きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.12.23 群馬県安中市
新島襄旧宅
 
 

2005.12.27(火)

 今年最後の休暇を取って病院に行ってきました。MRIを撮るだけで問診はありませんでした。MRIって初めて体験しましたけど、不思議な感覚です。磁気共鳴を使って断層を見るようですからだいたいの構造は理解できましたが、トンネルの中に閉じ込められるってのはあまり良い気分ではありませんね。まあ、レントゲンやCTに比べて数段進んだ診断機ですから、信頼は置いています。それにしても、そんな機械の世話にならないで過ごしたいものです。
 結果が出るのは正月の5日。どんなことになっているやら楽しみ半分、不安半分です。




隔月刊詩誌『石の森』131号
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2006.1.1
大阪府交野市
金堀則夫氏方・交野が原ポエムKの会 発行
非売品
 

  <目次>
   わたしのふの字 美濃千鶴 1        ラベンダー ティ 夏山なおみ 2
   インターネット仮面現る! 佐藤 梓 3   F階 上野 彩 4
   改名と「抱擁」とカピバラ 南 明里 5   残/都会の朝 山田春香 6
   道中 四方彩瑛 7             晴れた空 西岡彩乃 7
   己 金堀則夫 8              火急来られたし/水禽写真 大薮直美 9
   やさしいコトバ 石晴香 10

   桃雑談 四方彩瑛 11            <<交野が原通信>>第二四五号 金堀則夫 13
   石の声 14                 あとがき 15



    わたしのふの字    美濃千鶴

   わたしのふの字は
   得体が知れない
   ふへいふまん
   ふきげんふゆかい
   ふてくされ
   ふつふつ沸いて
   ふきこぼれ

    「ふ」の字が書けない。「あ」も「い」も
   「は」も「ひ」も、はなまるをもらったのに、
   「ふ」だけ「もういちど」。大きなマス目に「ふ」
   を二十回。ひらがなの「を」は女の坐った姿
   に似ているといったのは中勘助だが、わたし
   の「ふ」の字は溶けかかった夏場の飴のよう
   な気色悪さで、小学一年のノートを埋めてい
   く。

   わたしのふの字は
   ふつりあい
   ふかかいなバランス
   ふるえる翼
   ふらふら揺れるやじろべえ

    ふふふ、という笑いには、気弱な臭いがあ
   る。うふふ、なら楽しそうなのに、ふふふと
   笑うだけで、どうしてこうも卑屈になるのか。
   ふくからに秋の草木のしをるれば。でもふふ
   ふの不幸は嵐じゃない。もっと薄ら寒い、醜
   悪な、どこにも点がない不確かな低気圧。半
   分ほど書いたふの字が涙でにじむ。

    やりなおしの宿題を終えた頃には、二十の
   ふの字は薄黒くなっていた。宿題が終わって
   も、わたしはまだ、ふの字が書けない。書い
   ても書いても、これは本当のふの字ではない
   と思う。その日からずっと、ふの字に似せた
   嘘のふの字を書いている。本当のふの字がわ
   からないまま、嘘のふの字を書いている。

 私の肉筆はいわゆる悪筆で、特にひらがなが駄目ですね。「ふの字」も悪いし「を」も悪い。「小学一年のノートを埋めていく」こともやらされましたけど、駄目なものは駄目。高校生の頃にはオレの字はいずれ活字になるから、これでもいいんだ≠ニ嘯いていました。初期のパソコンにオーディオテープから読み込んだワープロ・ソフトを入れたときには狂気のように喜んだことを覚えています。
 作品は「どこにも点がない不確かな低気圧」という視点がおもしろいと思いました。論点の飛躍があります。さて、作者がどんな「ふ」を書くのか、自分のことは棚に上げて見たい気持ちになりました。




個人詩誌『夜凍河』5号
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2005.12
兵庫県西宮市
滝 悦子氏 発行
非売品
 

  <目次>
   情景
   二十二番目の橋



    二十二番目の橋

   夜、窓の向こうを男が走り
   走る男の後ろを私も走る
   (影は踏まないように)
   墓地を抜け
   採石場を通り過ぎ
   月の下を走ってゆく
   水車小屋
   廃屋の中で成長する夜と
   はりめぐらされた蜘蛛の巣の奥
   混じりあった夢の深いところで
   冬がはじまり
   ものごとは唐突に決着するだろう
   水車が回る
   森が押し寄せる
   土手をよじ登り滑り降り
   走る男を追いかけ私も走ってゆく
   (あれがそうだね)
   二十二番日の橋
   跳ね上がったまま閉じない橋のたもとで
   枇杷が枯れ
   だれかが詫び

   夜通し水車は回るだろう
   朽ちた川舟をよけ
   砂利をはじいて男が走り
   私は廃屋の裏で
   見失う
   風が変わる
   蜘蛛の巣が揺れる
   橋の上で男が
   帽子をとる
    生前ノ御芳情ヲ厚クオ礼申シ上ゲマス

                  *回文集「つと惹きあう秋ひとつ」より

 正直なところ、意味を正確に掴んだとは思っていませんが面白い作品です。最後の「生前ノ御芳情ヲ厚クオ礼申シ上ゲマス」というフレーズは唐突ですが、このフレーズから「二十二番日の橋」は22歳で亡くなった「男」のことかと思いました。しかし、それにしては「回文」が解せませんね。ちょっと離れすぎています。
 おそらく、そいう私の読みが間違いなのでしょう。もっと先入観を取り払って読む必要があると思います。意味に拘らず言葉を鑑賞すべき詩なのかもしれませんね。




詩誌『二行詩』15号
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2005.12.15
埼玉県所沢市
伊藤雄一郎氏方編集連絡先・二行詩の会 発行
非売品
 

  <目次>
   ターミナル地下街     布谷 裕 1
   長い夜          大瀬孝和 2
   暮らしの妖怪(まどろみ) 高木秋尾 2
   月 他          安部慶悦 3
   神無月         伊藤雄一郎 3
   二行連詩の試み 4
   エッセイ 私のシンプル『二行詩』試論 伊藤雄一郎 6
   お便りコーナー 8
   後書き 8



    ターミナル地下街    布谷 裕

     ○
   住宅地の商店街を疲弊させて光る
   来るは出るは真夏の蟻の巣のように

     ○
   時間を気にしながらぶらついたり舌鼓を打ったり
   暗い貌の人は寄りつかない

     ○
   熱気を吐き続ける巨大排気塔
   濾過されない欲望が目隠し植込みを揺すっている

     ○
   店じまいの悲鳴は訪れる人には聞こえない
   藤壷のようにへばりついて二十年も続いたのに

     ○
   札束を数え終わって全ての通路が遮断される
   警備員の靴音が朝まで続く もうひとつの街

 二行詩5連で1編の詩「ターミナル地下街」と読み取るべきでしょうが、二行に分けることによって相互に緊張感が生れているように思います。通常の行分け詩とは違う印象を今回新たに発見した思いです。「暗い貌の人は寄りつかない」「もうひとつの街」などは特に優れた詩句だと思うのですが、二行詩であることによって屹立しているように感じました。長年二行詩を試みている詩人には自明のことなのでしょうけど、私には衝撃的な作品でした。




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