きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.10.9 栃木県
「ツインリンクルもてぎ」にて
HONDA CB250
 

2005.11.30(水)

 私の直接の上司である課長が明日付けで移籍になり、挨拶がありました。私が現在の職場に異動して3年ちょっと。唯一の上司として指導いただいただけに、正直なところ残念です。また、不安でもあります。私の担当は4分野あるのですが、彼は広く浅くとは言えその全ての内容を把握していましたから、困ったときには相談に乗ってもらえました。明日からはその相談相手がいなくなります。同じ工場内に転属になるのならまだしも子会社として新設する熊本工場に移籍ですから、形の上でも上下関係はなくなります。さて、困った…。

 困ろうが何しようが仕事を進めるのが会社というもの。幸い、科学的なモノの考え方が通用する会社であり仕事ですから、そこに依拠して進めるしかありません。トシもトシ、もう50も半ば過ぎてますから、今までの知識と経験を生かして弱音を吐かないでがんばるしかありません。




詩・創作・批評『輪』99号
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2005.11.25
神戸市兵庫区
輪の会・伊勢田史郎氏 発行
1000円
 

  <目次>
   詩 伊勢田史郎 海のうえの虹/昆陽池のほとり  2
     渡辺 信雄 風になる人 4
     山南 律子 白ふくろうの館 6
     丸本 明子 点になる/線になる 8
     岩ア 風子 届かない 岸辺に 10
     直原 弘道 六十年後の夏 12
     北原 文雄 望郷異郷7 14
     赤松 徳治 魚の臓の唄 16
     岡見 裕輔 歌物語「牧場の朝」 28
     各務 豊和 青い夕暮れ 30
     赤松徳治訳 組詩 秋の風景(N・A・ザボローツキィ)

   エッセイ
     野呂邦暢の詩神 倉田 茂 18
     大蔵海岸のコアジサシが教えてくれること 坪谷令子 22
     黒猫 丸本明子 23
     一日の終わりに 岩ア風子 26
     戦後60年と「輪」 渡辺信雄 27
     さる顛末 灰谷健次郎 34
     絵画のなかの女性たち 山南律子 37
     二〇〇五年夏の中国 直原弘道 38
     最後の仕事 北原文雄 43

   絵 私の中の絵本「予感の響き」 坪谷令子 24
   編集後記 46



    望郷異郷7    北原文雄

     終わりの夏

   この夏は格別の夏
   生徒とつながる終わりの夏
   瞬く間にすぎていく夏
   毎年のことだが
   いよいよ早い夏

   生徒と何回も球場へかよう
   昨日も 今日も
   今年の野球部は強い
   三十年ぶり夏の甲子園
   町の噂

   コンクールがある
   定期演奏会がある
   力を温存したい
   部員を三つにわけて
   ローテーションを組むが
   球場で応援しはじめると
   生徒は情熱的に 必死に
   高らかに吹奏する
   それは爽やかなのだが…

   焼けるようなスタンドの暑さ
   室内とはまったくちがう吹き方
   耳が壊れる
   唇が荒れる
   感性が麻痺する
   練習時間の不足が
   生徒を焦らせる

   明日は準決勝
   学校や町のファンが
   大勢球場へ押しかける
   準決勝三十人
   決勝はフルメンバー
   生徒の負担を覚悟で頼む
   相手は練習試合で勝っているチーム

   わたしの最後の夏
   春の甲子園で演奏して二十年近い
   今年が最後のチャンス
   もう一度甲子園へ行けるなら
   コンクール 定演 やむなし
   それでもやりきるのなら君たちの力
   生徒の力を信じる最後の夏

   戦後六十年 生徒を戦場へ
   送らなくてすんだ幸せをおもう

 「わたし」は高校の音楽の先生のようですね。来年3月には定年になって「この夏は格別の夏」というのがよく判ります。高校野球は私も好きでTV ではよく観ますけど、ブラバンが「室内とはまったくちがう吹き方」だというのは気付きませんでした。「耳が壊れる/唇が荒れる」と具体的で判りやすいフレーズだと思います。
 最終連は実感でしょう。でも、これからはわかりません。私たちが退職したあと、10年か15年か、危惧しています。退職というホッとした感じが出ている中にも、今後の憂いが感じられる作品です。




会報かわさき詩人会議通信37号
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2005.12.1
非売品
 

