きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.2.22 新幹線富士川鉄橋より

 


2006.3.4(土)

 日本詩人クラブの現代詩研究会が午後2時より神楽坂エミールで開催されました。今回は詩論研究として講師に宮澤賢治イーハトーブ館館長の原子朗氏をお招きして「私離れの詩とことば」と題してご講演いただきました。文体論がご専門ですので、その観点からのお話が多かったのですが、詳細・講演記録は日本詩人クラブの雑誌『詩界』に載りますので、そちらに譲ります。

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 ここでは私のメモから2、3。
 まず冒頭に民主党のメール事件を採り上げて、そこで党首が使った言葉陳謝申し上げる≠ヘ変だと言っていました。陳謝は謝りを陳する(述べる)こと。こういう言葉使いをしてしまうようではなぁ、と言っていました。で、あとの懇親会で「原さん、子供たちもおかしいですよね」と私が言ったら、おお、そうだ、とおっしゃっていました。判りますよね? 子は単数ですが子供は複数です。者供、続け!≠フ供。

 もうひとつは柱の傷はおととしの〜≠フおととしが不明だと言っていたことです。なぜ去年じゃないんだ? 兄は2年間出稼ぎにでも行っていたのかな? と発言していましたから、これも懇親会で「時代背景を考えると、兵役ではないですか? その観点であの歌詞を読むと違う視点が出てくるのではないでしょうか?」と返したら、おおっ!。本当に素直な人なんです(^^;

 一緒に呑んでいたわけではなくて、私は原さんとは別の席にいたんですが、宴もたけなわのころ寄って来たんで、そんな会話になりました。エライ先生に講釈したようですみません、ですね。写真は笑顔で講演する原子朗さん。原さんの講演は4、5回聴いていますし詩人クラブでは今回が二度目です。話は判り易くて、お人柄も好感を持てる方です。



館報『詩歌の森』46号
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2006.3.3 岩手県北上市
日本現代詩歌文学館発行 非売品

<目次>
啄木・賢治への思い 三好京三
癌闘病とユーモア川柳 今川乱魚
詩との出会い13 生きものたちとの出会い 小笠原鳥類
連載 現代のこどもの俳句2 いいものみっけ=@小島千架子
連載 現代短歌展望1 地殻変動と収穫と 佐藤通雅
資料情報
第3回現代川柳の集い 開催
詩のゼミナール 開講
特別企画展 予告
日本現代詩歌文学館振興会
日録




 ケイがいけにおちたよおおわらい
  (小1)プラント・かい

 あららら、かいちゃんかいちゃん、そ
れはないでしょ。早くたすけてやってよ
と言っているピッピも笑っています。池
にはアメンボや目高の他ちいさい生き物
が、いっぱいうごいていて、目をまんま
るにしていた妹のケイちゃんが、ついつ
い、つられてじゃぶん――!!

 毎号楽しみにしている「現代のこどもの俳句」の冒頭の句と、小島千架子氏による解説です。池と言っても小さなもので、季節は夏でしょうか。「妹のケイちゃん」は3〜4歳ぐらいかもしれません。安全な失敗≠安心して見ている視線を「おおわらい」が表出させていて「小1」の大らかさを感じます。子供の新鮮な感受性に学びたいですね。



月刊詩誌『柵』231号
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2006.2.20 大阪府箕面市
詩画工房・志賀英夫氏発行 572円+税

