きょうはこんな日でした 【 ごまめのはぎしり
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2005.6.29 山形県戸沢村より 月山

2006.4.3(月)

 日本詩人クラブの第2回法人化委員会が午後6時より東京・神楽坂エミールで開かれました。今回は第1回で訂正があった定款と規約の確認でしたから、それほど時間もかからず比較的スンナリと終了しました。ただし委員の中からは現行の規約では理事選挙で将来、無理が出る可能性があるので今のうちに検討しておく必要もあるのではないかという意見が出て、これは私も感じていたことですので納得しました。
 現在の規約では理事の任期は最長4年です。その後2年経てばさらに4年務めることができ、また2年空いてさらに4年…。という仕組みになっています。これは常に理事を務める会員を作らない、ボスは作らないという組織運営上の優れた仕組みなのですけど、事務所を持って事務員を置くとなると災いする危険性があります。2年毎に変る理事より事務員の方が内実を把握することになりますので、事務員の方がエラクなります。これを避けるために日本ペンクラブや日本文藝家協会は会長推薦理事のような仕組みを作っていますので、いずれ研究するようになるでしょう。法人化が実現した暁に考えても間に合いますけど、いずれ必ず問題になる事案です。今のうちから勉強しておこうと思っています。



詩誌『二行詩』16号
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2006.3.25埼玉県所沢市
二行詩の会 編集連絡先・伊藤雄一郎氏 非売品

<目次>
陰に日向に/伊藤雄一郎
枕詞異説/布谷 裕
暮らしの妖怪(花)/高木秋尾
神 他/安部慶悦
夜を渡る/大瀬孝和
二行連詩の試み 巻きの三
投稿作品集 青柳悠/渡辺洋/根本昌幸
続・シンプル二行詩論/伊藤雄一郎
後書き



 陰に日向に/伊藤雄一郎

 1

男が起きると背中で影も伸びをして一日が始まる

 2

影が足元に折り畳まれる伴侶が消失して男は孤独になる

 3

男の足元から長ぁい影が塀まで延びて湯殿を覗いている
 (こら、こら!)

 4

地下のバーにいる男の背中の壁にいつか影が待っている

 5

影から解放されて男がもうひとつの貌を見せるとき

 二行詩を私は意識して創ったことはありませんから、あまり口幅ったいことは言えないのですが、紹介した作品は二行詩でないと表現できないだろうと思われます。「朝」から「闇」までの時間を区切って、それに「陰に日向に」相応しい言葉を選ぶと仮定すると、どうしてもこういう形にならざるを得ないでしょう。事実は逆で、1〜5までが最初にイメージされていて、最後にタイトルが付けられたのかもしれませんけど、結果としての作品を見ると、この形に納得してしまいます。例えば「影が足元に折り畳まれる伴侶が消失して男は孤独になる」を独立させることも可能でしょうが、やはり1〜5の中に納まった方が生きるように思うのです。伊藤雄一郎氏のように専門に二行詩を解析しているわけではありませんから、間違った見方かもしれませんけど、そう感じて楽しませてもらった作品です。



『関西詩人協会会報』41号
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2006.4.1 大阪府交野市
金堀則夫氏方事務局・杉山平一氏発行 非売品

本号の主な記事
1面 新緑の文学散歩と講演会へのお誘い/『言葉の花火』第三集募集要項
2面 日本詩人クラブ関西大会のご案内/詩画展開催のご案内
3面 西日本ゼミナール報告/運営委員会の模様
4面 会員の活動・イベント



 6月10日に予定されている日本詩人クラブ関西大会の案内を載せていただいています。関西詩人協会との共催なので詳しく載せていただいたと思うのですが、日本詩人クラブ側の理事の一員としてお礼申し上げます。
 すでに終了した2月の日本現代詩人会・西日本ゼミナールの模様は、安藤元雄日本現代詩人会会長、杉山平一関西詩人協会代表の挨拶が簡明に記され、ゼミ講師の高階杞一氏、鈴木漠氏の講演もこれまた簡明に書かれていて、記録の中岡淳一氏の腕の冴えに敬服しました。私も何度かテープ起しをやったことがありますけど、簡単明瞭とはなかなか行かないものです。今後の参考にさせてもらいます。



