きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.2.22 新幹線富士川鉄橋より

 



2006.3.2(木)


 近所のおばあさんが亡くなって、お通夜に行ってきました。近所とは言ってもお会いしたことがあるかどうか…。ずいぶん前に子供会やPTAで一緒だった男の母上ですから、行っても行かなくてもどっちでも良かったのですが、時間もあったので出席することにしました。会場でその男には会えなかったのですけど昔の仲間の何人かに会えて、少し話ができました。地域社会はボランティアの役が無くなるとヒト付き合いもけっこう希薄になるんだなと改めて感じました。
 おばあさんは84歳だったそうです。あと10年も長生きする人が多い最近、早いと言えば早いかもしれません。ご冥福をお祈りいたします。



詩誌『衣』7号
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2006.2.20 栃木県下都賀郡壬生町
森田海径子氏方「衣」の会発行 700円

<目次>
草庵の春/大掛史子 二
肩甲骨/四宮弘子 三
水音/岩下 夏 四
へそのお/仙波 枕 五
樹/金屋敷文代 六
背中の風景/山田篤朗 七
搭/おしだとしこ 八
束の間/上原季絵 九
ロウソクU/相場栄子 一〇
雪の降る夕/大原勝人 一一
小夜語り その一/岡山晴彦 一二
百舌の速贄/豊福みどり 一三
内緒/小森利子 一四
ティアドロップ/森田海径子 一五
あなた擬/山本十四尾 一六
後記 一七
同人近況 一八・一九
同人詩集紹介 一九
同人住所録 二〇



 ロウソクU/相場栄子

やわらかなオレンジ色なのに
危険なほどの
高温を秘めている

時間が経過しても
変わらない姿と熱度を保ち
燃え滾ることもない
最後まで静かな炎を灯している

少し離れた処は
体に心地よい熱さなので
火傷をすることもない

かなり近づいて手をかざすと
風がおこり
ロウソクの炎は大きくゆれ動く
人の精神
(こころ)の揺らぎのように

 「ロウソク」を良く観察している作品ですね。しかし別の読み方ができます。「やわらか」いけど「危険」、「燃え滾ること」はない、「少し離れた処」なら「火傷をすることもない」。でも「かなり近づ」くと「大きくゆれ動く」。こうやって抜き出してみると、まるで危ない恋愛関係のようですね(^^; もちろんそれがあるから「人の精神の揺らぎのように」という最終行があるわけです。大人の詩と云えましょう。



山本十四尾 詩の日めくりカレンダー
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栃木県下都賀郡壬生町
森田海径子氏方 下野国分寺「詩の教室」事務局刊2000円

 24

父母の慈愛に
わたしの少年時代は
熟睡の毎日であった

いま わたしは
子供たちに同じことをしている

音をたてないように
カーテンをひらき朝の空気をいれる
子供たちは
うっすらと目をあけ
それからすぐ寝息をたてる

 『朝顔の花』より

 文字通りの日めくりカレンダーです。ただし中は山本十四尾さんの作品から採った詩句が書かれています。山本さんが講師をしている
下野国分寺「詩の教室」の生徒さんたちが作りました。1日から31日までの日のみがあって、月はありませんからいつまでも使えるという趣向です。紹介した作品は「24日」の分です。この詩句を見て詩心をかきたてるわけですね。生徒さんたちの真剣に詩に向かう姿勢が具体化したカレンダーなんだなと思いました。



梅澤鳳舞氏詩集うめこの大詩集
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2006.2.10 埼玉県越谷市 梅澤鳳舞資料館刊 2000円


<目次>
秋の…(A Pure Acoustic Concert)…17
水の煙…20      初夏…22
風貌…24       凹面鏡…26
つゆはれま…30    魔界…32
校歌のように…34   チャンス…38
折れ線グラフ−五四歳の感懐−…42
地球の焔(ほのお)…48 うめこのおもったこと…50
同ジ窓ヨリ望ムル友へ…54
道楽…60       帝王学入門…64
生きてきた道…68
   日本で有名な木…74
父…76        泡沫候補…78
The Moon Above A Ruined Castle Translated By UMESAWAHOUBU…82
いにしへよりいまへ…86
うめきちだあ…88   マイロンリーピースフルライフ…90
時の経過…92     心境…94
記念日…98
      うめこの「ドン・キホーテ」…102
「平成11年9月25日(土)深夜越谷大里」…106
「訪問者」…108
あとがきにかえて…112 梅澤鳳舞実績一覧…114



 水の煙

わたくしはここにいます
ひとに与えれば与えるほどに
こころもおかねもまずしくなって
ゆきつくところは土のうえ
何もいわずに一千年立ったまま
水蓮の花二百ながめる
そのむこうには南瓜のはたけ
ちょうちょうの四五匹ひらひらと
やがてまもなく竹のはる
わたくしはここにおります
わたくしが笛を吹いたら
おどってくれますか
ひとはおもいのままならず
なかぬならはなしておやりほととぎす
ひろいせかいでなかしておやり
 いやじゃ いやじゃ
あああ 笛を吹こう
となりの村にきこゆるまでに
 「川のあるまち」越谷文化14号

 「なかぬならはなしておやりほととぎす」というフレーズでびっくりしました。鳴かぬなら殺してしまえ不如帰≠ヘ織田信長、鳴かぬなら鳴かしてみせよう不如帰≠ヘ豊臣秀吉、鳴かぬなら鳴くまで待とう不如帰≠ェ徳川家康と記憶していますが、ここでは「はなしておやり」です。歴史上の重要な人物という先入観のせいか、三つしかないと思い込んでいたようで著者のような発想に至りませんでした。殺しも強要も、厭味な待ちの姿勢も不要なのです。放してやって「ひろいせかいでなかして」やれば良いのです。

 そういう先入観のもとは何だろうと考えると、対象の不如帰は籠の中であり、その状態で決着をつけようとしている自分に行き着きました。与えられた範囲でしか発想しないという癖を教育されてきて、それでいいのだと安住する自分が見えます。おそらく大方の日本人に通じる姿勢ではないでしょうか。それをこの詩は簡単に打ち砕いています。決して「こころもおかねもまずし」いとは思えません。刺激を与えられた作品であり、詩集です。




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