きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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夕焼け 2005.1.2 神奈川県南足柄市

2006.1.1(日)

 謹賀新年! 今年もよろしくお願いいたします、、、、と書く白々しさ。本当は2006年3月1日に書いてます(^^;;; 2カ月遅れでようやく私の2006年を迎えることが出来ました。これからジワジワと遅れを取り戻していきますゾ。定年まで3年ほどを残して、4月いっぱいで早期退職しますから、これからは時間も取れるでしょう。いただいた本を早く全部読みたいですね。



詩誌hotel第2章14号
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2005.12.20 千葉市稲毛区
根本明氏方・
hotelの会発行 500円

<目次>
■作品
豹の眼 広瀬大志 2            Yちゃんが道を渡ろうとしている 片野晃司 6
鳥窓 海埜今日子 8            あき ま つり 川江一二三 10
ちいさなことば 久谷 雉 12        余暇 かわじまさよ 14
抜かれ、 浜江順子 16           ひかりの夏 澤口信治 18
火、火、炎 根本 明 20          鎌鼬 柴田千晶 22
光の成就/老年の日 野村喜和夫 26     文永十一年のバッコス  相沢正一郎 34
■書評
今昔物語の遠近法 岡島弘子 5       隣睦――たどりつけない他者にむけて 桐田真輔 31
terrasse 38               表紙/カット かわじまさよ



 ちいさなことば/久谷 雉

コーヒー豆を挽く手を
九月の風のふくらみに休めて
きみがいつものように
おもいだすのは

むらまつりのあさに
金紙や銀紙でかざられた
ぼろほろのおるがんのむこうで
こっそり草をくわえている
ろばのなだらかな背中なんだ

西日をあびてふかくなってゆく
きみのてのひらを走るみぞを
ゆびさきや 鼻のあたまでたしかめながら
ぼくはろばにささやきかける

ろばのうしろにあつまってくる
子どもや 虻や
株式や
万有引力などには
とどくことのないよう

ちいさなことばをぼくはささやく

きみのししむらにさえ
とどまることはないまま
ろばのおなかにしまわれてしまう
世界でいちばんちいさなことばをね

 私にとっては使い慣れない言葉「ししむら」が出てきましたので辞書で調べてみました。肉塊や肉体という意味なんですね。この作品では肉体では駄目で、やはり「ししむら」が合っているようです。
 「九月の風のふくらみ」という詩句も佳いですね。九月という季節と「ふくらみ」という言葉が良く合っているように思います。作者の言語感覚に感心しました。「ちいさなことば」の意味は判りませんが、理詰めで問うことは間違いでしょう。読者がそれぞれに感じ取る、自分の言葉に置き換えるということで良いと思います。作者の感覚を楽しませてもらった作品です。



詩誌『ハガキ詩集』223号
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2006.1.1 埼玉県所沢市
伊藤雄一郎氏発行 非売品


 犬たちよ、先駆けて、我ら人間の転ばぬ枚となれ!/伊藤雄一郎

夜明けに時を告げた鶏の声が不安を呼び覚ましたのか
その引きつるような叫び声が風を呼び
地を揺るがせ 水を溢れさせて
世界中が慌てふためいた昨年だった

三月ヨーロッパ各地で大洪水
八月大型ハリケーンが米国南部を直撃
十月パキスタン地震で死者3万人
まるで自然の神の逆鱗に触れたような惨状続き

日本国内もまさかまさかの事故や出来事の連続で
四月福知山線でスピード出し過ぎ脱線事故で大惨事
九月郵政法案是か非かの選挙で小泉首相大勝利
十月ロッテ阪神に4連勝で三十一年振り日本一

いっぽうではそれらに関係なく階層格差が拡大し
中流が減少して下流が増加し
持てるものと持たざるものが明確になり
勝者と弱者と二極化が顕著になり――

年改まって戌年を迎えたが傾向は加速されるだろう
犬も歩けば棒に当たるというが 願わくば文字通り
出歩いて思いがけない幸運に会いますように
我ら年金暮らし生活下降者のせめてもの願いである

 「ハガキ詩集」らしいハガキ詩集をいただきました。年賀状です。本来はこういう形で、まさにハガキ一枚で発行されていたのではないかと推測しています。
 事件、事故は毎年のことですが、それにしても「世界中が慌てふためいた昨年」でしたね。世の中はどんどん悪くなっていくばかりではないだろうか、何かこれは良かったと思えるものがあったろうか、と考え込んでしまいます。「出歩いて思いがけない幸運に会いますように」と願わずにはいられませんね。



五喜田正巳氏詩集『エジプトの砂』
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2005.12 横浜市西区 福田正夫詩の会発行 非売品

<目次>
エジプトの砂 1   ピラミッド 3
王家の谷 5     ガラベーヤの男 6
ナセル湖 7     艶めくミイラ 9



 エジプトの砂

汗に濡れた甲子園の砂を袋に入れる
球児たちの背に
春の陽が射るように刺す

エジプトで一番美しい砂
と 観光バスに案内された
道路の吹きだまりのようなところ
土手のように盛り上って
掬うとさらさらして
香煎のような匂い

汗まみれの砂
乾きに乾いた砂
美しさの軽重は計れない

はるばると来て
美しいと言われて欲ばる
観光客に何が見えるのか
雨の多い日本
雨の全くないエジプト
夫々の歴史が育てた風土

魂がひびらくように
ガラス瓶に入れたエジプトの砂
雨の部屋で揺らしている

 エジプト旅行の紀行詩集です。タイトルポエムを紹介してみました。エジプトと「甲子園」が砂を媒体としているところが面白いですし、雨の対比も適切だろうと思います。「エジプトで一番美しい砂」の「美しさの軽重は計れない」というところは詩人としての面目躍如と云うべきでしょうね。最終連に現実感があって、ただ浮かれただけの観光ではないことを知らされた思いをしました。



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