詩と訳詩のざっし『火片』161号
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2006.4.1 岡山県総社市
井奥行彦氏方・火片発行所 500円

<目次>
ライナ・マリア・リルケとユリカ・ミテラーとの詩による往復書簡/鈴木 俊 1
記録 母永瀬清子の思い出/井上奈緒 7
エッセイ 散策/岩崎政弘 9
【詩篇】
自分の死に顔 外/金光洋一郎 10
蛾/柏原康弘 14
男は 外/重光はるみ 15
ほんもの 外/中桐美和子 17
人と時とのデュエット/余頃政敏 19

アンサンブル 冬の桜/清坂美恵子 21 片沼 靖一 22
エッセイ 詩心の源流8 −戦争のころ/井奥 行彦 24
【詩篇】
夏 外/和田真理子 31
根っこ/山下静男 32
老千行/皆木信昭 33
つむぎ織り 外/藤原由紀子 34
卒業2006/神崎良造 36
零下の日/斎藤恵子 37
白菜の帽子/はやし・さちこ 38
表意語/白神直生子 39
風のむこうがわ/しおたとしこ 41
田作り/石川早苗 42
蟻 −シリーズ4/岩崎政弘 43
45分から15分まで/片山福子 43
赤の調/木村雅子 44
厳寒の中で/則武一女 45
いっても/玉上由美子 45
結び目/川田圭子 46
爪あとは/佐藤祝子 47
白い鳥 黒い鳥/なんば・みちこ 48
花まつり/井奥行彦 48

エッセイ いのち/竹内志歩 50
読者のページから/担当山下静男 52
 ひとりぐらし・中田文子/君は幸せだろうか・小林令子/別府温泉 外・岡崎達実/消えてゆく空間 外・小林幸子



 自分の死に顔/金光洋一郎

自分の死に顔を見るには
まっすぐ仰向けに寝よう
そして鏡を持って
自分の顔と向き合う
鏡は少なくとも顔が全部映るのがいい

顔の筋肉をすべてゆるめて
まったく無表情になりきって
目をつむり
それから細うく開けてみる
鏡の中の顔は瞑っているように見える

若い張りのある顔は面白くない
全ての筋肉がだれる年頃がいい
私など還暦のころから
しきりにその対面をしている

普通に起居している顔はタテだ
自分も人も見慣れている私の顔だ
実は顔のすべての筋肉が下へ向かって
だれているのが普通の私である

年を経るとますます変わる

仰向けに寝ると
鼻をてっペんにして
頬などの肉はすべて
左右の耳の方へ垂れ下がり
引きつった表情になる
見慣れない異様なそれが
自分の死に顔だ

寝たきりの人は鏡をみるだろうか
むしろ死に顔の方に慣れているだろうか

とにかくタテに暮らしている顔は
死んだら別人の顔になる

逆に鏡を床に置いて
上からのしかかって見るのも
別の自分に会える
肉はすべて前へだれて
目も鼻も埋まり込み
醜怪なものがそこにいる
このとき目はしっかり開けるのがいい

この顔はどんなときの顔か
すでに不可能なことながら
女の上に覆いかぶさったら
女は下からこの顔を見ることになる
とたんにゲームセットだな

すべての肉が薄くなり
手も足も胸も腹も
骨にひっかかってぶら下がる
そこまできたら
死に顔はなかなか見物だ
自分でない自分
何人かの身内や知人が
最期に見るであろう私
その異様な未知の人の死に顔
それが見られる

鏡を持って
寝てみよう

 ちょっと不気味ですが、見方によってはユーモラスでなかなか面白い詩だと思います。「自分の死に顔を見」たいなんて考えたこともありませんけど、こうやって「鏡を持って/寝てみよう」と挑発されるとやってみたくなりますね。
 「普通に起居している顔はタテだ」というフレーズは鋭い指摘だと云えましょう。その一言からも判りますように、この作品は固定化された観念を打ち破るものだと思います。おそらく私よりずっと年配の詩人でしょうが、柔軟な頭脳に敬服した作品です。




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