きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.12.23 群馬県安中市
新島襄旧宅
 
 

2005.12.29(木)

 仕事は28日の午前中でオシマイで、夕方からは忘年会になりました。箱根湯本の水明荘。私にとっては会社生活最後の忘年会です。特に感慨はありませんでしたが、まぁ、楽しんできました。

    051228.JPG    現役最後の仲間たちです。ゲームをやってカラオケやって、楽しみましたけど、考えてみればこのメンバー自体が最後の忘年会です。来年4月には組織変更が予定されていて、この二倍以上、三倍近い部隊になります。会社の生き残りのためには止むを得ないことですが、時代が変わったなとつくづく思いますね。

 ゲームの景品では一番高価なものが当たってしまいました。電波時計で、1万円以上したそうです。もちろん使ったことはありません。帰宅してさっそくセットしましたら、電波を受信して勝手に時間を合せるので驚いてしまいました。仕事柄メカには強い方だと自認していましたけど、世の中の進歩には本当に驚かされますね。

 そんなこんなで最後の忘年会も無事終了。職場の皆さん、長いことアリガトね。




土屋智宏氏詩集クローンの恋
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2005.10.15
東京都新宿区
土曜美術社出版販売刊
1429円+税
 

  <目次>
    クローンの恋
   T クローンは我が存在の概念を霧の彼方に捨て去ることか 10
   U 神もなく孤児となりしか細胞片DNA含みて闇に浮遊す 12
   V 複製のヒトを造れば神ですと君はのたまふ 白夜の月 14
   W 沈黙に人は悲嘆に暮れなずむ神黙す地に陽は昇らぬと 16
   V 命なきモノに近づき記憶をば失せし魂 クローンを経て 18
   Y 痛みなき肉の肉体につらぬかぬ雷光の如きクローンの恋 20
   Z 愛という情念のなき生命とは深海ひそむ原初生物 22
   [ 記憶こそわたくしといふ実態よ 肉体の水 精神のコア 24
   \ 北の島 凍えた空の眼差しは人の罪さえ罰せずにあり 26
   ] クローンの鏡面の如き荒野には上弦の月 煌々と照る 28
   終 クローンよ我が胸深く抱きすくめ過ち告げて許しを請わん 30

    眠りつづける母の枕辺で物語る日々の記憶
   桜花 34
   酔眼朦朧として生と死の薄膜を超え 36
   おこぜ 38
   闇の中を曳航される船のように 40
   眠りつづける母の枕辺で物語る日々の記憶 42
   どこに行ってしまったのだろう 44

    鱗
   挽歌 48
   T 一片の鱗が肺臓の 50
   U 上皮脂に鱗がついて 51
   V 夕暮れが訪れ 52
   W 水の暮らしは 54
   V 霧が川の上の木立を 55
   Y 嵐が 57
   Z 川伝いに 58
   [ 目覚めると 60

    オフィーリア
   T 夢 66
   U オフィーリア詩編 68
   V 愛の記憶 82

   解説 土屋詩劇の愛と煉獄 中村不二夫 96
    あとがき 108



    V 複製のヒトを造れば神ですと君はのたまふ 白夜の月

   君が創造した私の肉体は合成された骨格と内臓を覆う皮膚で出来上がったが、そればかりで
   はなく、私という主体を生み出してしまった。私がそれを知ってしまった以上、私は君に問
   いかけねばならない。私はヒトという分類でいいのであろうか。霊長類ヒト科という種であ
   ったならば、生命の大樹から枝分かれした霊長類ヒト科のように私も、クローン科というも
   のであろうか。無論そこに霊長類という、他の種では見あたらぬ称号をつけないとはいえ、
   私は別な種に属するのであろうか。

   もし、別な種に属するならば、私はヒトではないということになる。私がもしもヒトでなか
   ったならば、私はマドロレーヌの歌も、リルケの嘆きも詩うことはないだろう。私には中原
   中也の詩も無縁であろう。何故なら、詩はヒトの悲哀であるし、情念であるからだ。ヒトは
   詩人になれるが、クローンは詩人にはなり得ない。夕暮れの悲しみや故郷を持たないクロー
   ンであるからだ。いいや、そんなことはどうでもいいことかも知れない。この世界にあって
   は誰も真実なんて考えないんだ。ヒトはパルスなんだからね。

   神は生命を創造し給うと、インターネットの広報サイトに書き込んでいた君が、その手に無
   臭のビニール手袋をつけて、私を造ったのだ。すると、君は神さまになったのか。君が神さ
   まであるならば、私はお聞きしたい。私はクローンなのですか。私はこのような文章を手紙
   で、生命創造科学省に送付した。

