きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.22(火)

 午後からは打合せばっかり。予定していなかった関連会社の営業マンも訪ねて来て、2時間ほど話し込んでしまいました。業界の厳しさを切々と訴えられましたけど、私の守備範囲では如何ともし難い。彼の担当製品を少しでも使ってあげたいと思うのですが、その分野の縮小が著しい…。他の分野への引継ぎも考えてみる、ということで帰って行きました。しかし彼としても期待薄なのは承知しているわけですから、なんともはや…。不況はそう簡単には脱しないようです。




詩と散文『多島海』8号
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2005.11.20
神戸市北区
江口 節氏 発行
非売品
 

  <目次>
                
Poem
               草 * 彼未れい子…2
            線の草地 * 江口  節…4
               泉 * 森原 直子…8
           羽曳野残照 * 松本 衆司…12
               眼 * M・ノエル…16
                   訳 江口 節

                Prose
      時間速度がズレている * 松本 衆司…18
   タクラマカン砂漠を縦断する * 彼未れい子…25
           祭りの日に * 森原 直子…31
        内面の手記(抄) * M・ノエル…35
                   訳 江口 節

              同人名簿…39
              入り江で…40

                 カット  彼末れい子



    草    彼末れい子

   どこへ行くのか
   中央アジアの遊牧の民は
   聞かれても
   人には言わないのだそうだ
   今立っているところの地名さえ口にしない
   東アフリカのマサイの民は
   この草原に人がやってきませんようにと
   神に祈るのだそうだ

   草は知られてはならない
   草は限られている
   草は短い
   草はまばらで
   草は乳であり肉である

   砂漠のはずれの町で
   羊のシシカバブを食べる
   草の香りを食べる
   命の糧を口にする
   牧民の守り通した秘密と祈りの結実を

   どこから来たのか
   丈の高い草の茂るところ
   それを抜いては捨てる
   遠い東の地から

 彼末さんの散文「タクラマカン砂漠を縦断する」と合わせて考えると、場所はタクラマカン砂漠と採ってよさそうです。散文の方には第1連のようなことは書かれていませんでしたが、これは「遊牧の民」にとっては切実なんでしょうね。「マサイの民」のエピソードが良く効いていて相乗効果を出していると思います。最終連は日本での「それを抜いては捨てる」状態との対比ですが、ここも巧いところです。旅先と居住地とが見事に結び付けられた作品だと思いました。




詩とエッセイ『千年樹』24号
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2005.11.22
長崎県諌早市
岡 耕秋氏 発行
500円
 

  <目次>
   
   約束ごと        さき登紀子 2   てっぽうむし        和田 文雄 4
   涸沢小屋へ       早藤  猛 6   夜の問い ほか一篇     鶴若 寿夫 8
   木登り ほか一篇    松富士将和 12   あなたの決意、秋 ほか二篇 大石 聡美 16
   顔           江崎ミツヱ 22   風景四篇          岡  耕秋 24

   エッセイほか
   城原(じょうばる)川(二)佐藤 悦子 32   ウエストミンスターの鐘(七)日高 誠一 38
   山登り(二)      早藤  猛 46   暦             植村 勝明 50
   古き佳き日々(二一)  三谷 晋一 57   菊池川流域の民話(一八)  下田 良吉 60
   樹蔭雑考        岡  耕秋 70   編集後記ほか        岡  耕秋 72
                         表紙デザイン        土田 恵子



    約束ごと    さき登紀子

   明暗しか分からなくなった両目で
   化粧煉瓦の白い歩道を見下ろす

   五階の狭いベランダの柵越しに
   地面を行き来する人々の淡いかたち

   日没前のホタルの
   頼りない歩行のような
   水面のアメンボウの
   先を急ぐ滑りのような
   ほのかな光の流れ

   柵をつかむ自分の輪郭さえおぼつかないと
   私が何処にいるかも分からなくなる
   たとえあなたの手に触れても
   たとえ幾たび体を重ねたとしても
   届くことも重なり合うこともない
   一つひとつ単体の
   体の中に浮かぶほのかな光

