きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
   051223.JPG     
 
 
2005.12.23 群馬県安中市
新島襄旧宅
 
 

2005.12.3(土)

 午前10時〜午後6時、日本詩人クラブのオンライン現代詩研究会を実施しました。2回目のメーリングリストによる開催です。作品提出は、5人・5編。発言者は7人。作品数が少なかったので発言者はひとつひとつの作品について丁寧な感想を述べてくれました。
 次回は2006.2.4(土)を予定しています。今回までは指定者のみのクローズドでしたが、次回より村山が把握しているEメール所持の会員・会友約210名に参加を呼びかけますので、参加者数によっては24時間開設などの工夫をしたいと思っています。
 今回は、開催を呼びかけたあと会社に午前中出勤していました。参加者が一定の場所に集まる必要がないという形式だからこそ出来る芸当ですね。インターネットの特質を生かしながら今後も続けていくつもりです。




詩誌『火皿』109号
     hizara 109.JPG     
 
 
 
 
 
2005.11.20
広島市安佐南区
福谷昭二氏方・火皿詩話会 発行
500円
 

  <目次>
   ■ 詩作品
    
わが街(一)…………………………………………石 田 明 彦 2
    
岩国、光の空襲は八月十四日でした………………長 津 功三良 4
    
白い瞳…………………………………………………末 田 重 幸 6
    
子どもを育くむ道を歩むあなたに…………………福 谷 昭 二 8
    
妻の故郷 T 撫順…………………………………御 庄 博 実 10
    
仮面の男………………………………………………野 田 祥 史 12
    
水 鳥…………………………………………………川 本 洋 子 14
    
ヤマモモの下で………………………………………川 本 洋 子 15
    
ちょこれーと・ぱふぇ………………………………江戸我 美 保 16
    
つながる………………………………………………沢 見 礼 子 18
    
ただ一度………………………………………………松 井 博 文 20
    
ささやき………………………………………………福 島 美 香 22
    
手 紙[3]…………………………………………加 藤 千穂子 24
    
君の見る夢……………………………………………松 本 賀久子 29
    
シラトリのツダ………………………………………津 田 てるお 32
   ■ エッセイ
    
いんたーねっとと詩について………………………江戸我 美 保 34
    
広島市文芸シンポジウムの開催にかかわって……福 谷 昭 二 35
   ■ 編集後記
   ■ 表紙画―〔刻〕 作者=巻幡玲子(尾道市在住)



    岩国、光の空襲は八月十四日でした    長津功三良

   八月六日 ひろしま
   八月九日 ながさき
   そして ポツダム宣言受諾無条件降伏は 八月十五日
   岩国駅前の大空襲は
   八月の十四日午前十一時十五分だった
   同じ日 光市もやられた

    疎開している時の同級生のふじちゃんのお父さんは
    この空襲で亡くなり 彼は孤児になった
    母親は既に亡く 徴用で働かされている父親と別れ
    背戸山となりの叔父さんの家に引き取られていた

    長野の高台にいたしんちゃんは 昼間
    B二九が 正面の山向こう岩国方面に
    ばらばら爆弾を落としているのを 見ていたそうな

   標的の岩国駅を中心に住宅街がやられたんだそうな
   死者 五百十七名

   光市は海軍工廠が狙われ
   動員学徒を中心に 死者 七百三十八名の記録
   内 学徒 百三十三名

    戦争が終わり 幾らか落ち着いて
    復員した父の働いている 広島へ行くのに
    米を担ぎ 超満員の一日一往復の木炭バスで
    小郷まわりで二時間掛かって錦帯橋へ
    そこで市内バスに乗り換え 岩国駅に出るのが常であ
    った
    そこには いつまでも駅の周辺に 爆弾の跡穴が
    大きな水溜りになって 何箇所も あった

   最近戴いた詩人上野菊江さんの私信では
   当時 新聞社に勤務していて一日前には
   終戦の詔勅は すでに全文を入手していた そうである
   とすれば 空襲した末端の兵士達は 知らないにしても
   命令をした幹部は 日本の降伏を 知っていた筈である

   この 残酷無残な 死 は何なんだろうか
              
(二千五年八月十三日中国新聞記事より)

 「ポツダム宣言受諾無条件降伏」の前日「八月の十四日午前十一時十五分」とはひどい話ですね。詳しく調べていないので断言できませんが、ドイツ降伏前日も空襲は続いたのでしょうか。有色人種蔑視を感じます。
 最近になって、多くの日本人が「一日前には/終戦の詔勅は すでに全文を入手していた」事実が明るみに出ているように思います。当然「命令をした幹部は 日本の降伏を 知っていた筈」でしょう。まさに「残酷無残な 死」を強いられたわけです。歴史の証言として遺すべき作品だと思います。




