きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.6(日)

 19時から四谷コタンで奥野祐子さんのライヴがあったのですが、行きませんでした。残念。体調がイマイチで、無理をしたくなかったのです。ライヴが終わるのが22時、帰宅すると午前0時近くになってしまいますから、今回は断念しました。体調を戻してから行くようにします。奥野さん、ごめんなさい!




文芸誌『吾亦紅』12号
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2005.9.10
東京都杉並区
土屋俊郎氏方・日本民主主義文学会杉並支部 発行
非売品
 

  <目次>
   創 作    落ちる         藤原 夏美 4
          夏再び         佐和 宏子 13
          矢形署二房十三号   せいせい容子 29
          蟹万寺         吉田百合枝 41
          剛の青春        能島 龍三 46
   漢字の詩二編 子消し         奥沢  柘 64
          愛隣

   =特集=民主主義文学会創立四十周年記念「今、憲法と平和を考える」  70
   有村 一己、飯島  登、榎本 利枝、河田 禎之、古場 重幸、斎藤 幸雄
   斎藤 花江、澤田 俊史、菅沼 温子、鈴木 敏督、鈴木 礼子、立原 未知
   西村 直樹、ふじひろし、松本 良二、谷上香代子、山川トキ子、山元 四郎
   吉田 一人、吉田百合枝、小川 京子、奥沢  柘、土屋 俊郎、清成 容子
   高木 典男、藤原 夏美、能島 龍三、谷中 しま、山田ヒサ江

   短歌 解子さん葬送、千代子さん墓前祭 遠山 弥生 107
   評論 韓国映画の現在         奥沢  拓 108
      『樹影』を読む         土屋 俊郎 117
   創作 焼けのこった市松人形      谷中 しま 127
      雪上の影            小川 京子 141
   あとがき                     155
        挿し絵/守屋時光  表紙絵/小栗てつし



    漢字の詩 二編    奥沢 拓

    子消し

   それで良かったのか?
   短い命だと分かったから
   満足な身体ではないとも

   むかし
   奥羽の寒村では
   産まれたての赤子に濡れ手ぬぐいを被せることがあった
   我が子を悼んでつくられた
   人形

   我が子とはいえ人の誕生を決められるのか
   その方が子どものためだと思ったのは只の親の

   たとえ三年
   いや わずか三日の生命だったとしても
   また五体満足でなかったにせよ
   この世界を一度は
   お互い四十を越えやっと授かった生命だった

   セミは何年もの間
   土の中深く育まれ
   ひとたび大地へ産まれ出ると
   一瞬の生命を輝く

   人はいつ神になったのだろう
   何が輝く生命だと
   誰に分かるのか
   誰に決められるのか

   グルグルととりとめもない考えが脳裏をかけめぐる
   手のなかのこけしは
   そんなことを知ってか知らずか
   穏やかな微笑みを浮かべている

 「漢字の詩二編」として「子消し」「愛燐」が載っていました。ここでは「子消し」を紹介してみましたが、こけし≠フ由来が「子消し」だったとは! すでに知られていることで私だけが認識不足だったのか、または作者の造語なのかは判りませんけど、妙に説得力のある言葉です。それに、過去の話ではない…。「むかし/奥羽の寒村では」貧しさから子殺しを行ったけど、現在では遊びの邪魔だからと我が子を殺める…。その意味では現在の方が罪が深いと云えるでしょう。考えさせられる作品です。




詩誌GRAIL5号
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2005.11.3
埼玉県所沢市
北野 丘氏編集・龍生塾 発行
800円
 