   「独りであれ」
   と以前にも聞いた天空からの約束ごとは
   破れるものなら破っていいのだろうか

   時折思い上がってみても
   既に幾つかの罰を受け
   そして罰を恐れ
   私は今でも私を守っている
   あなたもきっとあなたを守っている
   いつか人のかたちなど要らないと
   自ら離れていけるまで

 「『独りであれ』/と以前にも聞いた天空からの約束ごと」の解釈はいろいろ出来るでしょうが、その後に続く「いつか人のかたちなど要らないと/自ら離れていけるまで」というフレーズが回答のように思います。作品に即して考えるとそうなりますけど、ここは読者の読み方で多少変化してもよいのかもしれません。
 「明暗しか分からなくなった両目」の具現化として第3連があり、「ホタル」「アメンボウ」の喩は適切ですね。経験はありませんけど納得します。「約束ごと」というテーマと筆力で読ませる作品だと思いました。




詩誌『やまどり』35号
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2005.5.21
神奈川県伊勢原市
丹沢大山詩の会 発行
非売品
 

  <目次>
   詩の作法           岡本昌司 1
   作品ノート
   青春のララバイ        川口征廣 2  早春花模様           早川綾香 2
   長い夜/教えて        神谷禧子 3  選択              大橋ヒメ 3
   廃校/冬の朝         ゆ  き 4  着春往還          川堺としあき 4
   最後はこの歌のように     鈴木定雄 5  椿樹の子りす          西部周子 5
   新しい峠に立ち創業の志を想う 古郡陽一 6  気になる時間          麻生任子 8
   今年はトリ年         沙謝幸音 8  ちっぽけな私          夏  海 8
   生命の木         Takako 9  ビープブルー          今井公絵 9
   グリーンウッド(インディ)の夏 照山秀雄 10  生きる/贈る言葉 友へ   柴山ISAO 10
   カモミール         瀬戸恵津子 11  家族旅行            松田勇樹 11
   無明             土  百 12  胎動/背後霊          小倉克充 12
   真逆の坂道          山口良子 13  ムスカリ/雨の日の芝桜/仕事場 吉田涼子 13
   幸せな出会い         山形尚美 14  春と修羅            岡本昌司 15
   映像             上村邦子 15  亡友よ/私の病む日       大山 茜 16
   無題            高林智恵子 17  風と光と水と土と        土  百 17
   伝言             中平土天 17
   散文
   自己紹介           山形尚美 14  八分間の走り書き        吉田涼子 15
   編集後記           中平土天 18



    長い夜    神谷禧子

   枕許の時計が大きな音で時を刻んでいる
   右に左に寝返りを打つと
   その度に ゴロンゴロンと
   胸の中の重い魂が左右にころがる
   どうしても消えない胸の異物は
   自分が蒔いた種子から生れたもの

   忘れてしまいたい言葉
   聞きたくなかった言葉
   消しゴムで消す事の出来ない沢山の事柄
   自分も人の胸に沢山残しているはず

   優しい人になろう
   心の広い人になろう

   明けの明星にむかい
   幾度も繰り返す誓いと自嘲

 長く眠れない夜というものは誰にでも経験のあることですが、それを「胸の中の重い魂が左右にころがる」と表現していて共感を持ちます。他人から受けた「消しゴムで消す事の出来ない沢山の事柄」のみならず、作者は「自分も人の胸に沢山残しているはず」と冷静に見ていて、ここに作者のお人柄が表出していると云えるでしょう。「幾度も繰り返す誓いと自嘲」という締めも素直で、内容は辛い作品なのですが心が温かくなるものを感じました。




詩誌『やまどり』36号
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2005.9.30
神奈川県伊勢原市
丹沢大山詩の会 発行
非売品
 