   すると、私の携帯電話に生命創造科学省から、メールが送られてきた。添付した地図によっ
   て、ご来場下されば、あなたさまのご質問にお答え下さるとの文面であった。私は、その地
   図を頼りに生命創造科学省に赴くことになった。もうアポイントはとったのだ。

   私の生息するアパートメントから出ると、白夜の月が輝いていた。陽は温暖に降りソソギ、
   風は花々揺
(ゆす)ってゐた。これは確か、中也の回想した京都の風景に似ている。ああ、そんなこ
   とはいいのだ。私は、なにしろ私の出生の秘密を知るべき生命創造科学省に出向いているん
   だから。それにしても、白夜という奴は変な明るさだ。白色灯に彗星の箒炎が混じったよう
   な、何とも変な明るさだ。それにこの生暖かい風だ。延々と続く街路を歩いた。

   街路が果てると、砂の地が続いていた。磁気嵐が襲った。私の携帯電話は故障し、生命創造
   科学省への地図の画面だけが残った。私は、白夜の砂の地を途方に暮れて歩くのであった。
   その時、忽然とビル街が
出現した。それは、書割(かきわり)のような平面的なビル街であった。そこに
   少女が佇んでいた。私は尋ねた。生命創造科学省に行くにはどう行けばいいのか。

 目次をご覧になって想像できると思いますが、非常にユニークな詩集です。ここではタイトルポエムの「クローンの恋」から「V」を紹介してみました。クローン人間である「私」が自分を造った「生命創造科学省」に出掛ける場面です。このあと生命創造科学省に向かう途中で少女に出会い、恋に陥るわけですが並の恋ではありません。
 それ以上の説明はやめておきましょう。ぜひ入手して読んでみてください。詩劇と呼べる作品で、私詩に慣れた眼には新鮮です。本来持っている詩の魅力を存分に堪能させてくれる詩集です。




詩誌『馴鹿』41号
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2005.12.25
栃木県宇都宮市
我妻 洋氏方・tonakai 発行
500円
 

  <目次>
  *作 品
   三輪車      ……青柳 晶子 1   野分/朔風    ……大野  敏 4
   蝿と茶碗と    ……和氣 康之 7   村は歴史のなかで ……村上 周司 11
   古傷/名樹散椿  ……入田 一慧 13   昼寝覚め     ……矢口志津江 17
   カケス村往来   ……我妻  洋 19
  *エッセイ
   危惧       ……青柳 晶子 9   絵と想像力    ……我妻  洋 10
   後記                   表紙 青山幸夫



    昼寝覚め    矢口志津江

   ただいま
   お帰り どこへいっていたの?
   MRIっていうのに乗って
   脊髄の真ん中まで行ってきたの
   悪さをする軟骨をみつけたわ

   MRIを創った人と
   宇宙空間で
   スペースシャトルの修理をした野口さん
   どっちがすごいかなんて思いながら
   私はまどろむ

   かつては夢であったことが実現し
   視えないものが視え
   行けないところへも行ける 今
   地上の幸福は
   夢のように増えただろうか

   自分では視えない心の深奥
   夢の中でかすかに視えることもある
   逢えなくなったひとと
   夢の中で逢えることもある

   見えなくとも
   聞こえなくとも
   微笑んでいるひとがいる

   ところで
   お土産貰ってきたのね
   ほっペに畳のあと
   ついているわよ

 私も先日はじめて「MRIっていうのに乗って」みましたけど、「すごい」ものだと思いますね。「視えないものが視え/行けないところへも行け」てしまうんですから、科学の進歩は怖ろしいほどです。
 作品は最終連が良く効いていると思います。「昼寝覚め」という平和な時間を楽しんでいて、読者としても「微笑んで」しまいますね。




季刊詩誌『竜骨』59号
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2005.12.25
さいたま市桜区
高橋次夫氏方・竜骨の会 発行
非売品
 

  <目次>
   <作 品>
   告発のとき       森  清 4   落 日        内藤喜美子 14
   霹靂(へきれき)のとき  友枝 力 6   佳 日         島崎文緒 16
   懲りない人びと     西藤 昭 8   カリンガの鳥      木暮克彦 18
   八ッ場ダム       初沢澪子 10   ラッキョウについて  小野川俊二 20
   牙           横田恵津 12   罪卜罰         松崎 粲 22
                      ☆
   謎の花         河越潤子 24   印度の旅        今川 洋 32
   気風(きっぷ)合せ    松本建彦 26   事件のかなた      高野保治 34
   石川原         庭野富吉 28   今わの際まで      高橋次夫 36
   空はつながっている  長津功三良 30