個人誌Le Petit Cadeau3号
     le petit cadeau 3.JPG     
 
 
 
 
 
2005.11.15
東京都練馬区
谷口ちかえ氏 発行
非売品
 

  <目次>
   紙上フォト・ポエム展――〈詩と短歌と写真のコラボレーション〉
    この秋、涸沢……6      木魂よ帰れ……10
    時計……13          火州の故城で……14
    鳩のように……17       エッセイ・フロンティアヘの試行……18
    命……20           ふと立ち止まり……22
    千年桜 二千年桜……25    植木屋に聞いた話……27
    ガイアの詩……30

   カリブの風 3――その文化的・歴史的背景
    西インド諸島発見の光と闇――コロンブス以前から現在
     ◆五大陸の交差点としての特異性………………………34
       はじめに・前回からの流れ
     ◆圧政と解放、独立への流れ……………………………38
       植民地主義・大農園の奴隷制・19世紀以降
       −奴隷解放・非植民地化・独立
     カリブの口承詩より(抜粋)……………………………44

   対訳/名詩展――立原道造と神保光太郎
    ――第10回アジア環太平洋詩人会議によせる――
    手製詩集『日曜日』より…………………………48
    詩集『萱草に寄す』より…………………………53
    立原道造を思う――神保光太郎……………………………53

   後記………………………………………………………………58
              (写真撮影・レイアウト=谷口)



    時針    谷口ちかえ

   食堂の皿時計がこわれてしまった
   狂った時ばかり刻んだあとで
   たった一つの時刻を指すようになって
   「あの時 あの時……」 と

   その時
   どんな衝撃が内部を襲ったというのだろう
   今を生きなくなった時計の
   皿絵の花々は今に咲いて

   日々と重ならなくなった指針に
   家族は何度もたじろぐので
   わたしはそれを
   壁から運びさらねばならなかった

   時計屋は言った
    「分解掃除が必要です
     時という時から解き放して
     一度 自分を忘れさせてやるのです」

 「たった一つの時刻を指すようになって」というフレーズに新鮮さを感じました。でも、フッと考えると、これってよくある話…。地震で止まった時計の写真は定番です。なぜ新鮮さを感じたのだろうと考えたら、「狂った時ばかり刻んだあとで」のフレーズがあるからではないかと思いました。地震のように一瞬で止まるのではなく、ヨロヨロとよろけた後で止まる時計について書かれた詩はほとんど無かったろうと思います。その意味では「日々と重ならなくなった指針に/家族は何度もたじろぐ」というフレーズは大事になってきますね。最終連の「時計屋」の言葉も名言です。なにやら、事故死と過労死の違いを見るようです。




隔月刊詩誌『叢生』141号
     sosei 141.JPG     
 
 
 
 
 
2005.12.1
大阪府豊中市
叢生詩社・島田陽子氏 発行
400円
 

  <目次>
   
   お片づけ         山本  衞 1   笑いのある家    由良 恵介 2
   スーパー・マーケットの鏡 吉川 朔子 3   待つ人       秋野 光子 4
   泉  マリー・ノエル 訳 江口  節 6   石庭        姨嶋とし子 7
   大文字          木下 幸三 8   億万分の一秒の殺意 佐山  啓 9
   数値           島田 陽子 10   海辺の宿で     下村 和子 11
   生々しい記憶       曽我部昭美 12   柿好き       原  和子 13
   ドリル          福岡 公子 14   空 他       藤谷恵一郎 15
   連れションしょう     麦  朝夫 16   バスの中で     八ッ口生子 17

                 本の時間 18
                 小  径 19
                 編集後記 20   表紙・題字 前原孝治
           同人住所録・例会案内 21      絵  広瀬兼二



    柿好き    原 和子

   柿好きの犬がいて
   柿をくれ
   柿をくれ というので
   枝ごと折って渡すと
   前足で押さえつけて
   目を細めて
   むしゃぶりついている

   それを見ていた
   柿ぎらいの犬が
   まねをして
   柿をくれ というので
   一つちぎって渡すと
   いやそうにくわえて
   ハウスの一番奥に持ちこんで
   だれからも取られないように
   夜まで
   入口で番をしている

 ホッと心なごむ作品ですね。「柿ぎらいの犬が/まねを」するというのはあり得ることなんでしょう。同時に2頭の犬を飼ったことはありませんけど、食べなくても「だれからも取られないように」に自分の餌の「番をしている」ことは経験しています。
 この作品の場合「夜まで」と限定しているところがおもしろいと思いました。一定の時間が過ぎると見向きもしなくなる犬の性質を良く掴んでいて、その上作品としての効果も上げていると云えましょう。




   back(12月の部屋へ戻る)

   
home