きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.12(土)

 午前11時から神楽坂エミールで日本詩人クラブの理事会、午後2時からは11月例会がありました。理事会のトピックスは、12月10日の国際交流・忘年会の内容が決まったことですね。「講演と朗読の夕べ」と銘打ち、各国の言語での朗読があります。韓国・中国・メキシコ・ドイツ・フランス・アメリカの詩人の参加が予定されています。ご期待ください。
 OA担当の私は、詩人クラブHPのアクセスが1ヵ月で550件あったこと、12月4日にメーリングリストによる第2回のオンライン作品研究会を予定していることを報告しました。

    051112.JPG    こちらは例会の1スナップです。講演のあとの質疑応答にて。マイクを握るのは元日本詩人クラブ会長の寺田弘氏。名誉会員でもあります。昨日の部屋で詩集『三虎飛天』を紹介していますが、その著者です。現在91歳。そんなお歳とは見えませんね。

 寺田さんは『詩の朗読運動史-詩に翼を』という著作を1992年5月に詩画工房より刊行していまして、その書評を『詩と思想』に書けとおっしゃってくれたことがありました。当時、それほど親しい間柄とは思っていませんでしたから驚いた記憶があります。もちろん書かせていただきました。今だになぜ私が指名されたのか不思議なのですが、目を掛けてくれているのだと思って、それ以来親しみを感じています。写真でもお分かりと思いますし、直接お会いしている人は感じてもらっていると思いますけど、温和な人間味あふれる詩人です。こういう方が会長をやってくれていました。誇らしく思います。





館報『詩歌の森』45号
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2005.11.10
岩手県北上市
日本現代詩歌文学館 発行
非売品
 

  <目次>
   長き夜の草稿 入船亭扇橋
   文学館活動時評12「閉じることと開くこと」 橋浦洋志
   詩との出会い12「憧憬の歌」 高橋爾郎
   連載 現代のこどもの俳句1いいものみっけ=@小島千架子
      現代詩時評3「詩歌の契りをめぐって」 尾花仙朔
   資料情報
   扇畑忠雄前館長逝去
   第3回日本現代詩歌文学館館長賞決定
   特別企画展 近藤芳美展−戦後短歌の牽引者
   日本現代詩歌文学館振興会 評議員会
   日録
   後記



    詩人三井葉子さんが句集『桃』(洛西
   書院)を上梓した。詩と俳句を契る血脈
   に、作者の詩性が紅
(くれない)に透き通ってみえる。
   たおやかで、美しい句集だ。
     水恋し胸に螢を飼ひたれば
     大寒や袖で大根抱いてゐる
     ちれちれと鳴きつつ線香花火散る

 紹介したのは尾花仙朔さんの現代詩時評3「詩歌の契りをめぐって」の中の部分です。三井葉子さんは詩人として著名な方ですが俳句もおやりとは知りませんでした。私は俳句は門外漢ですが「たおやかで、美しい句」だと思います。特に最後の佳いですね。「ちれちれ」「散る」がもののあわれ≠感じさせてくれます。いつもは詩にしか目が行かないのですが、この館報で短詩系文学全般に触れられることが嬉しいです。




詩誌『軸』84号
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2005.11.10
大阪市鶴見区
山本英子氏方・大阪詩人会議事務局/原 圭治氏 発行
600円
 