  <目次>
   エッセイ
     中原中也の「サーカス」の「茶色い戦争とは」 河津みのる
     塚本邦雄氏をしのぶ さわ こよし
   詩 台風    戸ケ里時枝
     マッチ箱  山口洋子
     夜の散歩  丸山緑子
     優しくなくちゃ医療じゃない―ある医師のこと― さがの真紀
     酩酊    枕木一平
     連鎖    岩田幸枝
     越前くらげ 寺尾知沙
     白菊を捧げる詩二題 斉藤 薫
     老夫婦さんぽ 小杉知也



    酪酎    枕木一平

   ネコもシャクシも改革改革と
   この国は酔いしれている
   おろかな私には小泉構造改革のどこに
   希望があるのか、未来があるのかわからない

   構造改革がすすめば日本はよくなる
   そう言って早くも四年の月日がたったけど
   国の赤字は減るどころか逆に増えていた
   総理にむかってウソつきと言ったら私はバチあたりか

   私はバチあたりでも時代遅れのバカ者でもいいけれど
   戦争の放棄をうたった平和憲法が
   愛国というこぎれいな二文字にすりかえられて
   日の丸小旗を振らされる日がこなければいいが

   もう堪えきれなくて改革のしたじきで
   絶望の崖っぷちから身を投じ
   姿を消していった人たち
   今では新聞の片スミにものらない人たち

   早く酔いをさまさなければ
   そんな気持ちが日増しにつのってくる冷たい秋の雨。

 交通事故の死者が年間1万人を切ったのはとっくの昔で、2005年は7000人を下回るだろうと言われています。その反面、多くなったのが「もう堪えきれなくて改革のしたじきで/絶望の崖っぷちから身を投じ/姿を消していった人たち」。年間3万人以上という状態が続いています。マスコミはなぜ彼らが自殺しなければならなかったのかをこそ取材すべきなのに「今では新聞の片スミにも」載せません。将来の歴史家は、この時代をどう論じるでしょうか。私たちが「早く酔いをさまさなければ」ならないのはもちろんですが、マスコミはいつまでも「酪酎」していていいのか!と感じた作品です。




北野明治氏詩集『雪明りの夜道』
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2005.11.20
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
1620円+税
 

  <目次>             題字/装画・廣瀬波山
    T 雪明りの夜道
   記憶 8            ある時の会話 10
   人生 11            火を盗む 12
   国歌 14            頭を下げる 15
   代筆 16            ラヴ・レター 17
   会話 18            六月の後楽園庭園にて 20
   セルフ・サービス 22      不思議なこと 23
   テロ 24            吸いすぎた煙草の吸殻 25
   時間 26            じゃが芋 28
   趣味 29            恩賜の煙草 30
   潮騒 32            氷 34
   痛み 35            僕は足が悪いので 36
   何とかなる 38         一度だけの人生 39
   雪明りの夜道 40        花 42
   豊作貧乏 43          バナナ 44
   黙とう 46           再びのテロ 48
   煙草 49            孤独な徒歩 50

    U 花壇『鶏』より
   風の音 52           雪 54
   困ったこと 56         話 58
   花壇 59            アマリリス 60
   みちあふれるひかりのなかで 61 言葉 63
   初冬 66            夏蜜柑 68

    あとがき 70



    会話

   黄昏
   満員の地下鉄 東京メトロの電車が
   ひと駅 停車するたびに
   すこしずつ
   車内の来客が減っていった
   (それでもまだ坐席はいっぱいであった)
   ふと気が付くと
   白いスキー帽をかぶった
   四歳か五歳ぐらいの男の子が
   人を隔てた左右別々の坐席で
   母親と向い合って
   ニコニコ笑いながら話をしていた

   ――手話であった

   私は電車のドアの
   うす暗い窓ガラスに写っている
   その
   あどけない子供の手振りを
   会話を
   次に降りる駅まで
 みつ
   立ったままじっと凝視めていた

 私の職場にも聾唖者がいて、彼と仕事を直接する連中は手話で「会話」しています。私はほとんど出来ないので見ているだけですが、指の動きだけで会話しているのを見ると感動すら覚えます。それと同じ感動を著者も得たのだろうなと思います。それも直接見ているのではなく「うす暗い窓ガラスに写っている」とありますので反射で見ていたのでしょう。なかには直接覗き込むような無礼な輩もいるでしょうが、著者はガラスの反射で、しかも「立ったまま」見ています。私はここに著者の優しさを感じました。詩集全体にもその優しさは滲み出ています。殺伐とした中にあって、気持が救われる思いがした作品であり詩集です。




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