  <目次>
   特集【虚と実】冬号Vol・5     

   ◆巻頭 長谷川龍生 詩的発想から自由に逸れていく …………4
   ◆鼎談 後藤義久/亀川省吾/佐伯多美子
           虚と実−夏の午後・冷えた麩饅頭を食べながら …………8
   ◆アンソロジー
       中林紀子  いっペんペん草 …………14
             アルコホリック・アンサンブル …………16
             にっぽんこぼしばなし …………19
       塚田高行  浄い顔 …………20
             秋 …………23
       松原牧子  ヴェネツィア …………24
       亀川省吾  幸福の隠し場所、桃へ至る道 …………30
       佐伯多美子 虚という球体は、 …………34
             某S、と、獣。 …………37
       山岡 遊  見上げれば帰る惑星なきものたちの会話が聴こえる …………40
             偶詠・亀 …………45
       石黒 忠  影噴いに 人待ちされて …………46
       新倉葉書  交叉/CROSSING …………50
       金 水善  ガイトウ …………56
             消えたあさり …………59
       後藤義久  ボール紙包みの氷 …………61
             野人の血脈 …………63
             引力の場 …………65
       先田督裕  鉄 …………68
       北野 丘  傲岸 …………70
             窓に月がのぼれば …………72
             崖の教主 …………74
       永野昌三  夏の夜に …………76
             黒い傘の中の顔 …………78
   ◆書評 石黒 忠   新倉葉音詩集『傾く麒麟』 血と風土の相剋 …………82
   ◆エッセイ 特集「虚と実」/コラム「夢のトポス」
       北野 丘  降霊対論 第0回 埴谷雄高/時計塔と抱えたくじら …………84
       山岡 遊  心に妖怪をしのばせて/布団のなかの出来事 …………86
       中林紀子  虚実混沌一地帯 …………89
       金 水善  陰陽と人体 …………90
              /逃げ去る夢 中林紀子/私の見た夢 金水善 …………91
       松原牧子  野川 …………92
       新倉葉音  醒めた目 自己を見つめ続けた画家レンブラント …………94
       永野昌三  虚と実−大木実の戦後詩について …………96
       石黒 忠  虚と実−<実>を求めるのは、男か女か?/夢と場所 …………98
       先田督裕  虚と実−虚の効用/松田(本橋)克行さんの夢 …………100
   ●あとがき …………102
   ●住所録 …………103



    虚という球体は、    佐伯多美子

   
きょ
   虚という球体は、
   皮膜はとうめいでも、表層でひかりを乱反射させ内部までひかりを透さない。
   ないぶは、やみ。深海のように

   虚という球体のやみに棲む生物は、眼は退化、し、あるいは異常に発達、し、
   いちじるしく変形し、(ばけものだよ あれは)
   なんじゃくでだんりょくのある骨格。
   表層の生物の遺骸を食べ生きのびている。

   
きよ                 うろ
   虚は、虚という遺骸を食べながら考える虚である。

   虚言を吐き、
   腐り、
   いたみも
   言いわけで生きのびる
   だからむじゃきに傷を負う。(ひとりよがりの、傷?)

              
ひそかに
   なんじゃくな背骨は、(ヒソカニ)、ほくそ笑んでいる。

   骨は、温度を密度を質感を量感を、
   なくしなくしなくしなくし
   弾性のみ、
   つよく。

   たわわに軋みしたたかに腐り異臭には気配りし、
   変形するからだに、
   インプロメン錠、ヒベルナ糖衣錠、ルジオミール錠、デパス錠、それに、
   (下剤)チネラック錠、
   を、服薬。
   息をし、
   服を着て、         
きょ
   ふつうであることを、生きる。虚。

   やみのなかで蠢くもの。どろどろっとしんけいしつに過敏になる。
   ばけものがとぐろ巻く
   
うろ
   虚に逃げ込む術。
   覚えたてのじゅもんをとなえながら
   (みんなうそだよ そうでないと生きていけないよ)

   無罪という終身刑。

 特集【虚と実】の中の一編ですが「虚」を「球体」と捉えているところが面白いと思います。四角形なり五角形なりの多角形で捉えることも可能なんでしょうが、ここはやはり球体の方がしっくり来ますね。球体の力というものは外に向かうものではなく内に向かいます。水滴を考えると表面張力がまず思い浮かぶのですが、表面張力が内に向かうからこそ球体になれるわけで、「虚」も同じなのではないかと思います。「虚」は外に発散するものではなく、内に向かう、そう考えると「ないぶは、やみ。深海のように」という喩が納得できます。最終連の「無罪という終身刑。」は、「虚」の持つ「無罪」性を謂っているようで、ここも面白い処です。




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