私は自分の肉体が恥ずかしい

   けれど
   ただ一箇所
   背中だけは違う!
   そこだけが私の誇れる唯一の箇所だ
   なぜなら
   背中だけが私の知らない箇所だから

   画家の皆さん
   私の背中を描いてください
   過去に渦巻いた主義や主張を超え
   かつてなかった新しい技法を駆使し
   哲学的に描いてください

   一度でいいから
   ゆったりと椅子にもたれ
   私は自分の背中をたっぷりと眺めてみたい

      *

   (背中には何がある?)
   画家は必死になって描きつづける
   ………………
   完成した作品には
   牢獄が描かれていた

    『ガリガリの囚人が椅子に座っている
     格子の外には眼もくれず
     うつむいて 腕を組んで 問うている
     微動だにせず 考えている
     ただし
     笑みを浮かべながら』

 目次でも判りますようにそれぞれの詩には作品番号が振ってあり、しかも49から始まり逆順で1に至り、最後は∞になるという面白い着想をしています。
 ここでは「謎」を紹介してみました。「背中だけが私の知らない箇所だから」という理由で「背中を描いて」もらい、結局は「ガリガリの囚人が椅子に座っている/格子の外には眼もくれず/うつむいて 腕を組んで 問うている/微動だにせず 考えている」絵だった、「ただし/笑みを浮かべながら」のものだった、というオチは現代人を良く描いた喩だと思います。しかも、そこにはヘンな侮蔑もなく、むしろ爽やかです。着想の面白さと、その爽やかさが光る詩集と云えましょう。




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