  <目次>
   扉詩    ゲリラの心        竹島  修 1
   詩     目玉のストリー      和 比 古 4   夜明けをみている    いしだひでこ 5
         五十年〜六十年とたちて今 山田 満世 6   少女           瀬野 とし 7
   報告    夏の詩の学校             8
   俳句    広島平和公園八月六日   藤本 数博 9
   詩     サイホン        おれんじゆう 10   友へ           迫田 智代 10
         がんばって(コンビニで) 木村 勝美 11   恋すれば         松本千鶴子 12
         何処(いずこ)へ      松本千鶴子 13
   新会員作品 散る           熊井 三郎 14   鉄棒           真栄田義功 15
   連帯出演  六十年日の夏       椛島 恭子 16
   詩     覇気           椛島  豊 17   日本酒・ビール、そして「詩」 高倉 英二 18
         高原の農場に「案山子」六人衆が勢ぞろい 浅田斗四路 19
         たった一人だけ違う人がおったとさ    清沢桂太郎 20
         歩み始める        清沢桂太郎 21
   エッセイ  サインプリーズ!    やまそみつお 22
   社会時評  九条をめぐる論点     佐相 憲一 23
   エッセイ  戦争/戦死/靖国     熊井 三郎 26
   漢詩    二篇           畑中暁来雄 28
   詩     ヤブカのライスをご紹介 山本しげひろ 29   岩湧山          脇  彬樹 30
         詩三篇          必守 行男 31
   詩集評   いしだひでこ詩集『きみの宇宙』   佐相 憲一 32
                           松本千鶴子 32
         作品「きみの宇宙」               33
   詩集評   ときめき屋正平詩集『あゆみとことみ』松本千鶴子 34
   詩集評   沖長ルミ子・二詩集         畑中暁来雄 34
   詩集評   佐相憲一詩集『永遠の渡来人』
         作品「侵略戦争を隠すものたちへ」        35
         特別寄稿 僕の愛読書        山越 敏生 36
         『南日本新聞』未来への希望さし出す 宇宿 一成 38
         『しんぶん赤旗』
          独特で純粋な心がきわ立たせる詩群 山本 隆子 39
         詩集『永遠の渡来人』へのお便りから       40
   詩     世界の裸身             佐古 祐二 42
         おほさか暮色―貧乏ゆすり      玉置 恭介 44
                飛田遊廓       玉置 恭介 45
         芝居と多喜二とプロレタリアと   しかやまぶん 46
         冒険のしかた            原  圭治 47
         ハノイ               佐相 憲一 48
   感想集   軸83号へのお便りから              50
   受贈誌紹介 受贈詩誌・詩集等紹介              54
   原稿募集  『軸』85号 ご案内               55
   広告    『詩人会議』を読みませんか           55
   編集のおと
         表紙絵 山中たけし



    たった一人だけ違う人がおったとさ    清沢桂太郎

   昔あるところに山里があったとさ
   その山里に出入りするには
   誰もが峠を越えないといけなかったとさ
   里人は皆その峠がもっと低かったら
   物が楽に運べてよいのにと言い合っていたとさ

   ところがこの山里で商
(あきな)いをしていた一人の商人(あきんど)だけは
   この峠がもっと高くて険しければ
   誰も物を山へ運べないので
   もっと儲かると思っておったとさ

   昔あるところに小さな村があったとさ
   その村に物を売りにくる商人
(あきんど)がおったとさ
   その商人
(あきんど)は村の家々を廻っては
   物を売りながら あそこの里のこと
   こちらの里のことをよくしゃべったとさ
   村人は皆 日々物を持ってきてくれる便利な人だが
   口うるさい商人
(あきんど)だと噂しておったとさ

   ところが同じ村人の一人だけは
   この商人
(あきんど)の話から
   あそこの里 こちらの里のことがよく分かる
   宝のような人だと思っておったとさ

   あの山里の峠を越えて行き来していた里人は
   外から見ていただけでは皆同じ里人なのに
   あの商人
(あきんど)から物を買っていた村人は
   外から見ただけでは皆同じ村人のように見えるのに
   ある一人だけは 全く逆のことを考えておったとさ

   山里の人達も 村の人達も
   外から見ただけでは全く見分けがつかない
   同じ人のように見えるのに
   一人だけは全く違っておったとさ

    その人を捜せ
   その後あるとき 里人と村人は
   天からの声を聞いたと噂しあったと

 考え方、見方を変えるとヒトの価値が変わってしまうということを教えてくれる、おもしろい作品ですね。「外から見ていただけでは皆同じ」ように見える中で「一人だけは全く違って」いる、「その人を捜せ」という「天からの声」がこの詩の核心ですが、これがなかなか難しい。どうしても他人と同じように流されてしまう我々の性。その方が楽だからなんですけど、そこをピシッと言われたように思う作品です。




