きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.16(水)

 休暇をとって県立病院に行ってきました。点滴を受けて少しは楽になるかと思ったのですが、あまり変り映えしません。帰宅して、ひたすら眠り続けました。




蒼わたる氏詩集『天空は蒼いのに』
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2004.6.20
岡山県岡山市
和光出版刊
2500円+税
 

  <目次>
   T アダジッシモ
   泰山−ゆめ・うつつ− 10 飛来石からの叫び 20

   U アラベスク
   色は匂へど 28      死の舞踏 32
   ロンド 35        風景画 36
   たそがれ 38       心の扉がなくなった 42
   時の佇み 52       足跡 58
   語らい 64

   V ラメントーソ
   光 68          クロノスの待つところ 70
   始発駅 78        癌 がん ガン 82

   W ポーコ・フォルテ
   時が止まっている 90   別れは指先から 98
   旅のおわり 116



    

   これほど人々の内部は滾っていて 熱が逆捲いているようなのに
   四方はなぜか暗闇に満ち満ちている
   いにしえから光は求めるとやってきているのに
   いまの世には求めても求めても 光は瞬くことすらしない
   人々の目尻に亀裂が出来るほどに 大きく見開いても
   一向に 光が飛び込んではこない

   もはや 網膜が邪な分厚い幕に覆われているからだろうか
   心のアンテナが 分厚い欲の脂肪に錆ついて
   鈍く微かな震えしかしないのだろうか
   いろいろな欲望とさまざまな意志が乱れ混じり
   熔岩の噴き出しに似て
   宇宙のかなたに放射線條に拡散していくエーテルの波のように
   多くの欲望と 多くの的を狙い過ぎ
   人々の心が宙に分散しているのだろうか

   世界中で もっと光を さらに光をと叫んでいるが
   七十億の怪物の眼は 欲に酔いしれているのだろう
   一匹のアーガスの百の眼は孔雀の羽に生き残ったが
   七十億の怪物は眼一つすら美しく残せないのだろうか

   どんな光なら見えるのだろうか
   どんな光なら感じられるのだろうか
   天空はこんなにも蒼いのに

 詩集タイトルの「
天空は蒼いのに」という作品はありません。おそらく、紹介した詩の最終連にある「天空はこんなにも蒼いのに」から採ったのでしょう。センスのあるタイトルの付け方だと思います。
 その意味でも作品「光」は詩集全体に通底している思想を表出させた詩と謂えるでしょう。他の詩は比較的長い作品が多いのですが、その中でこの短詩は「七十億の怪物」の「いろいろな欲望とさまざまな意志が乱れ混じ」っている様を端的に示していると思います。深遠な思想のとっかかりの作品として鑑賞してみてください。




詩誌『すてむ』33号
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2005.11.25
東京都大田区
甲田四郎氏方・すてむの会 発行
500円
 

  <目次>
  【詩】      目笑■松岡 政則 2
          彼岸花■川島  洋 4
           縄文■閣田真太郎 7
    貧弱な推測/聖家族■井口幻太郎 10
    葉の時刻/カナカナ■田中 郁子 14
        父/帰り道■青山かつ子 18
     履歴書/歯ブラシ■長嶋 南子 22
         部屋/春■赤地ヒロ子 26
        バケツの水■坂本つや子 30
   
The Summer Trail ■水島 英己 35
       醜い金魚の子■松尾 茂夫 42
         自転車坂■甲田 四郎 45

  【書評】坂本つや子詩集『風の大きな耳』
       生を遡ることの激しさ◆葵生川 玲 48
  【エッセイ】   十三番目の男◆閤田真太郎 50
            一粒のご飯◆田中 郁子 52
    すてむ・らんだむ 54
    同人名簿 53     表紙画:GONGON



    聖家族    井口幻太郎

   中学と高校の息子は部屋に砂や小石を落し
   僕は時々カミナリを落す        
こぼ
   工場で旋盤を使う父は服に付いた切り子を零し
   母は愚痴をこぼす     
せ い
   娘と妻は長い髪の毛を互いの所為にする
   たったそれだけのことを
   大層嫌がり
   憎み合ったりする

   こおろぎ
   蟋蟀の声がうるさくて
   電話もテレビも聞こえない
   と 仕舞いには皆して虫にまで当たる

   それもこれも いずれかの死によって
   懐かしがられる日の来ることも
   忘れ……

   僕は今日 弟とも思っていた
   十歳若い友人を一人
   脳卒中で亡くした

 「落し」「落す」「零し」「こぼす」と言葉遊びを楽しんで、「仕舞いには皆して虫にまで当たる」で思わず笑って、第3連目でハッとしました。私たちは「たったそれだけのことを/大層嫌がり/憎み合ったり」していますが、「いずれかの死によって/懐かしがられる日の来ることも/忘れ……」て生きているんですね。でも、それが「聖家族」なんだと改めて感じます。最後まで読んで、もう一度タイトルに戻って、タイトルも佳いなと思った作品です。




詩とエッセイ『橋』116号
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2005.11.10
栃木県宇都宮市
橋の会・野澤俊雄氏 発行
700円
 

  <目次>
   作品T
    ◇臭木 大木てるよ 4        ◇森 冨澤宏子 6
    ◇初夏 そのあいか 8        ◇写真展・他 簑和田初江 10
    ◇夏果てる 國井世津子 12      ◇ひたすらの実 酒井 厚 14
    ◇わたしの赤ちゃん 内山登久子 16  ◇変わるとき 斎藤さち子 18
    ◇こども・他 島小夜子 20     ◇地球・他 瀧 葉子 22

   石魚放言
    ダモイの日まで                   酒井  厚 24
    今だから言える                   國井世津子 25

   作品U
    ◇ハイタカが飛んだ日 都留さちこ 26 ◇世界 和田 清 28
    ◇白い仮面 相馬梅子 30       ◇渋柿の渋 戸井みちお 32
    ◇女たち 湯沢和民 34        ◇放物線 草薙 定 36
    ◇五月の某 江連やす子 38      ◇花の影 國井世津子 40
    ◇夏帽子 野澤俊雄 42

   書 評 野澤 俊雄
    ◇相場栄子『かくし色』 44      ◇鷹取美保子『千年の家』 44
    ◇松下和夫『えんこ』 45       ◇河上 鴨『海辺の僧侶』 45
   橋短信
    風 声                       野澤 俊雄 46
   受贈本・詩誌一覧                         47
   編集後記                             48
   題字 中津原 範之   カット 瀧 葉子



     さくら    島小夜子

    バスから眺める
    満開の桜、
    夕暮れの街には
    散りはじめた花びらが積り
    今日の疲れのようだ。

 編集後記によると作者は新同人で、新聞の文芸欄に投稿し一時『橋』にも作品を寄せていたとのことですが生活が多忙になって詩作を中断、生活が一段落したので詩作再開、とのことでした。再開第一号(だろうと思います)として「こども」「さくら」を載せていましたが、ここでは後者を紹介してみました。構成上は「、」「。」が効いていて、短詩の創り方がよく判っている人だなと思います。「散りはじめた花びらが積り」と「今日の疲れのようだ」の対比も見事で、正直なところこんな佳い詩人が隠れていたのかと驚いています。今後のご活躍を祈念しています。




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