    羅針儀
   武蔵野市吉祥寺町    高野保治 38   川越散歩の記      高橋次夫 42

    書 窓
   津田てるお『岬まで』  松本建彦 44   芳賀章内詩集『直線の都市 円いけもの』
                                    木暮克彦 45

   海嘯 文体について   高橋次夫 1   題字          野島祥亭
   編集後記             46



    
へきれき
    霹靂のとき    友枝 力

   その日
   カミナリの音で目を覚ました
   窓をあけると晴天である
   顔なじみの近所のおばさんたちが
   (大日本愛国婦人会)のタスキを掛けて
   バケツの底を叩きながら
   「みなさん、戦争です。空襲に備えましょう!」
   と家々の戸口に触れまわっていた
   なぜか、玄関の鉢植えは倒れ
   庭の百日紅
(さるすべり)が大きくゆれていた

   八月十五日を鮮明に憶えている人は多い
   詔書の玉音放送が忘れられないと言う
   だが
   日本に焦土をもたらした
   元凶の日を語る人は少なくなった
   その時、ひとびとは何をしていたのだろうか

   ぼくは師走の空に雷鳴を聞くのが怖い

   目の前を若いアベックが通る
   男は膝の破れたズボンをはき
   女のスカートは裾が千切れていた
   まるで落雷に打たれた姿のようであった

             *ぼくが居た台湾はフィリピンの米軍基地に一番近かった

 確かに「八月十五日」は多く語られますが「日本に焦土をもたらした/元凶の日を語る人は少な」いですね。災いの最後の日より発端となった日を語るべきなのかもしれません。ちょっと意表を突かれた思いをしました。
 最終連は最初、当時のことを言っているのかと思いましたが、違いますね。現在の若者の風俗を言っているのだと思います。同じ「雷」にしても、この落差。64年の時間の差を感じます。




詩誌きょうは詩人3号
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2005.12.23
東京都世田谷区
アトリエ夢人館 発行
700円
 

  <目次>
   ●詩
   冬の旅    小柳 玲子 1   不在     森 やす子 4
   秋の家    鈴木 芳子 6   蛇      赤地ヒロ子 8
   秋が     赤地ヒロ子 9   おとこの家  伊藤 啓子 16
   おんなの家  伊藤 啓子 17   おばさんの背 吉井  淑 18
   皿      長嶋 南子 20   靴下     長嶋 南子 22

   ●エッセイ
   ペット考                          10
   「くだもののにおいのする日」ってなんだ
   なぞなぞ詩人――松井啓子            伊藤 啓子 23
   花は散るモノ人は死ぬモノ 3
    ――いい詩を書きたかった 林芙美子      長嶋 南子 26

             表紙デザイン 毛利一枝
            表紙絵 リチヤード・グッド
              
(C) Reiko Koyanagi



    秋が    赤地ヒロ子

   空の澄み方が
   すべるように吹いてくる風が
   知らせてくる

   秋がはじめてきた日

   帰ってくるはずのないものが
   すぐ近くにいるようだ

   透明なほど静かで
   何もかも光の粒子でできているのが
   はっきりとわかる

 「秋がはじめてきた日」とは佳いフレーズですね。散文的には、今年はじめて秋を感じた日、という意味なのでしょうが「はじめてきた」という言葉に新鮮さを感じます。「何もかも光の粒子でできている」という詩句も魅力的です。澄んだ秋の空気を吸ったような気分になりました。
 しかし、作品はそう単純ではありません。「帰ってくるはずのないもの」という言葉に注意が必要でしょう。決して重いわけではありませんけど、作品に奥深さを与えていると思います。短い詩ですがよく練られている作品だとと感じました。




詩と評論・隔月刊『漉林』129号
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2006.2.1
川崎市川崎区
漉林書房・田川紀久雄氏 発行
800円+税
 

  <目次>
   詩作品
   御幸橋西詰・長崎街道……池山吉彬 4   半島………………………坂井のぶこ 8
   《あなたは詩をからだ全體で書いて     〈日常〉へ――18…………坂井信夫 12
     ゐます》か?…………成見歳広 11   奇跡………………………須藤美智子 14
   生きたい、と………………渋谷 聡 16   詩二編………………………遠丸 立 18
   ちりちりゆく……………田川紀久雄 22
   俳 句
   幸せだったあの頃…………保坂成夫 24
   エッセイ
   島村洋二郎のこと…………坂井信夫 26   それでもめげないで……田川紀久雄 30
   「ひとりぽっちのおとうさん」を      渋谷聡詩集「ひとりぽっちのおとうさん」
    読んで…………………坂井のぶこ 32    を読んで………………田川紀久雄 34



