きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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満天星 2005.1.8 自宅庭にて

2006.2.20(月)

 改良製品の承認会が木曜日に予定されていて、今日は終日その書面作りに追われました。技術屋時代には、自分が改良した、あるいは開発した商品が社内で認められて世の中に出るわけですから、それなりの遣り甲斐を感じたものですが、今はそれを世に出して良いか否かを判断する立場です。しかも自分で検査するわけではなく、部下たちの作ったデータを検証するだけ。まあ、そういう立場の人間も必要だということは理解できますけど、仕事としてはあまり面白いものではありませんね。

 しかし昔技術屋だった時代に、一番怖かったのは今の私の立場の人間です。彼がダメと言ったらそこから先は一歩も進めませんでした。その立場になって初めて、逆に「ダメ」と言うことの怖さも感じている次第です。
 いろいろ経験させてもらって、その意味では今の会社に感謝しています。経営陣には多々不満がありますけど、直属の上司や仲間たち部下たちにはまったく不満はありません。そこはちゃんと分けて考えようと思っています。



狩野敏也氏著男も唸る美味・珍味
グルメ詩人のレシピ&エッセイ
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2006.2.20 東京都新宿区 里文出版刊 2000円+税

<目次>
T魅惑の中華まんだら
中国四大美人とその料理…6         わが有響菜…9
愛と憎しみの料理…12            冬虫夏草とともに…15
南国酒家のパーティ料理…18         季節の味を楽しむ〜「四季の口福の会」秋深しより…22
匂いいづるひとト〜二人香妃の話…27     ああ焼酎鶏…31
ニベのある話 美人になる料理いろいろ…35  ジャン・醤・XO醤…37
仏陀も垣根を越えて・仏跳牆の話…41     反ラーメンの半詩学…43
めんめんと麺…49              辛うまの元祖・麻婆豆腐…54
粥の楽しみ…58               たまたま卵があれば…63
飲む茶、食べる茶…68            うちのデザート…71

[カラー図版]
南国酒家のパーティ料理 四季の口福の会「南国酒家de北海道」…77
季節の味を楽しむ 四季の口福の会晩秋の巻「秋深し」…78

U日本の美味 北から南から
叶亭の正月パーティ料理…82         飯ずし礼賛…86
オホーツクの浜辺より…94          原野の恵み…104
ホヤの話・…111               チーズとともに…115
いか・イカ・烏賊・…121           樽一会と鯨の話…130
関東の鯰料理を訪ねて・…132         唐墨とフアオグラと 〜わが二大珍味…137
新潟いいもの、うまいもの…142        久兵衛さんの鮪づくし…148
ねーえドンコどんこ・…149          獏さんと沖縄料理…152
   
 う ま
V旅は美味し
中国の味な旅・序説…158           中国古都の味めぐり…162
山西省麺食いの旅・…166           わが三峡下り…170
中国美食街道をゆく 美食南路の巻…175    寧波の海鮮料理…185
食在広州の街で・…189            雲南ハムと橋渡しビーフン…191
中国・酒の二都物語…198           三国志を食う…203
准南の豆腐村を訪ねて・…207         ポルトガルの魚料理…210
マドリッドの居酒屋…215
あとがき…223



 獏さんと沖縄料理
                      
 獏さんというのは沖縄出身の有名な風刺詩人、山之口獏
(やまのくちばく)さんのことで、三十歳台の後半、テレビ局に勤めているころに彼の紹介で、新聞記者出身の詩人、土橋治重の主宰する詩誌「風」に入れてもらって、ぼくは随分と遅蒔きながら、詩人のスタートを切ったのだった。
 そのころぼくはラジオの随想番組も持っていて、獏さんはその常連だったものだから、ぼくは子分みたいについてまわって、新橋の沖縄屋だとか、池袋の、おもろ、珊瑚、それにコヤマという喫茶店などにくっついて回ったものだ。獏さんは詩ももちろん面白くて、日本のユウモア詩の代表選手のように言われているけど、日ごろの言動そのものも詩になっているような人だった。
「おばさん、ボクはツケはないだろうな、あったらそれもツケにしておいてくれんか」などと店に入るや否や言ったりする。夏も常に涼しい顔をしていたので不思議に思っていたが、あるとき言った。「カノウ君、みんなは暑いからといって冷たいものをがぶがぶ飲むだろう。暑いときに冷たいものを飲んだらきりがない。おじさんはネ、暑いときには暑いものを飲んで、自分の体を周りの空気に同化させるんだよ」と。そうして泡盛のコップにぐらぐらの熱湯を注いで涼しい顔をした。そうか、獏さんは暑さのカメレオンみたいな人なんだと、いたく感心したぼくは、以来真夏でも冷たいものはビールぐらいしか飲まない。かき氷などは決して食べない。

