きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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夕焼け 2005.1.2 神奈川県南足柄市

2006.1.27(金)

 金曜呑み会は大好きな山口の銘酒「獺祭」を呑みました。ほか特記事項なし。平穏無事(^^;



秋吉久紀夫氏詩集黒いスカーフの女
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2005.12.26 東京都新宿区 土曜美術社出版販売刊 2000円+税

<目次>
 T
境目 10       座席 12
習慣 14       潮とは 16
出発(いでたち) 18  一年 20
木の実 22      器 24
網 26        期待 28
 U
線香花火 32     診断 34
秋の日 36      柿 38
仮面 40       苦渋 42
近況 44       ことばを失った奇妙な町の住民たちへ 46
ほんとの女 48    睨めっこ 50
 V
鬚 54        入れ墨 56
大きな檻 58     架橋 60
おしまひ 62     遠隔操作 64
暗号解読 66     千枚田 68
消えた風景 70    記憶喪失 72
 W
くにざかい 76    四川省万県で 78
天馬 80       天邪鬼(あまのじゃく) 82
カレーズ 84     蜃気楼 86
タクラマカン砂漠 88 距離 90
黒いスカーフの女 92 もう一つの目 94

執筆年次 96     あとがき 98



 診断

海鳥の哀しい悲鳴をききながら
メガネをかけた医師が
蝕岩をたたいた。
糸瓜の花が私に銃口を向けた
薬品の銀河は北から南へ落ち
白衣の女人がいつのまにか消え
あとはただ
カルテの赤い独逸語が呪文のように
水面で危険信号を点滅させていた。

 佳い詩だなと思って「あとがき」を見て驚きました。1950年10月2日の作品で、発表詩第一作だそうです。私が1歳の時にこういう作品が世に出ていたんですね。「海鳥の哀しい悲鳴」はおそらく呼吸音、「蝕岩」は胸、「糸瓜の花が私に銃口を向けた」は聴診器が向かってきたことだろうと思います。診察をこのように表現した作品を見たことがありません。これがあって現在の秋吉久紀夫詩の世界があるのかと納得しました。1950年から2004年末までの秋吉詩を堪能できる詩集です。



詩誌『驅動』47号
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2006.1.31 東京都大田区
驅動社・飯島幸子氏発行 350円

<目次>
現代詩と「笑い」(二)/周田幹雄 28
天明飢饉/山田野理夫 1          すれ違った顔/長島三芳 2
時間が止まった日 他一編/舘内尚子 4   風の丘 他二編/忍城春宣 8
検査入院/飯島幸子 14           絆/池端一江 16
おおさかべん西鶴/桝井寿郎 18       虹 他二編/星 肇 20
判断 他二編/周田幹雄 24         儚い旅のおわり/中込英次 44
科白/三沢学人 46             断片詩 硫黄島総指揮官・栗林忠道陸軍中将 他一編/飯坂慶一 48
花を活ける/内藤喜美子 52         年の暮れ/金井光子 54
子守り/小山田弘子 56

同人氏名・住所 58  寄贈詩集等・詩誌 58 編集後記
表紙絵 伊藤邦英



 風の丘/忍城春宣

うねりなだれてうずまきあがる
信しげの滝のしぶきを浴びて 丸い
架け変えたばかりの朱塗りの神橋が
一枚 大鳥居の前で参拝者を待っている

権現造りの大社殿が鎮座する
東口本宮、富士浅間神社の
うっそうと茂る クヌギやブナ ケヤキ
エノキや根杏 杉木立ちの御神木が
苔むした石畳を抱き込みながら
真っ直ぐ 深く 社殿に続く

奥社に耳をそばだてると
 ヒン,カラカラカラ ヒン,カラカラカラ
駒鳥の囀りか
神馬舎につながれた
白い神馬の嘶きか……

木洩れ日に輝く神門を仰ぎながら
今朝も門前ちかくのご隠居さんが
ぼそぼそと繰り言を唱えながら
深く頭を垂れ 懇ろに柏手を打っている

社殿の裏手の躙
(にじ)り口辺りの土が
ひどく掘り起こされている
鹿キツネ タヌキやウサギ イノシシ……
けものたちのふれ合い広場だ

土塁を築いた 搦手
(からめて)から
裏参道鳥居脇の登山道をたぐると
一本の巨きな楓の樹の下に
虫籠を片手に網(たも)をかついだ少年が
日曜日だというのにべそをかきながら
宿題の秋蝉を探している

風丘のススキの穂ばらみに
萎びた昼の月が引っ掛かっている

 「富士浅間神社」は私も小中学生・高校生の頃はよく遊びに行った処で、いろいろと思い出して懐かしいですね。その浅間さんは富士山の須走口にあります。私の実家からはクルマで15分ほどでしょうか。小中学生の頃は自転車で半日かけて行きました。「うっそうと茂る/クヌギやブナ ケヤキ/エノキや根杏 杉木立ちの御神木が/苔むした石畳を抱」いた境内で遊びまわったものです。作品中の「少年」は小学生でしょう。作者のやさしい眼差しを感じます。作品に刺激されて、また訪れたいと思いました。



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