きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.12.23 群馬県安中市
新島襄旧宅
 
 

2005.12.1(木)

 関連会社の東京本社に出張してきました。本来の会議は15時からだったのですが、その前に別件の打ち合わせを持ちたいという相手方に配慮して13時に着きました。私の勤務する工場からでは10時に出ないと間に合いません。昼メシを抜けば11時でも良かったんですが、それはやらない(^^;
 延々と6時間もの会議になって、さすがに疲れました。帰りは東陽町駅近くの行きつけの店で呑んで、それで少しは発散できたかな。会議は2時間、掛かっても3時間が限度ですね。呑んでる時間なら6時間でも平気だけど(^^;;




中山直子氏詩集『春の星』
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ドイツ語・日本語詩集
2005.2.22
東京都新宿区
アルフ出版刊
1300円
 

  <目次>
   はじめに …………………………………………………………… 9

   水仙 ………………………………………………………………… 13
   ゲーテの『魔王』のこと ………………………………………… 17
   春の星 ……………………………………………………………… 19
   三月の雪の踊り子 ………………………………………………… 21
   カイザー・ヴィルヘルム記念教会 ……………………………… 23
   美しい窓 …………………………………………………………… 27
   ミケは犬です ……………………………………………………… 31
   乙女椿 ……………………………………………………………… 37
   ブランデンブルク門 ……………………………………………… 41
   光のような花 アマンダに ……………………………………… 45
   ハンブルクの戦争展 ……………………………………………… 49
   小鳥の歌った歌 …………………………………………………… 51

   略歴/著書 ………………………………………………………… 53
   ガラスの中の花(二〇〇三年度伊東静雄賞奨励賞)…………… 57
   あとがき …………………………………………………………… 59
                    
装幀:加藤孝夫 装画:中山定義



    春の星

   開け放たれた窓から
   夕べ
   シューベルトのソナタが
   流れ出る その底に
   悲しみの石の重みを
   隠しながら

   二本ならんだ 樅の木の間に
   明るい星が あらわれる
   アムゼル
(クロウタドリ)は
   その歌をやめ
   じっと静かに 枝にいる

         三月一二日 リューネブルク

   *
Turdus merula,アムゼル(Amsel);全身が黒色で、
    嘴と眼の周囲が黄色の体長25cm位の鳥。フルート
    の音のような美しい声で鳴く。ツグミの一種。クロウタドリ

 ドイツ語と日本語で書かれた詩集です。ドイツ語表記ができないので日本語のみの紹介とさせていただきました。著者自身のドイツ語の詩を厳密に日本語に翻訳することは難しく、同じテーマ同じモチーフでもうひとつの日本語の詩を創ったそうです。
 紹介した詩はタイトルポエムです。「アムゼル」という鳥が「明るい星」を見て「歌をやめ/じっと静かに 枝にいる」という光景がおもしろいですね。鳥も見惚れるほどの「春の星」で、ドイツの星かなと思います。




小林Y節子氏詩集『天秤座の夜』
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2005.10.5
東京都新宿区
思潮社刊
2200円+税
 

  <目次>
   線の上で* 8     心 Lesson 1 10
   夢の滴り 14      風の封印 17
   コスモポリタン 20   時の谺 24
   ホモ・サピエンスのウォーミングアップ 27
   線の上で** 30    光の背面 33
   波の回路 36      五月のオブジェ 39
   殻の法則 42      脱色 45
   青のラビリンス 48   はじめる前に 51
   振幅 54        眠りのコア 57
   天秤座の夜 60     夜間工事 63
   春の儀式 66      知恵の実 69
   ワークの移動 71    分岐点から 74
   存在の鏡 77      光る助走 81
   青の解体 84      再成回路 87
   羽化のなりたち 90

   あとがきにかえて 94



    天秤座の夜

   不在感に満ちた貧血の朝と
   仮面のままの 充血の夜が来て
   あなたのナイフは光っていますか
   切れ味は変りませんか
   材料を前に何をためらっているのか
   それは あなたの血管ではなく
   鮮度のよいグリーン・アスパラです

    ホルマリンの小瓶を
    机の下に置いていた無口な男も
    読みかけの本を閉じて 突然
    グラウンドの白いバーを目がけて
    走り出した本当の理由はわからないが
    永遠の旅立ちを予告していた

   非武装地帯で出会った夢の原形は
   文字盤の短針と長針が分割する
   変幻するスペースの表情が
   昼と夜の関連を体内に位置づける
   ルールと共にすべて亡びる世界の外で
   輝石の伏せ字をみつけ出す

    百パーセントの想いで互いに
    同じ力で引き合っても
    なにも動かないのだから
    風はどちらにも流れない 傾かない
    熱いエネルギーを吸収して
    静かなバランスだけが残る

