きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり 】 |
2005.2.22 新幹線富士川鉄橋より |
2006.3.8(水)
弊社工場には数百人規模の部がいくつかあり、それぞれの部に環境問題を扱う専門委員会が設置されています。私も所属する部の委員に任ぜられています。午後から本年度最後の委員会があったので出席してきました。このメンバーの委員会としては最後ですが、半分以上は留任になるはずです。しかし私は4月末で退職しますから、本当に最後。委員会の冒頭でその旨を伝え、挨拶しておきました。2期2年の任務でしたけど、大気放出ガスの削減に取り組んだり、それなりの成果はあったなと思っています。これからも環境対策は法の規制もますます厳しくなり、委員会の責務は増大する一方だろうと思います。経営状況が悪化しても、そこは最優先で取り組んでもらいたいものです。
○詩誌『複眼系』38号 |
2006.3.1 札幌市南区 ねぐんど詩社・佐藤孝氏発行 500円 |
<目次>
不如帰…渡辺宗子…2
豊饒…常田淑子…4
ねつ…常田淑子…5
木彫展…常田淑子…6
本…米谷文佳…8
お対…米谷文佳…10
妖花…米谷文佳…11
くも…高橋淳子…12
銀杏…高橋淳子…13
秋…高橋淳子…14
森はレストラン…高橋淳子…15
月夜の狼…本庄英雄…16
佐藤道子さんを悼む…水谷…18
四行詩T…水谷…19
生…鈴木たかし…20
エルムの森で…鈴木たかし…22
佐藤道子さんの死を悼む…金崎 貢…24
年賀状…金崎 貢…26
暇潰し…金崎 貢…27
流れ…金崎 貢…28
ガム…金崎 貢…30
思い出のやつが…金崎 責…32
親心…金崎 貢…34
初夏の訪れ…金崎 貢…35
何でもゲンキンで…佐藤 孝…36
凍る音…佐藤 孝…38
後記…40
表紙写真「雪の白樺林」佐藤 孝
本/米谷文佳
電話があった
「それなら
北園克衛を 読んでみる?」
「厚い本で
あなた 重いから
今 お宅の方に行くので
持っていくわ」
その時
わたしを そばに
置いてくれたのだな
そうしておいて
そのまま
本を 返せないところへ
行ってしまった
霧散はしない
黒い布張り
金の背文字
Mさんの位置に
潜伏しつづけるのだ
昨年10月に亡くなった佐藤道子さんの追悼特集です。紹介した作品には特に断りはありませんが「Mさん」は道子さんでしょう。第2連が特に佳いと思います。お別れの前に「そばに/置いてくれた」と感じる作者の感受性に敬服します。第3連も作者の気持がこもっています。「本を 返せないところへ/行ってしまった」佐藤道子さんのご冥福を改めてお祈りいたします。
○詩とエッセイ『沙漠』241号 |
2006.3.10 北九州市小倉北区 沙漠詩人集団事務局・餘戸義雄氏発行 300円 |
<目次>
■詩
原田暎子 3 泡のように流れて
菅沼一夫 4 顔への責任
中原歓子 5 寒夜
河上 鴨 6 産みから海へ
麻生 久 7 かもめ
柳生じゅん子 9 穴の向こうで
推名美知子 9 賞味期限
坪井勝男 10 伝承
横山令子 11 贅沢なひととき
秋田文子 12 初恋
宍戸節子 13 ちょっと違うだけで(5)
岩下 豊 14 一つの願い
平田真寿 15 ぼくのアランフェス
藤川裕子 16 散歩道
福田良子 17 冬晴れに
坂本梧朗 18 「身辺」で生きていけ
河野正彦 19 余生ということ
千々和久幸 20 遺書
柴田康弘 21 ふゆぞらのひかりのため
犬童架津代 22 メール
木村千恵子 23 絆
風間美樹 24 無くす
光井玄吉 25 何か変だよ
餘戸義雄 26 つかむ
■エッセイ
光井玄吉 27 「やきもの」考(8)
柳生じゅん子 27 詩を読むよろこび
原田暎子 29 キムチ顛末記
表紙写真 餘戸義雄
顔への責任/菅沼一夫
四十になったら自分の顔に責任を持て
と言う
成程 と思うし
否 とも思う
徳川時代は五十代が晩年だが
平成時代はまだ花狂いの年代
七十代でさえ 晩 の字は禁句の時代
不惑よ不惑 ちっと居心地が悪くはないかい
さて顔に戻ろう
昔の人は四十歳で皺を何本作ったか
そんな記録はない
だが一山越えれば晩年が待つ身
皺も四つ五つは備えていてもおかしくない
そこで
心身一体の原則から思慮にも皺が求められた
でも人は様々
思慮の皺を着け得ない未熟成人もいる
ということでこんなお小言となったんだろ
そもそも顔責任論のえん源はいずこ
と 川を遡れば一人の男
あれは体制擁護論者の孔子様か
もう一人こちらを見ている第二の男
あれは無の哲人老子様か
更に一人川原にうずくまっている第三の男
なーんだあいつ 我が家の居候じゃないか
何時も顔を変えている男
顔に責任の持たせようもない男
責任よ責任 あっちへ飛んでけ
自由よ奔放よ こっちへ飛んで来い
どうせおいらはのっペらぼう
など変な歌を唄っている