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 副題にもありますが「
グルメ詩人のレシピ&エッセイ」集です。私事ですけど、この4月末で会社を定年退職扱いで退きます。今までは朝食は家で摂るものの、昼食は社員食堂、夕食は出張帰りの反省会、職場の懇親会、気の合った仲間との呑み会と、外食が多くありました。これからはそうはならず、自分で食事の支度をすることも多くなるだろうと予想しています。私は本から知識を仕入れるタイプなので、いずれ料理の本を買いたいなと思っていたところに本著をいただいてしまいました。まさに時期を得たタイミングですね。

 しかし一読してチンプンカンプン。料理の名前はおろか食材の名前もイメージもつかめません。私のような者を意識して書いたわけではないでしょうが、かなり易しく丁寧に説明しています。それでも判らないんですから相当な料理オンチだということを自覚しました。毎日少しずつ読み進めて、実践のバイブルにしようと思っています。

 紹介したのは「U日本の美味 北から南から」の「獏さんと沖縄料理」の冒頭の部分です。「テレビ局」とはNHKのことで、獏さんに「くっついて回った」とは羨ましい話です。そういうばNHKは獏さんの娘さんを取材したものも放送していて、それは観ました。
 本文はこの後、獏さんに触発されて沖縄料理のファンになったことが書かれ、ゴーヤ料理のレシピが出てきますが、ここでは詳しく載せません。ぜひ本屋さんでお求めください。ただの料理本ではなく、ただのエッセイ集ではない面白みを感じてもらえると思います。



詩と批評POETICA46号
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2005.12.30 東京都豊島区 中島登氏発行 500円

<目次>
ブランデンブルグ門/中山直子 522     春の星/中山直子 525
冬の苺/中島 登 526           記憶/中島 登 528
水と死/中島 登 530           わたしの岸辺に/中島 登 532
泡立つ/中島 登 534



 ブランデンブルグ門/中山直子

おお ブランデンブルグ門よ
おまえをくぐって
誰もどこにも行かれなかった
時代は過ぎた

今 そこでは 若い人々が
自由に歩きまわったり
外国からの旅行者が ものめずらしげに
写真を撮りあったりしている

道の上に 二列に並べて
埋め込まれたレンガの線は
かつて壁のあった場所を示す

交通はその線を越えて
なめらかに行き来して
ベルリンの町は 平和なように見える

ああ しかし ブランデンブルグ門よ
おまえは私に話しかけるのか
人間たちが再び 壁を作ろうとしていると
それが心配でならないと

私は おまえの ため息を聞いた
それから町の中をまわってみると
イギリス大使館の前と
アメリカ大使館の前には
実際バリケードができていた
テロリストを防ぐために

さらにスペイン大使館の前には
多くの花とお悔やみのカードがあった
三日前にマドリードのテロで
亡くなった人々のために

寒かった そして
雨が 降った

 三月一五日ベルリン−二月二六日リユーネブルグ

 ドイツ旅行中の作品と思われます。ただの旅行者ではなく詩人の眼で見つめているところが第5連の「おまえは私に話しかけるのか/人間たちが再び 壁を作ろうとしていると/それが心配でならないと」というフレーズに表出しています。東西統一なったドイツは21世紀の希望と云えましょうが、それでも人間の業の深さを感じてしまいます。最終連が詩の全体を締めていて効果的だと思いました。



詩と批評POETICA47号
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2006.1.30 東京都豊島区 中島登氏発行 500円

<目次>
初雪/橋本征子 538            なごりゆき/北森晴美 540
みなしごの耳/中島 登 542        とうぜんの朝/中島 登 544
退院/中島 登 546            時の踊り/中島 登 548
草叢の煉瓦から/中島 登 550



 退院/中島 登

感染症です
早くここから逃げなさい
でないと駄目になってしまう
早く詩から逃げなさい

そうだ彼は重症なのだ
死ぬかもしれない
一刻の猶予もない
抒情という過去の女と縁を切ることだ

萎縮した左の腎臓が痛むのは
そのためらしいと診断された
その日から「言葉」と「経験」の点滴が繰り返された

入院十日め雨の日曜日に彼は退院手続きをとった
当分は「お粥」と「草原をわたる風の匂い」を
取り続けることを義務づけられて

 「詩」は「感染症」だということを改めて認識させられました。「抒情という過去の女」も、そういえば居たなぁ(^^; 「点滴」が「言葉」と「経験」だというのも納得できますね。詩をユニークにとらえた佳品だと思いました。



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