  <目次>
   失われてゆくふるさとの言葉    土  百 1
   作品ノート
   一筋の明かり/カタクリの花に想う 大橋ヒメ 2  あいさつ/一人暮らし     小野秀行 3
   親離れ宣言            山形尚美 3  育児論/光の下で       ゆ  き 4
   聖域(アジール)          沙謝幸音 5  幸せを呼ぶ壺/春色のスカーフ 今井公絵 5
   老姿残渣           川堺としあき 6  心の動き/心のスケッチ  柴山ISAO 5
   メル友さん            松本せつ 7  夏の果て           西部周子 7
   赤犬/完成品           吉田涼子 7  トマト泥棒の記/朝やけの海  夏  海 8
   あの森が消えた          大山 茜 9  虹色の風         あかしけい子 9
   梅干し/空まめ          神谷禧子 9  名残の夏         Takako 10
   蘇生               小倉克充 10  東京雑草讃歌/緑陰にて   高林智恵子 11
   まってるでね           土  百 11  ふつうの人/劇場の世紀    岡本昌司 12
   まるい月             中平土天 13
   散文
   随想・山桜            中平土天 13  編集後記           岡本昌司 14



    育児論    ゆ き

   三時間置きの授乳以外
   絶対に抱いてはいけない
   全身で抗議して泣く児の
   デベソは十円玉で押さえこみ
   声も涸れた唇をガーゼで薄らし汗を拭き
   そう アメリカを見習って
   独立心の強い人間に育てるため
   児を抱けぬ辛さに耐えた

   家庭内暴力 校内暴力が氾濫すると
   親子のふれあい スキンシップのなさが
   愛情の欠乏を生んだ と識者は語る

   叱らない 咎めない 命じない
   褒めて褒めてほめちぎり
   自主性を引き出す教育
   嫌われたくない友達関係の親と
   保身のため見ぬふりの教師と
   危うさに近寄らぬ周囲

   瑞々しい童顔を黒々と塗り
   天使の輪もない国籍不明の髪で
   誰からも咎められず触れられずに
   屯ろし騒ぐ若者

   少年切れ易く我押さえ難し

   育て直しなど出来ぬ歳月の後
   真しやかに言うのではないか
   三つ児の魂百迄
   道徳教育の徹底を などと

 「少年切れ易く我押さえ難し」で思わず笑ってしまいましたが、笑ったあとにフッと背中に冷たいものが走るのを感じました。「アメリカ」式「育児論」の後に出てきたのは「道徳教育の徹底」だったのか!と…。穿った見方かもしれませんが腑抜け頭の若者を大量に造りだして、何も考えず銃を握る兵隊を造り上げる…。そういう視点で戦後60年を見る必要がこの「育児論」にはあるのかもしれません。それを敏感に感じ取っている母親の作品と云えましょう。考えさせられました。




詩誌『やまどり』37号
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2005.11.18
神奈川県伊勢原市
丹沢大山詩の会 発行
非売品
 

  <目次>
   私の好きな詩「『種山ケ原』宮沢賢治」    あかしけい子 1
   作品ノート
   嘆かないでください    ゆ  き 2  ジュネスの宿/デープ・ブルー「その2」 今井公絵 3
   瑞穂           ゆ  き 3  僕                  松田勇樹 3
   花芙蓉―麻生任子さんへ― 西部周子 3  ディズニーCへ            松本せつ 3
   言葉は不思議       早川綾香 4  老塵秘死抄            川堺としあき 4
   ピーマン/三日月   あかしけい子 4  無題              福原洋子(夏海)5
   切迫/三色パン      吉田涼子 5  地球さん               松田政子 5
   ぞう          瀬戸恵津子 6  産んでくれてありがとう       山形きらら 6
   知識の泉         小倉克充 6  彼岸花                神谷禧子 7
   街へ           上村邦子 7  猫の時間               沙謝幸音 7
   初秋に          大貫裕司 8  銃声が止んだとき           照山秀雄 8
   阿波の国 紺(あい)に染む 古郡陽一 9  緑陰に聞く             高林智恵子 10
   秋の日に      おかもとまさし 11  鬼無里(きなさ)/あいさつ       中平土天 11
   散文
   随想・綾香の病棟日記   早川綾香 12  感想・『峠』は、私の参考書      早川綾香 13
   編集後記          玉ノ木 14