文芸同人誌『青灯』56号
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2005.11.1
名古屋市千種区
亀沢深雪氏方・青灯の会 発行
600円
 

  <目次>
  ● フィクション・ノン・フィクション
    石曳き行進・余禄 ………………… 天瀬 裕康 …… 1
    昭物語 ……………………………… 阿部 堅磐 …… 8
    生あればこそ ……………………… 亀沢 深雪 …… 12
  ● 詩
    戦後六十年 ………………………… 森島 信子 …… 18
    再生の言葉 ………………………… 尾閑 忠雄 …… 20
  ● エッセイ
    昭和はやり唄 ……………………… 岩見 治郎 …… 22
    靖国神社とは何か ………………… 澤田 明道 …… 24
    子供の戦後史(16)………………… 西本  伸 …… 27
      ○ 青灯の会規約 …………………………………… 33
      ○ 同人誌名簿 ……………………………………… 17
      ○ 編集後記 ………………………………………… 34



    戦後六十年    森島信子

   前のめりになり走る 歩く
   焦げた死体を踏まないように
   ひたすら市電の線路を伝って
   道という道がなくなり目標物も何一つない

   B29の集中爆弾投下で壕から這い出したのだ
   骨までまっ黒であろう
   みんな必死で走っている格好のままで
   母親が子供の手を握りしめていた姿は
   目に焼きついたまま
   上官の命令は絶対であるが
   爆弾を投下した兵士に聞きたい
   悩んだか 苦しんだか 罪の意識は

   気にかかる 魂は生のままかも知れない
   やっと家にたどりついて
   病死した父の顔と対面
   目鼻口耳すべて整いろうの顔色
   何という違い 近い距離に居ながら
   殺されたくない 何も始まっていない人生を
   父死亡の日私は地獄をつきぬけた 十六歳
   火葬場で焼かれて白骨となり
   離散した家族を守ってくれた父

   目まぐるしく変わる時代を生きてきた
   鼓動の何と力強くなったこと
   生涯で一番不幸だった戦争の時代が終わって
   何十年後 戦争の冊子は
   新たに分かったことで重みを増すだろう

 第1連の「前のめりになり走る 歩く/焦げた死体を踏まないように」というフレーズから臨場感のある作品です。作者の体験を基に書かれていると思いますが、「みんな必死で走っている格好のままで」亡くなっていたというのは衝撃的です。そんな人々と「病死した父の顔」との「何という違い」にまで言及していて、この作者の心根がよく伝わってきます。そうやって「戦争の冊子は/新たに分かったことで重みを増す」ことを願わずにいられません。




鬼島芳雄氏詩集『天使の微笑』
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2005.10.25
東京都豊島区
東京文芸館刊
2000円
 

  <目次>
   水 車        6   天使の微笑      8
   鴉          10   生きたい       12
   青 春        14   残り時間       16
   ふるさと       18   人 生        21
   父          22   松風の記憶      24
   一九四三年・少年の夏 28   少女の言葉      32
   星の墓標       34   生命のセレモニー   36
   地球の或る処で    38   瞳          42
   地球の真の子供たち  44   弱 者        48
   証 言        54   夕 焼        58
   梅の花の香る朝    60   梔 子        68
   向日葵        70   妻 に        72
   元旦詠歌       74   つゆくさの歌     80