   早朝 出かけるのは屋根の上からですか
   遠く記憶の虹を歩いても
   いつも 戻ってくる場所は机の下ですか
   抽出しの手紙の束の中ですか
   珊瑚虫の産卵のように 漆黒の瞳の中で
   数えきれないほどの分身を放っています

 詩集のタイトルポエムを紹介してみました。正直なところ、かなり難しい詩集ですし作品なんですが、この作品の場合の鍵は「天秤座の夜」という題にあると思っています。星座としての天秤座と、秤としての天秤が掛けられていると思います。その意dを吸収して」いる、あるいは「熱いエネルギーを」発散している、と読み取りました。「珊瑚虫の産卵のように 漆黒の瞳の中で/数えきれないほどの分身を放っています」という最終連の2行は「天秤座」という星の喩だけでなく、著者のエネルギーの放出と捉えても良いでしょうね。
 意味を理解しようとすることは、それこそ無意味かもしれません。刺激された頭脳の疲れを楽しんでいます。




詩誌Void6号
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2005.7.30
東京都八王子市
松方 俊氏他 発行
500円
 

  <目次>          表紙 小林昌子
   あかい、子守唄は        原田道子 2
   波の事件            森田タカ子 4
   ぼくは夜通し彷徨っていた……… こじまてるお 6
   七夕(たなばた)二編      浦田フミ子 10
   松江/前橋文学館        松方 俊 14
   落日考 1           中田昭太郎 18

   擬黄表紙 二人三脚は足の引っ張りあい 5 中田昭太郎 22
   後記 28



    七夕(たなばた)    浦田フミ子

   なんとなく このごろ
   あの世とこの世のあいだを
   いったりきたりしながら
   あそんでいるような気がしていた

   すると
   たなばたに つかう竹を
   きらせてくださいと
   さゆりほいくえんから でんわが入って

   ぴんくの制服の 若い保母さん三人と
   灰色の服の主任さんが やってきた

   六〇人の子どもたちに 小枝をいっぽんづつ
   みなみ野駅にたのまれて かざるのを
   まるごと一本 ください
   女性ばかり 苦心して伐り出し 束ね
   ひきずって はこんでいく

   ゆうがた バスの窓から
   色とりどりの子どもたちの ねがいを
   どっさり結びつけた 孟宗竹が
   歩道を駅にむかって ゆっくり
   動いていくのを見た

   大きすぎて 車にのせるわけにもいかず
   そのことが いっそ たのしくて仕方がない
    というように
   まるで ふってわいた ありえない夢のように
   ゆっくりと 七夕竹は 人びとにかつがれ
   はこばれていった

   ふしぎなことが いっぱいある
   自分が生まれるのは まだ
   これからなのかなあ。

 思わず微笑ましくなる作品ですが、よく見るとそうとばかりは言えないようです。第1連では「あの世とこの世のあいだを/いったりきたりし」ているようですし、最終連では「自分が生まれるのは まだ/これからなのかなあ」と「ふしぎなこと」を言っています。その間の連は現実の世界のようですから、このギャップがおもしろいですね。口調も柔らかいですから、つい騙されてしまいますけど、本当は怖い詩だと思います。




詩誌Void7号
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2005.10.30
東京都八王子市
松方 俊氏他 発行
500円
 

  <目次>          表紙 小林昌子
   あいたいあいたいひとに、みたまのふゆ 原田道子 2
   生きる                こじまてるお 4
   越中おわら節―風の盆 in八王子―   浦田フミ子 6
   インターシティー風景         森田タカ子 10
   法師温泉 U/蝉時雨/日常 W    松方 俊 15
   落日考 2              中田昭太郎 20

   擬黄表紙 二人三脚は足の引っ張りあい 6 中田昭太郎 25
   後記 30



    法師温泉 U    松方 俊

   樅の樹が語る洋燈の物語を
   灰暗い湯船のなか
   差し渡された丸太の枕にうなじをのせて聞いた

   千年の山の刻が
   湯口から透明な湯と流れてくる
   病む躯をいとしめと私に囁く

   谷川の水が湯上がりの渇いた喉を潤してくれた
   囲炉裏に燃える桜の老木に
   私は語りかける語彙をもたない
       

   囲炉裏の炎を
   葉音をたてて
   梅雨の雨が濡らしていた。

 「囲炉裏」のある温泉宿なのでしょうか、のんびりとした雰囲気が伝わってきます。しかし、そこは並の湯治客とは違います。「樅の樹が語る洋燈の物語を」聞く、「私は語りかける語彙をもたない」とは、さすがは詩人の感性です。逆に言えば、どんなにのんびりしていようと詩人としての感覚はいつも研ぎ澄まされているということでしょう。因果と言えば因果かもしれませんけど、それだけ深い生を生きているとも申せましょう。味わいのある作品です。




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