中学生のときに「四十になったら自分の顔に責任を持て」と先生から聞かされて、私も「成程 と思」ったんですが、その「不惑」を二昔近く過ぎても確かに「花狂いの年代」ですね。「思慮の皺を着け得ない未熟成人」とは上手いことを謂ったものです。
「孔子様」「老子様」に続いての「第三の男」は「我が家の居候」ですから、これは「おいら」と採って良いでしょう。「のっペらぼう」とは私自身であるなぁ、と冷や汗をかいた作品です。
○詩誌『思い川』19号 |
2006.4.1 埼玉県鳩ヶ谷市 桜庭英子氏発行 非売品 |
目次
<詩>
その名…桜庭英子 2
教室…あさの・たか 4
ヒグレオシミ…桜庭英子 6
縮む…増谷佳子 8
<詩論・私論>戦後六十年「現代詩」について思うこと−アジア環太平洋詩人会議2005年東京に参加して−…黒羽英二 10
<寄稿詩>花言葉…森 常治 12
<書評>桜庭英子詩集『ミドリホテル幻想』によせて−夢幻を渡る擢の水音−…溝口 章 14
<詩>
風のたわむれ…桜庭英子 16
砂簾…石下典子 18
消えたスカーフ…桜庭英子 20
<エッセイ>机の周辺…桜庭英子 22
<詩集紹介>…24
<詩の汀>朝の挨拶/菅原克己…<H・S> 26
<瀬音>忘れ得ぬ恋歌考(1)……桜庭英子 28
<執筆者プロフィール/後記>…桜庭英子 30
その名/桜庭英子
その名は
わたしのなかを今夜も
吐息となって通りすぎてゆく
やるせない香りを振りまきながら
<身のほど知らず>
<軽はずみ>
かつて パリの裏町に佇む女たちが
好んで付けたという香水の
その名は夜毎
わたしの部屋を行き来した
<夢幻の如く>
そう これは
あいつの命を縮めたみちのくの地酒
その名もときおり
夜更けになると
とぼけた顔をして
ふらふらと出没したりする
「香水」についてはとうぜん何も知らないのですが「<身のほど知らず>」「<軽はずみ>」とは仏語を翻訳した「その名」だろうと思います。さすがはフランス、粋な名前をつけるものだと感心しました。それに比してわが「みちのくの地酒」の名の劣ること。香水と日本酒の名を同時に語るのは無理があることとは云え、ネーミングの難しさを感じますね。
その香水と日本酒の「香り」だけでなく「名」が「夜毎/わたしの部屋を行き来し」ているというのは、さすがは詩人の感性、見事です。
○小川哲史氏詩集『風のつむぎ』 |
2006.2.1 東京都葛飾区 詩区かつしか刊 2100円 |
<目次>
このごろ私に−序にかえて
第一章 かりそめの
T
日暮れ橋 18 うたびと 22
ふるさとの丘 26 廃里 28
隅田川 32
U
停車場 42 木の葉だより 46
嫁の朝 50 冬の花 54
お梶の恋 58
V
闇芙蓉 64 秋桜 66
深尾菊 68 沈丁花 72
恋芙蓉 76
第二章 たまゆらの
T
流れ星 82 初秋 86
曳舟川 88 こけし 92
障子の唄 98
U
約束 106. 石庭 110
欠落の章 114. 紫陽花 118
投網 120
V
波 126. 土砂降り 130
変容 134. 清十郎ざんげ 138
アンナ吐息 142
第三章 うたかたの
T
水の音 152. 骨 156
流離 158. 終局 162
風の音 164
U
光太郎抄 168. おさん独り言 172
彼岸花 178. 少女 182
こおろぎ 184
V
わかれ草 188. 雲の流れ 192
夕笛 196. 銀心中 198
終列車 202
*
詩集「風のつむぎ」に寄せて 池澤秀和 206
*
あとがき 212
ひきふねがわ
曳舟川
わずかな酔客がたむろする居酒屋
女将は椅子に腰かけて注文を受け
ただ板前に告げるだけ
白い割烹着がよく似合う女将だが
なにさまのつもりか
立ち働くのは板前ばかり
ひき潮のように客が退いて
銚子を手につと立ち上がり
女将が寄り添って呟いた
目が見えないので粗相をするかも
お客さん白い杖こそなさそだけれど
お猪口を持つ素振りが伝わるわ
一緒に聞きましょ水の音
沈みながら浮きながら
流れ着いた笹の舟
この舟着場がわたしの店
聞こえるでしょ夜の瀬音
すぐそこが小さな店の名づけ川
闇の底を流れ続けて
(「曳丹川」は、東京都葛飾区百鳥の町はずれを流れる川である。)
「なにさまのつもりか」と怒った「女将」が、実は「目が見えない」のだと判ったときの驚き。しかも「お客さん」である作中人物も「白い杖こそなさそだけれど」眼が悪いのだと判る、二重の驚き。確かな構成力に裏打ちされた運びに感嘆しました。その背後を流れる情感も良く、おそらく「曳舟川」と「名づけ」られた「小さな店」なのでしょう、その名にも思わずうなってしまった佳品です。
小川哲史という詩人の作品をたぶん拝読したことはないと思います。今回初めてまとまった作品に接して、詩集の質の高さにも驚きました。拙HPでたくさん詩書を読ませていただくことに対して、大変でしょうとおっしゃってくれる詩友が多いのですが、こういう詩集にめぐり合える喜びがあるからやめられないのだと申し添えておきます。
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