         
あい
    阿波の国 紺に染む    古郡陽一

   阿波踊りの地
   徳島で講演を頼まれた

   一日ゆとりが出来
   祖谷渓、鳴門の渦潮を勧められたが

   朝からの大粒の雨で 予定変更

   大塚国際美術館の 西洋名画一千余点
   二〇〇〇年経っても変色しない複製陶板画
   時間
(とき)の経過も忘れて見つめたダ・ヴインチ
   この場に自分を裏切る者がいると
   イエスが言った瞬間の十二人の弟子の
   驚愕
(アストニッシュマント)
   最後の晩餐の修復前の絵は
   世界中でここにしか存在しないのだ
   しばらく椅子に座って
   修復後の一枚との違いに鑑
(み)入っていた

   賀川豊彦記念館では
   大宅壮一の言葉
   「労働運動、農民運動、スラムでの貧民救済
   日本で運動と名のつくものは
   みな 賀川豊彦に発している」
   に想いを新たにする
   豊彦三六歳の時の『雲水遍路』の一節
   「雲水の心は無執着の心である 私の旅路は
    上へ向いた旅路であらねばならぬ」が
   私の胸の中をすーっと紺
(あい)に染めていった

   隣りの鳴門ドイツ館は急ぎ足でと
   中に入ったのに
   一瞬躰が動かなくなった
   第一次大戦時
   青島
(チンタオ)で俘虜となった
   ドイツ兵士の収容所跡だった
   生きて虜囚
(りょしゅう)のはずかしめを受けず
   大和魂の収容所では
   殴打が日常的に行われていたが
   ここ徳島坂東
(ばんどう)の収容所長松江大佐は
   敗者への思いやり深く
   俘虜に甘いという警告や非難に屈せず
   一人の人間として扱うよう徹した
   戦争での日本軍の蛮行が
   今 アジアの人々から非難されているが
   確かな倫理観を持った軍人もいたのだ
   これに応えた
   ドイツ人の気高さ
   パン作りの学校を開き
   地元の人達に卒業証書を渡す
   牧畜・野菜栽培・建築・演劇・スポーツを
   指導する
   ベートーヴェンの第九を
   日本で始めて演奏したのも
   この収容所だったという

   世界のどこに 板東のようなラーゲルが
   存在したでしょうか
   世界のどこに 松江のようなラーゲル
   コマンダーがいたでしょうか
   徳島でも 第二次大戦の
   シベリアでも 俘虜体験した
   ドイツ人の言葉である

   今も戦争が続き
   勝者と敗者が憎しみ合っている
   八十年前のことではあるが
   行き届いた収容所管理
   地域の人々との交流
   手を携え前向きに生きようとした俘虜たち

   阿波藍の国で さわやかな紺
(あい)
   ヒューマンな愛に染められた一日

   人としての尊厳しみじみと
   心地ゆく旅であった
                   (05・10初作、11改)

 「第一次大戦時」の「徳島坂東の収容所」の話は何かで読んだ記憶がありますが、「パン作りの学校を開き/地元の人達に卒業証書を渡す/牧畜・野菜栽培・建築・演劇・スポーツを/指導する」ことまでやっていたとは知りませんでした。佳い話です。
 「阿波藍の国」「さわやかな紺」「ヒューマンな愛」と三つあい≠続けたところは見事だと思います。21世紀になっても戦争・紛争が収まらないどころかますます酷くなる一方の世界。当事者たちに一度読んでもらいたい作品です。




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