    《あなたは詩をからだ全體で書いてゐます》か?
    成見歳広

   林芙美子の処女詩集に
   辻潤が『序』をかいている
    ………………
     あなたは先づニセ物の詩人でないと
     云ふことがなにより先きに感じられ
     るのです。  
ヽヽヽ
      あなたは詩をからだで書いてゐま
     す。かう云つたらもうそれ以上のこ
     とは云はないでもいヽのかもわかり
     ません。……

   くたぶれた時 森光子の
   『放浪記』をHNK教育で見た
   文士様 かようにして
   生まれ 育ち 成るものか と
   その演技のみごとさと同時に感じた

   昔はよかった、
   本当に人間は人間らしかった。

   文人も文人たりえた。

   いまは?
   斗う人がいない、
   天与の詩人がいない、
   反骨の詩人がいない、
   國を考える詩人がいない、
   照顧脚下、――、

   あなたは詩をからだ全體で書いていますか
               (二〇〇五年霜月十日)
           
*林芙美子『蒼馬を見たり』序(辻潤)より

 「
あなたは詩をからだ全體で書いてゐます」という「辻潤」の言葉は考えさせられます。からだ全体どころか「斗う人がいない、/天与の詩人がいない、/反骨の詩人がいない、/國を考える詩人がいない」状態ですからね。まさに「昔はよかった、/本当に人間は人間らしかった」のだろうなと思います。衣食足りて詩を忘れた、というところでしょうか。




機関紙『漉林通信』4号
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2005.12.10
川崎市川崎区
漉林編集室 発行
200円
 

  <目次>
   俺がかわりに殺してやろうか  成見歳広 1
   この恨みは何処へ      田川紀久雄 1
   詩 それでも幸福なの    田川紀久雄 2



    それでも幸福なの    田川紀久雄

   ここは幸福な都
   だれひとりとして貧しいものはいない
   みんな浮かれて一杯機嫌
   夫婦喧嘩さえみたこともない
   子供たちは立派な校舎で
   立派な授業をうけている

   この都の最大な特徴は
   失業者がどこにも見当たらない
   それでいて
   昼間から人々は何もしないで騒いでいる
   毎日がお祭り気分

   この都には病院が一つもない
   だれでもが元気で
   病人など見かけたことがない
   それに
   この都には警察官が存在しない

   すべてが満たされていれば
   犯罪などおこる心配はない
   坊主や神父の影すらみえない

   この都の住人は誰一人として夢をみることがない
   もし夢をみても
   起きたときには何一つ覚えていない
   今日は明日の続きにはならない
   また昨日が今日の続きだともいえない
   あくまで今日は今日であり
   昨日も明日もカレンダーには載っていない

   未来を求めるものは不幸者
   過去を思い出すのは犯罪者
   だからこの都の人たちは何も考えないで生きている

   みんなが幸せであることが
   人類すべての願い
   このせから不満がなくなれば
   すべてが幸福の都になれるのに……
               
(二〇〇五年十月十六日)

 逆説ですが一面の真実でもあると思います。「すべてが満たされていれば/犯罪などおこる心配はない」社会は「昨日も明日もカレンダーには載っていない」社会なんですね。人類は、そんな理想とする社会を求めてきたことになりますが、結果として「それでも幸福なの」と問わざるを得ないことは自明です。改めて「みんなが幸せであること」とは何だろうと考えてしまいました。




機関紙『漉林通信』5号
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2006.1.10
川崎市川崎区
漉林編集室 発行
200円
 

  <目次>
   南武線・浜川崎駅の猫 坂井のぶこ 1
   なぜ詩集をだすのか  田川紀久雄 1
   広告               2



   ぽくぽくひとりでついていた
   わたしのまりを
   ひょいと
   あなたになげたくなるように
   ひょいと
   あなたがかえしてくれるように
   そんなふうになんでもいったらなあ

                 
ヽヽ
    これは八木重吉の詩である。まりという言葉を詩という
   言葉に置きかえればよりわかりやすくなる。ここにはこれ
   以上の説明はいらない。

 田川紀久雄さんの「なぜ詩集をだすのか」の一部を紹介してみました。この前段には「人は、本当の意味で他者を理解することは不可能だ。不可能なままで生きているのも辛い。少しでも良いから、わかってもらいたい。そして、詩の言葉を通じて、より多くの人と関わり合いたいと願う」という言葉があります。それが「なぜ詩集をだすのか」という問に対する回答と考えて良いでしょう。詩人の本音が出ている文章だと思います。




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