きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.2.22 新幹線富士川鉄橋より |
2006.3.6(月)
私の担当する商品のうちのひとつを年内目標でディスコンすることになりましたが、医療関係の製品ですので学会からは猛反発をくらっています。何が何でも生産を続けろという要求を出されて、苦肉の策で両者が編み出した方程式が、業務移管。それも他社に生産移管して弊社の名で存続させるのではなく、移管した相手先のブランド名で世の中に出すというもの。そのためには相手の会社に特許も使ってもらい、原材料の供給先も教え、場合によっては製品の検査機も差し上げましょうとまで考えています。弊社にとっては画期的な業務移管ですが、いずれ生産設備の老朽化でモノが作れなくなったり、利益が出なくなるのは判っていますからやる価値はあります。
世の中はおもしろいもので、そういう弊社の状態に反して相手社では生産設備を更新したばっかりだそうで、じゅうぶん採算性が見込めるというのです。医学学会からも相手社からも喜ばれ、弊社も大助かりという謂わば3者1両得。もちろん実現させるには多くの困難が見込まれますけど、3者とも前向きですから大丈夫だと思っています。
実現は私の退職後になります。言い出しっぺとして最後まで関与できないのは残念ですけど、まあ、それも時期というものです。新聞記事に注意して、完了が確認できたら密かにお祝いしてあげたいと思っています。
○季刊詩誌『GAIA』15号 |
2006.3.1 大阪府豊中市 発行:上杉輝子氏方・ガイア発行所 500円 |
<目次>
旅のおぼえ書き<その1> <その2> <その3>/水谷なりこ 4
電飾の家/平野裕子 6
三月の車窓から/春名純子 8
姓・春/中西 衛 10
(エッセイ)紙ふうせん/寺沢京子 12
待つ 余生 いろは/團上裕子 14
残るもの/立川喜美子 16
眠れない/竹添敦子 18
いっちゃん・あたりまえのこと/佐藤アツ 20
冬の牡丹・無限滝/小沼さよ子 22
猫の手・雄ライオンの愛/猫西一也 24
つゆ草/熊畑 学 26
明洞/海野清司郎 28
(エッセイ)さつまいもの詩
朝/上杉輝子 30
寒空の旋律・烏に告げる/横田英子 32
まなざし/国広博子 34
同人住所録 36
後記/横田英子
猫の手/猫西一也
猫の手は
ぷくっ と膨れた大きな丸の周りに
小さな丸が四つ集まってできている
大きな丸も小さな丸も
触るとスポンジのような弾力がある
爪は丸と丸の間に隠されている
抱かれて肩につかまる時にちょこっと出す
愛して欲しい時
猫は膝の上に両手を揃え
丸い眼で見上げる
満足した時
猫は両手を交互に使い
顔を洗う
眠たいのに
部屋の中がまだ明るい時は
両手を眼の上に乗せ
アイマスクにする
何もすることが無い時
猫は爪掻きをする
足をふんばり
両手の爪で丸太に幾筋もの筋をつける
猫に
手を貸してくれない
と、頼んでも貸してくれたことはない
天高し 描と生まれて 働かず *
だそうだ
*福岡市 吉田留美子 作
おそらくペンネームだと思うのですが、お名前に「猫」の字があることから相当な猫好きな方のようです。猫を観察する視点が愛情に溢れています。最終連とその前の連がおもしろいですね。句が生きていて、しかも詩が句に負けていないと思います。短歌や俳句・川柳を引用するのは意外と難しいのですけど、ここは上手くいった作品だと思いました。
○詩誌『木偶』64号 |
2006.3.5 東京都小金井市 増田幸太郎氏編集・木偶の会発行 400円 |
<目次>
落下論(2)/中上哲夫
約束/野澤睦子
直下型時間貧乏/天内友加里
声の行方 U ―断章―/仁料 理
黄昏/落合成吉
礼服/川端 進
花粉症ブルース/荒船健次
女髪/乾 夏生
一九四○年・辰年の記録 人さらい/土倉ヒロ子
チョコレート階級闘争/田中健太郎
柿/増田幸太郎
読む 連載5『軽石』2 木山捷平/馬渡憲三郎
女髪/乾 夏生
妻が洗面台の水が流れないという
見て下さらない
でも あなたにわかるかしら
不信の眼差しに押されて
洗面所へ行く
なるほど
洗面台は小さな沼だ
モンキーレンチで
排水管の繋ぎ目をはずす
汚水があふれ落ち
妻はあわててバケツをあてがう
排水管の曲折部で
おびただしい女髪が
もつれた棕櫚になって
狂っている
そいつが水をせき止めて
沼を作っていたのだ
きみの髪じゃないか
知らないわ
言われれば みごとな黒髪
夜ごと
黒髪をむしり続けた白い顔の女が
この家にいたとでも言うのか
あたし 知らないことよ
妻は 尼僧のように微笑する
最終連が佳いですね。「黒髪をむしり続けた白い顔の女が/この家にいた」のかどうか判らない、そんなはずはないと思いながら「妻」を見ると、「妻は 尼僧のように微笑する」。この転換が不気味でおもしろいと思います。女性の「みごとな黒髪」は女性の誇りでしょうし男どもの憧れですが、反面では不気味さもあるでしょう。体験はありませんけど、河に浮かんだ長い髪の遺体なんて見た日には眠れないでしょうね。そんな心理を突いた作品ではないかと思いました。
○詩誌『餐』27号 |
2006.3.3 千葉県流山市 上野菊江氏発行 非売品 |
<目次> 上野菊江
詩
星に託す …1
郵便切手から バグダード(1)(2)(3)…2
アイボが…12
随筆 郵便の話――愛をこめて――…9
星に託す/上野菊江
わたしたちは星となって輝くと誓い
昇っていった冬の空だ
星が痛い
時をかざるギリシャ神話
あたらしく小さな星となった詩人を
高く手をあげで招く星 アポロニュウス
天辺へつらなる星の回廊がチカチカ揺れて
新星の詩人出迎え つぎから次
握手の順を待つ行列
先ずはエロス
ポセイドンからアルテミス
レトやセレネ……それと知れるゼウス星
――楽しかった一瞬の 人生
星が痛い冬の空だ
本誌は二人詩誌として続いて来ましたが、山根研一さんが「あたらしく小さな星となっ」てすでに1年だそうです。「星となって輝くと誓い」、遺された上野さんの哀切がにじみ出ている作品だと云えましょう。くり返し出てくる「星が痛い」という詩句によく現れていると思います。改めて山根研一さんのご冥福をお祈りいたします。
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