きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.13(日)

 何も予定のない休日。終日、いただいた本を読んで過ごしました。




隔月刊詩誌『石の森』130号
     ishi no mori 130.JPG     
 
 
 
 
2005.11.1
大阪府交野市
交野が原ポエムKの会・金堀則夫氏 発行
非売品
 

  <目次>
   錯覚       美濃千鶴 1   秋の日      美濃千鶴 2
   台所用洗剤の夢  南 明里 3   ドーナツ    夏山なおみ 4
   〇(ゼロ)     山田春香 5   呼応       山田春香 5
   二十七歳     高石晴香 6   三三三拍子    佐藤 梓 7
   美しく穂のれ   西岡彩乃 7   命と天秤     大薮直美 8
   別れの曲     大薮直美 8   わたし      四方彩瑛 9
   蜘蛛       上野 彩 9   YUMEから   上野 彩 10
   霊岩       金堀則夫 11   <<交野が原通信>>第二四四号 12
   エッセイ「鼓の話」四方彩瑛 13   あとがき



    二十七歳    高石晴香

   モザイクのレンガの上
   ピンクの色ばかりを踏んだ
   そこが一番あたたかくて楽ちんで
   居心地がよかったから

   つま先やかかとが
   赤や青や黄色のレンガに触れて
   その世界を垣間見ても
   興味のないフリをした

   ピンク色のレンガをさがして
   ぴょんぴょん飛ぶ不安定な足
   でもある日 足は
   人間らしく歩きたいと私に願った
   つま先立ちになって考え抜いた末
   私はやっと足を伸ばしてみた
   レンガはどれも違っていて
   居心地がよくないものもあったけど
   前よりも歩くのが楽しくて
   時々足はスキップした

   モザイクのレンガ
   どうしてモザイクになっているのか
   ようやく今
   理解できた

 これは佳い詩ですね。私も「二十七歳」の頃を思い出してしまいました。確かに「一番あたたかくて楽ちんで/居心地がよ」い処ばかりを探して、「赤や青や黄色のレンガに触れて」も「興味のないフリをし」ていたように思います。
 この作品の核心は、やはり最終連でしょう。なぜ「モザイクのレンガ」が存在するのか。存在を認識するのは誰にでもできますが、「理解」まで到達するのは至難なことだと私は思っています。そこを作者はちゃんと押さえています。作者の「二十七歳」を祝福したい気持でいっぱいになりました。




中原道夫氏詩集わが動物記、そして人
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2005.11.15
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
2500円+税
 

  <目次>
   T
   犬 10       猿 13
   猫 16       羊 19
   鹿 22       箆鹿 25
   白狼 28      虻 32
   蝶 36       アメーバ 39
   狐 42       牛 46
   鼠 49       馬 52
   鶏 55       蛇 58
   赤とんぼ 61    蟋蟀 64

   U
   銃 70       穴 73
   異物 76      花 79
   菊 82       夕焼け空 85
   暑い夏 88     甦る時間の中で 91
   鳴沙山にて 94   玉門関 97
   楼蘭の美女 100   帰国 103
   編集 106      向日葵 109
   桔梗 112      ペット 114
   電話 117      駅 120

   あとがき 124    題字 著者
             装画 秋山泰計



    

   外は激しい吹雪であった
   列車の窓も凍てついていた
   ――空いておりますか
   そういう女の目元は不思議なくらい澄んでいた
   いまどき珍しく化粧をしていない女であった

   ぼくの座っているボックスが
   たまたま空いていただけの話だが
   季節はずれの旅もいいものだ、と
   ぼくは思った

   ――どうぞ
   とは言ってみたものの
   眼と眼があうのは
   心の底を見られるようで
   年甲斐もなく恥ずかしかった

   ぼくは眼を閉じた
   ――ほんとうにきれいな女もいるものだ
   ――これが雪肌の女というのだろうか
   ――これが餅肌の女というのだろうか

   それから、ぼくは
   眼を開けたときの会話の糸口を考えながら
   瞼の中でいくつかの駅を数えた

   まもなく列車は山間の小さな駅に停まった
   けれど、吹雪のローカル列車に乗降客のあるはずはない
   眼を開けると
   ぼくの向かいの席にはだれもいなかった
   あの目元の澄んだ雪肌の女もいなかった

   ――この辺りでは、野山がすっかり雪に覆われると
   ――狐がときどき里にでて人を惑わすことが在るのです

   国鉄時代からずっとこの列車に乗っているという
   朴訥な車掌がそんなことを話してくれた

   そのとき、なにがあったのだろう
   降りしきる雪の中で
   けたたましく警笛が二度鳴った

 あとがきには「詩集名を『わが動物記、そして人』としたが、取り立てて動物を書いたわけではない。ただ、ぼくは、人間よりも文明に押しつぶされやすい動物たちに、自分の人生を重ねて見ているのかもしれない」とありました。特に気負って動物を描いたわけではないことが紹介した作品「狐」からも判ります。
 「狐」は最終連が佳いですね。鉄道関係者なら「けたたましく警笛が二度鳴」る意味を正確に知っているのでしょうが、ここでは列車の目の前を横切った「狐」と捉えてみました。一編の小説の最終部分を読んだあとのような余韻を感じています。「人を惑わす」狐は「目元の澄んだ雪肌の女」になる程度ですが、ヒトにはそれでは済まない怖さがあります。そんなことまで考えさせられた作品です。




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