<目次>
現代詩展望 詩人とボランティア精神の奨め 最近の詩誌に見る傾向…中村不二夫 74
少年詩メモ(3)フィードバック…津坂治男 78
奥田博之論(1)インド…森 徳治 82
流動する世界の中で日本の詩とは 17 カルチャー・ギャップと日本のアカデミズムと『在日コリアン詩選集』…水崎野里子 86
風見鶏・呉 美代 友枝 力 菊田 守 小寺雄造 望月苑巳 100
「戦後詩誌の系譜」29 昭和49年51誌追補9誌…中村不二夫 志賀英夫 106
詩作品□
山崎 森/二〇〇六年のトルソオ 4
小沢千恵/三月の色合い 6
山口格郎/「仇討ち」 8
野老比左子/結語 他 10
進 一男/歩く 12
宗 昇/ひと粒の 14
肌勢とみ子/旅 16
小島禄琅/阿弥陀被り 18
北村愛子/医師はわたしの顔を見る 20
中原道夫/枯れ葉 22
織田美沙子/トルコ桔梗の花束を持って 24
南 邦和/少年の戦争 26
大貫裕司/古寺の秋 28

伍東ちか/パーティの終わりに 30
小城江壮智/春雷 32
佐藤勝太/誕生日 34
江艮亜来子/散策 36
岩本 健/断章 38
檜山三郎/「第一孤塁庵」造り 40
上野 潤/和蘭物語 24 42
松田悦子/替わり湯 44
鈴木一成/自画自嘆 46
丸山全友/戯れ 他 48
安森ソノ子/縫う 50
門林岩雄/横臥 他 52

高橋サブロー/「薮」「筍」「竹」と 54
名古きよえ/這う 56
小野 肇/電車の中 58
立原昌保/空は今日も朝からまっさらだ 60
水崎野里子/雅 62
若狭雅裕/春の木 64
今泉協子/何処へ 66
前田孝一/静かなる君臨者 68
山南律子/幻想の寺 70
徐柄鎮/崖の宿 72
続・遠いうた 58 神の掟のままに イスラムのサッカー…石原 武 90
大江健三郎「さよならわたしの本よ!」T.S・エリオットの反響(1)…村田辰夫 94
インドの現代詩人 アフターブ・セットの詩 7…水崎野里子 98
コクトオ覚書206 コクトオ自画像[知られざる男]26…三木英治 102
東日本・三冊の詩集 水島美津江『冬の七夕』 ヤマモトリツコ『鏡の中の刺し傷』 北野明治『雪明りの夜道』…中原道夫 116
西日本・三冊の詩集 直原弘道『ようよう』 小寺雄造『神様の注文』 福田操恵『水飲み場』…佐藤勝太 120
受贈図書 127  受贈詩誌 123  柵通信 124  身辺雑記 128
表紙絵 申錫弼 / 扉絵 中島由夫 / カット 野口晋・申錫弼・中島由夫



 三月の色合い/小沢千恵

一月は純白の新雪の色であり
二月は寒風が吹きすさむ
無色透明の風の色をして
三月は灰色まだら色
春の空には程遠く
冬の装いを引きずって
中途半端な気持ちで見上げている空の色

今まで何十回と三月という時を迎えたことだろう
敗戦後 初めて見た日本の風景の中
人も建物も何もかも 狂った果実のように
二軒長屋の奥の家で
赤い長襦祥の裾を乱して
縁側に座っていた花嫁は
人と物狂いの狭間で
青い海を灰色の空洞の目で見つめていた

七歳の私が意識し始めた三月は
海から吹いてくる潮風と
切ないほどのもの悲しい現実と
淡路島の春のように暖かな水仙の花

あの日から
人は生き続ける使命を持って
小さな掌中に灯火を燃やしながら
皆は次の季節の華やかな行事の前に
身を潜めて生きている

明日は熱海に住んでいる母を訪ねてみよう
九十歳の母と私の一生は
一言では言えない甘苦の裏表
会えば優しい童女のように分かち合って
やわらかく生きている

 「三月」という季節は「次の季節の華やかな行事の前」だという規定と、「敗戦後 初めて見た日本の風景」が同期している作品だと思います。敗戦後という時期は、季節で謂うと3月頃なんですね。この捉え方は巧い。
 敗戦後から「何十回と三月という時を迎えた」今が最終連に表出しています。「熱海」という地名が「三月の色合い」というタイトルと上手く重なっていて効果的です。「優しい童女」の二人を見守りたい気持にさせる作品だと思いました。




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