   跋 高安義郎     84   あとがき       88
      カバー絵 鬼島栄子



    天使の微笑

   突然 何かに怯えるような幼女の声
   振りむくと 三歳ほどのマント姿の幼女が
   母親に連れられて
   同じホームに佇っていた
   朝の通勤帯
(ラッシュ)も過ぎたエポック
   幼女は思い出したように無意識に怯えた声を洩らす
   それは母親に甘える声とは異質だった
   母親が幼女を抱き上げると同時に
   電車が入ってきた
   車内は混んではいなかった
   母親は幼女を抱いた儘車内の中央に佇ちつくす
   あの憑かれたような怯えの声は
   車内では白い可憐な乳歯を覗かせて
   小さくコロコロという笑声に変っていた
   母親の唇の人差し指も
   周囲のどの客の顔も幼女の心の眼には映らず
   幼女は幼童の世界に在って
   いかに面白い情景に魅せられていたのだろう
   無心に明るく母親の胸元の素朴な大輪の花であった
   あんなに屈託のない美しい天使の笑顔を
   かつて私は見たことがない

   あの日天使は手を牽かれて病院へ行ったのだろうか
   それとも?…

 詩集のタイトルポエムを紹介してみました。「無心に明るく母親の胸元の素朴な大輪の花であった」というフレーズが佳いですね。やさしい「母親の唇の人差し指」と「美しい天使の笑顔」が見事に結実したフレーズだと思います。最初に「突然 何かに怯えるような幼女の声」というフレーズがあるから、余計にこの行が引き立っているとも云えるでしょう。
 最終連の「それとも?…」という1行は難しいかもしれません。どのようにも採れてしまって作品としては収まりが悪い気がしますけど、ここは著者の懐の深さとして私は考えています。里帰りでも父親との待ち合わせでも良いでしょう、あとは読者が物語を続けてください…。と、著者から手渡されたように思います。おもしろい試みと云えるかもしれません。




畑野信太郎氏詩集『鳥の刻』
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2005.10.29
北海道釧路市
緑鯨社刊
2000円
 

  <目次>                              鳥の刻T
                                  i 6
                               ii 10
                            iii 12
                         iv 16
                      v 18       鳥の刻U
                   vi 22       i 40
                vii 26       ii 46
            viii 28       iii 48
         ix 30        iv 52
      x 32         v 54
   xi 34        vi 56
      i 78         vii 66
         ii           viii 68
          iii 82           ix 70
              iv 86           x 74
                 v 90
                   vi 92
                      vii 96
                          viii 100
                              ix 104
                                  x 108
                                     xi 112
      あとがき 121                            xii 116
                                            鳥の刻V



    iv

   水車は川底の闇を運び上げては
   明け方の香りが漂う下流へと移し続ける

   時折 鈍くきしみの音があがるのは
   闇の中の闇を掬い上げた時なのだろう

   鳥は川の時間を巻き取りながら
   水車の音が樹間を抜けていくのを聞いている

   水車の律動が緩慢な継続であるかぎり
   川の波紋の微妙な変化を楽しみながら
   鳥の刻は乱されはしない

   水車も鳥も自身を呪縛する時間を追放しつつ
   同じ量の呪詛に網打ちされている
   黄昏のメランコリーを 宵闇のノスタルジーに移し終え
   鳥の心は水車から落下する雫となっている

   だれひとり訪れる者のいない水車小屋
   世界は限りなく開放されてはいるが
   自身の愉悦を巡らせている砦でもあった

   あの巨鳥の地上絵は謎深い飛翔を
   ざらついた翼に波打たせながら
   ひとり 鳴いているのかも――――

 紹介した「iv」は「鳥の刻T」のものです。「水車は川底の闇を運び上げては」「闇の中の闇を掬い上げた時」など魅力的な詩句に溢れた章です。
 ここでの「鳥の刻」は夜と採ってよいでしょう。「黄昏のメランコリーを 宵闇のノスタルジーに移し終え/鳥の心は水車から落下する雫となっている」というフレーズも佳いですね。鳥も私たちの身近にいる鳥だけでなく「地上絵」の「巨鳥」までイメージを膨らませることが出来、著者の世界の広さ・深さを感じ取ることができます。「水車」と「鳥」とが見事にマッチングしている作品だと思いました。




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