きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.2.22 新幹線富士川鉄橋より

 


2006.3.1(水)

 3月の第1日目は県立病院へ行ってきました。昨年から続いた咳もすっかり治まって、もう行かなくて良い状態だと思っていますが、医者との約束の日ですから、とりあえず行くことにした次第です。
 医者もほとんど治っていることを認めてくれましたけど、なんとその担当医は3月末で異動とのこと。今後は県立病院まで来る必要はなく、家庭医に紹介状を書くから必要ならそこで薬をもらってくれ、とのことでした。ま、私も心配はしていないのですけど一応紹介状を書いてもらって当面の薬をもらって帰ってきました。

 思えば半年に渡る長い治療でした。結局、原因は不明ですけど喘息の初期だろうということで医者も私も納得しています。もう50も半ばを過ぎた年代ですから、何があってもおかしくないのだと肝に銘じています。これからは身体を労わりながら自分のやりたいことを中心に生活していこうと思っています。その面では4月末に57歳になる直前で会社を辞められるのはラッキーだったなと、改めて感じています。



個人誌『夜凍河』6号
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2006.2 兵庫県西宮市
滝悦子氏発行 非売品

<目次>
羊歯
プログラム U



 プログラム U

遠くで 音がする

瞼にのしかかる微熱の重さ
振動する頭蓋骨
その奥で

水分が蒸発する
粘った血液が首筋をのぼる
筋肉の束が緩む音
どこまでも緩んで
関節の隙間は広がり続け
数えきれない時報が落ちてゆく

背筋をめぐる風のような悪寒
寝返りをうつたびに
武装した日常が剥れるから

ねじれた回路を
もう一回ねじったら
まだ未使用のままの遺伝子に
接続するはずだ

どこかで
アラームが
鳴っている

 「武装した日常」という詩句がおもしろいと思います。私たちは知らず知らずに鎧をまとって生活しているのでしょうね。「ねじれた回路を/もう一回ねじったら/まだ未使用のままの遺伝子に/接続するはずだ」というフレーズはDNA・RNAの螺旋構造を謂っているのでしょう。全体的に無機質を装っていますけど、最終連で聴覚という肉体に戻ったと捉えました。



詩誌AUBE49号
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2006.1.25 東京都武蔵野市
鈴木ユリイカ氏発行 600円

<目次>
〈詩〉
月へ/原 利代子‥2
旅する目/入江由希子‥4
秋彩の街/佐野光子‥6
天水の音/房内はるみ‥8
大葉ぐみ/志村喜代子‥10
まんじゅしゃげ/寒川靖子‥12
三界/松越文雄‥14
詩文 茗荷谷日乗(3)氷川下/遠藤めぐみ‥16
Nobuchan/遠藤めぐみ‥20
再びの冬/原田悠り‥24
「狂気」から「しんじつ」まで/中島 登‥26
乳いろ/月村 香‥30
どろんこ天使/鈴木ユリイカ‥32
〈面白詩(51)〉/鈴木ユリイカ‥34
「茅葺の家」山本楡美子「ひとひらの」伊予部恭子
〈AUBE面白詩の会 報告/松越文雄‥40
〈AUBE面白詩の会会員住所〉‥42
〈お知らせ〉‥44
〈あとがき〉



 「狂気」から「しんじつ」まで/中島 登

 (1)
 狂 気

熱い火の玉がごうごうと
わたしの躰の中を突き抜けていきました
狂気が心臓を破って突き抜けていきました
槍のように またミサイルのように

わたしの中で一日中その音が響いていました
ベートーヴェンの熱情ソナタ
マーラーのシンフォニーの金管楽器の響き
鋭い刃先がわたしの喉元一センチの緊迫

するとわたしの目の前に仏像の顔が浮かんできました
信仰心の薄いこの人間のどこに
仏の近寄る理由があるでしょうか

なんだか不思議な気持ちがしてきました
わたしは大きく空気を吸い込んで見ました
それから大きな声で「わたしは死にたくない」と叫びました

 (2)
 風が突き刺す夜

風がわたしの腹を吹き抜ける
それはひゅーひゅーと唸りながら
天と地を駆け巡る
太古の怒り狂った神々のように

羊歯は背丈をこえて生い茂り
獣は勝手気ままに家鴨や野兎を食い荒らした
それを鎮めるものはいなかった
むしろ便乗するものまで現れた

わたしの脳天を断ち割ろうとするものも見えた
野獣は草原を血で染めた
わたしは洞穴で沈黙をまもりつづけた

死んでいった魂たちよ 時代の波に消し去られたものたち
わたしの脇腹には獣の歯形がのこされた
わたしの腹を吹き抜ける風は凍っている

 (3)
 百日紅

炎天下 詩が焼けている
犬も焼けている
虎が焦げている
焼き鳥が啼きながら空をよぎる

入道雲が舌を出して
人間を嘲りながら すくっと立ち上がる
萎えた詩人がシュールレアリスムに縋りつく
海では鰤の照り焼きが泳いでいる

水がほしい と沙漠の民が叫んだ
お米がほしい と女の人が言った
働きたい と男の人が嘯いた

太陽が怠け者の詩を焼いた
畑の熟れたトマトが胡瓜が玉蜀黍が 詩を払い落とした
庭で百日紅が天に向かって炎を投げた

 (4)
 しんじつ

A ほんとうのことを言おうか
B そんなのかんたんだよ 言ってみようか
A でも難しいよ ほんとうのこと言うのは
B 簡単さ 思ったことを言えばいいんだ

A 思ったことがほんとなのかなあ
B ぼくはほんとのことしか思わないもん
A だって 嘘のことを思うことだってあるよ
B それは口が心を裏切るのさ ほんとのことは心にあるさ

A ほんとうのことを言おうとすると
  ほんとうのことが言えなくなる
  難しいし勇気もいる ほんとうが何だか判らなくなる

C ほんとうのことは言ってはいけないのさ
  ほんとうのことは誰にもわからない
  神さまにだって判らないと思うよ

 ちょっと長かったのですが全文を紹介してみました。この作品は途中では切れません。全体の持つ喩はこの世界だろうと思います。日本に限定できるかもしれませんが、もっと人間全体に拡げるべきだと思います。「炎天下 詩が焼けている」「萎えた詩人がシュールレアリスムに縋りつく」「太陽が怠け者の詩を焼いた」などのフレーズは辛いですね。詩人が本来果たすべき役割をやっていないじゃないかと責められているように感じます。それは詩人に限らず人間全体のことなんでしょうが、特に詩人は罪が重いと言われている気がします。迫力があり、考えさせられる作品です。




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