きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
   051223.JPG     
 
 
2005.12.23 群馬県安中市
新島襄旧宅
 
 

2005.12.25(日)

 終日、いただいた本を読んで過ごしましたが、まだまだ減りません。お礼が遅くなってすみません。




詩誌『石の詩』63号
     ishi no shi 63.JPG     
 
 
 
 
 
2006.1.20
三重県伊勢市
渡辺正也氏方・石の詩会 発行
1000円
 

  <目次>
   救急処置             濱條智里 1   永遠の子ども会 W  高澤靜香 2
   サーカスのテント(B)の表と裏 キム・リジャ 4   白い羽        谷本州子 5
   内視鏡/失名           真岡太朗 6   魔女宣言 ]]]Z  濱條智里 7
   暦                八木道雄 8   紫陽花       奥田守四郎 9

   三度のめしより(十七)      北川朱実 10
    かげ口は寂しきものや水羊羹

   旅のメモ(5)消息        落合花子 14   広島焼き      澤山すみへ 16
   隣の異邦人            浜口 拓 17   私事 恥の上塗り   加藤眞妙 18
   さくら             西出新三郎 19   高島屋        北川朱実 20
   わたる月 脈打つ水        渡辺正也 22
   ■石の詩会 CORNER          23   題字・渡辺正也



    失名    真岡太朗

   太陽から光熱費をただにしてもらっている
   ぼくら生き物はその恵みで生まれ
   恵みのまん中で生きている

   ぼくはぼくらの遠い未来を知らない
   過去でさえあまりにも古くて全くわからない
   あたりは絶えず旅をしている
   金色の灯火をつけて光年の列車が走っている

   流れないで流れている銀河もその水音も
   夢のような現実ばかり
   それだけしかぼくにはわからない

   それでも地球は恵まれた資源孤島だ
   生き物でない豊かな存在の営み
   この地球の本当の名は何だったっけ

 タイトルに惹かれました。「名」を「失」うものは何かと思ったら、「地球」だったのですね。人間は名を失わせるほどの行為を地球に与えた、と読み取ってみました。「恵みのまん中で生きている」にも係わらず、です。
 「地球は恵まれた資源孤島」という視点もおもしろいと思いました。「生き物でない豊かな存在」の「地球の本当の名は何だった」のだろうかと、私も考えてしまいました。




詩誌『濤』9号
     tou 9.JPG     
 
 
 
 
 
2005.12.28
千葉県山武郡成東町
いちぢ・よしあき氏方 濤の会 発行
500円
 

  <目次>
   広告  川奈静詩集『ひもの屋さんの空』             2
   訳詩 (遺稿) 激情と神秘           ルネ・シャール 4
       ひとり止まる者たちは          水田喜一朗 訳
   作品  トマトのように               川奈  静 8
   死神                        伊地知 元 10
   特集2(第二回)
       いちぢ・よしあき  私の詩の転々 U          12
   作品  昨今 Z  冥混式でたくさん        山口 惣司 18
       メロポエム・ルウマ          いちぢ・よしあき 20
   書評  川奈静詩集『ひもの屋さんの空』を読む    山口 惣司 25
   濤雪  こだわり(5)            いちぢ・よしあき 29
                          受贈・受信御礼  30
                             編集後記  33
   広告  川奈静絵童話『プクリとパクリ』             32
       山口惣司詩集『天の花』                 35
                      表紙 林 一人



    蟻地獄
      <ウスバカグロウの仔虫 羽化
     するまで脱糞しない不思議な虫
     主としてダンゴムシ ヤスデ
     小型甲虫類 を捕食する 蟻の
     捕食は全体の10%弱>

   いつも彼にたしなめられた来た
    (怒っちゃいけない
    相手を馬鹿にしてはいけない
    勤め人はチームワークが命だから)
   解っちゃいるが その前に人間でありた
    いから
   たしなめられ続けてやった
   それも今日で御仕舞

   停年
   送別会は
   部長職の長広舌を我慢して
   二次会へなだれ込むのが楽しみなのに
   今日ばかりはどうも
   彼がぶるぶる拳固をふるわせて
   起ち上ったからだ
    (私は 本日十七時十分をもちまして
    停年退職を致しました これまで無事
    あい勤められましたことは 偏えに皆
    々様のお陰と云うところですが 私の
    お陰です 私の我慢です 部長さん
    礼なぞ言いませんよ 送別会の費用は
    私も納めて来た職場の積立金だし 費
    用の残金には私の分もいくらか残るは
    ずです 私は鰹節じゃありません 二
    次会の出しにしようたってそうはいき
    ません これでお開き さよならしま
    す)

   ――まあまあ
   たしなめられて来た俺がたしなめる
   ――人間和が大事ですから
   きっ! と睨みすえ
   すたすた彼は出ていった

   職場のどよめき。
   羽化する蟻地獄の脱糞の如き
   三十七年勤続 温厚で通した勤め人の
   かたくななばかりのカタルシス
                78・5・5

 いちぢ・よしあき氏のエッセイ「私の詩の転々U」に収められている詩の中の一編を紹介してみました。30年近く前の作品ですが、事態はまったく変わっていませんね。「偏えに皆/々様のお陰と云うところですが 私の/お陰です 私の我慢です」という詩句はそのまま現代にも当てはまると思います。
 「蟻地獄」の「羽化/するまで脱糞しない不思議な虫」と「羽化する蟻地獄の脱糞の如き/三十七年勤続 温厚で通した勤め人の/かたくななばかりのカタルシス」とが、見事に合っている作品です。この「蟻地獄」の遣い方は上手いですね。まさに「勤め人」の世界は蟻地獄。21世紀の蟻地獄を書いてみたいものです。勉強させていただきました。




詩とエッセイ『樹音』51号
     jyune 51.JPG     
 
 
 
 
 
2005.11.30
奈良県奈良市
樹音詩社・森ちふく氏 発行
400円
 

  <目次>
  「森ちふく詩集」刊行お祝いの会        1
  「新・日本現代詩文庫24」に対する批評文    12

   秋声 他1編          中西  登 18   いつまでも 他1編   藤 千代音 20
   斑鳩の里 他1編        寺西 宏之 22   ぬけがら 他1編    結崎 めい 24
   子猫 他1編          汀 さらら 26   秋の雨 他1編     中谷あつ子 28
   心の詩が            森 ちふく 30   真の豊かさとは     大西 利文 31
   ピーターラビットの故郷を訪ねて 稗田 睦子 32   漫ろに誘われる秋の風情 板垣 史郎 33
  「先輩諸氏から……」             34

   樹のこえ                  58   編集後記              59
   樹音・会員名簿               60



    ぬけがら    結崎めい

   木の枝に
   木の葉の先に
   しがみついているぬけがら
   あちこちにみつけた

   あなたの生きたあかし
   生きてた確かなあかし
   そのまま

   土の中からのそりのそり
          
こころ
   萎えていた私の心身
   ぬけがらになるすべも
   知らずに
   あなたの生きたあかし
   を集めます

   軽いぬけがらも
   今の私にはずっしり
   おもい

 おそらく蝉の「ぬけがら」でしょう。「生きてた確かなあかし」というフレーズが作者の視点の「確か」さを文字通り物語っていると思います。その「軽いぬけがらも/今の私にはずっしり/おもい」と云うのですから、死と生に対する作者の意識の強さも感じます。それにしても人間は「ぬけがらになるすべも/知らずに」いるのですね。いつまでも身に纏いつくものを捨てきれずいる人間の業を考えさせられた作品です。




   back(12月の部屋へ戻る)

   
home